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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~① 【2008/01/01 00:00】
プロローグ:いつも通りの時間
>>PQⅡから読む

開け放された窓から吹き込んできた心地のよい風が、レオナの頬に優しく触れた。

「おや」

うっとりとした表情をしながらそう言ったのは、彼女の目の前にいる患者、年老いた雌のキモリだった。

「いいわねぇ。今日は、昨日よりは涼しくなるみたいねぇ」

「うふふ、そうですわね」

聴診器を仕舞い、カルテを書きながら、医者は優しい笑顔でそう言った。

「・・・はい、お婆ちゃん。いつものお薬でございますわよ。毎食後、ちゃんと忘れずに飲んでくださいまし」

「いつもありがとうねぇ」

患者はそう言ってレオナの手から薬の入った袋を受け取ると、大変満足した様子で診察室を後にした。

また来るわね。はい、お大事に。いつも通りの診察の時間が、そうやって流れていくのだった。
レオナ(Illust:Gasutoso)

第一話:笑顔でいられる場所

「お疲れ様です、レオナ先生」

患者が出て行ったあと、うーんと背伸びをするレオナに、看護婦のハピナスはそう声をかけた。

「ナースさんこそ、お疲れ様ですわ」

レオナは応えた。今日は、午前中で診察が終わる日だったのだ。

しかし医者は、ナースキャップを外し、帰る支度を始める彼女を、今回は呼び止めなければならなかった。

「・・・すいませんが今日のお昼、何かご用ありますでしょうか?」

「いいえ、何も・・・私に何か、頼みごとでも?」

「はい、それが・・・午後ちょっと出かけなければならない所があるので、その間、レダ様のお世話を頼めないかと思いまして・・・」

「はい、喜んでお引き受けします」

そう言って笑顔を作るナースを見て、レオナはほっとした。いつもは、彼女はレダを自由に遊ばせておくのだが、一昨日、レダが遊びに行った地下通路で、あろうことか大オクタンに襲われたのだという話を聞いてからは、ひとりにさせておくのも良くないと思うようになったからだった。

レダは子どもとはいえ、そろそろひとりで何でもできるようになる年齢だ。だから、自由にさせるのが肝要だと思ってやっていたのだが・・・一度でもそれで危険な状況になれば、ついつい再び心配になってしまうという、親の心よ。

「ところで・・・先生。例の患者については、どうしたらいいんでしょうか・・・?」

と、ナースの言葉に、レオナはやや表情を曇らせた。サンドパン兵士のことだ。彼は今朝も、まだ目覚める様子ではなかった。しかしそろそろ目を覚まして貰わなければ、食事を取って栄養を付けることもできない。

「・・・取り敢えず、もし目覚めたら、何かを食べさせるよう、宜しくお願いしますわ」

困った顔をしながらも、レオナはそう言うことしかできなかった。仕方がない、ここからは患者の問題だ。治療は、一昨日彼が訪れた際に、もうある程度終わってしまっているのだ。

・・・けれど、もし彼が二度と目を覚まさなかったら・・・。そう思うと、レオナは少し胸が苦しかった。キホーテやコガラシにはまだ言ってなかったが、正直、命に別状は無い筈だと、自信を持って言えるような状況ではなかったのである。兵士は今、正に瀕死であった。

と、そんな苦しげなレオナに、ナースは慰めるような笑みを作って、言った。

「そうそう、食べる、で思い出しましたけれど・・・先生、昼食はちゃんと、診療所で食べてから行かれるんですよね?」

レオナは、はっとした。そんな彼女に、ナースはにっこりして、こう言う。

「よかったら、私に作らせてくれませんか?丁度このあいだ、おいしいオムレツのレシピを手に入れたもので・・・」

「・・・わぁっ、オムレツ!?じゃあ・・・悪いけど、頼みましょうかしら?レダ様、オムレツ大好きなんですの。きっと、喜んでいただけますわ!」

急にレオナの表情は、ぱっと明るくなった。それを見て、ナースもようやく安心した。このお医者さんには、もう辛い顔はさせてはいけない。彼女に雇われる看護婦として、いや、ひとりの友人として、ナースはそう思ったのだった。

やがて診療所のキッチンから卵の焼ける美味しい匂いがしてきた頃、二階でお絵かきをしていたレダが、それを嗅ぎつけて下へ降りてきた。そして、レダと、レオナと、ナースの、楽しい食事の時間が始まった。

その様子はとても楽しそうで、はたから見たらどうしてもそれが、嫌がおうにも毎年いくらかの死者を出してしまう、診療所という施設で行なわれているものとは、到底思えないだろう。

いや、訂正しておく。そのような哀しい運命を背負わずにはいられない診療所という施設だからこそ、普段はその場所で、決して笑顔というものを絶やしてはいけないのだ。

心地よい風が、再び窓から流れ込んで、彼女たちの頬を、優しく撫でていった。


午後、レオナが訪れたのは、役所だった。昨晩キホーテたちとの約束通り、この国で彼らが正式に商売を行なえるようにするための、パスポートを発行して貰うためだ。

「行商のニャースとヤミカラスとバクーダ、それにサンドパンだね!わかった、パスポート作ってあげるよ!これでまた、国が楽しくなるね!ともだち、どもだち~!!」

役所の窓口のプクリンは、ウキウキした様子で、レオナが書いた数枚の書類を受け取ると、一旦役所の奥へ引っ込んでいった。とても友好的な役所の対応に、レオナはほっと一安心した。

結局、患者のサンドパンは、キホーテらと同じ、行商で通すことにした。もし他所の国の兵士だと正直に言えば、戦争中の現在、いくら手負いの身であるとはいえ、即刻お引き取りください、と言われるのが目に見えていたからだ。

けれども嘘を付くのはやはり、多くのポケモンたちから信頼されている医者として、少し良心が咎められることだ。レオナはふと思った。なぜそうまでして、自分は赤の他人である彼らの世話をやっているのだろうか、と。

「・・・ちょっと、せんせ、レオナせんせぇ」

と、背後から彼女を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、そこにいたのは城の役人のひとりである、グレッグルだ。

「あら・・・これはこれは、グレッグル様。ご機嫌、麗しゅう・・・」

「・・・見ていましたよ~。新しい入国者のパスポートを、それも一度に四枚も発行ですか~?」

役人は、丁寧なレオナの挨拶もあっさり受け流し、陰険そうな目つきを彼女に送りながら、言った。

「困りますなぁ~・・・あなたのようにお城の重役を勤めておられる方が、そうぽんぽんと他所からのポケモンを国に入れられては・・・大惨事を招くことにもなりかねません。スパイなども平気でのさばる、ブッソウな世の中ですからね」

レオナは少し、むっとした。そうぽんぽんなんて、自分は入れているつもりはない。確かに一度に四人もとなると多いような気もするが、発行して貰うのはこれが始めてだ。

きっとこの役人は、毎回誰かがパスポートの発行に来るたびに、こうやって難癖つけているのに違いない。顔に似合った、陰険な仕事よ。

と、レオナが何かを言う前に、グレッグルはレオナの手から、先程彼女が窓口のプクリンに渡した書類の写しを、いきなりバッと奪い取った。

「・・・きゃっ、何をするんですの!?」

「・・・おっと、失礼。これも私の仕事ですから。あのプクリンだけに任していたら、一体どんなポケモンが入国許可を得たのか、ちゃんと上まで届かないことがありましてな・・・なになに、行商の四人組か。ニャースにヤミカラスにバクーダ・・・うぅん、このサンドパンというのは・・・?」

明らかに疑いを抱いたような声を出し、グレッグルはレオナを睨んだ。

「・・・サンドパンが、行商をしていたら何かまずいとでもおっしゃいますの・・・?」

「・・・いえいえ、そんなわけではありませんが・・・ただこの者だけ、名前が妙だと思いまして・・・」

そう、そこに記載されていたのは、“SAD06”という、およそ名前とは思えないものだった。しかし先日コガラシらに尋ねたところ、彼が発見当時持っていたのだという楯(それは、この国に来る前に巻き込まれた戦いの中で破壊されてしまったらしく、ただの破片しか残っていなかったのだが)に刻まれたその文字を見せられ、それが名前であろうと言われたのだ。コガラシがサンドパンに名前を問うたとき、彼がこれを指差したのだというから、恐らく間違いはないのだろう。

「・・・確かに、名前としては妙な感じがするかもしれませんわ。けれど、外国の方って、そういうものですわよ。いつでも、ご自分の国の考え方のみで物事を判断なさらぬよう・・・」

けれど、レオナが機転を利かしてそう言うと、グレッグルももはや何も言い返すことができなかった。何だか腑に落ちない顔をしながらも、グレッグルはレオナに、書類の写しを返したのだった。

「・・・まぁ、いいでしょう。しかし、今後はお気をつけくださいよ・・・私、次の議会で、これからこの国への入国者を制限する法案を提出しようと思ってますからね。もしその法案が可決されれば、今後暫く、自分の勝手な判断で他国からのポケモンの入国を認めた者には、厳しい処罰が下されるようになります・・・」

「あら、それはそれは・・・可決されるよう、頑張ってくださいまし。単に制限するだけでは、何もこの国にとって益となるようなことにはならないと、私は思いますけれど」

グレッグルに、レオナも挑戦的な言葉を放つ。グレッグルは、ニヤリと憎たらしい笑みを浮かべながら、反論してこう言った。

「グフフフフ・・・強気でいられるのも、今のうちですよ・・・既に大勢の議員は、私に賛成する立場を取っています」

「あら、多数決では解決しませんわ。この国の議会に判断を下すのは、最終的には全て国王の意思・・・それをお忘れにならぬよう・・・」

売り言葉に、買い言葉。これを諺に、ドードーの口論に終わりは無い、とも言うが、今回グレッグルはそれで引き下がることにしたようだ。ただ、「さて、どうでしょうな・・・」と、そんな捨て台詞のようなものも残しての退散ではあったが。

彼が見えなくなったところで、ようやくレオナはほっと溜息を吐く。城の重役同士の派閥というのも、なかなか厄介なものである。

「お待たせ~!はい、パスポート4枚、発行準備できたよ~!」

と、丁度その時、先ほど奥へ引っ込んでいたプクリンが、パスポート4枚を持ち、更にひとりのドーブルを伴って窓口の外へ出てきた。

「紹介するよ。このコは、ドーブルのシャラク君。彼があとでキミの家に言って、このパスポートに本人たちの似顔絵を描くよ。それで、これらのパスポートは完成となるからね!」

なるほど、そういうシステムになっていたのか。レオナはにっこりと微笑んで、紹介されたドーブルに握手を求めた。

「では、今晩、お待ちしておりますわね!」

が、握手を受けて、シャラクは何も返事をしなかった。顔を真っ赤にして、突っ立っている。ひょっとして、何か気に障るような態度を取ってしまったのかとレオナは慌てたが、

「・・・わぁっ、シャラク君、てれやさんだね!あははははっ!」

思春期の男の子のように、ただもじもじとしているだけであった・・・。

役所にも、なかなか個性的なキャラクターが揃っているようである。


診療所に帰りながら、レオナはまた、役所でふと思ったことの続きを考えていた。

どうして私は、いきなり診療所に押しかけてきた彼らを、世話してやろうと考えるに至ったのだろうか・・・。確かに、流れとしてそうなったという部分もある。しかし本当に嫌ならば、断って追い出すことぐらいできた筈だ。例え、レダに嫌われることになろうとしても。

大体、他所の国の兵士を病人として預かるなんて、冷静に考えたらありえないことだった。もし彼が、元気になっていきなり暴れでもしたら、どうなる。それこそ、グレッグルが考えるように、大惨事に繋がるというものだ。

けれど初めてレオナが彼を見たとき、救わなければならないと、強い思いが溢れ出てきたことを、彼女は覚えている。もし私が手を貸さねば、このポケモンは確実に死んでしまう。それが、耐えられなかった。

もう誰も、見殺しになんてしたくなかった。あの時のような思いは、二度と味わいたくなかったのだ。

ふと、涙が零れた。あぁ、また嫌なことを思い出してしまったと思った。けれど、涙はそれから、とめどなく溢れてきた。

レオナは、なるべく人目につかないように、街の中を歩いた。泣いているのを他人に見られるのが恥ずかしいのだという思いも、そこにはあった。

けれど本当は、あの記憶を、外に出さず、自分の中にしまっておきたいのだという気持ちの方が強かったようにも思う。あれは、辛い記憶だった。誰に話しても、悲劇としか受け取られないような記憶だ。けれども、自分にとっては宝石のように光放つ、大切な記憶だった。だからこそ、忘れられないのだし、忘れたくないものだった。

少し急ぎ足で、彼女は帰路を歩いた。診療所に着いたら、きっと自分はまた、笑えるだろうと思った。だってあそこは、沢山の辛い記憶を背負っている私が、ちゃんと笑顔でいられる、大切な場所なのだから。

風が、頬を撫でた。もうすぐ、診療所に着く頃だった。

>>第二話
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