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ゴマゾウたん。 【2008/01/30 22:16】
ゴマゾウたん。

(↑クリックで拡大(別窓表示))

現在仮設で動いてるブログ用と、このβ版のブログ用と、2パターン作りました。
・・・どこが違うのかというと、単に、右下に入れたブログURLが違うってだけだったりしますがf(-.-;








あと、今日ニコニコでゴマゾウのバトル映像発見↓



・・・カワユス(´Д`*
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ポケモンリーグレポート④ 【2008/01/15 00:00】
第四章:こんぶダシ効いてるよ~♪トリパとトリパの合わせ技ww
>>最初から読む  >>前回の話

そういえば、大会のルールはレギュレーション に書いてある通りなのですけれども、実際の会場ではこんなことが言われていました。



「不正行為が見られた場合は、対戦相手本人がその旨を申し出てください。申し出が無かった場合は、それらの不正行為もすべて有効として扱います!」



・・・うおっ、じゃあバレなきゃ不正やってもいいってこと!?∑(・ω・ノノ



いやいや、そんなバカな考えはやめてくださいよ・・・;

どうせいつかはバレるんですから、不正なんて絶対ダメです(><)



・・・しかし、ここのスタッフ、大分テキトーな気がしました・・・。

別に、試合結果なんて見てないのよね、この方々;予選Stage②で私が勝利したときも、スタッフに直接申し出るまで、気付いてもらえそうにありませんでした;

・・・まぁ、しょうがねぇや。別にスタッフ皆、ポケモン関係の仕事してるわけはあるまい。派遣とかバイトが殆どだろう・・・。

だから、会場内で「●●どこにありますか?」なんて訊かれても、「ええと・・・地図見せてください」なんて、逆に自分が教わんなきゃならんような態度とってるんですよ・・・(その時はまじで、私が教えようかとか思ったし・・・)。



あと、個人的に気になってたのは、対戦ごとに使用ポケモン変えてもいいか?ってことなんだよね。

答えは、可能、です。ボックス整理してる暇なんて無いのだけれど、手持ちに6匹入れてたら、あとはバトルルーム入った際に4匹選ぶことになるから。



けど、私はずっとカクレオン・ドータクン・ドサイドン・カバルドンの4匹。代えの面子がいなかったってのもあるけど・・・どうせ対戦相手だって毎回変るもの。予備入れてたって、あんまし意味は無いと思うのですがどうでしょう。



それにね・・・このときにはパーティの子等が、既にわが子たちのように可愛く思えていたのですよ人´∀`*)

やっぱ日本人、感情移入しやすい人種だよね・・・(いや、それに限ったことではないかもしれないが;)。



ともかく、始まりました、予選Stage③。以前の更新でも書いた通り、Stage③はWiiのポケモンバトルレボリューションを使って行なわれます。

大迫力の画面に、緊張感も更にUPですっ!(゜∀゜;



「第4回戦:予選Stage③」



今度の相手は、スポーツがりで背丈の高いニイチャンでした∑( ̄□ ̄;

年上・・・第1回戦の方もやはり年齢上でしたけれど、なんだかそれを相手にするのはニガテです・・・;

まぁ、年功序列の社会で育ってきたのだからしょうがないとは思うが。



さぁ、バトル開始。

相手はまずヨノワールと、あと一匹なにか・・・(忘れた)出してきました。

なんか、鈍足パーティだった気がする・・・。コータスとかだったかな?

それで、トリックルームは使えないと思い、ドータクンをカバルドンに交換・・・カクレオンは、取り合えずヨノワールじゃない方の相手にねこだましかけて怯ませておく。

すると、きましたヨノワールのトリックルーム!∑( ̄□ ̄;

むう、やはりそうきたか・・・。



しかし遅さだったらこっちも負けてはいない(笑)!カクレオン、頑張ってシャドークローでヨノワールに挑みかかります。1ターンじゃ倒せなかったけど、確か2ターン目ぐらいには相手ひんし!



しかしそこで、もう片方のポケモンが「だいばくはつ!」ぎゃ!コロシアムからポケモンがいなくなっちゃったよ!・゚・(ノД`)・゚・。



しかしこれでお互い、2vs2・・・ドータクン、ドサイドンを繰り出します。相手は、ホエルオーとアーマルド!

ホエルオー、怖い∑( ̄□ ̄;



たしかそこで、ホエルオーに集中攻撃挑んだんだと思います・・・とにかく、やつの「なみのり」がきたら、ドサイドン、耐えれるかどうかは不安です;

けれど、ホエルオーみたいな耐久の高いポケモンが一撃で倒せる筈はない・・・思わず、「硬ぇ・・・」なんて声を漏らしてしまったB@Lです(汗


で、その次のターンぐらいに、アーマルドの「まもる」がきたんじゃないでしょうか・・・!(ホント、うろ覚え)
しかし次にホエルオーが繰り出してきたのは・・・




じばく!!!




・・・まさかの爆弾パーティ∑( ̄□ ̄;

しかし、それで逆に救われました・・・だって、ドサイドンにもドータクンにも、「こうかはいまひとつ」なんですから・・・



相手の方、「まぁ・・・そんなもんか」と、苦笑・・・(笑)。無表情な方と思っていたら、案外、よく笑われる方でした( ̄▽ ̄;



最後は、ドサイドンのストーンエッジがアーマルドに見事Hit!「こうかはばつぐん」で、勝負の幕は閉じました。

・・・一度は予選第一試合で完敗したものの、見事本戦への出場をGetしたわけです!ヽ(´▽`)ノ♪ヤタア




さて、それから約45分ぐらい、時間が空きました・・・。本戦の集合時間は11時45分とのこと。予選が終わったのが11時頃だったからです。

その間に、「ポケモン不思議のダンジョン」の予約なり、一番くじなりの用事を終わらせる・・・

ホントは「ポケモン不思議のダンジョン」の試遊もしてみたかったんですけれど、待ち時間は既に2時間とか、3時間とか・・・∑( ̄□ ̄;待ってたら本戦終わっちゃうっつーの!



まぁここで、ちょいとした時間を潰すために、またさっきみたいにフリーの対戦相手が見つからないかなーと募集かけたりとかもしてましたが、皆なかなか忙しそう・・・。周りを見ると、仲間ウチで固まってる方々が殆どです。



・・・こんなとき、一人ぼっちが身に染みるぜ・・・・゚・(ノД`)・゚・。




しかし、集合時間の15分前(11時30分)には、既に集まり始めていた本戦出場者たち・・・皆、気が早いぜ(´∀`)

そんなこと言いながら、私こそ列の前から2番目に並んでたわけですが・・・(もう、すぐバトル始まんじゃん?;)。



というわけで、いよいよ本戦の幕開けでした。



>>第五章

※お詫び:
肝心の第五章ですが、これだけバックアップが無かったため、連載は今回を以って終了となります・・・ゴメンナサイm(_ _;)m
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ポケモンリーグレポート③ 【2008/01/14 00:00】
第三章:アニメネタとかまじで自重ww金魚男の戦略。
>>最初から読む  >>前回の話

「あのう、再チャレンジ受けたいのですが・・・」


スタッフにそう申し出、再び列の最後尾に並び直す大きいオトモダチ、B@L。


「どうでしたっ?相手の方、強かったですかっ?・・・めげずに、また頑張ってくださいネ、再チャレンジから勝ちあがれるって方、多くいらっしゃいますんで!」


・・・と、どっかで聞いたような台詞を受けながら、私は先程の試合の結果を省みていた。


先程の試合は・・・確かに相性が悪かったというのもあるかもしれない。しかし単にそれが敗因であるとしてしまったら、私は今後一切の試合で勝つことが望めないではないか。


今まで私は、この四匹で多くの強敵を倒してきたじゃないか・・・なのに、さっきの試合でミロカロスという強敵を目にした瞬間、私は情けなくも縮み上がってしまったのだ。
あのとき、自信を失わずミロカロスに総攻撃をかけていれば、まだ勝ち目だってあったかもしれないのだ。なのに私は、カクレオンが攻撃に出ることを許さず、無駄な連続「まもる」なんて命令をくだして、結果仲間の攻撃による無残な犠牲に彼女(カクレオンは♀だから;)を追い込んでしまったのである。
また、或いは、メタグロスが一撃で倒せないことも承知の上で、ドータクンに「だいばくはつ」を命令したところから、既に間違いだったかもしれない・・・ドータクンだって、まだ戦えた筈だ。キノガッサごとき、なにをそんなに恐れていたのだろうか。


・・・そうだ、私は自分のパーティの力を、信じてやることができなかった。だからこそ負けたんだ。後悔の念が、荒波のように押し寄せて、私の心に打ち付ける。ごめんよ・・・俺のポケモンたち。もう俺は、お前たちを裏切るようなことは二度としないから!
気分はもう、アニメのサトシ君だ・・・(アニメ観てないけど)。


そんなわけで、ポケモンヲタは大泣き&一般人はドン引き(爆)な思考回路を働かせながら、B@Lは再び予選の第一試合に挑んだのであった。


「第2回戦:再予選Stage①」


今度の相手は中学生か高校生ぐらいのメガネの女の子。かなり寡黙な印象のコである・・・。


「宜しくお願いします!」


・・・B@Lさんまた、テメーは体育会系か?と思われるようなやかましい挨拶で、対戦相手に挑みかかる(ウザい;)。


さて、お馴染みカクレオンとドータクン。
相手側は、エンペルトとギャロップである。


ぬぬぬ・・・こいつは間違いなく、ギャロップを先に黙らせる必要があるだろう。ってなわけで、ギャロップに「ねこだまし」でひるませておく。
しかし次にエンペルトが繰り出してきたのは、「ハイドロカノン」!いきなりの大技が、ドータクンを襲う・・・!なんと、レッドゾーン付近までHPが削られるも、まだまだダイジョウブだ。そのまま、「トリックルーム」の発動へと持ち込む。


さて、次の回。ここでちょっと、変化球的な攻撃に出てみる。カクレオンに「スキルスワップ」で、ドータクンの「ふゆう」の特性をいただき、ドータクンに「じしん」を繰り出させる戦法だ。これで、仲間に無傷なまま、敵に大ダメージを与えることができる!


その後どうなったかの流れは、正直あまり覚えていない。ただ相手がそのあと繰り出してきたのは確かパチリスとルカリオで、相性的にもこちら側の有利でほぼ圧勝に終わったと思う。
よっしゃ、自分のポケモンを信じて初黒星Getだぜ!!(←いちいち台詞がサトシ君臭いのだが(´∀`;)


「第3回戦:予選Stage②」


次の対戦相手は男の子だった。年齢はまたも、中高生ぐらいだったと思うが、対戦前に彼が自分のトレーナーカード(ゲーム中で、IDや所持金などが記載されてるカード)を弄っているのが見えたのがひとつ、気になった・・・


カードの裏のサイン欄に、こう書かれていたのだ。


「K1」


・・・け、けいいち!∑( ̄□ ̄;
(ネタわかる人、挙手(爆))


うん、まぁ、けいいち君とのバトルだったわけですが(汗、結論から言えば、それにもなんとか勝利。
最初にやはり、厨ポケのメタグロス&ガブリアスがか出てきて焦ったりもしたんですが・・・。もうこれ見た瞬間「あ゛―!!」とか思って、速攻でメタグロスに「ねこだまし」かけた・・・メタグロス、トラウマ(汗



ガブリアスは、「つるぎのまい」とか使ってきたりしましたです。これはもう、「だいばくはつ」で退場してもらおう・・・。

そしてその後は、ドサイドン先生を出し、カクレオンもカバルドンに入れ替え、砂パでゴリゴリ押していきましたとさ。


ともかく、これでいよいよ予選最終試合進出だっ!


>>第四章
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ポケモンリーグレポート② 【2008/01/13 11:34】
第二章:いきなり終了!?金魚男の敗北!!
>>前回の話

・・・それにしても、中学生以上リーグ。選手は中学生が中心なのかなーと思ってました。

中坊に囲まれながら、ひとりだけおっきいオトモダチとしてそこにいるB@L・・・みたいな、そんな痛々しい図を予想していたのですが・・・



結構、私より年上の方多かったです(´∀`;



ちょっと髪を金色に染めたおじさんから、帽子とメガネでいかにもゲームヲ●クといったおにーさん・・・(←しかしB@Lもその一人であることを忘れてはならない;)。更には、「お母さん、勝ち進んでるよ!凄い凄い!」と、列外にいた高校生ぐらいの娘さんたちの声援を受けるおばさm・・・いや、オトナのおねーさま方まで・・・;



・・・まぁ、たまたまだよねっ;運営側が、不公平が無いように年齢差バラバラで選抜したからだよねっ・・・ホンキでポケモン育ててる方なんて、あのメガネのおにーさんたち以外にいないよねっ、と、そわそわしていたのですが・・・。



列の間にあった、大型スクリーンにポケモンバトルレボリューションの映像が流れ始めた瞬間・・・(どうやら予選の最終試合はそれで行なわれるらしく、その戦いの一部が流れてたみたいなんですが・・・)



食い入るように、画面を見上げる選手たち・・・



間違いネェ、みんなホンキでバトルやろうとしてる連中だ・・・(´Д`;

びびった・・・←正にB@L、戦う前から既に負けてる状態;



しかしまぁ、私も見ておく必要があるだろうと思い、その一部だけですが、確認することができました。

ヨノワールとか、ドータクンとか・・・結構、トリックルーム使いが多かったような気がする;

トリックルーム使いが、私だけではなかったことを知らしめるような映像でした・・・orz

いや、寧ろ基本戦法?



・・・と、いつの間にやら私がバトルに参加する番が回ってきました。列順に二名ずつ対戦に出される、とのことで、私の前は背の低い男の子(多分中一ぐらいだろうな)がいたので、その子と対戦することになってるのだろーなと思っていましたが・・・



いつの間にやらその子、一人だけ凄い前に進んでて、既に他の選手とバトルしているじゃありませんか!∑( ̄□ ̄;

・・・おい、列無視してんじゃねーよ!割り込みだろ、割り込み!ヽ(`Д´)ノ(千里ちゃん・・・)



しかし、選手番号なんぞ所詮は飾りでしかない・・・そのまま私は、列の二つ前にいた、ちょっと茶髪のおじさんと戦うことになりました・・・。



「第一回戦:予選Stage①」



このおじさん、年は30歳(選手証に書かなきゃいけなかった)で、2児の父(場外で応援してた)・・・。私より遥かに人生の先輩です;

けどね、対戦前からスタッフに、「負けたら終わりなの?再挑戦できないの?」とか訊いてるの見たら、勝てるって気がしました・・・(`∀´;



で、スタッフによって、会場に設置されている白のDSLiteに電源が入れられる・・・

軽く「宜しくお願いします!」と会釈する私・・・

・・・しかしおじさん、こっちには目をあわさずに、ヒュっと首を曲げただけ・・・

・・・なに、この、対戦相手を何とも思ってないような態度は・・・(´∀`;人生の先輩であることは確かだが、人としてはどうかと思った・・・。



で、まぁ、対戦が始まったワケですが・・・



B@L側、カクレオン、ドータクン。

相手、キノガッサ、メタグロス。

うおっ、いきなり厨ポケ出現!∑( ̄□ ̄;



取り合えず最初は、キノガッサに「ねこだまし」をお見舞いする。・・・いきなり「インファイト」とかでカクレオンやられそうな気がしたもん・・・或いは、ほうし使ってくるかもしれないし;

が、そのあとメタグロス、カクレオンに対してまさかの「アームハンマー」!∑(゜Д゜;

それで一撃でやられることはなかったものの・・・物凄い危機感を感じてしまう私・・・

だって、これから「トリックルーム」使おうとしてんのに、相手の素早さ下がっちまったんだぜ・・・やべーよ、こりゃやべー;



で、2ターン目・・・カクレオン「まもる」で、ドータクン「だいばくはつ」を選択・・・。素早さ下がったメタグロスが一撃で倒される筈は無いと重々承知だったが、キノガッサには早く戦場から消えて欲しかった・・・。

結果、メタグロスのHPは半分も減らなかったものの、キノガッサは退場・・・まぁ、予想通りではある。



で、3のターン目。こちらはドサイドン先生登場・・・しかし相手は、ミロカロス!∑( ̄□ ̄;

これはやっべー・・・ウチのパーティの天敵でございます;何とか一ターンで葬り去らないと、勝ち目は無い・・・。けれどそんな自信は無いし、相手はもう一匹、素早さ下がったメタグロスがいるし・・・



で、選んだ結果が、カクレオン再び「まもる」、ドサイドン「じしん」・・・



・・・はっきり言って、このときの選択が私の完全なる敗北を導いたのでありました・・・



相手はメタグロスを引っ込ませ、やはり厨ポケのラティアスを繰り出す・・・。

カクレオンの「まもる」は当然のようにミスり、ドサイドン先生の「じしん」の巻き添えを食らって死亡・・・ミロカロスの体力は半分になるばかり・・・ラティアスには無効・・・。

そして、ドサイドン先生も「ハイドロポンプ」で退場・・・・゚・(ノД`)・゚・。正に、ボロボロ;



最後に残るは、じめんタイプのカバルドンのみ・・・「すなあらし」で相手にダメージ与えられるも、たった一匹でどうしろというのですか?



ホント、こっからは悪あがきでしたよ・・・「まもる」とか使ったりなんかしてね;対戦相手も、もう勝ちを確信してヨユーぶっこいたのか、途中試遊機離れて、場外の子どもあやしに行ったりとかしてたしね・・・

ものすっごい敗北感・・・




・・・そんなこんなで試合終了。最後には、せめてラティアスぐらい葬りたかったけど、タイプ不一致且つ低威力の「こおりのキバ」ではなんともならず・・・「かみくだく」にすればよかったのに(それでも倒せたかどうかは微妙ですが;)あぁ、哀れ金魚男、まさか予選一回戦で退場になろうとは・・・。



・・・しかし、リーグはそれで終わったわけではありませんでした。



スタッフ「再チャレンジをなさる場合は、再び列の後ろにお並びください」



・・・再チャレンジできんの!?∑(゜∀゜;

それ、なんて安部政権?←ネタ古いよ



しかしそんなこんなで、渋い顔はしつつ、再び列の後ろに戻って、再チャレンジに挑む金魚男でありましたとさ・・・


>>第三章
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ポケモンリーグレポート① 【2008/01/12 01:20】
2007年8月19日の、ポケモンパルシティの思い出話です。



第一章:金魚男B@Lの挑戦


どーも、金魚男B@Lですヽ(´▽`)ノ♪


さて、予定通り朝5時に目覚め、しかし朝食らしい朝食は食わぬまま家を出た私でしたが、会場最寄のみなとみらい駅に到着したのは、8時頃。

集合が8時30だから全然ヨユーとか思ってたら、電車を降りた瞬間、物凄い数の親子づれが、会場まで足を進めていました・・・!

しかもね、子どもたち、凄い皆走ってんの、暑い中・・・(´Д`;

元気すぎるってレヴェルじゃねーぞ!ってか、何のために走る必要がある!!??



・・・しかし、それはアレ、どんなイベントの時にでも、入場前には列に並ばなきゃならないという社会のルールにのっとってのことなのでした;会場一時間前とはいえ、既に凄い数の人々でしたから・・・

そういえばB@L、去年は幕張のWii体験会というものにも足を運んでいたのですが(それも同じく最終日)、はっきり言って、それより多かったんじゃないかなと思う・・・19日横浜パシフィコ;

やっぱ、家族連れが多かったせいか;

(会場の6,7割は子どもで埋め尽くされています)



私はというと、リーグ出場選手・・・一般客とは違う列に並ばされます。

届いた葉書に記載されていた番号の順に並べというのが名目でしたんですけれど・・・はっきり言って、あんまし意味はありません;別に、スタッフが一人ひとりの番号チェックしていたわけじゃありませんから・・・(職務怠慢?)。

それでも一応、私は並んでる方々に自分から番号を訊き、自分の位置を確保したわけですけれども・・・やはり、あとで移動するときとかに、結構入り乱れてしまうのでありました;



でもまぁ、いいか。そんなん気にするの、絶望先生の千里ちゃんぐらいだわね(´∀`)←アニメネタ自重ww



で、会場は30分前倒しで8時半開場。

9時からいよいよ予選試合開始なのですが、私は番号がそれほど若くなかったため、暫く待ち時間がありました。

早速、不思議な贈り物をチェック。会場内に入ったら、贈り物はどっからでももらえます。

最初はルカリオ配信だよねーと思ってたら、ナゼかマナフィGet;

ルカリオは、その10分あとぐらいに配信が始まりました。。。なんだ、このフライング感;



(ここで豆情報。会場でもらえるルカリオだけナゼか英語名で、親名も「PALCITY」と英語表記。アイテムはメタルコート持ちです。)



他にすることといったら、やっぱワイヤレス通信?

何気なくバトルルームに入ろうとしたら、もう早速対戦相手が飛びついてきたから驚いた;やっぱ、早く対戦したくてウズウズしてる人って、私以外にもいたんだなぁ・・・



というわけで、



「第零回戦:まさかの予選直前お試しバトル(笑)」



まずはB@L、カクレオンとドータクンを繰り出す。

相手は、エテボースとユキノオー・・・うぅ、早速強豪のお出ましではないか;

相手のエテボース、やはりドータクンを狙って、「ねこだまし」を繰り出します。しかしこちらも負けじとユキノオーに「ねこだまし」。お互いひるんで、最初のターンは終了。

2ターン目。これからが勝負と思うも、再びドータクンでトリックルームを繰り出そうとするも、エテボース、まさかの「なげつける」攻撃で、おうじゃのしるしをドータクンに投げつけてきた!再びひるむドータクン・・・!

ユキノオーは「ふぶき」を繰り出す!が、ドータクンには効果いまひとつだしカクレオンは特防高いから大したダメージにはならない。

というわけで、三度目の正直でトリックルーム始動!!

そっからは、B@Lさんのターン!わはは!我が力思い知るがいいわ!!←それ、めっちゃ悪役の台詞やん;



・・・というわけで、予選前バトルは金魚男B@Lの勝利に終わりました・・・(3ターン以降、全部端折ったな;)。

しかし、大分焦った;エテボースのパートナーがユキノオーではなくて炎ポケモンだったら、燃やされて終わってました;

それにしても・・・お試し試合なのに、随分な緊張感だった;



予選前に黒星ということで、幸先いい滑り出し。そんな中、予選試合の私の出番は、もう始まろうとしていたのでした・・・!


>>第二章
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑪ 【2008/01/11 00:00】
第十一話:食卓(後編)
>>はじめから >>前回の話

今朝の朝食は殆どナースが調理したものだったけれど、スープだけはレオナが作ったものだった。というのも、この診療所の台所のコンロの上には、レオナの作り置きしたスープの鍋がいつも置かれていたのだ。

それは、レダの大好きなスープだった。いや、レダだけじゃない。そのスープは、診療所にやってくる患者たちにも振舞われることがあり、一度飲んだ者ならだれでも、好きになってしまう味だった。勿論、亡くなったレオナの夫も、そのスープの味が大好きだった。こんなに美味しいスープ、一体何が入っているんだい?彼がレオナに尋ねると、彼女は微笑を湛えながらこう答えるのだった。

「お塩でしょ、胡椒でしょ・・・そうですわね、特に珍しいものは入ってませんわ。まぁ、強いて言うなら、“優しさ”かしら」

そんな冗談っぽいその台詞にも、彼女の夫は充分納得してくれた。

優しさこそが、この夫婦にとって、最もたいせつなものだった。レオナの優しさがあれば、夫はどんなに仕事に疲れて帰ってきた夜も、寝不足で気分が優れない朝も、たちまち笑顔になってしまうのだった。まるでお天気の日に干した毛布のように、ほっこりと暖かく包んでくれる優しさ。それが、夫がレオナのことを最も好きな部分であった。それさえあれば、他のどんなものも必要無かった。

そう思えるほどに、たくさんの優しさに包まれた、幸せな家庭であった。けれども、もっと欲を言えば・・・レオナは一度、こんなことを夫に言ったことがあった。

「あたしたちにも・・・子どもが欲しいですわ」

家庭を持つ女性ならば、誰でも持つ望みであった。夫はそれに、そうだね、と同意の返答をしたが、レオナはそのとき、夫はもっと別の望みを抱いているのではないかということに気付いたのだった。それこそが、彼が家庭を離れ、戦場へ赴くことだったのだとわかるのは、それからすぐ後のことである。

だが、それがわかる前からも、レオナは決して夫を咎めることは無かった。彼は、自分の夢のために、ただまっすぐ生きているだけだということを知っていたから。そして、彼のそういったところが、レオナが最も好きな部分であったから・・・。

そんなことを思い出し、つうっと、涙が零れた。

それを今、掬い取るように拭く手があった。

レオナは、それでハッした。目の前のベッドには、サンドパンがいた。彼は身を起こし、レオナが運んできた朝食を食べていたが、彼女が突然流した涙に、きょとんとした表情を浮かべていた。

レオナの目から零れかけた水滴がなんなのか、その兵士は知らなかった。機械のように育てられてきた中で、完全に忘れ去られていたものだった。しかしそれが急にレオナの目から零れそうになって、彼は反射的に、それを長い爪の先でそっと掬い取ったのだった。

レオナは最初驚いたが、兵士はそれを自分の鼻の先に近付けると、くんくんと匂いを嗅ぎ始めた。その、何だか生まれたばかりの子犬、ガーディのように可愛らしい仕草をする彼を見ているうちに、レオナはつい可笑しくなってぷっと笑い出してしまった。

次にびっくりしたのは兵士の方だ。さっきまで何だか悲しそうな顔をしていたくせに、いきなり笑い出すとは・・・再び怪訝な表情を浮かべる彼に、レオナは笑いながら、ごめんなさい、と言った。

そして、笑ったら再び涙が零れた。さっきのとは違う涙だった。少しだけ、幸せな涙だった・・・。

兵士の容態は、もうすっかり良くなっているという程ではなかったが、少なくとも自分ひとりで食事が出来るくらいには回復していた。けれども問題だったのは、彼が食事の仕方を知らないということだった。ともすれば全部手掴みで食べ、また暴れた時のように料理を散らかしてしまいそうになる彼に、レオナは食器の使い方を教えてやった。

お肉はナイフとフォークで食べるんですの。木の実は、食べてから皮を吐き出すんじゃなくて、最初に皮を剥いてからですわ。そういった一つ一つのことを教えなければならないのは、まるで赤ん坊の相手をしているような気分だった。が、それは同時に、レダがもっと小さかった頃、彼の躾をしていた懐かしい記憶も蘇らされて、レオナには愉しい仕事であった。

それに、この無知な兵士は、意外に飲み込みが早いようだった。言葉を喋ることも知らずに、わたわたとやらされているようだったが、ほんの数分の間に、長い爪の生えた匙が持ちにくい手でも、ちゃんと上手にそれを使いこなすことができるようになった。

しかし、レオナ特性のスープに差し掛かったとき、それを口にした兵士は、熱さにびっくりして思わず匙を放り投げてしまった。レオナは慌てて、ごめんなさいっと謝りながら、兵士からスープの器を取る。そうだ、これも教えてあげなければなかった。

「スープはこうやって、息を吹きかけて冷ましながら飲むものなんですわ」

そう言いながら、レオナは兵士から取った器のスープに、ふーっ、ふーっと息を吹きかけ始めた。と、それを見ていた兵士、とつぜん、顔をレオナの前に近づけてきた。

またびっくりしたレオナ、思わずきゃあっと悲鳴を上げて、スープの器を手から離し、体のバランスを崩して後方に尻餅を付いた。

どっしーん!

が、自分ひとりが倒れたにしては、ちょっと大げさな音がした。振り向くと、部屋の入り口の扉が開き、外からキホーテやコガラシ、それにもうひとり、ドーブルが転がり込んできたのであった。

「・・・な、何!?何なんですの!?」

再び驚きの声を上げるレオナ。

「イテテ・・・・・・いや、アハハ!これはそのぅ、つまりやな・・・」

何だか誤魔化し笑いをしながら、しどろもどろ、キホーテが答える。が、今まで外から覗き見していたなんてことを堂々と説明できる筈が無い。

「だ、大丈夫でござんすか!?シャラクさん!!しっかり!!」

それより大変なのは、一番前にいて、コガラシとキホーテの下敷きにされたドーブル、シャラクである。彼は泡を吹きながら、それでも何事かウンウン唸っている。

「い、愛しのレオナさんが・・・サンドパンさんとキスを・・・」

どうやら彼には、さっきの光景がそう目に映ったようだった。

さて、この騒ぎの張本人のサンドパンはというと・・・。

レオナが放ったスープの器を器用にも受け取り、ふうふうと冷ましている最中である。彼がレオナに顔を近づけたのは、単にレオナの真似をしようとしてのことであったとさ・・・。


「お仕事ご苦労様!何だか、すっごく疲れてるみたいだけど・・・大丈夫?」

「あ、ハイ・・・大丈夫です、この通り、ゲンキ、ゲンキ・・・」

心配して声をかけるプクリンに、シャラクはそう言って腕に力こぶをつくってみせるような仕草をした。全く筋肉の無い腕であったが。

「ほんとう?きつかったら今日、代休取ってもいいよ?」

再びそう言われたが、シャラクはやはり、いえ、いえ、今日は重要な仕事の日ですんで、と答えた。レオナの診療所での仕事を終えて真っ直ぐ職場に赴いたこのドーブルは、本当は、酒の飲みすぎとその後の騒動のせいでマトモと呼べるような体の具合ではなかったが、今日の仕事はどうしても休めなかった。

それと言うのも、明日この国で、三日月祭が行なわれるからだ。近隣の諸国では戦争が起こっている現在、観光でやってくる者の数は月ごとにだんだんと減ってきてはいたが、それでも、今月も沢山のポケモンたちが祭りのための入国の申請していた。

勿論、申請した全てのポケモンが祭りの観光目的というわけではないだろう。物騒な世の中だけあって、中には強奪の目的で入ってこようとする輩もいるに違いないが、それでもよっぽど怪しかったり、すぐに前科者であるとわかったりするような場合を除いては、入国を規制されることはなかった。

あの陰険そうな顔つきの役人グレッグルが、入国者を規制する法案を制定すべきだと声高に叫ぶのはそのためであるが、その法案がまだ制定されぬ今は、入国管理官のシャラクやプクリンたちが、危険ポケモンの判断を行なっていかねばならなかったのだ。

シャラクは、そうしたポケモンたちの目利きにも優れていた。何か悪いことを企んでいそうなポケモンは、顔を描こうとするときにすぐわかるのだ。邪な心は、顔にすぐ表れる・・・顔一つ一つも、その者の内面を浮き出す立派な鏡である。だから、今日のその重要な仕事を、シャラクは休むことはできなかったのである。

勿論、こんな仕事でない限りは休みたかったと思う・・・いや、体調不良のためだけでは無い。問題は、診療所でのあの騒動にある・・・レオナが、サンドパンとキスするなんて!そりゃあ、必死で看病した間柄だ。愛情ぐらい、芽生えてもおかしくないだろう・・・けれど、自分が憧れる女性が、他の男性と接吻しているのを見てしまったのは、耐え難い衝撃であったのだ。

・・・これはさっきも説明したように、勿論全部シャラクの勝手な誤解であったが、結局彼は、それを誤解と知ることが無いまま、診療所を飛び出してきたのだった。そのとき折角、レオナが彼の仕事への感謝の辞を述べようとしていたのに、それも殆ど聞かぬままであった。大分失礼な態度を取ってしまったようにも思う・・・それでも、恋敵となるあのサンドパンのパスポートを作ってやるのに、何の不備も犯さなかったのは、称賛に値するだろう。いや、サンドパンを恨んでも仕方がないのだ。恨むべきは、あんな現場を覗き見してしまった自分自身なのだから・・・。

はぁ、それにしても溜息が止まらないのはなぜだろう・・・それほどまでに、自分はレオナのことを恋焦がれていたということか。こうなってしまってから、初めて気が付くとは。あぁ、恋心の何たる皮肉なものよ。

と、そんなこんなで呆けたような顔で仕事を続けるシャラクの背中を、ポンポンと叩く手があった。否、正確には前足ということになろうか、それは同僚のハヤシガメ、ナツキのものである。

「なぁ、シャラク。ちょっとあのポケモン、見てもらいたいんだけど・・・」

そう言って、ナツキの指し示す方向、国の玄関たる入国申請者の窓口があるところに立っているポケモンを見て、シャラクはさっきの悩みも一気に吹き飛んでしまうほど、ぎょっとしてしまったのであった。

そこに立っていたのは、体長40センチばかりで、体の黄色いポケモンであった。頭の上でピンと伸びた双方の耳は先が黒く、後ろに生えた尻尾はぎざぎざ。そして、両頬にピンク色の丸いのが付いていると言えば・・・誰でも、それがピカチュウであることはわかるだろう。

しかしそのポケモンは、ピカチュウと呼ぶにはどうも納得いかないような顔立ちをしていた。細長く、刃物のように尖った鋭い目。その目の上にあるのは「これでもかっ!」と唸るように太い眉毛で、下の方には、深い深い谷のように険しいクマが出来ていた。

・・・このようなピカチュウがいるのだろうか、いや、寧ろそうした顔のポケモン自体、存在するのか謎だと思える。それは正しく、絵に描いたような悪人面のポケモンであった。

「い、一体どちらさまで・・・?」

「入国申請者だよ」

いや、そんなことは、そこの窓口に立っているのだから大体予想は付くだろう。

「兎に角、シャラク、相手してやってよ・・・不審な部分あったら、即追い返しちゃっていいから」

そりゃあ、見るからに不審極まりない気もするのだが・・・。

多少へっぴり腰になりながらも、シャラクは窓口に出向いた。

「はい、お名前とご身分、それから年齢をどうぞ・・・」

一応、決まりきったことは聞いておく。目の前に立つと、相手はかなりの威圧感を持っていた。何だか、背筋に悪寒が走る。そんな恐ろしい目でシャラクを数秒睨み付けた後、相手は、顔に似合った野太い声で、こう答えた。

「ピカチュウの威音(いおん)という者だ。職業は警察。祭りの警備強化のために派遣された。年齢は、まだハタチになったばかりだ」

突っ込みドコロが多すぎて、どう返答していいやら困る回答であった。

「あのう、警察の方でしたら、警察証をお持ちで・・・?」

「ネロ署長はいないか!?もう先にこの国に着いている筈だ!!さっさと署長を呼べ!!」

もはや、シャラクの台詞を聞いてすらいない。一体、どうしよう?思わず振り返って、同僚のナツキに助けを求めようとするも、彼はわざとシャラクに目をあわそうとせず、別の仕事に打ち込むフリをしている。

・・・くそう、ナツキめ。こんな厄介な相手ばかり私に押し付けやがって。そう思って恨めしい表情をしてしまうシャラクだったが、兎も角、こんな客はとっとと追っ払うに限る。

「あのう、いくら警察の方でも、警察証がご提示いただけない場合は、入国許可を出すことが致しかねますので、一時お引取り願うという形を取らせていただきたいのですけれども・・・」

「・・・たぁっ、もう、やかましいやつだな!細々した敬語ばかり並べおってからに!私は警察だと言っておろうが!」

いやいや、やかましいのはそっちの方だろう。頼むから早く帰ってくれ・・・。

と、そのときシャラクの背後から声がした。

「やぁやぁ、威音君!遅かったじゃないか!」

「しゃーらーっくクーン!そのポケモン、警察の方だって!入国許可出してあげて!」

プクリンと、そして警察の格好をしたヌオーだった。

「あぁっ、ネロ署長!やっぱり来てたんじゃないですか!もっと早く来てくださいよ、このドーブル、さっきからうるさくって・・・」

同時に声を上げる目の前のピカチュウ。びっくり仰天とは、正にこのことである。

「わはは、威音、お前が警察証を忘れるからいけないんだろうが」

「いやいや、署長が持ってってくれるって信じていたもので・・・」

「このっ、調子イイこと言いおって!若造めが!」

何とも違和感のある内容の会話であったが、少なくともそれは、確かに身内同士のやりとりであることが感じられた。

そしてこの後、シャラクはこの恐ろしい顔のピカチュウのパスポート絵を描くことになる。邪な心は、顔にすぐ表れる・・・顔一つ一つも、その者の内面を浮き出す立派な鏡である。そしてこの顔は、明らかに邪悪な心を表しているように思えるというのに。

・・・少し、疲れているのだろうか。やはり今日、仕事休むべきだったのかと疑問に思うシャラクであった。


「今日の積荷は、たったこれだけなんでござんすか?」

レオナの診療所の前で。ロシナンテの背中に積まれた、昨日よりは明らかに少ない荷物の量に疑問を感じて、コガラシは訊ねた。

「おお、その通りや。今日回るのは、ほんの三件だけやからな」

「さ、三件!?それじゃあ、明らかに午前中で仕事終わっちゃうじゃないでござんすか!!」

驚くコガラシに、キホーテはギラリと怪しく目を光らせ、こう言った。

「へっへ~ん!昼からはまた別件や。明日の三日月祭に出す、出店のための仕入れや」

「出店!?・・・あぁ、そうか。昨日言ってた事、やっぱりやるんでござんすね・・・」

有言実行とは、まさにこのことである。

「さ~あ、稼ぐで♪コガラシ!ってなわけで、レオナ、余った荷物は、スマンけど今日の夕方まで、ここで預かっといてくれな。夜、ちゃんと取りに戻るさかい」

そう言われたレオナ、急に怪訝な表情を浮かべてしまう。

「そ、それは一向に構いませんですけれど・・・キホーテさん、今晩、診療所には帰ってこられないんですの?」

「あははっ、何言うてんねん!今晩まで世話になるわけにはいかへんがな。ワイら、もうパスポート作ってもらったんやからな」

そう言われて、レオナはハッとした。確かにその通りであったが・・・いつの間にか、キホーテたちがこの診療所に帰ってくることを、当たり前のように感じていた自分に驚いた。

「あ・・・いえ、でもサンドパンさんの完治もまだですし、キホーテさんたちも、そんなに直ぐには出て行かなくても・・・」

そして、気付いたらそう言って、彼らが出て行くことを拒むような台詞を吐いていた自分にも。

「あぁ・・・まぁ、あいつはまだ暫く面倒看てもらわなアカンかもしれん。それはほんとに、スマン。感謝するわ。せやけど、元気なワイらまでこれ以上世話かけること無い。ほんとに、今までありがとうな」

しかしそう返されると、レオナも、そうですか・・・、と言うことしかできなかった。しかしまさか、ついこの間まで彼女たちのことを不審に思っていた自分が、別れることを寂しいと感じるようになるなんて。

「・・・そんな!キホーテお姉ちゃん!また泊まってってよ!一緒に夕食食べようよぉ!」

と、今度はレダがそう言って、彼女らを止めにかかる。子どもは、正直なものである。

「レダ・・・」

「ねぇっ、レオナお姉ちゃん!キホーテお姉ちゃんったら、今朝レオナお姉ちゃんの特性スープ、寝ぼけて零しちゃったんだよぉ!」

・・・と、言わなくていいようなことまで言っている。思わずズッコケそうになるキホーテであった。

レオナは、それにうふふっと笑って、こう言った。

「大丈夫ですわ。スープは零したら、また煮込めばいいだけのことですから・・・」

そのときふと、ある記憶が蘇った。レオナが、まだ夫と暮らしていたときのことだ。食卓にて、夫が一度、レオナの特性スープを零したときがあった。そのとき、彼は酷く申し訳無さそうにしていたのだが・・・。

「うふふっ、大丈夫ですわ。スープ、まだ沢山ありますから。零れるくらい、沢山作ってるんですの」

レオナはそんな冗談を返したのだ。それに、夫は苦笑しながら、こう応えた。

「ははっ、ウチには、零れるくらいの優しさがあるってことかい?」

零れるくらいの優しさ・・・そう、確かにそうだった。優しさに溢れた、幸せな家庭だった。けれどもその優しさは、もう零れるくらいにいっぱいありすぎたのだ。

どうして自分は、彼が家庭から離れていくことを止めなかったのだろうか。もし彼が戦場に行きさえしなければ、彼は今も生きていられたのに・・・。あのとき彼を止めなかったのも、つまりは自分にあった優しさ所以のことではなかったのか。

優しさなんて、必要以上ありすぎてもいけないのかもしれない。彼のことを愛すのなら、もっと彼を縛り付けておくような気持ちも必要だったのかもしれないのだ。もし、自分にあるのがただくだらない優しさであるばかりに、彼を失ってしまったのだとしたら・・・。

「・・・どうしたの、レオナお姉ちゃん?」

ふと気が付くと、レダが心配そうな目で、こちらを見ていた。レオナは慌てて、いえ、何でもありませんわ、と言って笑ってみせた。

「そうやな・・・レオナのスープ、結構美味しかったしなぁ・・・」

と、キホーテが言った。その台詞に、レダはキラリ目を輝かせる。

「でしょ!だったら、また一緒に食べようよぉ、皆で食べる方が美味しいもん!ね、いいでしょう?」

「うーん、まぁそう言われるんやったら、言葉に甘えさせてもらうことにしようかいな?」

そんな台詞が彼女の口から出てきて、自分も思わず笑顔になってしまうレオナだった。

「すまん、レオナ。またご馳走してもらってもええか?」

レオナはまた、うふふっと笑って、こう応えた。

「勿論ですわ!その代わり、またお夕飯の材料、買ってきてくださいね」

「・・・あははっ、わかっとる、わかっとる」

そうして、キホーテらは、また昨日のように、仕事へ出かけていった。また、作ってあげなくちゃ、とレオナは思った。彼女たちのために、美味しい夕飯を。

そうだ、零れたスープは、再び器に戻すことはできない。けれど、また作り直せばいいじゃないか。壊れてしまった、あの幸せな家庭も、きっとまた作り直せるのだと思う。材料は、少し違うかもしれない。けれど、零れるくらいの優しさがあれば、また同じ味を作り出せるのだと思う。

優しさが多すぎていけないなんてことはない。零れるくらい、いっぱいあったっていい。だからこそあたしは、あたしたちは、あのとき幸せを感じることができたのだ。そしてこれからも幸せも、きっとその優しさで築いていこう。夫が最も好きだった、あたしのその優しさで、築き上げていこう。

レオナは心の中でそう呟いて、空を仰いだ。変ってしまったもの、失われてしまったものがある。その一方で、相変わらずの自分がいる。けれども、それで何も間違ったことはないのだと、空にいる彼も、言ってくれているような気がした。

また、晴れ渡った清々しい一日が、始まろうとしていた。

>>第十二話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑩ 【2008/01/10 00:00】
第十話:食卓(前編)
>>はじめから >>前回の話

台所の窓から差し込んだ光がガラスによって拡散され、七色の虹ができていた。今日も、ぽかぽか陽気の朝である。

ナースは水槽のテッポウオにエサを与えようと、手に一握りのポロックと呼ばれる飼料を持って進んだが、彼女が近付いた瞬間、テッポウオは水槽からぴょーんと飛び上がり、自ら飼料を奪うと、再び水の中にドボンと落ちた。水飛沫が、きらきらと輝きながら宙に飛び散った。

「きゃあっ!・・・もうっ、相変わらずわんぱくなコね!」

ナースは怒ったような声を出してみせる。しかし、流石はレオナ護身用の武器代わりなだけのことはある。元気があって、なによりだ。

そのほぼ直後、食堂からも、あぁーっ!という子どもの大きな声が上がる。こっちはわんぱくというよりも、大分むじゃきな様子である。

「わぁーっ、キホーテお姉ちゃんったら、スープ零して!行儀悪いんだぁーっ!!」

「うぅ・・・朝っぱらからうるさいな、レダ。・・・こちとら寝不足なんやから、もっと小さい声で喋れや・・・ふぁああぁ・・・」

「寝ながら食べてる方が悪いでしょ!全く、夜更かしするからいけないんだよ、夜更かしはドロボウの始まりだぞっ!」

「それを言うなら、“ウソツキはどろぼうの始まり、ウソッキーはウソハチに始まり”やろ・・・なぁ、頼むから静かにしてぇな・・・」

その様子に、食卓に戻ってきたナースがクスクスと笑って言う。

「レダ様、あんまりキホーテさんを怒らないであげてください。それに、お喋りはちゃんとお食事がお済になってから、ですよ」

「へっへーん!もう食べ終わったよ!」

そう返すレダだったが、皿の上にはまだ、手付かずで残っている青い木の実があった。

「あら、レダ様・・・カゴの実はお召しにならないのですか?」

「うぅっ・・・ボク、渋い味はキライ!コガラシお兄ちゃん、あげるよ!」

しかし、隣に座っていたコガラシも、うっつらうっつら、船を漕いでいる。こちらも、大分お疲れの様子だ・・・。

昨晩彼らは、随分長いこと、暴れるサンドパンと格闘していた。払いのけられそうになったり、蹴り飛ばされそうになったりしながら。再び薬を投与することは、副作用などのことも考えて、なるべく避けなければならなかった。兵士は、彼ら自身の力で鎮める必要があった。

それに兵士の体は、そのとき物凄い熱を帯びていた。レオナはそれに、弱めの“こごえるかぜ”を送りながら、冷ますよう努めた。そんな末、ようやく兵士が大人しくなったのは、夜中の三時を過ぎた頃である。

それからのことは、彼らにはあまり記憶に残っていない。自分たちにも疲れが滝のようにどっと被さってきて、その場に沈み込むように、眠りに落ちてしまったのである。目を覚ましたとき、レオナが兵士の胸に顔を埋めて泣いていたのには驚いた。やはり、助けられなかったのかと思った。しかし兵士の目にはちゃんと物が映っており、優しげな笑みを浮かべながら、彼らのことを眺めていたのだった。喜びよりも、正直、安堵の方が先にきたように思う。キホーテもコガラシも、それを見ると再び床に転がってしまったのである。

レダは、一緒に寝ていたはずのキホーテが、目を覚ましたらいなくなっていたことにびっくりして、朝から大声で泣き出してしまった。ナースはそんな彼を慰めるために、直ぐに起き出して、おいしい朝食作りに取り掛からねばならなかった。転がったままのキホーテとコガラシも、両脇に抱えて食堂に運んでやりながら・・・やれやれ、久し振りの泊り込みの仕事は、苦労ばかりである。

けれど・・・今とても心が安らかで、嬉しいのはどうしてだろうか。レオナが、先生があんなに顔をくしゃくしゃにしながら兵士の回復を喜んでいたことが、ナースにとっては何よりだった。

あの方が亡くなったとき、先生はどれほど哀しまれたか・・・。彼女は今でも、心に痛い思い出として残していた。

10年前の戦争のとき、戦地から当時のレオナの夫が見るも無残な姿になって帰ってきたときには、レオナもナースも、恐怖や哀しみで崩れそうになった。

その当時も、レオナたちの国は、戦争には加担してはいなかった。けれど、レオナ共々国の議員の地位にあった彼女の夫は、同じ砂漠の地に住んでいながら、ボクらだけ平和を貪っていてはいけないよ、と、視察隊として戦場に赴くことを希望したのだった。戦争のありのままの姿を、この目に焼き付けてきたいと言って。

何と愚かな考えだろうかと、誰もが彼を止めようとした。しかし彼の意思は、樹齢100年の大樹のように太く、固かった。彼は、正義感の強いポケモンだった。彼は言ったのだ。この国のポケモンたちにも、戦争がいったいどういうものか教えてあげなくちゃならないんだ。これから先も、この国が戦争に加わったりしないように、と。そんな彼を、レオナは愛していながら、自分の元へ繋ぎ止めておくことはできなかった。いや、寧ろ愛していたからこそ、彼を、彼の意思のままに任せたのであった。

別れ際、彼はレオナに言った。どうしたんだい、まるで世界が今にでも滅んじゃうような絶望的な顔してさ、と。

「ボクは世界を守るために、今から旅立つんだ。キミが、レオナが、これからも笑って暮らせるような、そんな世界を・・・。だからお願い、そんな顔はしないで。きっと、きっと守ってみせるから。ボクらのこの国を、レオナの幸せな世界を」

しかし結局、彼女の夫は生きて帰ってきたものの、そのとき受けていた大きな怪我から回復し、助かることはなかった。本当に、それで生きているのが不思議なくらい傷だらけで・・・それを塞ごうとすると、もはや体を包帯でぐるぐる巻きにする他なかった。まるでゴーストポケモン、サマヨールを連想させるような姿にされた患者は、戦地から帰ってきたその晩、急に狂ったように暴れ、そのまま残り少ない体力をすり減らし、死んでいったのだった。

レオナがあれほど慕っていた、彼女の夫は、永遠に消えてしまった。嘗てあった大木は、もうそこにはなかった。医者でありながら、どうして守ってやれなかったのだろうか。彼女がどれ程悔やんだことか。いいえ、違います。先生は何も悪くはありません・・・悪いのは全て、戦争です。ナースはそう言って慰めようとしたが、レオナは、それから暫くの間、心を閉ざしてしまった。彼女も、夫が守ろうとした彼女の世界も、そのとき枯れた花のように萎れ、散っていってしまったかのようであった。

しかし、そのときの夫の死は、決して無駄にはならなかった。国民の多くが彼の死を悼み、それから国は、戦争に加担しないという意思を最後まで貫き通したのだ。少なくとも国の平和は、夫の夢の半分だけは、彼の死をもって叶えられたのであった。

そしてもう半分、永遠に失われてしまったかと思われていたレオナの世界にも、また新しい芽が芽吹くのは、その当時、国王の元に新しく生まれた第二王子の乳母役に、彼女が任命されてからのことのである。

レオナには夫との間に子どもがいなかったが、レダがその代わりを果たしてくれたようであった。初めての子育てが始まり、忙しい中にも、レオナは少しずつ心を取り戻していった。レダは、決してレオナのことをお母さんと呼びはしなかったし、レオナも“レダちゃん”ではなく、他の下々の者が呼ぶような“レダ様”という呼称を改めはしなかったので、一見とても不思議な親子であった。だが、よく見れば確かに、ふたりの間には母と子のようなしっかりした強い絆が形作られていた。そしてそこに、レオナの新しい世界が芽吹いたのだった。

けれども、今でも彼女が嘗ての夫のことを忘れられないのは、昨晩の彼女の涙を見ても明らかであった。忘れられるわけがない、忘れられるわけがないのだ。本当に愛した記憶は、決して消えるものではないのだ。戦士が遠く昔に受けた古傷が冷たい雨を受けて痛み出すように、それは心の染みとなって、寒い夜の風に当たって疼いたりするものなのだ。

だから、今回あのサンドパンが助からなかったときには・・・きっとそのときこそ、レオナの世界は根こそぎ、完全に奪い去られていたのではないかと思う。まだ彼女の心は若く、痛み易いのであった。そんな心を、今は、何とか守り抜くことができた。きっと、そのことが、ちゃんと役割を果たしきったことが、ナースにも、安らぎと喜びを与えてくれているのに違いないのだ。

そしてまた、キホーテやコガラシが寝ぼけまなこでいられるのも、全てが平穏無事に終わったことの証拠であった。

「・・・ところで、さっきからひとつ、気になることがあんのやけど・・・」

と、零したスープを布巾で拭きつつ、キホーテが口を開いた。片方の手で、コガラシの隣の席、レダとは反対側になる方を指差しながら・・・。

「一体、ダレや、そいつ?」

言われて、コガラシも隣に首を動かしたが、そのとき初めて驚きの表情を示す。そこには、見たことのないポケモンが、ぐったりとした姿勢で座っていた・・・体は白く、手に筆を持ち、頭にベレー帽のようなものを被っている。いや、よく見ると、手に持った筆に見えるものは、そのポケモンのお尻から生えた尻尾であり、頭のベレー帽も、もともと頭の形がそうなっているのだということに気付く。とても珍しいポケモンだが・・・隣に座っていながら、なぜコガラシは今まで、その存在に気付かなかったのか。

「・・・きゃあっ、役所のドーブルさんじゃありませんか!?一体、どうしてこんなところに・・・」

と、声を上げたのはナースだった。彼女も気付いていなかったとは・・・。

「み、みず・・・みずを・・・」

ようやく皆の視線が集まると、ドーブルと呼ばれたポケモンは苦しげに呻いた。否、実のところ、彼はさっきからずっと苦しげな声をあげていたのだが、哀しいことにそれは誰の耳にも届いていなかったのである。

「・・・いや、ワイは気付いとったんやけど・・・」

おぉ、キホーテ。それならそうと早く言っておくれよ。

「えっ、ミミズですか!?困りましたね・・・ウチではミミズなんて扱っておりませんのに・・・」

・・・そこっ、そこっ!使い古されたギャグ飛ばしている場合ではないぞ!

「水でござんすか!?はいっ、それなら、あっしのを飲んでおくんなせぇ!」

代わりにコガラシが、彼の持っていたコップをドーブルに差し出した。ドーブルは感謝の辞を述べる余裕も無く、すぐにコップの中身を口の中に注ぎ込むが・・・。

「からーーーーーーーーーーいっ!」

ブホッと、赤い液体を口から吐き出した。

「キャーッ!!吐血!?キャーッ、キャーッ!!」

「・・・って、ナース落ち着け!マトマジュースや!コガラシも、そんなもん飲ませんなや!!」

「・・・も、申し訳ないでござんす・・・あっしも、まだ寝ぼけてて・・・つい」

しかしお蔭で、ドーブルはぐったりしていた状況から立ち直り、タンっと椅子から降りた。

そして、皆の前で姿勢正しく起立しようとしつつも・・・まだ調子が悪いのか、頭をフラフラさせている。

「・・・ご、ご迷惑をかけてしまって申し訳ありません・・・お蔭で、目が覚めまし・・・ヒック!わ、私は、役所に勤めます、シャラクという者・・・ヒック!あ、あの・・・パスポートの件で、昨晩よりお伺い・・・ヒック!」

どうもしゃっくりが止まらない様子ではあるが、伝えたいことは辛うじて伝わった。

「む、役所のポケモン?・・・って、そうかぁ、思い出したぁ!昨晩、レオナが言うとったなぁ・・・完全に忘れとったけど」

「それにしても・・・うぅっ、大分酒臭いでござんすね・・・」

「くさい、くさ~いっ!」

コガラシも、レダも、思わず鼻をつまむ。

「す、すいませ・・・ヒック。あの、表の方にいらっしゃった、ロシナンテさんに飲まされたもので・・・うひひひひひ」

これも酔いのためか、随分気持ち悪い笑い方をするものである。

「・・・おぉ、そりゃまぁ気の毒に・・・アイツ、加減いうもんを知らんからな。しかし、どないすんねん。そんなへべれけ状態で、絵なんて描けるんかいな?」

「も、勿論ですとも!さぁさ、早く皆さんのパスポートを、私の前にお出しくださ・・・ヒック」

どうも信用ならないが、ともかく、キホーテとコガラシは昨晩レオナから受け取っていたパスポートを、彼の前に差し出した。

すると、急にシャラクの目つきは鋭くなり・・・

「でやっ、とうっ!」

突然、そんな掛け声とともに舞うような動きをとったかと思うと、不思議なことに、次の瞬間にはキホーテらのパスポートに、彼女らの似顔絵が入っていたのである。それも、まるで写真に撮ったように美しく・・・。

「・・・おぉっ!お前・・・スゴイやんか!」

「わぁっ!あっしの顔でござんす!やった、やったぁ~!!」

キホーテは素直な感嘆を示し、コガラシも子どものように喜ぶ。その反応に、シャラクは照れくさそうに、ベレー帽のカタチの頭を片手で押さえる。

「・・・そ、そんなに褒めることじゃないですよ・・・普段の職務ですので・・・うひひひひ」

しかしその仕草は、未だ酔いのために、可愛いどころか若干気味悪く見えてしまったのは、些か残念なことである。

「・・・あぁ、そうそう。ロシナンテさんのパスポートにも、昨晩既に顔入れさせていただきましたので・・・これで、以上三名、間違いなくパスポートが完成いたしました。ではでは、私はこれにて・・・」

と、そそくさと退散しようとしたシャラクの腕を、キホーテはガシっと掴んだ。

「おい、待てっ。ひとり忘れとるやろ」

「えっ・・・もう一方、ですか・・・」

と、シャラクは何だか、やけに落ち着かないような顔をしながら言う。なんや?この反応は・・・。

「む、サンドパンのことやけど・・・あれ、ちゃんと、聞いとる筈やろ?ワイらさんにんと、あとひとり、サンドパン・・・」

「サンドパンさん・・・あわ、あわわわわわ・・・」

段々と、恐怖に怯えるような顔に変わっていく。そしてとうとう、その目からブワッと涙を溢れさせたかと思うと、突然、キホーテに向かって土下座を始めた。

「・・・って、えぇえぇぇええ!?お、おまっ・・・何してんねん!?」

「も、申し訳ございません・・・キホーテさんとやら。先に申し上げるべきでございました・・・そ、その、この度は本当に残念なことで・・・」

「・・・え、えーっと・・・あの・・・残念とか言われても、ワイには何のことかさっぱり・・・」

と、急にコガラシがはっとして、慌てるような声でこう言った。

「・・・ま、まさか・・・急に、サンドパンさんにはパスポートが発行できなくなったんじゃあ・・・」

「・・・は!?おまっ・・・何言って・・・!?だ、だってカードは既に昨日、作って貰った筈やろ!?」

そう反論するキホーテに、コガラシは耳打ちした。

「ひょっとして、昨晩のうちに、サンドパンさんが他国の兵士だってことがバレるようなことがあったんじゃあ・・・」

「な、なんやて!?そんな・・・この国の誰にも、顔出しすらしてへんうちから、そんなんバレるわけ・・・」

しかし、キホーテの鼓動は高鳴っていた。折角今朝息を吹き返したばかりなのに、それがいきなりひとりだけ、あの砂漠の中に追放となると・・・レオナの、そしてワイらの今までの苦労は何やったんや!?

「・・・な、なぁ、シャラク・・・まさか、サンドパンにはパスポート発行できへんとか、そんなこと言うんやないやろうなぁ・・・」

恐る恐る、彼女は真相を確かめるために、そう言ったのだが・・・

「・・・は、はい・・・正しくその通りで・・・」

シャラクの回答に、目の前が真っ暗になったような気がした。予感的中。まさか、こんなことがあっていいのだろうか・・・。

が、シャラクの台詞はまだ続きがあった。

「その・・・死んだ方には、パスポートの発行はできません・・・申し訳ございませんというか、その・・・ご愁傷様でございましたっ!!」

「・・・は?」

一同、ぽかーんとした表情になる。意外な反応に、今度はシャラクの方が慌て始めた。

「・・・えっ・・・あの・・・私、何か間違ったこと言いました?サンドパンさん、今朝亡くなられたんじゃあ・・・」

「・・・だ、誰やねん・・・そんなデタラメなことお前に教えたやつは・・・」

キホーテの顔が、みるみる怒りに染まってゆく。

「えっ・・・あの・・・ロシナンテさんが・・・!そのっ、昨晩、診療所の様子が騒がしかったようですから・・・これは、サンドパンさんが危篤状態であるとのことを言われまして・・・」

「あぁ・・・それは間違いあらへん・・・あいつが昨晩死に掛けとったんは事実や。けどなぁ、ちゃんと息吹き返したんや!今はもう、目も覚めて、寝室でレオナが朝飯食わせとる!勝手に殺すな!!」

「えぇ~っ!!・・・で、でもっ・・・ロシナンテさんが・・・」

どうやら、まだ弁解を続けるようである。それを、キホーテは今回、許した。そして、彼の口からこんな話を聴いたのであった。

「『どうせ、あいつが死ぬのは免れなかったんだ。だから、私らは酒でも飲んでればいいんだ』って、確かにそうおっしゃったんですよ!!」

「な、なんやてぇ~~~~~!!!???」

一方その頃。

問題の張本人、ロシナンテは、今頃になってようやく、馬車小屋にて目を覚ましていた。目の前には既に、ナースによって朝食が用意されていたが、完全に酔いつぶれていたので、今の今まで気付くことなく、爆睡していたのだった。

「おぉ・・・しまった。ヤケ酒がすぎたか・・・むぅ、しかし今日もまた、やけに晴れ渡った朝だな・・・」

そして溜息を吐くと、憂いを帯びた表情でこう言う。

「全く、ポケモンの死んだ朝だというのに、似つかわしくないものよ・・・雨でも降ってくれれば、もっと雰囲気が出るだろうに・・・尤も、砂漠の雨なんて局地的なものでしかないがな」

視点を下に戻すと、目の前の朝食もやけに美味そうだ。いや、こんな日だからこそ、ナースめ、腕によりをかけたに違いない。全く、あいつはイイヤツだ・・・そう思うと、また涙が出てきた。

ふと、また空を見上げて、心の中で呟く。サンドパン・・・ちゃんと成仏してくれよ。お前の勇姿は、決して忘れないぞ、と。

・・・はぁ、それにしても、主人たち、きっと哀しんでいるだろうなぁ。なんてったって、まだ若いから。ここはオトナの私が慰めてやらねばなるまい。うむ、どんな言葉をかけてやるのが一番だろうか・・・。

「・・・ロシナンテーッ!」

と、診療所の扉が開き、キホーテの声がした。むっ、もう慰めてもらいに来たのか!?

「・・・おぉ、主人!可愛そうな主人!さぁ、私の胸に飛び込んでおいで!」

咄嗟に、ロシナンテは思いついた台詞を口にする。が、よく見るとどうやら、キホーテの様子は彼女が予想していたものとは違うようであった。

怒りを顔全体に浮かび上がらせ、キホーテはロシナンテの元へ突進してくる・・・。

「・・・くおぅら!このどアホウがぁっ!!勝手に、大事な仲間を殺すなやぁあああぁああぁああっ!!!」

パッカーン、と、キホーテの拳による乾いた音が響き渡った。

それは、全くもってこの晴れ渡った空に似つかわしい、爽やかな音であった。

>>第十一話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑨ 【2008/01/09 00:00】
第九話:夜明け
>>はじめから >>前回の話

辺りは一切の闇で包まれていた。

微々たる光も差し込まぬ完全な闇、という表現がある。それと同じだと考えてもらえばよい。けれど、よくよく考えてもみれば、その表現には矛盾があることに気付くだろう。光というものが影によって際立つのと同じように、闇もまた、光の傍でしか現れないものなのだ。さもなければ、それはもう闇と呼ぶことすらもできない。何も無い場所、つまり虚無ということになってしまう。

しかし、その空間を表現するのに他の言い回しがあるものか。とにかく、一目で見てすぐそれとわかる、全き闇であった。全てを恐怖で埋め尽くした、そのような世界であった。

彼は、そこにひとり佇んでいた。一体いつからいるのか、また、どうしているのか、さっぱりわからない。ひょっとしたら彼は、元々ここで生まれ、育ってきたのかもしれない。そうだ、彼は知っていたのだ。この闇も、恐怖も、全て今までその身に馴染んできたものだ。教え込まされ、刻み込まれてきたものだ。

だが、その闇に今、新たな恐怖が加えられようとは。

それは、声だった。声は、聴こえる、というよりも、轟く、というよりも、放り投げられた、と表現するのが相応しかった。

それはまるで、先の尖った槍のように、彼の元へと飛んできた。それも、とてつもなく硬い。まるで地下深くで固められたルビーでできているかのような槍だ。彼はそれを避けることもできず、直撃を受けた。心臓が貫かれたような感覚であった。まるで体に力が入らない。その一撃が、彼の全ての体力を抉っていったかのようだった。彼の体はうつ伏せに、大きく倒れた。

しかし、声はまだ止まなかった。次から次に投げられては、彼の身に刺さってきた。

咄嗟に耳を塞ぐが、何の効果も得られなかった。声は、彼の耳からではなく、頭へと直接響いてくるようだった。恐ろしい、暴力的な声に、彼の精神は揉みくちゃにされた。その声に込められていたのは、憎しみだった。嘗て、これほどまでの憎しみを、自分は感じたことがあっただろうか?

もうやめてくれ、もうやめてくれ・・・!そう叫ぶように、彼は転げまわって、呻いた。アァァアァア・・・アアアァァアアァアアアッ!!言葉にならない悲鳴となって、それは彼の口から漏れた。しかしそうするほどに、恐怖の声は、彼の体を蝕んでいったのだった。

それは正に、地獄にいるのと等しかった。


「“SAD01”、“SAD02”、“SAD03”・・・」

番号が付けられた盾を、兵士たちは与えられた。番号は、兵士たちそのものに付けられた番号と同じであった。それが、彼らの名前であったのだ。

彼らは、生まれてから一切の愛情を受けることも無く、ただ画一的な方法で育てられてきた。朝起きてから夜眠りに付くまで、彼らに強いられてきたのはただ、戦うことだけ。それ以外のことは、一切教えられなかった。

言葉すらも、彼らには必要とされなかった。指揮官が「ギー!」と叫べば兵士たちは皆右を向き、「ガァー!」と叫べば前へと駆け出した。

食事は、敵と戦い、倒すことで初めて与えられた。彼らにとって、戦うことと食べることは等しかった。

それがその国の兵士。戦うために生きる者、また、それ以外では全く生きる意味を持たぬ者だった。

そのようにして生きてきた中で、彼ら兵士たちは、何を感じてきたのだろう。喜びや悲しみといった感情は、そこには芽生えなかった。あるのはただ、恐怖だけだ。倒さねば、生きられない。だから戦わねばならないという、重圧だけであった。

「実に頼もしい兵士たちだ」

その国の王は、そうやって兵士たちを育て上げてきた宰相に、そのような賛美の言葉を送った。

「けれど、その目を見るのは恐ろしい・・・そこに映っているものはまるで、地獄の風景のようだ」

同時に、そのような恐れの声も。

いつしか兵士たちは、皮肉を込めてこういう名前で呼ばれるようになった。“地獄の死者”、“殺戮兵器”・・・しかし最も彼らに似合うものとされる名は、これであった。

“哀しみの戦士”。

「・・・なるほど、よく言ってくれたものですな。しかし、そのような名で呼ばれることこそ、彼らには相応しいと思いまする。彼らは、“哀しみ”などという感情を持つことはありません。なぜなら、彼らの存在自体が“哀しみ”なのです。国を、王を、そして国民全てを守りぬくため、その憂いの一切を背に負って、彼らは戦います。だからこそ、彼らは讃えられるべき存在なのです」

彼らを作り上げた国の宰相は、皮肉をも味方につけ、彼らの存在をそうやって肯定した。

だが、最終的にその国は、滅びの道を辿ることとなった。敵国が雇った、たったひとりの魔道士の手によって。

兵士たちが敗れたあとは、殆ど無条件とも言っていいような状態で、国は降伏した。土地は占領され、王はその座から失脚し、宰相は国外へと追放された。

そして“哀しみの戦死”たる兵士たちは捕虜となり、今や戦勝国の牢の中で、暴れもせず、不満も言わず、寡黙に暮らしている。事情を知らない者たちには、やけに大人しい兵士たちだ、と気味悪がられたものだ。「ギー」だとか、「ガァー」だとか、擬音語のような命令を発せられない限りは動くことができないので、仕方あるまい。

彼らは今も、指揮官からの次の命令を、延々待ち続けているのだった。ただ、彼らの中の六番目の兵士、“SAD06”という名の付けられた兵士ひとりを除いては。

その兵士だけは、未だに遺体も、身につけていた武具も発見されていないのだった。


なぜ彼は逃げ出したのだろう。

仲間とは違う、このような苦しみを味わうために、一体なぜひとりだけ逃げ出す道を選んだのだろうか。

尚も地獄の声に痛めつけられながらも、彼は思い出そうとしていた。そう、思い出そうとしていたのだ。つい先程まで、自分はこの闇の中で生まれ、そこだけで育ってきたものだと思っていた筈だった。しかし、そうじゃないことに、彼は今気付こうとしていた。何かを忘れている。自分はまだ、これ以外にも何か世界を知っている。そこには、こことは違う何かが、ちゃんと存在していたのだ。恐怖だけじゃない。あれは・・・あのとき感じた、感情は・・・。

・・・感情?感情とは、何だろうか。わからない・・・けれど、確かに覚えのある、何かだ。一体それは、何だろう・・・。

「ようやく、君にもそれが芽生えてきたようだね」

ふと、彼は突き刺さる槍が途絶えたのを感じた。いや、正確には、彼の周りが何かで覆われ、守られていたのだった。それは、何かの植物の葉のようだった。しかし一枚一枚が、とてつもなく大きい。それが何枚も重なり合って、ドーム状に彼の周りを囲んでいたのだ。

「“リーフガード”・・・今、ボクの力を、君に分けているんだよ」

と、目の前に何かが現れた。体が、淡い色をしたとても柔らかそうな毛で覆われ、耳の先、尻尾の先が、葉のような形をしている。リーフィアだ。リーフィアが今、彼に語りかけているのだった。彼は、そのことに驚いて目を丸くした。

「フフッ・・・ボクが語りかけることが、キミにちゃんと理解できているのにびっくりしたのかい?」

それは、リーフィアの言う通り、とても不思議なことだった。なぜなら彼は、生まれてこの方、言葉を学んだことがなかったのだった。だから、例え何かを言われたとしても、意味がわかる筈などなかったのに。

「・・・それはね、キミに今、大切なものがちゃんと備わっているからだよ。心さ。ボクは今、直接キミの心に訴えかけている。言葉なんかじゃなくて、ありのままのキモチを、そのまま・・・」

リーフィアはそう言って、またフフッと笑った。心配していたことが無くなったときの笑みだった。

「もしキミに、心さえなければどうしようかと思ったよ・・・その時こそ、もう何も伝えられなくなっちゃうからね。よかった、本当に」

それでもまだあまりピンときていない彼に、リーフィアはこう続けた。

「それにしても、大分酷くやられちゃったようだね・・・今、治してあげるよ」

そして、小さな前足の先で、軽く彼の手に触れた。温もりが彼の体を包んだ。それでようやく、彼は気がついた。今感じているこの暖かさが、恐怖が払拭されていくようなこの感じこそが、感情というもののなせる業なのだと。

彼はリーフィアから、確かな優しさというものを、今感じ取ることができたのだった。

「さぁ、立ち上がって」

リーフィアが言うと、彼は体を起こし、何とか二本の足で立ち上がった。風前の灯、または風前のヒトカゲの尻尾ともいえるほど衰えていた彼の体力は、今元に戻ろうとしていた。

リーフィアはそんな彼を見て、優しく微笑み、再び口を開いた。

「ねぇ・・・聴こえるかい?キミを呼ぶ声が・・・あの、恐ろしい地獄の魔獣の雄叫びなんかじゃない、キミを助けようとしている、大切なポケモンたちの声が」

耳を澄ませば、確かにそれは聞こえた。今までの声とは完全に違う・・・一生懸命手を差し伸べ、彼を闇の中から助け出そうとするような声だった。

「あの声の主の元へ行ってくれないかな?ボクの代わりに、キミに支えてやって欲しいんだ」

そしてリーフィアは、そう言った。今初めて、少し寂しげな感じの表情を見せながら。

彼は、そんなリーフィアに手を差し出した。リーフィアは驚いたような顔をした。彼は、お前も一緒に来いと、そう言っているかのようであった。

「ありがとう、キミ、優しいんだね・・・。でも、ゴメン。ボクは、だめなんだ・・・ボクは、もう・・・」

次の瞬間、恐ろしいことが起こった。

地獄の槍が、彼らを守っていた葉の盾を突き破り、彼らの元へと飛んできた。しかしリーフィアが、咄嗟に彼を庇って、その身に槍を受けた。

優しい色をしたリーフィアの体が、真っ赤な血で染まった。

「・・・はっ・・・走って!」

リーフィアは、最後にそう言った。

周りの葉は、もはや盾の役割を放棄してしまったかのように、枯れ果て、茶色に変色し、溶けてなくなってしまった。彼は、急いでその場から駆け出した。

逃げねばならなかった。再び迫り来ようとしている恐怖から。いや、違う。逃げるのではない。生きるのだ。助からなくちゃならないんだ。自分を救ってくれた、あのリーフィアのためにも。

彼の目からは、涙が溢れていた。それが涙というものであると、彼は知らなかった。けれど、止め処無く次から次へと溢れてくるこれも、感情であるということを彼は知った。

哀しみを感じることのない筈だった戦士は、今や、ありとあらゆる感情を、その身に備えていた。ただ自分が気持ちいいとか、苦しいとか思うだけじゃなく、他者を想って感じる痛みも、また。

ふとそのとき、彼を助けようとする天からの声が、光に変わったのを、彼は感じた。眩いほどの光だった。それが、今まで辺りを包んでいた闇を、徐々に払いのけていった。そして光は、彼の体をふわっと包みこんだのであった。

ただがむしゃらに走っていた彼の目の前には今、道が照らし出されていた。この道を進めば、きっと助かる。さぁ、出口はもう目の前だ。

しかしそのとき、背中に鋭い何かが突き刺さった。声だった。光のほうの声ではない、闇の底から響いてくる魔獣の声が、まだ彼を動かすまいと襲い掛かってきたのである。

視界がぼやけた。すると光は、たちどころに弱まっていくようだった。目の前の道も閉ざされた。温もりも消え、足の方から凍りつくような寒さが広がっていった。感情は、憎しみに蝕まれていった。

もう、光は彼を照らしはしなかった。やはり、無理だったのだろうか。もう自分は、このまま地獄に落ちるだけなのか。完全なる袋小路に陥れられてしまったかのようだ。

けれど、彼はまだ諦めようとはしなかった。このままで、終わるわけにはいかないのだ。前へ進むその足を、決して止めることはできないのだ。

やがて、時間も動き出す。もうすぐ夜が明けようとしていた。この闇を、夜を溶かして、光が世界に溢れ出そうとしていた。朝が来るのだ。

決して世界は永遠の闇ではないことを、彼は知っていた。朝には、太陽が昇る。輝きが世界を照らすのだということを。いや、夜にだって、月というものが照らしてくれるじゃないか。

彼は、ズタボロの体のまま、足を一歩踏み出した。その一歩が、一体どれほど大切な一歩だったろう。踏み出すと同時に、世界は再び光で満ちた。もはや、どんな闇でも覆いつくすことのできない、強固な輝きである。

彼の命は、再び音を立てて燃え上がったのだ。


レオナは目を覚ました。

部屋は、蝋燭の明かりが消え、少し薄暗かった。しかし直に夜明けを向かえ、朝日がカーテンの無い窓に眩しく差し込んできた。

そこでハッとした。患者は・・・サンドパンは、一体どうなったのか。確か、薬が切れて、再び暴れ出して・・・それを皆で必死に鎮めようとしていたところまでは覚えている。それから、ちゃんと鎮められたのだろうか?それとも、無理だったのか・・・。

ふと、自分の手が、患者の手を強く握っていたことに気付いた。そこからは、死後の冷たさではない、確かな温もりが感じられた。

そしてもう一つ、驚くべきことが起きていた。

患者の目が、今にも開きそうになっている。ウゥンと、少し苦しげな声を上げながらも、彼は意識を取り戻そうとしていたのだった。

「・・・お願い、起きて」

レオナはそんな彼を包み込むような優しい声で、そう言った。その言葉が通じたのかはわからない。しかし患者は、その直後、確かに目を開いた。

そして、優しさを湛えるような、そんな瞳で、レオナを見つめたのだった。

レオナの目から、涙が溢れ出した。そのまま彼女は、小さな女の子のように、ワッと声を上げ、兵士の胸にその顔を埋めた。

兵士は、まだ傷む体を何とか動かし、彼女の頭に、そっと手を置いた。そして彼は、今自分の周りを、沢山の優しさが包んでくれているということを感じることができた。

朝日は、今その部屋全体に満ち満ちていたのだった。

>>第十話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑧ 【2008/01/08 00:00】
第八話:ぬくもり
>>はじめから >>前回の話

砂漠の夜は寒い。日中ならば50度以上に跳ね上がる気温も、夜になれば一気に零下まで冷えこむ。砂漠には熱を遮る機能が無いが、同時に、熱を保つ機能もそこには無いのである。ただ不毛な土地が広がるだけ、さらさらとした砂地が広がるのみだ。勿論、生き物が全くいないというわけではないが、彼らは生きていくために、少ない水をお互い必死で奪い合うという過酷な試練が与えられている。とても殺伐とした環境である。

しかしオアシス地帯となると、それは違う。そこには豊富な地下資源があって、木々が林立すれば、そこに行きかうポケモンたちの数も多く、皆共存している。昼間の日を遮るものもあれば、夜に熱を逃がさない機能もちゃんと備わっている。そこで生きる植物やポケモンたちが、それを果たしているのだ。

そこには、命が溢れていた。お互い競い合うのではなく、支えあうことによって保たれる命というものが。まさに、生そのものが作り出す恵みだ。

けれど、そのようなオアシスの国であっても、そこに住むポケモンたちは、皆が皆のほほんと暮らしているわけではない。ここ、キノガッサ王の治める王国は、元から暮らしていたくさタイプのポケモンの他に、豊かな資源を求めて異国からやってきた様々な種類のポケモンたちによって形作られていた。元からある財力を増やそうとやってきたブルジョワもいるにはいるが、多くは、田舎に残してきた貧しい家族のために出稼ぎで入ってきた者たちだったのである。彼らはそれぞれ異なった事情を胸に抱えながら、彼らなりの必死の生活を送っていたのであった。

この国が未だに、他国が行なう戦争に加わっていない理由も、一つにはそのような問題があったからなのかもしれない。国としての財力は大きくても、いざというときに一丸となって戦う結束力のようなものは、他国よりも劣っているのだと、ある一部からは囁かれていたのである。

そして、今レオナの暮らす診療所に向かって、夜の街をひとり歩いているドーブル、シャラクも、ここより遥か他所の土地から入ってきたポケモンだった。年の頃は若く、成人した証である背中の足あと印もまだ押されたばかりであったが、貧しく暮らす家族を支えるため、他の出稼ぎ連中と一緒にフワライド気球に乗ってここまで来たのである。

見たものをそのまま写し撮るように描く彼の画才は大きく評価され、晴れて役所での就職が決まったが、しかし本当は、彼は芸術家として生きたかった。ドーブルなら、誰もが夢見ることである。折角才能に恵まれているのなら、その能力、自分のためだけに使いたい・・・自分の好きな絵だけを、例えば、僅かに雲が棚引く晴れ渡った空に、溶けるように沈んでいく秋の夕焼けとか、命そのもののように真っ赤に熟れた、摘みたての林檎とか、そういったものだけを描いて暮らせたら、どんなに素晴らしいことか、と。

しかし、そういった夢に多少の未練を抱えながらも、彼は日々、与えられる仕事を淡々とこなさねばならなかった。いつも幸せな顔のポケモンばかりを描けるわけではない、例えば、指名手配書の極悪な顔のポケモンを描かねばならなかったり、死んだポケモンの遺影を描かねばならなかったりといった、そんな日々を。別にいいじゃないか、絵が描けるということ自体は、自分はとても恵まれている方なのだから、と思うようにしながら。

それが、地に足を付け、現実をしっかり生きていく、ということであった。

が、今日レオナの診療所に向かう彼の足取りは、なんだかとっても浮き足立つような感じであった。

なんだろう、これは。嬉しいというような、緊張するというような・・・あの憧れのレオナさんの家に今、自分が向かっているのだ。

レオナさん・・・自分はいつも影で見ていただけだったが、あの方の声や、笑顔を見るだけで、今までどれ程心が癒されたことか。彼女は私にとって、まさしく天使のような方だ!そう思うと、昼間レオナに握られた手が、今更じんじんと腫れて、痛みすら感じるような気がした。あぁ、レオナさん・・・早くまたお逢いしたい!

・・・いや、待て待て。自分はただ仕事で寄るだけだ。レオナさんには何も用は無い筈だ・・・しかし、どうしよう。いきなり家に入って、食事中とかだったら・・・ひょっとしたら、「ご苦労さまですわ!よかったら、お夕飯一緒に食べていきませんか?」なんて言われたりして・・・いや、そこはちゃんと断るべきだろう!というか、そもそもそんな事態ありうるのか!?

・・・とかナントカ。思春期の子どもにありがちな、甘酸っぱい妄想を抱きながら。

結局、彼はまだまだ若いのだ。恐らくそれ自体が、彼を現実という重石から潰されぬように守っている、大きな支柱となっているのだろう。

と、そうこう考えているうちに、彼はいつのまにか、もう目的の場所まで目と鼻の先まで辿り着いていた。

今、目の前に診療所の扉がある・・・これをノックすれば、中から彼女は現れるだろう。現れたら、どうする?「私、役所の方から参りました!今日申請いただいた、キホーテさん、コガラシさん、ロシナンテさん、SAD06さんのパスポートに似顔絵を入れようと思い・・・」そう、ちゃんと、喋れるだろうか??“SAD06”ってのが、うまく発音できないような気がする・・・というか、何でそんな名前なんだ?もっとマトモな名前は無かったのか?・・・なんて、外国の方の名前にいちゃもんつけてどうする。

・・・取り敢えず、深呼吸をする方が先だった。スー、ハー、スー、ハー・・・よし。そうして、扉を叩こうと手をあげた、その瞬間だった。

「待て、客人。今は入るな」

突然後ろからそう声がかけられて、シャラクは心臓が飛び出そうになった。

「・・・きゃーっ!わ、わたくし・・・えぇと、そんなに怪しい者じゃありませぇええんっ!ちょ、ちょっと仕事で・・・いやっ、あのっ、ぱぱぱぱ・・・いや、つまりそのっ・・・パァパァパァ!!」

「・・・パァじゃワカラン。お前のアタマのことを言っているのか?」

「パパパ・・・パスポートですよ、パスポート!!あのっ、今日新しく入国された方々が四名ほど、こちらにいらっしゃるとうががッ・・・ウガ!ウガ!ウガ!・・・いや、失礼・・・そう、うかがったもので・・・」

「・・・なんだ、役所のポケモンか」

マトモに喋ることすらままならないでいたシャラクに、目の前のバクーダは、何もかも理解できている、といった風に落ち着いてそう言った。それで、ようやくシャラクも我に返った。

バクーダは、やれやれといった感じで一つ溜息をつくと、こう喋り出した。

「レオナから話は聴いていた。今晩、役所から似顔絵師が訪ねてくると・・・しかし、申し訳ないが、今はだめだ」

「・・・と、おっしゃいますと・・・?」

「うむ・・・病床に着いていた者がひとり、危篤の状態なのだ・・・そのため、今診療所内は、騒がしい雰囲気だ」

「なんですって!?それはまた、大変ですね・・・」

シャラクはそう言ったあとで、しまった、と思った。今の台詞、大分他人事のように聞こえたかもしれない・・・いや、まぁ確かに他人事は他人事として相違無いが、あの憧れのレオナさんが大忙しのときに、自分はなんと酷いことを!そう思ってしまったのだった。

しかしそれを謝ろうとする以前に、また、役所のポケモンとしての立場で思考が働くのも、仕方の無いことではある・・・今診療所に入れないからといって、明日また出直すというわけにはいかない。パスポートは似顔絵を入れなければ効力が発揮されないのだ。申請された方々、この国で働くため、直ぐにでもパスポートが必要な状況なのに、それが遅れてしまったとあっては・・・。

・・・いや、聴いた話をよくよく思い返してみれば、彼らは既に今日から働いているということだったじゃないか。それはパスポートの代わりに、レオナさんのサインを使ったからだというが・・・だったら、もう一日サインでガマンしてもらうという手も・・・。

・・・いや、だめだだめだ!サインは飽くまで“例外”・・・そんな例外を、1日ならともかく、2日も3日も許すわけにはいかないのダッ!!・・・けど、レオナさんが忙しいときに無理矢理やってしまうのも・・・あぁぁあっ!!

「・・・お前、さっきから何頭抱えているんだ?偏頭痛か何かか?」

・・・と、自分の心情と役所のキソクとの間に挟まれて、ウンウン唸るシャラクに、バクーダは口を開いた。

「お前、ちょっとこっちに来ないか?」

そして大きな前足を、ひょいひょいと宙を掻くように動かし、診療所の隣の馬車小屋へと向かう。どうやら、手招きをしたようである。

ついつい、脳が古いパソコンのようにフリーズしてしまったシャラクは、招かれるままにバクーダに付いていったのだが、なんとそこで彼が目にしたものは・・・。

「ホレ、酒だ。これでも飲んで、少し頭冷やさないか?」

と、明らかに自分より図体の大きなバクーダサイズの酒樽を目の前に出され、絶句してしまうシャラク・・・。

・・・いや、こんなもの飲んだら、余計頭が痛くなってしまうような気がするが・・・というか、自分、成年になりたてで、酒なんかまだ一滴も飲んだことがないのである。

「遠慮はいらんぞ。丁度、さっきまでひとりで侘しく飲んでいたのだからな・・・少し話し相手が欲しかったのだ」

・・・そう、このバクーダ、ロシナンテは、どうやら前回顔を出さなかったと思ったら、ここでひとり、酒を飲んでいたのであった。彼女は行商ニャロの欠かせないパートナーとして、日ごろはいつも彼女に付いていなければならないのだが、仕事が終われば、図体の差があるため、同じ寝床に入ることはできない。だから、食事の合間も、ずっと彼女はここにいたのであった。

門番の役にも立てるし、それはある意味名誉なことではあるが、流石に夜中ひとりとなると、彼女だって侘しさを感じてしまうのである。

さて、そんな彼女に目を付けられてしまった、この若いドーブル。その場を巧く取り繕って逃げ出すことができるのか・・・。

「いやっ、私、酒はッその・・・ゴブッ!う・・・くっくっく・・・ぷはっ!・・・いえ、美味しいです!美味しいですとも!!ははは・・・よ、よろしくおねがいしまぁ~~~すっ!!」

・・・どうやら、完全に“ディグダのありじごく”に嵌ってしまったようである。

残念無念。


「患者の具合は、どうですか・・・?」

レオナがひとりサンドパンの看病を続ける病室に、ナースが温めた“モーモーミルク”を持って入ってきた。

「ああ・・・ありがとうございますわ」

そう言って、カップを受け取ると、レオナは一口啜る。・・・温かい。氷づけになったように疲弊した彼女の心を、優しくほぐしてくれるようである。

サンドパンは、まだぐっすり眠っている。本当に、安らかな眠りだ・・・願わくば、このままもう二度と目を覚まさずなんていう事態にならないことを誓いたい。

・・・いずれにせよ、もうそろそろ精神安定剤の効果が切れる頃である。そのとき、体力が弱まっている体でまた暴れたりしたら・・・今度こそ、彼自身の身にもよくない兆候が現れることは確かであった。

「レダ様は・・・もうお休みになられましたかしら?」

「えぇ・・・キホーテさんが、一緒に寝てくださるのだそうで」

「そう・・・いいポケモンですわね、あの方たち・・・」

ほっと、温かい息を一つ、レオナは吐いた。昨日まで自分は彼女らのことを疑っていたのだが、今はそんな気持ち、どこかへ消えてしまっていた。

と、そのときノックの音がして、先程ナースが閉めた寝室の扉が再び開いた。

「あっしも、看病させてもらってもいいでござんすか?」

コガラシだった。

「・・・コガラシさん?あなた、お休みになったんじゃなかったのですか?」

「・・・ええ、あっしは“ふみん”なもので・・・睡眠時間なんて、それ程長く取る必要無いんでござんす」

そう返答されて、ナースは困ったような顔をしてみせる。しかしレオナは、ニッコリと微笑んでみせた。

「大丈夫ですよ・・・あまり、ベッド近づかないように気をつけていただければ」

「申し訳ないでござんす・・・」

そう言って、彼はローソクが一本照らす部屋の隅に突っ立って、患者を眺めた。そういえば、この患者さんを最初に発見されたのは、コガラシさんだったそうですわね・・・そう、レオナは思い出した。

同時に、彼女は思った。彼らのためにも、この患者の命は、絶対に繋ぎ止めなければならない。それをできるのは、私しかいないのだと。自らを奮い立たせるような、そうした思いを。

部屋の中で、時計の針の音がコチコチと鳴り続けていた。やけに静かな夜だった。しかし絶望というものは、そうした静けさの下からやってくるものに違いない。いつ顔を出してやろうか、いつおどかしてやろうか、そんな残酷な思いを抱き、そわそわとしながら。

やがて、時はやってきた。サンドパンの体が、まるで硬直から解けたように、ビクンと震えた。

「・・・きたわ!ナースさん、手伝って!!」

アァァアァア・・・アアアァァアアァアアアッ!!くぐもった呻き声が、サンドパンの口から漏れた。早く鎮めなければ、なんとかしなければ・・・!そう思って、レオナとナースは、必死に患者の体を抑えつけようとしていた。

「・・・あっしも手伝います!」

と、壁に寄りかかるようにして立っていたコガラシも、ベッドの上にバッと飛び出し、上からサンドパンの足を捕まえた。

「・・・コガラシさん!?無茶です!!やめてください!!怪我をしますよっ!」

悲鳴のように、ナースが叫ぶ。確かに、コガラシだけでは無理そうである。暴れるサンドパンの力に押され、今にも蹴り飛ばされそうであった。しかしそれでも、彼は離そうとしなかった。大切な仲間を、決して手放すまいと必死だった。

「・・・コラッ、兵士!暴れるんやないでっ!!」

そのとき、再び病室の扉が開いて、キホーテが現れた。レダの子守りをしていたが、丁度彼が寝静まったのを見計らって、彼女も駆けつけてきたのであった。

ええよ、無理せんでも・・・夕食のときには、そんなことを言っていた彼女であった。まるで、もうサンドパンなんか見捨ててしまったかのような態度を取っていた彼女だったが、勿論、それが本心である筈が無かった。

助けたい・・・ワイらを助けてくれたこの命を、助けなあかん!彼女だって、そう思っていたのだ。

長い夜が過ぎていった。診療所内の騒がしさとは反比例するかのように、外はえらく静かな、そんな夜だった。画家がこの場面を絵に描くとすれば、きっと暗い夜空と、ローソクの明かりが漏れるカーテンの無い病室を対比させるような絵を描くことであろう。そして画家は、その絵を描いた後でこう言うのだ。これは、決して陰鬱なイメージではない。家の中には確かなぬくもりがあることを示しているのだ。心と心というものがしっかりと支えあうことによって生まれる、ぬくもりというものがな、と。

その晩、その小さな診療所の病室からローソクの明かりが消えることは無かった。

>>第九話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑦ 【2008/01/07 00:00】
第七話:予感
>>はじめから >>前回の話

暗く寒い砂漠の中を、杖を片手にひとりの老人が歩いていた。

ぱっと見た感じでは浮浪者と勘違いしてしまいそうだが、よくよく見れば、それは物凄い力を秘めた魔道士であることがよくわかる。その湧き立つオーラから、威厳に満ちたその表情から。

しかしその力も、いつもの彼からしてみれば幾分衰えているような印象を受ける。普段はカンテラよりも眩い光を放つ魔法の杖も、今は何の輝きもなく、ただの杖と化している。魔力の温存のためもあるのだろうが、それは非常に寂しげな様子であった。彼を照らすのは空の星々と、今夜より新しく生まれ出でた細い月のみだ。そして風は、無慈悲にも、孤独な彼の心を凍えさせるかのように、冷たく吹きすさぶ。

「ああ、あの子がついていてくれたらなあ」

ふとそんな言葉を呟き、彼は苦笑した。それは、嘗て彼が読んだある物語からの引用だった。年老いたゴーリキーの猟師が、たったひとりで漁に出かけ、巨大なハンテールを釣り上げる話だ。四日にわたる死闘の末に彼はそのハンテールを仕留めるのだが、それまでの間、彼は何度も嘗ての猟師仲間であるワンリキー少年のことを思い出す――少年は老人のことが好きだったが、老人の不漁が続くので、親の言いつけで別のボートに乗り込むようになってしまったのだった。

ああ、あの子がいたらなあ。そんな台詞を吐きながらも老人は奮闘するが、今砂漠を歩くこの老人は、自分もそれと同じであるように思えたのだった。・・・いや、なにを馬鹿な。自分は今、好きでたったひとり歩いているんじゃないか。その気になれば、いつでもあの子の元へ・・・コガラシの元へ、飛んでいけるものを。

しかし、ついつい先程のような独り言を言ってしてしまうのも、自分が年をとったためであろう。やぁ、ワシはもう年をとった。いくら強い魔道士とはいえ、心までは強く持てない。いや、だからこそ世の数多の事物に、冷静な判断をもって挑んでいけるんじゃないか。・・・いや、まぁそんなことはどうでもいい。今はただ、前に進むだけだ。何も余計なことは考えなくていい。

そのとき、砂漠一面に、獣の彷徨のような声が響き渡った。

否、実際にはその声は誰の耳にも届かなかった。この魔道士のように、とくべつ感覚の優れている者だけが聞くことのできる声だ。それは、地獄の奥底から響いてくるような、恐ろしい声だった。

「魔獣め・・・」

彼は呟いた。時間が無い。敵は、今にも目覚めようとしている。彼はそれを悟ったのだった。

「貴様は、全てを滅ぼすつもりでいるに違いない・・・この混沌の砂漠を、まるで神の裁きの如き力で、まっさらな状態に戻す気でいるに違いない。しかしな、この砂漠の民は、貴様なんぞに滅ぼされていいような邪悪な存在ではないのだ。ただ寂しいだけの存在よ・・・孤独で、不器用で。ただそれだけの存在よ。ただそれだけなのに、貴様なんぞに滅ぼされる筋合いは何も無いのだ」

魔道士は深い憤りを込め、そう独り言つ。そして、こう続ける。

「・・・負けるものか、貴様なんぞに。ワシらは、負けるように造られてはいないんだ」

その目の中には、闘志の炎が強く燃えていた。


時を同じくして、魔道士がいる場所よりもはるか遠くの地にある、キノガッサ王の治めるオアシスの大国では、ある一匹の負傷したサンドパンが、何かの悪夢にうなされでもしているように、小さな診療所の一室にあるベッドの上で暴れていた。

シーツは引き裂かれ、ベッドの傍に位置していた窓のカーテンもボロボロとなり、窓ガラスにもヒビが入っている。挙句の果てには、起きた時にいつでも食べられるよう用意してあった枕もとの食事も、盆ごとひっくり返され、無残な汚れを部屋の床に残していた。

医者のニューラ、レオナは、その患者を必死に押さえつけて、止めようとしていた。

「・・・お願い、もう暴れないで!大丈夫だから・・・何も怖くないから!しっかりしてぇっ!!」

サンドパンの言葉にならない叫び声に、彼女の悲痛な声が重なる。直後、その部屋に、先程帰ったばかりの行商のニャースとヤミカラスが駆けつけてきた。

「・・・こ、これは一体・・・どういうことでござんす!?」

「・・・し、知るかそんなん!兎も角、はよう鎮めたらんとヤバイで!」

ニャース、キホーテは、すぐさまレオナに加勢するよう、ベッドへ向かった。しかし彼女が近付くと、サンドパンは手を一振り、彼女を弾き飛ばし、部屋の壁に叩きつけた。

「・・・キホーテさん!?」

ヤミカラス、コガラシは、慌てて彼女の元へ駆け寄る。彼女の口から、つーっと血が滴るのが見えた。

「だっ、大丈夫でござんすか!?」

「・・・っつう。あぁ、大丈夫や、唯ちょっと唇切ってもうただけや・・・それより、はようアイツを止めな・・・!」

と、そこへ、ハピナスのナースが大きな注射器を持ち、駆けつけてきた。

「・・・はいっ、そこの患者さん!お注射の時間ですよっ!」

その姿は、今その部屋にいる誰よりも逞しく見えた。彼女はサンドパンの元へずんずん歩いていくと、その手に間髪入れず、ぶっすりと太い針の注射を打ち込んだ。患者は一瞬、ビクンと大きく体を震わせたが、その後はまるで、風船の空気が抜けるようにとでも形容すべきか、体をベッドの中に沈みこませ、先程まで暴れていたのが嘘のように、ぐったりと眠り始めた。

「・・・精神安定剤を投与しました。効果が切れるまでの間なら、暫くは安静だと思いますが・・・」

「・・・それでいいですわ。ありがとう、ナースさん・・・」

はぁはぁと、荒い息をしながら、レオナは言った。取り敢えず何とか立ち上がり、身に着けていた白衣のヨレをパンパンと払って元に戻す。後から、トレイと雑巾を頭に乗せて、レダが部屋に入ってきた。

「あら、レダ様、ありがとう」

ナースはそう言ってトレイの上に注射器を置き、雑巾を受け取ると、床に零れた食事を片付け始めた。取り敢えずはこれにて、騒ぎは収まったようであった。

レオナは、哀しげな眼差しでベッドの中のサンドパンを見つめていた。そこへ、何とか壁から立ち上がったキホーテと、コガラシが歩み寄る。

「・・・一体、どないしたんや、コイツ・・・」

「・・・わかりませんわ。私が帰ったあと、暫くは今朝と同じように眠っていらしたのに・・・つい先程でしょうか、いきなり暴れ始めなさって」

「原因不明、でござんすか・・・」

掃除を終えたナースと、レダが、一旦部屋から出て行き、ガチャンと部屋の扉が閉まった。カーテンが無くなりヒビの入った部屋の窓からは、美しい星々と、細い月の輝きが見えた。

「・・・原因はわかりませんけれど・・・あたし、知っていますわ。前にもこんなことが・・・」

と、レオナはふとそう言いかけたが、やめた。キホーテは怪訝な表情になり、口を開く。

「前にもって・・・コイツが、前にも暴れたん言うんか?」

「・・・いえ、そういうわけじゃありませんの・・・ごめんなさい、今のはお忘れになって」

そう言われるとますます不思議だったが、キホーテは、それ以上は何も訊こうとはしなかった。やがて、再び部屋の扉が開いて、ナースとレダが顔を覗かせた。

「キホーテさん、コガラシさん。夕食の準備が出来ています。先に、お召し上がりになってください」

「おぉ、おおきに。ほな、コガラシ、行こうか」

コガラシはまだ腑に落ちない顔をしていたが、そう声をかけられ、一先ずレオナの傍から離れた。ふたりは、先に部屋から出、階下へと降りていった。後から、扉を開けたまま、ナースが入ってきて、レオナの背中を見つめた。

独り言のように、レオナは呟く。

「・・・何もかも、そっくりなのね・・・あの方と」

「・・・先生、取り敢えず先生もお食事になってください。患者の面倒は、私が看ますから」

しかし、レオナは首を横に振った。まるで、数年前に戻っているようだと、ナースは感じた。

「・・・わかりました、先生。それでは、私がお先に・・・」

そう言って、ナースは部屋を出、扉を閉めた。部屋には、こんこんと眠り続けるサンドパンと、レオナが残された。

レオナは足を折って跪くような姿勢を取ると、ベッドに手を置き、じっと患者の顔を見つめていた。

その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。


「今晩は、診療所に泊まることにします」

食器の片付けをしながら、ナースは笑ってそう言った。食後、食卓でそのまま新聞を読んでいたキホーテは、一度顔を上げると、口を開きこう尋ねた。

「ホンマか?じぶん・・・家族は大丈夫なんか?」

「えぇ、一応幼い娘がいますけれど、さっきちゃんとベビーシッターを送りましたから。それに、月にニ度、三度くらいは、こうした夜勤をしなければなりませんし」

「さよか」

「わぁい、お泊りだね!おっとまりぃー♪」

食後のケーキのクリームを口の端に付けたまま、レダが楽しげにそう言った。しかしキホーテは、納得したような返事をし、新聞に目を戻しながらも、何やら腑に落ちない様子であった。どうもこいつら、今晩は変や。サンドパンが暴れ出したこと自体も問題やが、それに関してか、何か言われへんような事情がありそうや・・・。

しかしそれに気付いたからといって、キホーテは一々訊ねようという気にはならなかった。何にでも秘密としておくべきことはあるものだ。無理矢理訊いて、お互い嫌な思いをするようなことがあってはいけない。そうしたことは、行商として経験を積んできた中で、重々承知している。そのつもりだった。

新聞には、昨日の戦争で、“いわポケモン”の王国が“ほのおポケモン”の王国に敗れた、というようなことが書かれてあった。それから、新しいどうぐの開発などを報ずるような記事がいくつかあったが、どれも重要そうなものは無いように思われた。何も肝心なことは書かれていない。新聞とは、まぁそういうものだ。

「死に掛けの兵士って・・・一体、何考えとんのやろうな?」

と、新聞に顔を向けたまま、キホーテは言った。それに、後片付けの手を止めるナース、まだ食事が済んでいないコガラシと、今ようやくケーキのクリームを全て嘗め尽くしたレダが、顔を向ける。

「・・・ワイも、実は全然知らんわけやないんや。昔、誰かに聞かされたことがある。確か、前の戦争のときやったろうか・・・死に掛けの兵士の中には、突然診療所の中で暴れ出すもんがおると・・・」

「キ、キホーテさん、それって・・・?」

コガラシの表情は、みるみる不安の色に染まっていった。レダは、ただきょとんとしている。ナースはまだ黙ったままで、磨き終えていない皿を、一度流し台の上に置いた。

「負傷した兵士の中にはな、誰でもというわけやないが、決まってなんにんかは突然暴れ出すもんがおるらしい。それも、皆で一斉に・・・。そうなると、いくら押さえつけて鎮めようとしても無駄や。誰が止めようとしても、見境無く暴れるんやって。名前呼んでも、気付かへんのやと・・・なしてそないなことが起こるんか、原因は全くもって不明や。噂によると、迫り来る死への恐怖がそうさせるのだとか、或いは、彼らにだけ聴こえてきた地獄からの声に反応して、パニックに陥るからやとも・・・。しかし確実に言えるんはな、そのような症状が現れたもんは、確実に死に至る、ということや」

コガラシは、さじを置いた。レダも、もはやあっけらかんとした表情はしていなかった。今にも泣き出しそうな、そんな様子だ。そしてキホーテも、新聞を閉じ、ナースに目を向けた。

「・・・なぁ、隠してへんで教えてほしいんや。つまり、そういうことなんやろ・・・あいつは、あのサンドパンの兵士の身に起こったんは、そうした死の前触れなんやろう?」

「・・・し、死ぬの!?兵士のお兄ちゃん、死んじゃうの!?」

まるで悲鳴を上げるように、レダはそう言った。コガラシは、単にパクパクと口を動かしているだけで、声にはならなかった。

「・・・落ち着いてください!」

しかし、キッと強い視線を返し、ナースはそう叫んだ。その鋭さに、キホーテも、レダも一旦、口を閉じた。

「・・・確かに、最初に見たときは、私もそれも思いました・・・けれど、我々は、あの方をお助けします!必ず命を救ってみせます!」

力強く、ナースは言った。

けれど。

そんな彼女の目にも微かに涙が浮かんでいたことは、彼女の目の前のさんにんには気付いたことであった。

・・・やはり、そういうことか。キホーテは椅子の中に身を沈めた。結局は、ただの気休めか。暗い表情をしながら、彼女は溜息を吐いた。

「・・・ええよ、そんなに無理せんでも」

そして、彼女は呟くように、そう言ったのだった。

「あいつは、元々ただの死に掛けやった。それを、たまたま通りがかったコガラシと、それからワイらが、折角やから助けたろうと思って、ここまで運んできただけや。・・・まぁ、そのときどきにトラブルに巻き込まれて、そのときたまたま目覚めたあいつに、助けられたこともあった・・・ほんと、ワイらにとって、あいつはもう立派な仲間や言うても、おかしくないやろうな。せやけど、それが今助からへん言うんなら・・・もう無理せんでえぇ。レオナにもナースにも、迷惑かけっぱなしやからな・・・」

「キホーテさん・・・?」

コガラシは、そう言ったキホーテを向き、鋭い表情を投げかけた。何て酷いことを言うんでござんすか!そう言おうとした。しかし、できなかった。状況は複雑である。もう死が確実であるという患者を、どうやって助けろと言えるのか。

「・・・いえ、お願いです・・・信じてください!」

が、ナースが再び力強い声で、そう言った。お願いです、と言った。その言葉には、キホーテの知らない、これまで看護婦と医者として働いてきた彼女たちだけにとっての、深い意味が込められていた。

「どうか、私たちにあの兵士さんを助けさせてください・・・もう、死なせるわけにはいかないんです!もう先生の前で、こんな哀しい犠牲者を作るわけにはいかないんです!」

ナースの脳裏には今、先程サンドパンの部屋に立っていたレオナの後姿が浮かんでいた。その震える方が、壊れてしまいそうな小さな体が。

今でも彼女は、泣いているのだろうか。今晩の細い月のようなきらきらした儚い涙を、また流しているのではないだろうか。

そして、ナースが手に持つ布巾にも、今、涙の染みは広がっていた。

>>第八話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑥ 【2008/01/06 00:00】
第六話:新しい国王(後編)
>>はじめから >>前回の話

何で自分は王子として生まれてきたのだろう――それは、ゴクーが幼い頃より抱いてきた悩みであった。

国の統治にだなんて、彼は興味を持たなかった。10年前に父親であるブーバーン王が行なっていた、戦争のようなものにも、否定的な目で見ることしかできなかった。何が、“砂漠の覇権を握り、平和をもたらすための戦い”だ・・・そのために、一体どれほどの兵士を犠牲にしているのか。

父が、王が大っ嫌いだった。その側近のピータンも、嫌いだった。いや、寧ろ城にいる全てのポケモンが嫌いだった。城にいて彼らに拘束され、兵法や政治などを無理矢理学ばされるよりも、たまにこっそり街へ抜け出して、そこらにたむろする不良の子どもたちと遊ぶ方が、よっぽど平和で、楽しかった。

・・・いや、ひとりだけ、城の中にも心を許せる相手がいた。それが、腹違いの弟だった。

ゴクーより年下で、しかも側室の子であるくせに、弟はゴクーより、何でも秀でていた。弟は、王室という場所に生まれるべくして生まれてきたポケモンだった。将来自分が国の指導者としての地位に着くことを知っていて、そのためにとても勉強熱心である、それが弟だった。嫡男であるゴクーでは、なかった。

時々、弟はゴクーに対してなまいきだったときもあった。そんなときは、ゴクーは力で負かしてやった。弟も弱い方ではなかったが、力に関して言えば、ゴクーの方が上だった。けれど大方、弟はゴクーのことを慕ってくれていた。こんなひねくれ者のゴクーにも、弟は尊敬の眼差しを向けてくれていた。

「ゴクー兄ちゃんは、あんまり勉強とかは得意じゃないみたいだけど・・・でも、喧嘩は強いし、城の外の世界のことだって知ってる・・・それは、スゴイことなんだよ!」

弟がまだブビィだった頃のことか。そんな風に言って、きらきらする目を向けれらたとき、ゴクーは、ああ、こいつだけだ、と思った。こいつだけなら、俺は信用することができる。物事の表面ばかりを見ないで、ちゃんと中身まで見ることができる。こいつになら、次期王を任せたっていい、そう思ったのだった。

しかし当然ながら、ゴクーにだって面子はある。だから、どんなに自分が次期王になるのを拒んでいても、弟との決闘のときには、ゴクーは本気で挑むことにした。それは、ゴクーがモウカザルからゴウカザルへ、弟がブビィからブーバーに進化したばかりの頃に行なわれた、一種の通過儀礼だった。表向きにはただの見世物のようなものだったが、事実上は、王はその結果によって次期後継者を選出するという、重要な意味を持つ試合であった。

勿論、誰もが嫡男ゴクーの勝利を確信していた。肯定的にも、否定的にも・・・いくら弟君が優秀であるとは言え、決闘となれば兄君が勝利なされるに違いない。がっかりなハナシだ、結局あんなひねくれ者が次期王になるというのは・・・。しかしそのときの試合の結果がいかなるものであったか。それを、ゴクーは今でもはっきりと思い出すことができる。

試合の半ば、ゴクーも、弟のブーバーも、双方とも大分息を荒げていた。並みのポケモンなら既に倒れている程のところまで、ふたりはしのぎを削りあっていた。その場にいた誰もが驚いた。まさか、弟君がこれほど力を付けていらっしゃったとは・・・。しかしゴクーは、まだまだそれでも余裕の笑みを浮かべていた。なぜなら、ゴウカザルの彼には、「もうか」という特性が備わっていたからだった。それは、彼の体力が弱まったときにこそ発揮される・・・そのとき、彼の炎の力は、普段の1.5倍に強化されるのである。

この勝負、もらった!ゴクーはそう確信した。

だが、そのとき。

いきなり、弟の目が怪しく輝いた。“あやしいひかり”だ。それをまともに見てしまったゴクーは、一瞬混乱状態に陥り、ぐらりと視界が傾いて、その場に崩れ落ちそうになった。しかし、何とか気合で持ちこたえようと踏ん張ると、直に視界の傾きは元に戻っていった。そのまま彼は、うまく立て直しを図ろうとした。

が、そのときなにか、口の中に苦い味が広がった。それが何なのか、確認する暇もなかった。急に、体の力が地面に吸い取られるように抜けていった。そしてその直後、ブーバーの“ほのおのパンチ”が、見事にゴクーの腹に叩き込まれたのだった。

「・・・ぐっ!?」

効果は、いまひとつの筈だった。だが妙に、そのパンチが重く感じた。続けて、もう一発。それによって、ゴクーは地面に背中を付けた。

「勝者、ブーバー王子!」

誰かがそう叫んで、ワッと歓声が上がった。まさか、俺が負けるなんて・・・。体に重い痛みを感じながら、ゴクーは口の中の異物を、ゲッと吐き出した。なにやら暗緑色をした、木の実のカケラのようなものがでてきた。それでようやく彼は、自分がどうして負けたかがわかった。・・・“じゃあくなタネ”・・・。あいつ、“あやしいひかり”を放った直後、俺の口にこの毒の実を投げ込みやがったのか・・・だから、急に力が抜けたんだ!

顔を上げると、弟は自分のことを見下ろしていた。

「てめぇ・・・道具を使って勝つとは、卑怯な・・・!」

しかし弟は、冷静な目でこう答えた。

「勝つためなら、手段は選びません。なぜなら私こそが、父上の後を継ぐのに相応しいポケモンでございますから・・・」

その台詞が、ゴクーには信じられなかった。今まで俺は、お前のことを信用していたのに・・・お前だけが唯一、城で心を許せる相手だったのに!裏切られた気分だった。

その日から、ゴクーは弟のことを憎むようになった。そして、父親が病に倒れ、いよいよ王位継承者として、自分ではなく弟が呼び出されたとき、彼は城を出た。もう、こんなところにはいたくないと思った。城のポケモンたちは、ひとり残らず皆嫌いになっていた。そして城のポケモンたちも、城から出て行く彼を追かけようとする者はいなかった。

けれど、ゴクーも後ろめたいものが無かったわけではない。弟があのとき、多少卑怯な手段を使ってでも俺を負かしたのは、やはり俺のようなひねくれ者が王位を継承すべきではないと、誰もが思っていたからだろうか・・・。しかし彼は、そうやって自分の否を認めたくなかった。というより、彼は、投げやりになっていたのだ。

だから、自分が城を不在にしていたそれからの一年、彼は街のチンピラとして生きるようになった。それはとても楽な生活だった。自分を責めるようなことは、一切する必要が無かった。そこでは全てが肯定された。異を唱えるものは、簡単に力でねじ伏せればよかった。

だが時々、月があまりに美しく輝く夜などに、彼は弟のことを思い出したりもした。そのときに浮かぶ弟の顔は、いつも自分のことを慕ってくれる、無邪気な顔だった。

「ゴクー兄ちゃんは凄いよ。俺様、いつか兄ちゃんみたいに強くなってやるんだ!」

そう言って笑う、可愛らしい顔だった。


その弟が、今や屍となり、ゴクーの目の前の棺の中に横たわっていた。見間違いようがない。それは、いつも自分のことを慕っていた愛すべき弟・・・けれどあの試合のとき、完全なる裏切り行為を働いた、憎むべき者の姿だった。

それを運んできた、王の側近の一同は、その棺の傍で、今でも泣いていた。そしてリジィを初めとする一番隊の面々も、棺に近付くこともできないまま、溢れる涙をとどめることができないでいた。

「殿下・・・あなたに今、伝えるべきことがあります。この話を信じるか否か・・・恐らく信じることなどできないでしょうが、どうか、聴いていただきたい」

唯一、もう流す涙も枯れたのか、乾いた目のピータンが言った。ゴクーは、さっきまで流していた涙の余韻でぼーっとする頭で、彼を見つめた。

「王は、自分の死を、もう何年も前から予言していました。・・・これは、私のような、王のお傍で仕えていた者にだけ、王がお話になったことです。王は、この城に古くから伝わるという、予言の書の解読を、先代のブーバーン王がご健全の頃より、なさっていました」

予言の書・・・それは11年前、この国に家庭教師として訪れた魔道士が発見したものだという。その魔道士のことを、ゴクーははっきりとは思い出すことができなかった。ただ覚えているのは、その者が、父ブーバーン王の数年後の死を予言したということであった。その予言というのも、聞けば、予言の書というものによったのだそうだ。

その予言の書とやらがどういったものであるのか・・・話がややこしくてゴクーの頭ではあまり理解できなかったのだが、要は、弟もその予言の書を使い、ある未来を予知したのだとのことだった。それは、ブーバーン王の死より更に一年後、ブーバーン王の跡を継いだ新しい王も、死んでしまうのだということだった。

「その新しい王というのが、兄君であるゴクー殿下か、弟の自分なのか、詳しいことは当時、ブーバー王も知り得なかったのだとおっしゃいました。そして、こうもおっしゃいました。詳細が記されぬ未来は、もしかすればまだ、運命を変えることができるやもしれぬ、と・・・。それは、単なる戯言に過ぎなかったのかもしれません。しかしそのときブーバー王が何をお考えになったのか・・・私には、わかります。恐らく王は・・・」

しかしピータンが核心まで喋りかけたところで、ゴクーは叫んだ。

「・・・言うな!もう、何も言うんじゃねぇ!!」

けれど、ピータンも喋るのを止めなかった。声を大にして、ゴクーと張り合うように、こう言った。

「恐らくブーバー王は、先に死ぬのは自分だとお考えになったのでしょう!ブーバーン王が死んだ後、この国を立て直せるのは自分だと・・・しかし、その先にも続く、今の戦争に勝利を収めるためには、兄君である殿下のお力が必要だと・・・!」

「・・・黙れ!黙れって言ってんだろうがぁ!!」

「・・・いいえっ、黙りません!お聞きなさい・・・ブーバー王は、自分とあなたとの運命を逆転させるべきだとお考えになっていたのではないでしょうか!?だからこそ、あなたとの戦いのときに、あんな卑怯な手を使ってでも、勝ちに走らねばならなかったのだと・・・そのことを、王は悔やんでこうおっしゃっていました。自分は何てことをしでかしたんだと。けれど、これは避けて通れぬ道だった、と・・・!」

「・・・聞きたくねぇ!もう聞きたくねぇ!」

耳を押さえ、悶えながら、ゴクーは叫んだ。ピータンは、それでもなお、話を止めようとはしなかった。

「・・・そして、ゴクー殿下が城から出て行かれ、誰も後を追かけなかったときに、後からサイを使いに出し、あなたを見つけ、監視させるよう命を下されたのは、他ならぬブーバー王ご自信なのです!それもその筈・・・王は、いつでも殿下のことを心配になさっておいででした・・・王は本当に、殿下のことを慕われていたのですよ!」

「・・・フザケんなぁあああああああぁぁああぁぁあああぁあああ!!!!!!」

ゴクーは、目の前の棺の蓋を、剥ぎ取るように取った。あっ、と、どよめきが起こった。ゴクーは、ブーバー王の遺体に、掴みかかろうとしていた。

「・・・触れてはなりません!」

ピーターは、慌てて止めに入った。ゴクーの背後に回り、その体を羽交い絞めにしながら、こう叫んだ。

「ブーバー王のご遺体に触れてはなりません・・・王の体の中では今、死後の形状崩壊が始まっているのです。もしそれに、少しでも触れようものなら・・・!」

ブーバーは、元々炎が具現化したようなポケモンである。命ある際にはしっかりした形を維持することができても、死んだ後には、体の中でくすぶる炎が暴走を起こし、それが内部から体を壊し始める。

今、死後24時間がほぼ経過していようとしている王の体は、いつ体内の炎が表面に噴出してもおかしくない状況であった。そんなものに触れたら、触れた方がいくらゴウカザルのようなほのおタイプのポケモンでも、無事では済まされまい。

「・・・うっせぇっ!止めんじゃねぇよっ!」

しかし、ゴクーは、それを払いのけた。ピータンの体は、後方へと大きく弾きとばされ、そこにいたゴクーの子分たちが、それを慌てて受け止めた。ゴクーは、そしてブーバー王の遺体の腕を、掴んだ。

途端に、ブーバー王の腕はめらめらと燃え出した。王の側近ら、兵士ら、棺の周りにいた連中は、急にその場から逃げるように、サッと立ち退いた。

「・・・おやめください!殿下!」

ピータンはなおも叫ぶも、もはや意味などなかった。ゴクーは更に、遺体を棺から出した。今やブーバー王の遺体は、腕だけでなく、脚や腰までも炎に包まれていた。ゴクーは今や、炎そのものを抱えているように見えた。

ゴクーの体に、物凄い熱が伝わってきた。派手なジャケットも燃え尽き、先の尖ったサングラスもぐにゃりと曲がり、地面に転がって溶けてしまった。ゴクーはそれでも、炎を、弟の遺体を、離そうとはしなかった。どうしてくれようか?ゴクーは考えた。憎むべき者の遺体だ、四肢を引き裂いて、首ももぎ取ってしまえばいい。そんな残酷なことさえ考えた。しかし実行することは、彼にはできないでいた。

憎もう、憎もうと思っても、頭に思い浮かぶのは、ゴクーを慕うあの笑顔だ。屈託無く笑う愛しい顔だけが、ゴクーの脳内を覆いつくしていた。

・・・あぁ、やっぱりそうだったんじゃないか。そのときになって、ゴクーはようやく気付いた。熱い涙が、頬を伝った。それは、カタキが先に死んだことの悔しさを表す涙ではない。そして、ピータンに弟が死んだと、最初に伝えられたときに流したあれも・・・そのときに自分が言い放った、あの台詞の意味も。全ての思いを、それだと確信した。

そしてゴクーは、燃える弟の体を、ひしと抱きしめた。どんなことがあっても、結局俺は、お前を愛すことしかできなかったんだ。裏切られたと思っても、俺は心の中で、ずっとお前のことを・・・。とめどなく溢れ出る感情を、ゴクーはもはやどうすることもできないでいた。今や炎は、ゴクーの体を焼き尽くさんとするように燃え上がっていた。それに包まれながら受ける苦しみをも、ゴクーは愛そうとしていたのだった。

弟の体は、もはや殆ど燃え尽きて、今や形を残しているのは、顔だけだった。何も、もの言わない顔だ。笑うことも、泣くこともできない、ただの顔だった。

ふざけんなよ、なんとか言えよ。もっと一緒にいさせてくれよ。また、勝負させろよ・・・今度こそ、お前を負かしてやっからよ。兄ちゃん、強くなったんだぞ?もっともっと、強くなったんだぞ?なぁ、頼むから口を開いてくれよ・・・あのときみたいに、笑ってくれよ。アハハって、声に出して笑ってくれよ!くそう、なんだってんだよ、俺だけ泣いて、馬鹿みてぇじゃねえかよ・・・ちくしょう、ちょくしょう!

やがて弟のその顔も、ゴクーの胸の中で炎となり、燃え尽きていった。

ブーバー王の燃え尽きたあとには、何も残らなかった。ゴクーは、ブスブスと黒い煙を上げながら、その場に立ち尽くしていた。本来真っ白だった筈の胸の毛は真っ黒に焼け焦げ、更に、大きな火傷が残った。もはや、涙も枯れていた。

「・・・誰か、医者を呼べ!早く!」

側近のひとりが、慌ててそう叫ぶ間もなく、包帯を持ったスリーパーが現れた。ブーバー王の最期を看取った後からろくに休息も取っていない老いた体であったが、流石王室の医者だけあって、その動きはてきぱきとしていた。

「・・・よせ、俺に構わなくていい」

しかしそれさえも、ゴクーは拒んだ。息は荒く、火傷は燃えるように痛いのにも関わらず・・・。それどころか彼は、その胸の火傷を、拳でどんと力強く叩くと、こう言ったのだった。

「・・・俺の弟は・・・ブーバー王は、死んじゃいねぇ・・・今でもあいつは、俺のここで燃え続けている。俺が生きている限り、あいつは死なねぇ!」

そして、顔を上げて、目の前の側近代表、ピータンを見据え、言った。

「・・・もう誰も、あいつが死んだなんて言わせねえ!お前らの王は、ここだ!ここにいるぞ!!」

ピータンも、リジィも、サイも。そして、王の間にいる全てのポケモンが、ゴクーのことを見つめていた。ある者は驚いた様子で、そしてまたある者は、新しい涙を溢れさせながら。ゴクーの姿は、誰の目にも、最初とは違う風に見えていた。それは、ただのひねくれものの王子でもなかった。柄の悪いチンピラでもなかった。また、彼の子分たちの知る、アニキでもなかった。

それは正しく、この国を統治せんとする、王そのものの姿であった。


それから数日後、国全体に、ブーバー王の死を知らせる哀しいニュースが伝えられた。しかし国民たちが悲観に暮れる暇もなく、新しいゴウカザル王の誕生を知らせる、幸福なニュースも響きわたった。

ゴウカザル王は、胸になぜか大きな火傷のあとを持ってはいたが、その姿は誰から見ても、先代のブーバー王に劣ることなく、立派に見えた。その王の誕生を、国民は皆、喜びをもって讃えた。

時を同じくして、街にも不思議なことが起こっていた。つい先日まで街の中で暴れ回っていたチンピラ、ゴクーを筆頭とする暴力団が、忽然と姿を消したことだった。もう、どこの酒場も荒らされることがなくなっていた。ただ代わりに、街の酒場から城へと送られる酒の量が、少しばかり増えた。どうやら今度の王様は、かなりの酒豪らしい。そのようなことが噂されたが、まさか新王が、あのチンピラゴクーだと思う者は、誰もいなかった。

そしてもう一つ。国を守る軍に、新しい一団が加えられた。いつ募集がかけられて結成されたかはわからないが、出来立ての軍にしては国王に対する忠義が厚いのだという。その面子をひとりひとり見てみると、どれもついこの間、どこかの酒場で目にしたような顔だったというが、真相の程は誰にも解明できなかった。

とにかく、ここに今、ゴウカザル王の治める新しい王国が誕生した。この戦争の中、出来立ての新しいこの国が、一体どれ程の力を発揮していくのだろうか。それがわかるのは、それからまた数日先のことだ。

そのとき、東のニドキング王の国と、そして西のボスゴドラ王の国は、充分に戦力を整え、今にもこの新しい国に攻め入ろうとしていたのであった。

ゴウガザル王&ブーバー王(Illust:B@L)

>>第七話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑤ 【2008/01/05 00:00】
第五話:新しい国王(中編)
>>はじめから >>前回の話

玉座に誰も座らぬその城の王の間には、先程連れてこられたサングラスのゴウカザルと、その子分たちがズラリと並べられ、座らされていた。

「・・・ようこそ、我らが城へ。思ったよりも、お早い到着でございましたな・・・新国王陛下。歓迎いたしますぞ」

ゴウカザルの目の前に立ち、そう口を開いたのは、王の側近の中でも一番の位に就くオスのワカシャモ、ピータンである。

「・・・てめぇ、ピータン!歓迎って言う割には、俺らに対するこの扱い・・・どうなってやがんだよっ!」

久々に対面した城の重役に、ゴウカザル、ゴクーはそう食ってかかる。それもその筈、ゴウカザル含む各々の足には、それぞれ“くろいてっきゅう”が足枷としてはめられていたからである。それはまるで、新王の来城を歓迎しているというよりも、これから犯罪者たちの集団処刑が行なわれでもするかのような光景だった。

「・・・仕方ありますまい。やはり思った通りではございましたが、殿下をお連れしようとしたところ、いささか暴れられましたので・・・」

今度はゴクーを連れてきた軍の一番隊隊長、リザードのリジィがそう応える。それに対し、ゴクーはなおも文句を言おうとするも、

「・・・しょうがないよ、アニキ・・・これは自業自得ってやつだよ・・・」

と、後ろに控えていた子分、モウカザルのサイに言われて、ようやく食い下がった。しかしその目は、まだずっと目の前のピータンを睨み続けている。

やれやれ・・・それを見て、年配の武将、リジィは溜息を吐いた。さっきのような台詞を吐いたものの、まさか本当にこのゴクーたちが、軍に向かって襲い掛かってくるとは思っていなかったのだ。いくらひねくれ者とはいえ、次期王であることには変わらぬ。それを、なるべく友好的な立場から迎え入れようと努めたつもりだったのだが・・・これは、筋金入りのひねくれ者だと見える。本当に、このような輩に次期王が務まるのだろうか?

「・・・ところでよぉ、ピータン!てめぇに一つ、訊きてぇことがある!」

と、大人しくなったかと思うと、ゴクーは再びやかましく口を開いた。全く、こいつは空気を読むということを知らんのか?

「そこの兵士ども、易々と俺たちの前に現れやがった・・・俺はこれでも、街の中じゃあ色んな暴力団に目ぇつけられてる存在でよ。一箇所の酒場に留まってちゃあ、次から次に敵の暴力団の襲撃に遭っちまう。まぁ、来る度にぶちのめしゃあいいだけのハナシなんだがよ、酒飲むときぐらいは普通、ゆっくりしときたいってモンだ。だから、なるべく狙われねぇよう、店を転々としてるわけだが・・・」

まぁ、そのお蔭で“酒屋潰し”のアダ名が付いてしまった部分もあるのだが。ゴクーは、話を続ける。

「・・・それでも中には、店回りまくって、わざわざ追っかけてくるような連中もいる。今晩も、そうやってヘルガーの暴力団に襲われた。けどよ、その直後のこった。そこの軍隊、俺たちの加勢にでも来たように現れやがって・・・これじゃあまるで、端ッから俺らの居場所、知ってたみてぇじゃねえか。何だか、気に食わねぇハナシさ。こりゃあ一体どういうことか、説明してもらおうじゃねぇの!?」

ピータンは真顔のまま、答えた。

「恐れながら・・・我々、殿下の居場所を予め突き止めていたというよりも寧ろ、我が部下を使いまして、殿下らをあの酒場へ誘導していたのでございます」

「・・・なるほど、やっぱりそういうことか・・・」

そう言って、彼は自分の子分らを振り向き、更にこう続けた。

「薄々気付いていたさ・・・今日も、実は俺、最初あの店に行く気はなかったんだ・・・けど、俺の子分のひとりが、妙にあの店に行きたがってたもんでよぉ・・・」

そう言って、彼はその当事者である、モウカザルのサイを睨んだ。サイは、目を丸くする。

ピータンが、フフッと笑って、こう口を開いた。

「・・・流石は殿下。やはり勘が鋭くあられるようで・・・」

それにゴクーは再び向き直り、勝ち誇った様子でこう叫ぶ。

「てめぇ、俺の子分らの中に、政府のスパイを紛れ込ませていやがった・・・!」

と、後ろの方で、サイがすっくと立ち上がる。

「アーッハッハッハ!流石は殿下、よくぞ見破られましたでゴザル!そう、お察しの通り、拙者こそが政府のスパイ――」

「・・・なんてことは、ねぇな!!」

瞬間、時間が止まったように思われた。

ひょっこり立ち上がったサイに、ゴクーは見向きもしなかった。何だか子分のなかでひとり浮いただけの感じになってしまったサイは、再び座り直すべきか、そう悩んだほどだ。さっきまで冷静だったピータンも、どうすべきかわからなくなって、ただ嘴をパクパク動かしている。その場の空気を明らかに読めていないゴクーは、更にこう言った。

「・・・まぁ、フツーは考えるよな!でも、ぜってーねぇよ、俺の子分らに限ってそんなこと!きっと、通りすがりの誰かが、ウチのサイに吹き込んだに違ぇねーんだ!うん、そうだ、そうだ!そいつがスパイだ!」

・・・なにやら一人で納得しているが、サイはそんな兄貴分の肩を、ちょいちょいとつつく。それで、ようやくゴクーは、サイの方を向いた。

「・・・ん?なんだ、サイ。ひとり立ち上がったりなんかして。トイレか?」

勘がいいのか、悪いのか・・・周りの連中は、皆一斉に溜息をついた。

「あの、アニキ・・・いや、殿下。だから、その、拙者がスパイ・・・」

改めて、サイは自分を指差し、そう答える。一瞬、間が開いた。

「・・・あーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」

と、いきなり笑い出すゴクー。

「なるほどー!そうだったのか、お前がスパイか!そーか、そーか!あっはっはっは・・・・・・って、ええええええぇええええぇえええええええぇえええええ!?」

と、ようやく目玉を大きく見開いて、驚きを表現してみせた。・・・何にしても、ワンテンポずれている。

「・・・お、お前が政府の・・・?ま、まじか・・・?」

全く信じられない、という風に言うゴクーに、サイはこくこくと頷く。

「・・・じゃ、じゃあもしかして、今日の昼、他所の暴力団を倒しに行くっつって、ひとりだけ出て行ったのも・・・」

「あ、はい・・・それはスパイとして、ブニャット王が国へ参っておったのでゴザル・・・」

「・・・じゃあ今晩酒場で話してた、敵方のビーダルってやつは・・・」

「あっ、それは敵国の大臣のことでゴザル。ぬぅ、うっかり喋っていたとは、拙者、不覚にゴザった・・・」

「・・・じゃあ、毎晩遅く、皆が寝静まっている時に、こっそりねぐらから出て行って、暫く帰ってこなかったのも・・・」

「なんと、それにも気付いておいでにゴザったか!それも、スパイ活動を通じて知りえたことを、城に色々と報告をしに行くためだったのでゴザルよ・・・」

「・・・てっきり、クソが長ぇだけかと思ってた・・・」

それだけの手がかりがあって、どうして気がつけなかったかが、寧ろ不思議である・・・。

「・・・ともかく、そういうことでございます、殿下。お気を悪くなさりませぬよう・・・」

ようやく元の調子に戻って、ピータンは口を開いた。では、サイ、ご苦労であった、下がってよいぞ。そう言うと、サイは、はっ、と軽く返事をし、足枷を自分で簡単に外して、王の側近ら、政府側のポケモンらのもとへと進み出た。ゴクーは、その一部始終を恨めしげな表情で眺めて、ようやく彼がスパイであったことを信じたようである。リジィはまた、はぁ、と、別の意味の溜息をついた。

「・・・ま、まぁいいや・・・一つ謎は解けたところで、次の質問だ」

と、ゴクーは再び口を開く。ショックを受けた後でも、相変わらず自分が主導権を握っているつもりでいるとは・・・ある意味、タフなことである。

「・・・よいでしょう。では、何なりとお尋ねください」

こういうとき、相手が自分よりも権力が上であるということは、実に厄介である。一々答えていては、話が先に進まないではないか・・・そうも思うが、ピータンは素直に聞き入れるほうを選んだ。

しかし次の質問に関しては、寧ろ無理にでも拒否する方を選択するのが、あるいは適切だったかもしれない。

「ブーバー王は・・・あのナマイキな弟は、一体どこにいやがるっ!?」

・・・何を今更。そのことについては、彼らを城へ連れてくる再に、既にリジィの口から聞かされている筈だった。呆れながらも、ピータンはこう答え始めた。

「・・・ブーバー王は、天に召されたのです。だからこそ、我々は殿下を、次期王とすべく、今晩この城にお連れし・・・」

「いいやっ、信じねぇ!!」

けれど、忠実なる側近の台詞を途中で遮り、ゴクーはこう捲くし立てた。

「死んだとか言って、どうせどっかに隠しやがっただけだろ!?この戦争の世の中だもんなぁ・・・いつ殺されるか、わかったもんじゃねぇもんな!・・・そんでよ、俺がやつの代役になって、働けってこったろ?この戦争が終わるまで・・・それまでの盾に、俺がなれって、そういうことなんじゃあねぇのかっ!!??」

「・・・ま、待て!かの王が、そのような卑怯な計らいをするとでも・・・」

これにはリジィもいささか腹を立てて、そう言う。

「・・・だああああっ!うっせーよっ!!!」

が、もはやゴクーは、止まることを知らない。彼は、体中の血管が浮き出るほどの怒りを込めながら、なおも続けた。

「あいつはぜってー死なねーんだよ!死んじゃいけねーんだよっ!わかってんだろう、そんなことはお前らでも・・・!」

ビキッ・・・。そのとき、あろうことか、彼の足枷にヒビが入った。それに気付き、リジィは慌てて、部屋を囲むように配置されていた兵士たちに目配せし、ゴクーを抑えるように指示するが・・・。

「・・・待てっ!」

ピータンの一言は、軍の動きを止めた。そして、ゴクーにそのまま喋らせる機会を与えたのである。

ゴクーは、続けた。

「・・・あいつは、何がなんでも守らなきゃいけねーんだよ・・・。・・・ウソだろ?死んだなんて・・・なぁ、ウソだって言ってくれよ・・・あいつが、あんな立派なやろうが、なんで死ななきゃいけねぇんだよ・・・何でだぁーーーっ!!!」

怒りは、いつの間にやら悲しみに変わっていた。目から鼻から、汚らしいほどの涙やら何やらを流しながら、ゴクーは唸っていた。さっきまでの暴れ者の面影は、どこにもなかった。

そこにあったのは、悲嘆に暮れる、ただの哀しい獣の姿だった。

>>第六話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~④ 【2008/01/04 00:00】
第四話:新しい国王(前編)
>>はじめから >>前回の話

あの魔道士が再び去ってから、一晩が明けた。

ブーバー王の国は、また昨日のような哀しげな夕日で照らされていた。

・・・いや、それはもはや、ブーバー王の国ではなかった。王は昨晩、魔道士が出て行ったあと暫くして、天へと旅立っていった。これからもこの砂漠で起こるであろう数々の戦争に勝利を収め、そして再びこの国を覇権国へと導くことが期待された、偉大なる王であった。その王の、あまりに早すぎる死である。

その死を弔う儀式は、今晩、重臣らのみの手によって、実に慎ましやかに行なわれる予定であった。王の死は、まだ全ての国民どころか、城に遣える多くの家来たちの耳にも、未だ伝えられてはいなかった。全て、極秘の事項である。もしこのことが、戦時下の今、皆に知れ渡ったなら、それは国内に大きな混乱をもたらすことになる。そして他国からも直に、今こそこの国を潰さんと、侵略の手が伸びるのは目に見えていた。

「・・・それにしても、なんとも哀しいものよ・・・」

今や、玉座に誰も座らぬ閑散とした王の間にて。窓の外の夕日を眺めながら、王の側近の中でも一番高い地位にあったワカシャモがそう口にした。

「ピータン、そう辛い声を出すな・・・我々だって、部下たち全てを弔いの儀式に参加させてやれぬのを、悔しく思うておるのだ・・・」

彼の後ろからそう声をかけたのは、軍の一部隊の隊長を務める、リザードである。やや年老いて顔に貫禄がある彼も、憂いを帯びた表情をしながら、こう言葉を続けた。

「あいつら・・・昨日の戦いの後から、ずっと王の安否を気遣っているのだ・・・その、殆どの者たちが、今でも王が生きていることを、強く信じ込んでいる。哀しいことだよ・・・いずれはやつらにも、この辛い現実を伝えねばならぬとなると・・・」

「・・・だからこそ、我らだけでも、強く、気高く振舞わねばと、そういうわけか・・・」

側近、ピータンはそう言って、深く溜息を漏らした。それは、炎ポケモンのワカシャモがはいたものとは到底思えないくらいの、冷たい息であった。

彼は隊長に振り返ると、こう言った。

「・・・私が気に病んでいることが、もう一つある」

「・・・次期王のことか?」

「あぁ、その通りだ」

「・・・確か、次期王には、ブーバー王の兄君がなる予定だった筈・・・」

「・・・その兄君が、相当なひねくれ者でな・・・」

「・・・ひねくれ者?」

その後に続くピータンの話によれば、こうであった。王の兄君は、物心つくようになってから既に、先代の王で、父親であるブーバーン王に、激しく反抗的な態度を露にしていた。そして昨年、ブーバーン王が病に倒れ、次期王の座を自分ではなく弟であるブーバーに譲られた際には、非常に憤慨し、城から出て行ってしまう程だったというのだ。

なんとも我侭な話ではあるが、一応憤慨した兄君にも言い分はあった。彼はただブーバーよりも年上なだけではなかった。彼は、ブーバーン王の正妻の子、つまり嫡子であり、ブーバーは正妻より下の身分の妻の子だった。いくら自分が王に対し反抗的な態度をとっていたとは言え、まさか腹違いの弟に跡継ぎの座を奪われるとは、兄君も納得がいかなかったのだろう。

だが当時の王の側近らとしては、そのようなひねくれ者の相手をする余裕などなかった。確かにその兄君は、ブーバーン王の嫡子であるので、大切にせねばならぬ部分もあったのだが・・・いなくなってしまってからは、正直な話、もう誰も関わりたくなかったのである。

そんなわけで、誰も城から出て行った兄君の後は追わなかったのだという。そして彼は、今でもこの城から不在であるというのだ。

ピータンのその告白に、軍の一番隊隊長、リザードは大いにうろたえた。

「・・・聴いておらぬぞ!?そのような話は・・・」

「・・・あぁ、そうだ。これも機密事項だった・・・我ら、側近の間のみでのな。しかし、今やこの状況下にあっては、それを隠しておくわけにもゆくまい。・・・一番隊隊長のリジィ、今貴殿をここへ呼んだのも、貴殿にそのことを伝えるためだったのだ」

「・・・さすれば、我々一番隊で、ブーバー王の兄君を探せと、そういうことだな・・・?」

こくんと頷くかと思ったが、再び窓の方を向くと、ピータンは言った。

「・・・別に探す必要はない・・・昨年のあの当時は、確かに誰も次期王に関心を持つ者はおらなんだが、今はちゃんと我が部下がその身元を抑えている。今晩、私はその部下に、次期王をある場所へいざなうよう指示してあるから、貴殿はただそれを迎えに行きさえすればよい」

「・・・な、なんだ、そういうことか。肝を冷やしたぞ」

一先ずは、ほっと安心するリジィであった。しかし、やや疑問が残る。

「・・・だが、それだけのためならば、何も軍まで使う必要はあるまい。貴殿ら側近のみで行なえばよい話ではあるまいか?」

「いや、この仕事には軍が必要なのだ・・・なぜなら先程も申したように、次期王はたいそうなひねくれ者であり、しかも腕っ節の強さも並ではない。そんな王が、もし城に帰るのを拒んだらどうする。多少手荒なまねをしてでも、連れてこねばならぬからな・・・」

妙に緊張感のある声だった。リジィは、ごくりと生唾を飲み干した。軍を持って押さえつけねばならぬとは、いったいどれ程の強さなのか・・・。

それにしても、ここでもう一つ、また新たな疑問が湧き出る。

「・・・しかし、そのようなひねくれ者であれば、その兄君、ブーバー王の跡継ぎなど務まるものか?ここはむしろ、他の者を立てるべきでは・・・」

「・・・いや、そうはいかぬ」

ピータンは厳しい目つきで、もはや地平線の向こうに沈みつつある夕日を睨んで、言った。

「・・・これは、王のご意志なのだ・・・ブーバー王が、死の間際、おっしゃったのだ・・・次期王は、当初の予定通り、兄君を立てよと・・・それ以外の者を立てることは、絶対に許さぬとな・・・」

「・・・王の、ご意志・・・?」

一体、ブーバー王は何を考えているのか。そう言いたかったが、敢えてリジィは何も口にしなかった。そう考えているのは、側近であるピータンも同じことだろうと考えたからだ。側近にとっては、王の意思には絶対なのだ・・・たとえその本人が、既にこの世からいなくなっていようとも。

「・・・了解した」

ようやくそう言って、一番隊隊長リジィは、部屋の外を降り向く。が、部屋を去る間際、思い出したように一つ溜息をついて、彼は言った。

「・・・しかし、今回のその仕事に我が軍を使うとなると、我が軍の者たちには伝えなければならぬな・・・ブーバー王がお亡くなりになったことを」

「そうだな・・・だが、どちらにしてもいずれは伝えねばならぬことだ」

すっかり日が沈んで暗くなった窓から目を背け、リジィをしっかり見据えて、ピータンは言った。

「それに、これから起こるであろうどのような不幸にも、我々は耐えてゆかねばならぬ・・・そうしなければ、我々はこの戦争を乗り越えてゆけぬであろう。違うか?」

「・・・ああ、そうだな、ピータン。貴殿の言う通りだ」

その声は、しかしまだ憂いが残っていた。その背中に、ピータンは更にこう言った。

「『そう辛い声を出すな』、リジィ」

はっとして、リジィは振り返る。その目には、薄っすらと涙が浮かんでいた。

彼は、震えながら口を開くと、こう言ったのだった。

「『・・・だからこそ、我らだけでも、強く、気高く振舞わねば』・・・か」

しかしその台詞には、確かな力強さが込められていたのであった。


「プハーッ!やっぱこの国の酒はうまいネェ!!おいおっちゃん、もう一杯くれや!」

バーのカウンターで、空になったピッチャーグラスがドンと置かれた。

「ひえっ・・・ゴクー!てめぇ、店の酒全部飲んじまう気じゃねぇだろうな・・・一体、今日何杯目だよ!」

「うっせーな!この、戦争の沈んだ時代に、店の景気だけは盛り上げようとしてやってるゴクー様の心意気に感謝しやがれってんだ!ホレ、さっさと持ってきやがれ!」

「・・・とか言って、どうせまたツケてくれとか言うんだろ・・・毎晩毎晩酒屋荒らし回りやがって、この不良ザルが!」

そう文句をたれつつ、店主のマクノシタは客に追加のビールを持っていく・・・さもないとこの客は、暴れて店をメチャクチャにしてしまう恐れがあったからだ。そうなってしまっては、元も子もない。くそう、この極道者め・・・眉間に険しい皺を寄せながら、店主はピッチャーグラスにビールを注いだ。

ハデなジャケットを身に付け、端のほうがやけに鋭く尖ったサングラスをした、いかにもといった感じのゴウカザルである。酒屋潰しのゴクーと、この国では名の知れた存在だ。昼間は沢山の子分を抱え、なにやら悪さしながらセコい金稼ぎをしているらしいが、夜になると更に厄介なことに、酒屋を次から次にハシゴし、各店の酒を根こそぎ飲み干してしまうほどの酒豪だと恐れられている・・・。
ゴクー(Illust:Gasutoso)
丁度一昨年あたりから現れたチンピラだったが、短期間のうちに彼は、名のある暴力集団を次から次に吸収し、勢力を増していった。腕っ節の面でも、今や彼の右に出るものは、王の抱える軍隊ぐらいしかいないのではないか、いや寧ろ、その軍隊すら負かす程ではないのかと噂されている。とにかく、警察などは簡単に手出しができないような状況だ。

そしてこの日も、昼間やってきたであろう荒仕事の打ち上げか、子分らを連れて、彼は一軒目のバーで豪快に飲んでいたわけである。

「・・・にしてもサイよぉ、お前の昼間の話、どうだったってェ?もう一回聞かせてくれよ!」

と、店主が差し出したピッチャーを受け取るや否や、一口で半分飲み干してしまったゴクーが、子分のモウカザルに尋ねた。サイと呼ばれた彼は、中ジョッキでちびちびやりながら、ニヤニヤ笑って答える。

「へっへっへ・・・アニキ、それがもう、ケッサクってもんでさ!敵のビーダルなんか、ビビってこぉんな顔しやがって!」

そこで、サイはビーダルそっくりのマヌケ顔を作った。それだけで、兄貴分のゴクーは大いに笑う。・・・一体、ビーダルなんて、またどこの暴力団とやりあってきたのだろうか?横目で見ながら、店主のマクノシタは不思議な顔をする。

と、そこでけたたましい音と共に、店の扉が開いた。いや、ぶち破られた、というべきだろう。店の中の者は皆ハッとして、一斉に入り口の方を振り向く。

「・・・酒屋潰しのゴクーってのは、ここには来てねぇのか?」

そこに現れたのは、ヘルガーである。その後ろには、大勢のデルビルが手下のように控えていた・・・。

「・・・おう?誰でぇ、俺を呼んだのは?」

2杯目のピッチャーを空にし、ゴクーは立ち上がった。さっきまで変顔をしていた子分のサイは、すぐにマトモな表情に戻ると慌てて言った。

「ヘルガー団だよ、アニキ!こいつらも、国で名の知れた暴力団だ!」

「・・・ほう、そんなのがまだのさばってたとは・・・」

言いながら、ゴクーは拳をゴキゴキと鳴らす。敵のヘルガーは、それを見ても余裕で、ニヤリと笑みを浮かべた。

「・・・あわわっ・・・た、頼む!やり合うんだったら店の外でやってくれ・・・!」

店主がヒステリックな声を上げた。サングラスのゴウカザルはそれを一瞥し、敵を睨んでこう言う。

「・・・だとよ。俺も、まだ飲み足りてねぇこの店を潰されんのは、たまったもんじゃねぇ・・・ヤロウども、店の外に出な」

「・・・クックック、知るか、そんなの」

しかし、敵は待ってなどいなかった。いきなり大きく息を吸い込むと、“かえんほうしゃ”を店の中にぶちかます。途端に燃え上がる、店のテーブルや椅子に、タル・・・。

「・・・ぎゃあっ!店が!店が!」

マクノシタはパニックに陥り、わーわー喚き散らす。そんな彼の背中にも、火が移っていた。

「・・・にゃろう!フザケやがって!」

ゴクーの子分たちは慌てて消火にかかるが、燃え広がる炎はなかなか治まりそうにもなかった。それを見ながら、ヘルガーは高らかに笑う。

「フハハハ!店ごと燃えてしまえ!ハハハハハ・・・・・・ッハ!?」

が、次の瞬間ヘルガーの顔は、凹んだドラム缶のようになった。炎の店の中から、物凄いスピードで、硬い何かが飛んできたのである。

“マッハパンチ”・・・それは、ゴクーが放ったものであった。彼は炎に包まれた店の中から颯爽と登場すると、敵の一群を睨みつける。

「・・・人の言うことはちゃんと聴けって、テメーらガッコーで教わんなかったのかよ?・・・あーあ、俺のお気に入りの店、こんなにしてくれやがって・・・」

「・・・やっ、やりやがったなぁ!!」

今の一撃が相等痛かったのか、涙目になりながらヘルガーが叫ぶ。次の瞬間、ゴクーの身の回りを、子分のデルビルたちが一斉に囲む。

「・・・ハッハッハ、カッコツケて出てきても、テメー一匹なんぞ、俺らの手にかかるのは容易いこと!やろうども、“ふくろだたき”にしてやんな!」

デルビルたちが一斉に飛び掛ってくる!一瞬にして乱闘となったその場は、砂煙に包まれ、何も見えなくなる。中からは、骨の砕けるような嫌な音が鳴り響く・・・。

「・・・バカめ。口ほどにもない・・・」

と、そう言ったヘルガーの目の前に、何かがスッと降り立った。それは、余裕の笑みを浮かべ、口を動かした。

「・・・テメーの子分、バカじゃん?」

「・・・な!?」

そう言って後方を指差すと、もう既に半数ほどのデルビルが、同士打ちによって倒れている・・・。

「・・・きさま、いつの間に・・・!?」

が、お決まりの台詞を口にしようとしていたヘルガーの顔は、今度はゴクーの蹴りによって、再び凹まされてしまった。そのまま後方に弾けとび、そこに生えていた街路樹にぶつかって、グッタリとなる。

「・・・さぁ、バカ暴力団め。この度のオトシマエ、どうつけていただこうか・・・」

そう言って、ヘルガーににじり寄るゴクー。もはや、敵には抵抗の余地はなかった。

「・・・とにかく、まずは火を消してもらわねぇと、俺の子分が焼かれちまう。さっさと・・・」

「アニキーッ、無事鎮火、完了したぜ!」

・・・と、その背後から、彼の子分、サイが駆けつけてきた。

「・・・って、早えな!おい!・・・折角こいつらに仕事押し付けようとしてたのに・・・」

「・・・アハハ、それが、とんだ助っ人が来てくれてさ・・・」

「なに、助っ人!?」

と、店の方を振り返ると、そこにいたのは・・・大勢のリザード。

「・・・って、なんだこいつら!?また新手の暴力団か!?」

「ち、違うよアニキ。こいつら、政府の軍の連中だよ。一番隊隊長の、リジィとかいうやつが率いてるらしいんだけど・・・」

「・・・あ、なーんだ!政府の軍か!あっはっはっはっは・・・」

やや遅れて、その表情は凍りついた。

「・・・って、何で政府の軍が助っ人に駆けつけてくるんだよ!?」

「・・・いや、アニキ。俺にもわからないよ・・・」

と、彼らの前へ、一匹のリザードが進み出た。軍の中でも、一際威厳に満ちた顔をしている。

「・・・私が、一番隊隊長、リジィだ。酒場潰しのゴクーとやらは・・・貴殿であるな」

「・・・そ、そうだが・・・ジジィ、何か俺に用でもあんのか!?」

「・・・ジジィ!?」

そう呼ばれて、少しムッとした一番隊隊長。

「・・・あ、あわわ・・・ちょっとアニキ、ジジィじゃなくて、リジィだよ!リジィ!」

「・・・いや、モウカザルよ、そう気にせずともよい・・・お蔭で君の兄貴分が、充分ヒネクレ者であることがわかった・・・」

そう言うと、軍の隊長は更にゴクーの近くに進み出る。

「ちょ・・・ジジィ!テメェ、何する気だ!?」

が、彼はゴクーの目の前まで来ると、その場で突然跪いてみせた。そしてその口から、こう言葉を紡いだのであった。

「新国王陛下、お出迎えに上がりました」

>>第五話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~③ 【2008/01/03 00:00】
第三話:ナナシの実(後編)
>>はじめから >>前回の話

ドサッ。

何かが倒れるような音に、キホーテは慌てて席から立った。・・・コガラシ、いわんこっちゃない!

しかし、目の前のエアームド婦人は、それを許さなかった。先程までの温和な対応はどうしたのやら、いきなり鬼のような形相になって、彼女にぴしゃりとこう言い放ったのである。

「・・・ダメざます!あのコ、ひとりでやるって言ったんザマスから!ちゃんと最後までやらせなきゃダメザマス!それが若いコの育成というやつザマしょ!」

何だかもっともらしいことを言ってはいるが、全ては彼女のワガガマにつき合わされているが所以のことである・・・。だが、彼女の恐ろしい顔を前にしては、キホーテは何も言い返すことができなかった。ただ、怯えて引きつったような笑みを浮かべながら、再び席に沈むだけである。

「・・・さぁ、どうぞ。ケーキを召し上がれ!」

客の素直な姿勢に笑みを取り戻した婦人は、そう言った。ハッキリ言って、食べる気にもなれなかったが、もはや抵抗の余地はなかった。

震える手で、キホーテはケーキの一口をフォークに刺し、ゆっくりと口に運んだ。

パクリ。

そして今、それが彼女の口の中へと入ったのだった。


視界がぼやけて、何も見ることができない。ただ、音だけがどこからか聞こえてくる。

ゼーハー、ゼーハー。誰かが、荒い呼吸を繰り返している。そして、ドクドクという心臓の音・・・。

・・・あぁ、これは、あっしの音でござんすか・・・。朦朧とする意識の中で、コガラシは思った。

「・・・だいじょうぶ?」

と、誰かが呼びかける声が聞こえる。・・・キホーテさん?・・・ははっ・・・申し訳ござんせん・・・あっし、初仕事、頑張るつもりだったんでござんすが・・・なんだか、足引っ張ってしまったみたいで・・・。

申し訳ござんせん、申し訳ござんせん、申し訳・・・。

何だか酷く惨めな気持ちになって、コガラシは何度も謝った。けれども、呼びかけてくる声はそれに対して叱りつけるでもなく、かと言って許すわけでもなく、ただ、何度も呼びかけてきた。

「・・・ねぇ、どうしたのかしら?しっかりしてくださいな!大丈夫なの?ねぇ、起きてください!」

・・・キホーテじゃ、ない?

それに気付くと、だんだん視界もはっきりしてきた。目の前にいたのは・・・エアームドだ。

しかしその印象は、屋敷にいた婦人とはさっぱり異なっていた。ネックレスのようなものを下げてはいたが、無駄に着飾った印象は与えず、表情は優しげで、とても清楚な感じがする。そしてその体型も、スラッとした美しい形であった。

エアームドは、ようやくコガラシの目が覚めたことがわかると、穏やかな表情になって、

「・・・まぁっ、よかった・・・気がついたのね!」

そう言って、小さなコガラシの体をふわっと抱き寄せたのだった。一体、何がなんだかわからなかったが、コガラシは思わず顔を真っ赤にしてしまった。女性から抱きしめられるなんて、これが産まれて初めてのことだった。その体は、鋼でできている筈なのに、どことなく柔らかかった。彼女の持つ雰囲気が、そう感じさせてくれるのかもしれない。ともかく――きもちいい。そう感じてしまったのだった。

・・・だが、暫くするとだんだん苦しくなってきた。ハッとすると、コガラシは、エアームドが突然、彼を抱いたままいびきをかき始めていることに気付いた。

「・・・くぅ・・・くぅ・・・」

「・・・ちょ、ちょっと!く、苦しいでござんす!・・・は、離して・・・!」

いきなり、コガラシはぱっと解放されて、地面に転げ落ちた。

「・・・あら、やだ!私ったら・・・ヤミカラスさんを抱き枕に、寝てしまうところだったかしら!」

・・・いや、思いっきり寝ていたのだが・・・。

「・・・大丈夫か、コガラシ」

と、もうひとり、別のポケモンが声をかけてきた。階段の下で待っていた筈の、ロシナンテだった。ということは、自分は階段の下まで転げ落ちたのだろうか・・・はっ、そういえば、荷物は!?

と、慌てて周囲をキョロキョロしだすコガラシに、ロシナンテは溜息をついてこう言った。

「・・・まったく、初めてのくせに無理をするからだ!ホラ、荷物はちゃんと私が受け取った。・・・この、エアームドのカタナさんからな」

ロシナンテは、既に背中に背負っている荷物を見せた。その横で、先程のエアームド、カタナがニコッリと微笑む。

「ごめんなさい・・・おうちの方からいきなり大荷物で出てらしたので・・・慌てて、お助けしようと思ったのですが、先にヤミカラスさんの方が力尽きなさって・・・ほんとに、ごめんなさい、荷物だけしか助けられなくて!」

「・・・あっ、いえいえ!ありがとうござんす!荷物だけ無事だったら、ようござんす。あっしは・・・へへっ、この通り元気でござんすから!」

そう言って、コガラシは立ち上がって見せようとしたのだが、急にふらっと体が傾いて、再び地面に転がってしまった。そして、お腹がきゅうっと悲鳴を上げる。

「・・・馬鹿者!腹が減っていたなら、最初からそう言えばいいものを!私らのペースに、無理して合わせる必要などない!」

・・・うぅっ。そう言われて、何だか再び惨めになって涙してしまうコガラシだった。

「・・・はい、もしよかったら、コレ、お食べにならないかしら?」

と、カタナがコガラシに何かを差し出した。それは、見たことがある木の実だ。そう、あれは確かここへ来る前・・・広場にあった木にも実っていた、黄色いお月様のような木の実。そうだ、ナナシの実だ!

ぱくっ。と、何も言わずコガラシはその実にかぶりついた。キホーテが教えてくれたように、キリリとした酸味が口に広がる・・・自分の好物の、故郷の森で実っていたマトマの実のようなしぶさや辛さは、そこにはなかった。しかしそれとはまた別の、なんとも言えぬおいしさが、その中にはつまっていた。

「・・・こら、礼ぐらい言わないか!」

ロシナンテに言われて、慌てて「あひあほおあんふ(ありがとござんす)!」と、コガラシは言った。けれどそれを見て、カタナはまた優しい笑みでこう言うのだった。

「・・・うふふ、よほどお腹がすいてらしたのかしらね!」

それを見て、コガラシはまた、かぁっと顔が赤くなってしまった。・・・なんて綺麗なポケモンだろう。一体、どこのお嬢様だろうか。

・・・が、少し考えれば簡単に予想もできそうなものだ。そう、自分が今までいた屋敷・・・あそこの婦人も、エアームドだったじゃないか。

と、いうことは・・・。

「・・・では、お屋敷へ戻りましょうかしら?」

「・・・ほへ!?」

やはり、と思ったが、コガラシは驚いたようなその台詞を抑え切れなかったのだった。

「・・・あら、紹介が遅れてしまってごめんなさい・・・私、この屋敷の娘です。どうぞ、よろしくおねがいいたします!」

母親とは似ても似つかぬ愛らしい笑みで、カタナはそう言った。


「お母さま!只今戻りました!」

カタナと、そしてコガラシは屋敷へと入った。

「ぎぃやあああぁああああぁあああっ!!」

突然、中から耳をつんざくような悲鳴が響いた。

「・・・ひゃっ!い、一体何が起こったのかしら!?」

「・・・うぁっ、あっしらが先程通された客室からでござんす!行ってみるでござんす!」

慌てて駆けつけると、そこには何と、テーブルから転げ落ち、床の上でのた打ち回るキホーテの姿があった。

「・・・か、か、辛ぁあああぁああーっ!!」

・・・辛い?見ると、キホーテの手には、ケーキの欠片が付いたフォークが握られていた。あの、一見甘そうに見えたマゴの実のケーキが・・・

「・・・お母さまっ!またお客様に、からし入りケーキをお出しになったのかしらっ!?」

・・・か、からし入りケーキ!?

「・・・あら、カタナちゃん・・・帰って早々、そんなにお母さまに向かって怒らないで欲しいザマス・・・」

「お母さまが悪いんじゃないかしら!?いつも私が申し上げているのに・・・お客様をからかうのは、いい加減にしてほしいって・・・!!」

「だって~、そこのニャースちゃんとヤミカラスちゃん、とっても可愛いかったんザマス・・・私、可愛いコたち見ると、つい苛めたくなるザマス」

キホーテは、口から“かえんほうしゃ”の如き炎を吐き出しながら、まだ苦しんでいる。水で冷やしてやりたいところだが、テーブルのカップには、まだ湯気が立っているアール・グレイしか入っていない・・・。コガラシは、ただオロオロするばかりだ。

「オムライス、お客様にお水を!」

と、カタナの声に、傍で突っ立っていたメイドのコダックが、慌ててキホーテの元までだばだばと走ってきて、その体に口から“みずでっぽう”を食らわせた!

「・・・ぎゃぶっ!」

「・・・って、そうじゃないでしょ!?ちゃんと飲ませて差し上げなきゃ、意味無いんじゃないかしら!ホラ、お台所から持ってきて!早く!」

トボけたメイド、オムライスは、ハッとして、急いで炊事場まで駆けていった。まぁそれも、ハタから見たらペンギンの行進のようなコミカルな動きでしかなかったのだが。

「・・・全く、ウチのお母さまが、また申し訳ないことをしたんじゃないかしら・・・ごめんなさい」

「・・・あ、あぁ、いえいえ!大丈夫でござんす!お客様のご意志には従うのが、あっしら、商売人の責務でござんすから・・・そうでござんすよね、キホーテさん」

「くぁw背drftgyふじこlp;@:「」!!!!!」

その事を最初にコガラシに教えた本人は、しかし何かを訴えるようにぎゃあぎゃあと喚いている。ただ、全身水びだしになりながらも、口の中はまだ辛いようで、全く言葉にはならない様子だったのだが・・・。

今はコガラシが、ただ誤魔化し笑いをする番だった。あははっ、そう声に出して、彼は笑った。

「・・・あはははっ」

と、それに釣られたのか、カタナも笑い出す。それはまた、コガラシがドキっとしてしまうような、とても綺麗な笑顔だった。そして、婦人もたいそう満足した様子で、高らかに笑っていた。オホホホホホ、と。

まだ少し不満の残っていたキホーテは、そうやって自分が笑われていると、なんだかもうどうでもいいような気分になってきた。してやられた、と、そんな感じだった。そしてその怒りは、オムライスが水を持ってきてくれたことで、口から出る炎と一緒に、消えてなくなった。

そしてそのあと、キホーテも笑った。


「・・・ハァ、それにしてもあのエアームドの屋敷・・・散々やったで!」

本日全ての仕事を終え、レオナの待つ診療所に変える途中、キホーテは今日一番厄介だった取引先を思い出し、ぼやいた。

「・・・まぁ、いいじゃないか、ちゃんと感謝料とやらを払ってもらったんだろう?」

それに応えて、ロシナンテが言う。感謝料・・・あの後、母親が酷いことをしたお詫びに、と言って、屋敷の娘カタナは、いくらか慰謝料をくれようとしたのだ。それを最初、キホーテは断った。いやいや、こっちはただ、してやられただけや、と言って・・・それも、商人の礼儀というものである。

けれどもカタナは、それならば、と言ってニッコリ微笑みながら、再びポケ(金)を差し出してこう言ったのであった。

「キホーテさんやコガラシさんが、私たちを楽しませてくれたお礼、ということでいかがかしら?」

・・・全く、あの娘だけは、よくできた子である。

返品もあったため、その分の差し引きではあまり儲からなかったあの取引であったが、結局その感謝料のお蔭で、今日のノルマ分は稼げることとなった。けれども、未だにキホーテの舌はヒリヒリしていたし、返品の荷物が、さっきから邪魔でしょうがない・・・。これらは、次にギルドに戻った際に、ちゃんと返品の品として収め直さねばならないことが決められていたのである。・・・面倒臭いなぁ、そのへんで叩き売りしたったらええのに、と、キホーテはあまりよろしくない考えを巡らせていた。

と、その後ろでもうひとり、何かを考え込むような表情でじっと空を眺めている者がいる。コガラシだ。それに気付いて、キホーテは彼に声をかけた。

「・・・どないしたん?初仕事がようやく終わったんで、疲れたんか?・・・まぁ、無理もないわ。取り敢えず、初めてにしてはようやったで・・・ちょっと、無理しすぎな部分もあったがな。まぁ、ようよう慣れたったらええわ」

それに対して、返事はなかった。よっぽど疲れたんかな?そう思い、キホーテは一旦口を閉じた。

実はそのとき、コガラシはカタナのことを考えていた。彼女の優しい笑顔が、なぜか頭から離れなかったのだった。ふと、通りかかった道の木にナナシの実がなっているのを見かけると、また、彼女から貰ったあの実のすっぱさが蘇ってくる。そして、その前の・・・優しくふわっと抱きしめられたときの、あの感触が・・・。

「カァ」

その思いは、溜息となって彼の口から漏れた。

「・・・なんやコガラシ、また腹減ったんか?まぁ、もう少ししたら診療所や。ちゃんと頼まれた夕食の材料も買ってきたし、またレオナにウマイ飯作ってもらわなな!」

キホーテは勘違いしてそう言った。コガラシはこくんと頷いたが、そこに返答の意はなく、ただ思春期の男子が持つ甘酸っぱい思いが添えられているだけであった。

空には、まだ三日月よりも細い月が昇っていた。けれどもその光は、街の木々に実るナナシの実たちを、まるで笑顔のカタナのように、優しく包んでいたのだった。

それから数分歩いて、行商の一行はようやく宿泊場所に着いた。

と、着くや否や、いきなり中からレダが、とても慌てた様子で飛び出してきた。

「・・・ようやく帰ってきた!お姉ちゃんたち、タイヘンだよっ!!」

それに一行もただならぬ様子を感じ取った。先に口を開いたのは、キホーテだった。

「・・・な、なんや、何がタイヘンなんや!?」

「・・・サンドパンのお兄ちゃんが!お兄ちゃんが!!」

「・・・サ、サンドパンさんが、どうしたんでござんすかっ!?」

コガラシも、もはやカタナのことなど考えてはいなかった。

「・・・兎に角、中に来てっ!!」

言われるままに、一行は診療所へと入っていった。そしてサンドパン兵士の眠る部屋に向かうと、彼らはそこで、思わぬ光景を目にすることとなったのである。

>>第四話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~② 【2008/01/02 00:00】
第二話:ナナシの実(前編)
>>はじめから

見上げたその木には、直径5センチぐらいの丸い木の実が実っていた。形はリンゴにも似ていたが、その色は黄色で、緑色の斑点模様が付いていた。

どこからか風が吹くと、その実はゆらゆらと楽しげに揺れた。それはまるで、笑う赤ん坊を見ているようだと、コガラシは思った。

「・・・ナナシの実か。へえぇ、流石キノガッサ王の国。こんなんまであるとは・・・」

彼の前に座っている、キホーテが答えた。彼らは、ロシナンテの背中の上で揺られながら、キホーテの商品の取引先を回っているところだった。今朝はもう既に2軒回り終え、今から3軒目へと向かっていた。その、道の途中のことである。

「ナナシの実・・・で、ござんすか?」

「あぁ。皮は硬いが、中身はジューシィ。リンゴなんかよりもよっぽど硬くて、シャリッとした歯ごたえと、キリッとした酸っぱさが特徴や。普通は乾燥した砂漠でなんか、絶対栽培できへん木の実やのにな・・・やっぱそんだけ、この国が潤っとるいうことやろうな」

「へぇ・・・何か、お月様のようでござんすね」

その言葉に、キホーテは一瞬、怪訝な顔をしてみせたのだが、

「月ぃ?そうかぁ?・・・あぁ、まぁ確かに、あの緑の斑点が無かったら、そう見えんこともないな・・・」

ふと、そのとき彼女はあることを思い出した。

「そう言えば・・・三日月祭の日って、明後日やなかったかな?」

「三日月祭・・・?お祭り、でござんすか?」

「あぁ、そうや。この砂漠では、どこの国でも行なわれる祭りや。月に一度、三日月の光のもとに集い、砂漠の平和を祈って行なわれる祭りやけど・・・」

そこで彼女は、言葉を曇らす。

「・・・まぁ、最近は戦争やから、どこもやってへんけどな」

「・・・そう、でござんすか・・・」

祭りと聞いて一瞬浮き足立ったコガラシも、その一言でしゅんと沈んでしまった。

けれどそのとき、ロシナンテが口を挟んだ。

「・・・いや、ご主人。まだ戦争に参戦していないこの国なら、ひょっとしたら久々に祭りが見れるかもしれないぞ」

「・・・ホ、ホンマかぁっ・・・!?」

ぱっと花が咲くように、キホーテは笑顔になる。

「・・・あぁ、まぁなんとなくなのだが・・・さっきから、ポフィンを焼く匂いがするんだ」

ポフィン・・・?言われてみれば、キホーテの鼻にも、祭りのときに皆で食べる特別なお菓子の香りが届いた。どこから漂ってくるのだろうか、そう思うと、一向は街の広場に指しかかろうとしていた。そこは、キホーテが嘗て噂で聞いたことがある、巨大な噴水のある美しい広場だ。

「・・・あっ、テントや!・・・皆、テントみたいなん建ててんで!」

キホーテがわくわくした声を上げる。そう、そこでは確かに、祭りの準備が行なわれていた。まだ当日になるまで2日も猶予があるというのに、物凄い張り切りようだ。それは、キホーテが今まで見てきたどの国よりも、盛大なものになりそうな予感がした。

「・・・よかったでござんすね、キホーテさん!」

喜んでそう言ったコガラシに、キホーテは応えてこう言う。

「・・・あぁ、これは儲けるチャンスやで!ワイらも、出店出さな!出店!」

・・・あらっ。喜ぶ観点は、所詮商売にあったようで・・・少し呆れ顔になってしまうコガラシであった。

「・・・にしても、こうポフィンの匂いが漂ってくると・・・腹へってきぃひんか?」

「あぁ、それもそうだな。もう、昼も過ぎたしな」

と、キホーテとロシナンテの会話に釣られて、コガラシのお腹も、ぐうっと小さな音を立てた。ハッとしてキホーテの方を向いたが、どうやら会話は今ので終わっていたようだった。

・・・やっぱり、次の仕事が終わらないと、ご飯にはならないようである。朝から働き尽くしではらぺこのコガラシは、ちょっぴりがっかりした。でも、我慢しなければ。折角、働かせて貰っている身なのだから。そう思って、ここは何も言わずにしておくことにしたのだった。

けれど、見上げるとやはりその広場にも、まん丸のナナシの実がなった木が立っているのだった。おいしそうだな・・・そう思って零れ落ちるよだれを、コガラシは慌てて翼で拭った。

そのときまた、彼のお腹は可愛い音を立てた。その音がキホーテの耳には届かなかったのが、幸いだった。


「・・・っと、ここで間違いあらへんのやな、そうやな・・・!」

キホーテは、さっきから三回ぐらい同じことを言っている。コガラシは、もう一度だけ地図を見て、

「・・・は、はい。地図の通りだったら、間違いない筈でござんす・・・」

その回答にいい加減イライラして、キホーテはコガラシの手から地図をバッと奪った。キホーテがギルドから貰っていたその地図には、どこにも、この眼前にそそり上がる何段もの階段は描かれてなかった・・・まるでどこかの修道寺のように、その階段は続いていた。そしてその頂上に、立派なお屋敷が、どんと構えていたのであった。

この国で、国王の城の次に高い建物ということだったが、まさか入り口までの高さが高いのだとは思いもよらなかった。しかもその幅も、大分狭いときている。ロシナンテで登っていくのは無理だ。あんなとこまで自分の足で荷物を運び出すのかと思うと、キホーテはげんなりしてしまった。

「・・・あ、あのう・・・もしよかったら、荷物だけならあっしが嘴に銜えて、飛んで運ぶでござんすよ・・・?」

と、コガラシのそんな提案に、キホーテはきらんと目を輝かせた。

「・・・おお!ホンマか!じゃあ、頼んだろーかいな!」

が、そう言って袋の紐を銜えさせられると、袋はずっしりと重たかった。なんとかひとりで運べないこともないだろうが・・・何だ、この重さは!?

「世界の貴重なお香入れがぎょうさん入っとるからな。落とさんよう、しっかり頼むで」

「・・・ちょ、ちょっとご主人!いくらなんでも、そいつは無茶だろう!」

ロシナンテに言われ、キホーテはケラケラ笑った。

「・・・なんてな、冗談や!まぁ、無理せんでええって。どうせ重いねんから。ふたりで一緒に運んだったろ、な?」

「・・・むぎぎ・・・だ、大丈夫でござんす・・・頑張るでござんす・・・!」

が、コガラシはキホーテの言うことを聞かず、そのまま階段の先へ飛んでいってしまったのだった。

キホーテは、思わずロシナンテと顔を見合わせた。

「あいつ、何あんなに張り切っとるん・・・?」

「・・・さ、さぁ・・・」


「あーら、お待ちしていたザマスよ!」

息を切らしているコガラシからのバトンパスで荷物を抱えながら、キホーテは屋敷の婦人と挨拶を交わした。鋼の体だけでも妙にぎらぎらと眩しい上に、宝石や金のネックレスまでじゃらじゃらと着飾っている、少しけばけばしい感じのエアームドだ。屋敷の中も、立派な絵画やら壺やらが、まるで美術展でも開いているかのようにわんさか並べられ、よほど成金趣味であることが窺える。

「・・・えぇと、毎度おおきに。ニャース行商ギルドの、キホーテいいます。ご注文の“うしおのおこう”“おはなのおこう”、 “がんせきおこう”、“きよめのおこう”、“こううんのおこう”、“さざなみのおこう”、“のんきのおこう”、“まんぷくおこう” 、“あやしいおこう”と・・・一式お持ちいたしました」

・・・と、今初めて注文の品物の数を聞き、改めてショックを受けるコガラシであった。

「まぁまぁ、それは重かったザマしょ!さぁさぁ、どうぞこちらの椅子におかけになって!お茶でも、一杯ご馳走するザマスわ!」

「・・・あ、お構いなく。勘定してもろうたら、すぐ帰りますんで・・・」

「いえいえ、折角ザマすから!ホラ、そちらの可愛らしいヤミカラスさんもどうぞ!」

エアームドの押しの強さに負け、キホーテらは、高級レストランに置いてあるような豪華なテーブルに座らせられた。婦人は、メイドのコダックをお茶を淹れに向かわせ、自分は行商らの前の席へ座った。キホーテは屋敷の中をキョロキョロ見回り、コガラシは相変わらず呆けたような顔をしていた。

「・・・いやぁ、助かったザマすわ!最初は主人のシュミでこのように世界中の貴重な品々を集めていたんザマすが、見ているウチに私まで興味を持ってしまって!・・・それで今、ちょうど世界のお香入れにハマってるところだったんザマスの。そしたらまさか、ニャースさんたちのギルドで全品扱ってるなんて!・・・もう私、最初に注文を入れたとき、心臓が止まるかと思ったんザマス!」

・・・話の内容はどうあれ、キンキンと煩い喋り方だ。・・・しもた、もしかしたらこのオバハン、ワイの一番嫌いなタイプのポケモンかもしれへんな・・・無理にでも断って、さっさと仕事済ませて帰るべきやったか・・・?心の中でそう思うキホーテだった。

「・・・おっと、ついオシャベリしてしまうところだったザマス。では、品物を戴くことにとにするザマス」

と、いきなり話題を変えられてややびっくりしてしまったキホーテだが、すぐにテーブルの上に、品物が入った袋をドサリと置いた。婦人はその中から、注文の品々を取り出す。出てくる、出てくる。運んできたコガラシを苦しめた貴重品の数々が、ようやく目の前に姿を現した。彼の目には悪意としか感じられないようなその一つ一つを、しかしエアームド婦人は、手にとってうっとりとした表情になっている。

「・・・確かに、確認したザマス・・・あぁ、これで私のお香コレクションの完成ザマス・・・」

「さいでっか。じゃあ、会計の方を・・・」

なんとなくほっとして帳簿を出そうとしたキホーテだったが、婦人はいきなりそれを制すと、困ったような声を作って、こう言った。

「・・・申し訳ないザマスが、ちょっとその前に言っておきたいことがあるんザマス・・・以前、お宅のギルドから戴いた品物のいくつかなんザマスが・・・」

それを聞いて、キホーテはぎくっとした。クレームかと思ったからだ。

「な、何か不良品でもあったんでっか・・・?」

「いえ、そういうわけではないんザマスが・・・」

クレームじゃないとしたら何だ!?品物の返品か!!・・・キホーテは、大分ブルーな気持ちになっていった。商売人として、客に、一番やって欲しくないことだ・・・けれども、決して嫌な顔はできないことである。

「あちらの棚の商品ザマスの。ちょっと、どうしても私たちの屋敷にに合ってないような気がすると、主人から言われてしまって・・・」

その棚の中身を見て、キホーテは愕然となった。そこには、“ほのおのいし”、“かみなりのいし”、“たいようのいし”、並びに、“しめったいわ”、“あついいわ”など、世界のありとあらゆる貴重な岩石の類が、ぎっしりと並べられていたのである。それらは、今日持ってきたお香一式の価値と殆ど変わらない。いや、ひょっとしたら量が多い分、あちらの方が高価かもしれない・・・。

「返品・・・なんて、できないザマスよね?そうザマスよね?」

酷く申し訳無さそうに、エアームドは訊いてくる。当たり前やオバハン!このボケ!危うくそう言い放ってしまいそうになったところを、キホーテはグッと堪えた。ここでNOと言った時の客の対応がどんなものか、キホーテには分かっていた。特に、こんな着飾っているような婦人は、往々にして裏表が激しいというものである。

「・・・あ、はい。ええです、ええです、受け付けますよ・・・せやったら、料金は差し引き、いうことで・・・」

婦人の顔が、ぱっと笑顔になる。その一方でぎょっとしてみせたのは、コガラシだった。

「・・・ちょ、ちょっと待っておくんなせぇ、キホーテさん!来る時もこんな大荷物抱えてきたのに、帰るときもまたあんなの・・・!?」

「アラ、そちらのヤミカラスさん、なんか問題でもあるんザマスか・・・?」

と、キホーテがコガラシの足を思いっきり踏む。ぐえぇっ!と、ニワトリが絞め殺されるときのような声を上げてしまうコガラシ。キホーテは、慌てて作り笑いを浮かべながら、こう取り繕って言った。

「・・・あ、あはは!何でもあらへん、何でもあらへん!コイツ、ちょっと気分悪いだけやねん。何も、問題ありまへんで!」

「あらあら、そうだったんザマスの?それだったら、特別なハーブティでも淹れて差し上げた方がよかったザマスか・・・?」

「・・・お気遣いなく!!」

そう言ったあとで、キホーテは婦人に聞こえないよう、コガラシにサッと耳打ちした。

「お客様のご意志には従う・・・それが、ワイら商売人の責務や!大変かもしれんが、ここは頑張らな!」

「・・・は、はひ・・・」

涙目になりながら、コガラシは何とか返事をする。

そのとき、屋敷の奥からメイドのコダックがお茶とケーキを乗せた盆を持ってきた。お茶は香り立つアール・グレイで、ケーキも、とても高級なマゴの実が入った、甘そうなフルーツ・ケーキである。それを見て、さっきまで引きつっていた行商のふたりの顔は、とつぜん星のように輝き始めた。

「・・・ひゃ、ひゃあああっ!!こ、こんなんいただけまへんがな!」

「いえいえ、つまらないものザマスよ。お気になさらず、召し上がるといいザマス。・・・私の無理を聞いてくださった、お礼ザマスから・・・」

それを聞いて、キホーテの喜びはすぐに半減してしまった。・・・ナルホド、ケーキと引き換えに、返品の恩を返すつもりやな・・・なかなかやるやないか、このオバハン・・・。一方で、コガラシは嬉しくてたまらない様子だった。ようやく、頑張って働いたことが報われたんだ。そう思うと、涙さえ溢れてきそうだった。

・・・だが、早速ケーキを戴こうとする直前、キホーテは婦人が、自分もケーキを食べようとフォークに刺しながら、しかし何か落ち着かないような顔をしているのに気付いた。それで慌てて、ケーキを口に入れようとしていたコガラシの手をピシャリと叩く。

「・・・はっ!何するんでござんすか!?」

折角の楽しみを妨害されたことで思わず噛み付こうとするコガラシだったが・・・。

「・・・あのう、ちょっと言いづらいんザマスが・・・」

「・・・は、はい、どないしたんでっか、お客様!?」

と、婦人は先程示した、返品希望の品が並べられた棚を指し示して、言った。

「・・・ちょっと、返品が決まったと思ったら、早速アレが目障りに思えてきたんザマス・・・ワガママなことだとは思うザマスが、ケーキを召し上がられる前に、あの品物、全部どかしていただけないザマスか・・・?」

・・・うわっ、これはなんというワガママな・・・しかし、どうにも断り辛いシチュエーションである。

「・・・あ、はい、ただ今――」

再び顔を引きつらせながらも、そう言ってキホーテは出て行こうとした――が。

「・・・キホーテさん、大丈夫でござんす・・・あっしに任せておくんなせぇ」

また、コガラシがひとり前に進み出た。・・・コイツ、何考えてんねん!?

「・・・ちょ、ちょっとコガラシ、お前、さっき無理したばっかりやんか・・・えぇて、一緒に運ぼう、な?」

「・・・あら、おふたりで行かれるんザマスか?」

だが、そこで再び婦人が困ったような表情になる。

「・・・折角楽しいお茶会をしようとしているのに、ふたりとも出て行かれたら、私ひとりになってしまうザマス・・・」

・・・って、アンタ!それはアンタが無茶な頼みごとするからやんけ!思わずツッコミを入れてしまいそうになったキホーテだったが、

「大丈夫でござんす!これはあっしの仕事でござんすから。キホーテさんは、ゆっくりお茶を飲んでいておくんなせぇ」

「あっらー!!可愛らしいザマスこと!!頑張って!!」

コガラシの対応に、婦人は面白そうに笑う。・・・コイツ、引っ掻いたろうか?完全にコガラシをいじめてるようにしか思えない婦人の態度にキホーテには一瞬殺意さえ芽生えそうになったが、しかしこの状況、如何ともしがたい。紅茶を飲むこともできずに、ただ心配そうな視線をコガラシに送って、見守っているしかできないでいた。

コガラシは、さっさと棚の石を商売用の袋に仕舞い込むと、口をきゅっと縛って、袋の紐を銜えた。やはり、ずっしりとくる・・・来たときに、お香を入れて持ってきたのの倍近くの重さである。

「むぎぎ・・・」

苦しげに呻きながらも、彼は健気に自分の仕事を全うしようと、荷物を抱えて屋敷から出て行く。出て行った後も、キホーテは暫く、彼が消えた方向を見つめていた。・・・大丈夫か?

「・・・さぁ、それではお茶会の続きをやるザマス」

と、エアームドに言われ、慌てて前に向き直った。

が、そのとき。

ドサッ。

何かが倒れるような音が、外の方から響いてきたのだった。

>>第三話
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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~① 【2008/01/01 00:00】
プロローグ:いつも通りの時間
>>PQⅡから読む

開け放された窓から吹き込んできた心地のよい風が、レオナの頬に優しく触れた。

「おや」

うっとりとした表情をしながらそう言ったのは、彼女の目の前にいる患者、年老いた雌のキモリだった。

「いいわねぇ。今日は、昨日よりは涼しくなるみたいねぇ」

「うふふ、そうですわね」

聴診器を仕舞い、カルテを書きながら、医者は優しい笑顔でそう言った。

「・・・はい、お婆ちゃん。いつものお薬でございますわよ。毎食後、ちゃんと忘れずに飲んでくださいまし」

「いつもありがとうねぇ」

患者はそう言ってレオナの手から薬の入った袋を受け取ると、大変満足した様子で診察室を後にした。

また来るわね。はい、お大事に。いつも通りの診察の時間が、そうやって流れていくのだった。
レオナ(Illust:Gasutoso)

第一話:笑顔でいられる場所

「お疲れ様です、レオナ先生」

患者が出て行ったあと、うーんと背伸びをするレオナに、看護婦のハピナスはそう声をかけた。

「ナースさんこそ、お疲れ様ですわ」

レオナは応えた。今日は、午前中で診察が終わる日だったのだ。

しかし医者は、ナースキャップを外し、帰る支度を始める彼女を、今回は呼び止めなければならなかった。

「・・・すいませんが今日のお昼、何かご用ありますでしょうか?」

「いいえ、何も・・・私に何か、頼みごとでも?」

「はい、それが・・・午後ちょっと出かけなければならない所があるので、その間、レダ様のお世話を頼めないかと思いまして・・・」

「はい、喜んでお引き受けします」

そう言って笑顔を作るナースを見て、レオナはほっとした。いつもは、彼女はレダを自由に遊ばせておくのだが、一昨日、レダが遊びに行った地下通路で、あろうことか大オクタンに襲われたのだという話を聞いてからは、ひとりにさせておくのも良くないと思うようになったからだった。

レダは子どもとはいえ、そろそろひとりで何でもできるようになる年齢だ。だから、自由にさせるのが肝要だと思ってやっていたのだが・・・一度でもそれで危険な状況になれば、ついつい再び心配になってしまうという、親の心よ。

「ところで・・・先生。例の患者については、どうしたらいいんでしょうか・・・?」

と、ナースの言葉に、レオナはやや表情を曇らせた。サンドパン兵士のことだ。彼は今朝も、まだ目覚める様子ではなかった。しかしそろそろ目を覚まして貰わなければ、食事を取って栄養を付けることもできない。

「・・・取り敢えず、もし目覚めたら、何かを食べさせるよう、宜しくお願いしますわ」

困った顔をしながらも、レオナはそう言うことしかできなかった。仕方がない、ここからは患者の問題だ。治療は、一昨日彼が訪れた際に、もうある程度終わってしまっているのだ。

・・・けれど、もし彼が二度と目を覚まさなかったら・・・。そう思うと、レオナは少し胸が苦しかった。キホーテやコガラシにはまだ言ってなかったが、正直、命に別状は無い筈だと、自信を持って言えるような状況ではなかったのである。兵士は今、正に瀕死であった。

と、そんな苦しげなレオナに、ナースは慰めるような笑みを作って、言った。

「そうそう、食べる、で思い出しましたけれど・・・先生、昼食はちゃんと、診療所で食べてから行かれるんですよね?」

レオナは、はっとした。そんな彼女に、ナースはにっこりして、こう言う。

「よかったら、私に作らせてくれませんか?丁度このあいだ、おいしいオムレツのレシピを手に入れたもので・・・」

「・・・わぁっ、オムレツ!?じゃあ・・・悪いけど、頼みましょうかしら?レダ様、オムレツ大好きなんですの。きっと、喜んでいただけますわ!」

急にレオナの表情は、ぱっと明るくなった。それを見て、ナースもようやく安心した。このお医者さんには、もう辛い顔はさせてはいけない。彼女に雇われる看護婦として、いや、ひとりの友人として、ナースはそう思ったのだった。

やがて診療所のキッチンから卵の焼ける美味しい匂いがしてきた頃、二階でお絵かきをしていたレダが、それを嗅ぎつけて下へ降りてきた。そして、レダと、レオナと、ナースの、楽しい食事の時間が始まった。

その様子はとても楽しそうで、はたから見たらどうしてもそれが、嫌がおうにも毎年いくらかの死者を出してしまう、診療所という施設で行なわれているものとは、到底思えないだろう。

いや、訂正しておく。そのような哀しい運命を背負わずにはいられない診療所という施設だからこそ、普段はその場所で、決して笑顔というものを絶やしてはいけないのだ。

心地よい風が、再び窓から流れ込んで、彼女たちの頬を、優しく撫でていった。


午後、レオナが訪れたのは、役所だった。昨晩キホーテたちとの約束通り、この国で彼らが正式に商売を行なえるようにするための、パスポートを発行して貰うためだ。

「行商のニャースとヤミカラスとバクーダ、それにサンドパンだね!わかった、パスポート作ってあげるよ!これでまた、国が楽しくなるね!ともだち、どもだち~!!」

役所の窓口のプクリンは、ウキウキした様子で、レオナが書いた数枚の書類を受け取ると、一旦役所の奥へ引っ込んでいった。とても友好的な役所の対応に、レオナはほっと一安心した。

結局、患者のサンドパンは、キホーテらと同じ、行商で通すことにした。もし他所の国の兵士だと正直に言えば、戦争中の現在、いくら手負いの身であるとはいえ、即刻お引き取りください、と言われるのが目に見えていたからだ。

けれども嘘を付くのはやはり、多くのポケモンたちから信頼されている医者として、少し良心が咎められることだ。レオナはふと思った。なぜそうまでして、自分は赤の他人である彼らの世話をやっているのだろうか、と。

「・・・ちょっと、せんせ、レオナせんせぇ」

と、背後から彼女を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、そこにいたのは城の役人のひとりである、グレッグルだ。

「あら・・・これはこれは、グレッグル様。ご機嫌、麗しゅう・・・」

「・・・見ていましたよ~。新しい入国者のパスポートを、それも一度に四枚も発行ですか~?」

役人は、丁寧なレオナの挨拶もあっさり受け流し、陰険そうな目つきを彼女に送りながら、言った。

「困りますなぁ~・・・あなたのようにお城の重役を勤めておられる方が、そうぽんぽんと他所からのポケモンを国に入れられては・・・大惨事を招くことにもなりかねません。スパイなども平気でのさばる、ブッソウな世の中ですからね」

レオナは少し、むっとした。そうぽんぽんなんて、自分は入れているつもりはない。確かに一度に四人もとなると多いような気もするが、発行して貰うのはこれが始めてだ。

きっとこの役人は、毎回誰かがパスポートの発行に来るたびに、こうやって難癖つけているのに違いない。顔に似合った、陰険な仕事よ。

と、レオナが何かを言う前に、グレッグルはレオナの手から、先程彼女が窓口のプクリンに渡した書類の写しを、いきなりバッと奪い取った。

「・・・きゃっ、何をするんですの!?」

「・・・おっと、失礼。これも私の仕事ですから。あのプクリンだけに任していたら、一体どんなポケモンが入国許可を得たのか、ちゃんと上まで届かないことがありましてな・・・なになに、行商の四人組か。ニャースにヤミカラスにバクーダ・・・うぅん、このサンドパンというのは・・・?」

明らかに疑いを抱いたような声を出し、グレッグルはレオナを睨んだ。

「・・・サンドパンが、行商をしていたら何かまずいとでもおっしゃいますの・・・?」

「・・・いえいえ、そんなわけではありませんが・・・ただこの者だけ、名前が妙だと思いまして・・・」

そう、そこに記載されていたのは、“SAD06”という、およそ名前とは思えないものだった。しかし先日コガラシらに尋ねたところ、彼が発見当時持っていたのだという楯(それは、この国に来る前に巻き込まれた戦いの中で破壊されてしまったらしく、ただの破片しか残っていなかったのだが)に刻まれたその文字を見せられ、それが名前であろうと言われたのだ。コガラシがサンドパンに名前を問うたとき、彼がこれを指差したのだというから、恐らく間違いはないのだろう。

「・・・確かに、名前としては妙な感じがするかもしれませんわ。けれど、外国の方って、そういうものですわよ。いつでも、ご自分の国の考え方のみで物事を判断なさらぬよう・・・」

けれど、レオナが機転を利かしてそう言うと、グレッグルももはや何も言い返すことができなかった。何だか腑に落ちない顔をしながらも、グレッグルはレオナに、書類の写しを返したのだった。

「・・・まぁ、いいでしょう。しかし、今後はお気をつけくださいよ・・・私、次の議会で、これからこの国への入国者を制限する法案を提出しようと思ってますからね。もしその法案が可決されれば、今後暫く、自分の勝手な判断で他国からのポケモンの入国を認めた者には、厳しい処罰が下されるようになります・・・」

「あら、それはそれは・・・可決されるよう、頑張ってくださいまし。単に制限するだけでは、何もこの国にとって益となるようなことにはならないと、私は思いますけれど」

グレッグルに、レオナも挑戦的な言葉を放つ。グレッグルは、ニヤリと憎たらしい笑みを浮かべながら、反論してこう言った。

「グフフフフ・・・強気でいられるのも、今のうちですよ・・・既に大勢の議員は、私に賛成する立場を取っています」

「あら、多数決では解決しませんわ。この国の議会に判断を下すのは、最終的には全て国王の意思・・・それをお忘れにならぬよう・・・」

売り言葉に、買い言葉。これを諺に、ドードーの口論に終わりは無い、とも言うが、今回グレッグルはそれで引き下がることにしたようだ。ただ、「さて、どうでしょうな・・・」と、そんな捨て台詞のようなものも残しての退散ではあったが。

彼が見えなくなったところで、ようやくレオナはほっと溜息を吐く。城の重役同士の派閥というのも、なかなか厄介なものである。

「お待たせ~!はい、パスポート4枚、発行準備できたよ~!」

と、丁度その時、先ほど奥へ引っ込んでいたプクリンが、パスポート4枚を持ち、更にひとりのドーブルを伴って窓口の外へ出てきた。

「紹介するよ。このコは、ドーブルのシャラク君。彼があとでキミの家に言って、このパスポートに本人たちの似顔絵を描くよ。それで、これらのパスポートは完成となるからね!」

なるほど、そういうシステムになっていたのか。レオナはにっこりと微笑んで、紹介されたドーブルに握手を求めた。

「では、今晩、お待ちしておりますわね!」

が、握手を受けて、シャラクは何も返事をしなかった。顔を真っ赤にして、突っ立っている。ひょっとして、何か気に障るような態度を取ってしまったのかとレオナは慌てたが、

「・・・わぁっ、シャラク君、てれやさんだね!あははははっ!」

思春期の男の子のように、ただもじもじとしているだけであった・・・。

役所にも、なかなか個性的なキャラクターが揃っているようである。


診療所に帰りながら、レオナはまた、役所でふと思ったことの続きを考えていた。

どうして私は、いきなり診療所に押しかけてきた彼らを、世話してやろうと考えるに至ったのだろうか・・・。確かに、流れとしてそうなったという部分もある。しかし本当に嫌ならば、断って追い出すことぐらいできた筈だ。例え、レダに嫌われることになろうとしても。

大体、他所の国の兵士を病人として預かるなんて、冷静に考えたらありえないことだった。もし彼が、元気になっていきなり暴れでもしたら、どうなる。それこそ、グレッグルが考えるように、大惨事に繋がるというものだ。

けれど初めてレオナが彼を見たとき、救わなければならないと、強い思いが溢れ出てきたことを、彼女は覚えている。もし私が手を貸さねば、このポケモンは確実に死んでしまう。それが、耐えられなかった。

もう誰も、見殺しになんてしたくなかった。あの時のような思いは、二度と味わいたくなかったのだ。

ふと、涙が零れた。あぁ、また嫌なことを思い出してしまったと思った。けれど、涙はそれから、とめどなく溢れてきた。

レオナは、なるべく人目につかないように、街の中を歩いた。泣いているのを他人に見られるのが恥ずかしいのだという思いも、そこにはあった。

けれど本当は、あの記憶を、外に出さず、自分の中にしまっておきたいのだという気持ちの方が強かったようにも思う。あれは、辛い記憶だった。誰に話しても、悲劇としか受け取られないような記憶だ。けれども、自分にとっては宝石のように光放つ、大切な記憶だった。だからこそ、忘れられないのだし、忘れたくないものだった。

少し急ぎ足で、彼女は帰路を歩いた。診療所に着いたら、きっと自分はまた、笑えるだろうと思った。だってあそこは、沢山の辛い記憶を背負っている私が、ちゃんと笑顔でいられる、大切な場所なのだから。

風が、頬を撫でた。もうすぐ、診療所に着く頃だった。

>>第二話
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