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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~③ 【2008/01/03 00:00】
第三話:ナナシの実(後編)
>>はじめから >>前回の話

ドサッ。

何かが倒れるような音に、キホーテは慌てて席から立った。・・・コガラシ、いわんこっちゃない!

しかし、目の前のエアームド婦人は、それを許さなかった。先程までの温和な対応はどうしたのやら、いきなり鬼のような形相になって、彼女にぴしゃりとこう言い放ったのである。

「・・・ダメざます!あのコ、ひとりでやるって言ったんザマスから!ちゃんと最後までやらせなきゃダメザマス!それが若いコの育成というやつザマしょ!」

何だかもっともらしいことを言ってはいるが、全ては彼女のワガガマにつき合わされているが所以のことである・・・。だが、彼女の恐ろしい顔を前にしては、キホーテは何も言い返すことができなかった。ただ、怯えて引きつったような笑みを浮かべながら、再び席に沈むだけである。

「・・・さぁ、どうぞ。ケーキを召し上がれ!」

客の素直な姿勢に笑みを取り戻した婦人は、そう言った。ハッキリ言って、食べる気にもなれなかったが、もはや抵抗の余地はなかった。

震える手で、キホーテはケーキの一口をフォークに刺し、ゆっくりと口に運んだ。

パクリ。

そして今、それが彼女の口の中へと入ったのだった。


視界がぼやけて、何も見ることができない。ただ、音だけがどこからか聞こえてくる。

ゼーハー、ゼーハー。誰かが、荒い呼吸を繰り返している。そして、ドクドクという心臓の音・・・。

・・・あぁ、これは、あっしの音でござんすか・・・。朦朧とする意識の中で、コガラシは思った。

「・・・だいじょうぶ?」

と、誰かが呼びかける声が聞こえる。・・・キホーテさん?・・・ははっ・・・申し訳ござんせん・・・あっし、初仕事、頑張るつもりだったんでござんすが・・・なんだか、足引っ張ってしまったみたいで・・・。

申し訳ござんせん、申し訳ござんせん、申し訳・・・。

何だか酷く惨めな気持ちになって、コガラシは何度も謝った。けれども、呼びかけてくる声はそれに対して叱りつけるでもなく、かと言って許すわけでもなく、ただ、何度も呼びかけてきた。

「・・・ねぇ、どうしたのかしら?しっかりしてくださいな!大丈夫なの?ねぇ、起きてください!」

・・・キホーテじゃ、ない?

それに気付くと、だんだん視界もはっきりしてきた。目の前にいたのは・・・エアームドだ。

しかしその印象は、屋敷にいた婦人とはさっぱり異なっていた。ネックレスのようなものを下げてはいたが、無駄に着飾った印象は与えず、表情は優しげで、とても清楚な感じがする。そしてその体型も、スラッとした美しい形であった。

エアームドは、ようやくコガラシの目が覚めたことがわかると、穏やかな表情になって、

「・・・まぁっ、よかった・・・気がついたのね!」

そう言って、小さなコガラシの体をふわっと抱き寄せたのだった。一体、何がなんだかわからなかったが、コガラシは思わず顔を真っ赤にしてしまった。女性から抱きしめられるなんて、これが産まれて初めてのことだった。その体は、鋼でできている筈なのに、どことなく柔らかかった。彼女の持つ雰囲気が、そう感じさせてくれるのかもしれない。ともかく――きもちいい。そう感じてしまったのだった。

・・・だが、暫くするとだんだん苦しくなってきた。ハッとすると、コガラシは、エアームドが突然、彼を抱いたままいびきをかき始めていることに気付いた。

「・・・くぅ・・・くぅ・・・」

「・・・ちょ、ちょっと!く、苦しいでござんす!・・・は、離して・・・!」

いきなり、コガラシはぱっと解放されて、地面に転げ落ちた。

「・・・あら、やだ!私ったら・・・ヤミカラスさんを抱き枕に、寝てしまうところだったかしら!」

・・・いや、思いっきり寝ていたのだが・・・。

「・・・大丈夫か、コガラシ」

と、もうひとり、別のポケモンが声をかけてきた。階段の下で待っていた筈の、ロシナンテだった。ということは、自分は階段の下まで転げ落ちたのだろうか・・・はっ、そういえば、荷物は!?

と、慌てて周囲をキョロキョロしだすコガラシに、ロシナンテは溜息をついてこう言った。

「・・・まったく、初めてのくせに無理をするからだ!ホラ、荷物はちゃんと私が受け取った。・・・この、エアームドのカタナさんからな」

ロシナンテは、既に背中に背負っている荷物を見せた。その横で、先程のエアームド、カタナがニコッリと微笑む。

「ごめんなさい・・・おうちの方からいきなり大荷物で出てらしたので・・・慌てて、お助けしようと思ったのですが、先にヤミカラスさんの方が力尽きなさって・・・ほんとに、ごめんなさい、荷物だけしか助けられなくて!」

「・・・あっ、いえいえ!ありがとうござんす!荷物だけ無事だったら、ようござんす。あっしは・・・へへっ、この通り元気でござんすから!」

そう言って、コガラシは立ち上がって見せようとしたのだが、急にふらっと体が傾いて、再び地面に転がってしまった。そして、お腹がきゅうっと悲鳴を上げる。

「・・・馬鹿者!腹が減っていたなら、最初からそう言えばいいものを!私らのペースに、無理して合わせる必要などない!」

・・・うぅっ。そう言われて、何だか再び惨めになって涙してしまうコガラシだった。

「・・・はい、もしよかったら、コレ、お食べにならないかしら?」

と、カタナがコガラシに何かを差し出した。それは、見たことがある木の実だ。そう、あれは確かここへ来る前・・・広場にあった木にも実っていた、黄色いお月様のような木の実。そうだ、ナナシの実だ!

ぱくっ。と、何も言わずコガラシはその実にかぶりついた。キホーテが教えてくれたように、キリリとした酸味が口に広がる・・・自分の好物の、故郷の森で実っていたマトマの実のようなしぶさや辛さは、そこにはなかった。しかしそれとはまた別の、なんとも言えぬおいしさが、その中にはつまっていた。

「・・・こら、礼ぐらい言わないか!」

ロシナンテに言われて、慌てて「あひあほおあんふ(ありがとござんす)!」と、コガラシは言った。けれどそれを見て、カタナはまた優しい笑みでこう言うのだった。

「・・・うふふ、よほどお腹がすいてらしたのかしらね!」

それを見て、コガラシはまた、かぁっと顔が赤くなってしまった。・・・なんて綺麗なポケモンだろう。一体、どこのお嬢様だろうか。

・・・が、少し考えれば簡単に予想もできそうなものだ。そう、自分が今までいた屋敷・・・あそこの婦人も、エアームドだったじゃないか。

と、いうことは・・・。

「・・・では、お屋敷へ戻りましょうかしら?」

「・・・ほへ!?」

やはり、と思ったが、コガラシは驚いたようなその台詞を抑え切れなかったのだった。

「・・・あら、紹介が遅れてしまってごめんなさい・・・私、この屋敷の娘です。どうぞ、よろしくおねがいいたします!」

母親とは似ても似つかぬ愛らしい笑みで、カタナはそう言った。


「お母さま!只今戻りました!」

カタナと、そしてコガラシは屋敷へと入った。

「ぎぃやあああぁああああぁあああっ!!」

突然、中から耳をつんざくような悲鳴が響いた。

「・・・ひゃっ!い、一体何が起こったのかしら!?」

「・・・うぁっ、あっしらが先程通された客室からでござんす!行ってみるでござんす!」

慌てて駆けつけると、そこには何と、テーブルから転げ落ち、床の上でのた打ち回るキホーテの姿があった。

「・・・か、か、辛ぁあああぁああーっ!!」

・・・辛い?見ると、キホーテの手には、ケーキの欠片が付いたフォークが握られていた。あの、一見甘そうに見えたマゴの実のケーキが・・・

「・・・お母さまっ!またお客様に、からし入りケーキをお出しになったのかしらっ!?」

・・・か、からし入りケーキ!?

「・・・あら、カタナちゃん・・・帰って早々、そんなにお母さまに向かって怒らないで欲しいザマス・・・」

「お母さまが悪いんじゃないかしら!?いつも私が申し上げているのに・・・お客様をからかうのは、いい加減にしてほしいって・・・!!」

「だって~、そこのニャースちゃんとヤミカラスちゃん、とっても可愛いかったんザマス・・・私、可愛いコたち見ると、つい苛めたくなるザマス」

キホーテは、口から“かえんほうしゃ”の如き炎を吐き出しながら、まだ苦しんでいる。水で冷やしてやりたいところだが、テーブルのカップには、まだ湯気が立っているアール・グレイしか入っていない・・・。コガラシは、ただオロオロするばかりだ。

「オムライス、お客様にお水を!」

と、カタナの声に、傍で突っ立っていたメイドのコダックが、慌ててキホーテの元までだばだばと走ってきて、その体に口から“みずでっぽう”を食らわせた!

「・・・ぎゃぶっ!」

「・・・って、そうじゃないでしょ!?ちゃんと飲ませて差し上げなきゃ、意味無いんじゃないかしら!ホラ、お台所から持ってきて!早く!」

トボけたメイド、オムライスは、ハッとして、急いで炊事場まで駆けていった。まぁそれも、ハタから見たらペンギンの行進のようなコミカルな動きでしかなかったのだが。

「・・・全く、ウチのお母さまが、また申し訳ないことをしたんじゃないかしら・・・ごめんなさい」

「・・・あ、あぁ、いえいえ!大丈夫でござんす!お客様のご意志には従うのが、あっしら、商売人の責務でござんすから・・・そうでござんすよね、キホーテさん」

「くぁw背drftgyふじこlp;@:「」!!!!!」

その事を最初にコガラシに教えた本人は、しかし何かを訴えるようにぎゃあぎゃあと喚いている。ただ、全身水びだしになりながらも、口の中はまだ辛いようで、全く言葉にはならない様子だったのだが・・・。

今はコガラシが、ただ誤魔化し笑いをする番だった。あははっ、そう声に出して、彼は笑った。

「・・・あはははっ」

と、それに釣られたのか、カタナも笑い出す。それはまた、コガラシがドキっとしてしまうような、とても綺麗な笑顔だった。そして、婦人もたいそう満足した様子で、高らかに笑っていた。オホホホホホ、と。

まだ少し不満の残っていたキホーテは、そうやって自分が笑われていると、なんだかもうどうでもいいような気分になってきた。してやられた、と、そんな感じだった。そしてその怒りは、オムライスが水を持ってきてくれたことで、口から出る炎と一緒に、消えてなくなった。

そしてそのあと、キホーテも笑った。


「・・・ハァ、それにしてもあのエアームドの屋敷・・・散々やったで!」

本日全ての仕事を終え、レオナの待つ診療所に変える途中、キホーテは今日一番厄介だった取引先を思い出し、ぼやいた。

「・・・まぁ、いいじゃないか、ちゃんと感謝料とやらを払ってもらったんだろう?」

それに応えて、ロシナンテが言う。感謝料・・・あの後、母親が酷いことをしたお詫びに、と言って、屋敷の娘カタナは、いくらか慰謝料をくれようとしたのだ。それを最初、キホーテは断った。いやいや、こっちはただ、してやられただけや、と言って・・・それも、商人の礼儀というものである。

けれどもカタナは、それならば、と言ってニッコリ微笑みながら、再びポケ(金)を差し出してこう言ったのであった。

「キホーテさんやコガラシさんが、私たちを楽しませてくれたお礼、ということでいかがかしら?」

・・・全く、あの娘だけは、よくできた子である。

返品もあったため、その分の差し引きではあまり儲からなかったあの取引であったが、結局その感謝料のお蔭で、今日のノルマ分は稼げることとなった。けれども、未だにキホーテの舌はヒリヒリしていたし、返品の荷物が、さっきから邪魔でしょうがない・・・。これらは、次にギルドに戻った際に、ちゃんと返品の品として収め直さねばならないことが決められていたのである。・・・面倒臭いなぁ、そのへんで叩き売りしたったらええのに、と、キホーテはあまりよろしくない考えを巡らせていた。

と、その後ろでもうひとり、何かを考え込むような表情でじっと空を眺めている者がいる。コガラシだ。それに気付いて、キホーテは彼に声をかけた。

「・・・どないしたん?初仕事がようやく終わったんで、疲れたんか?・・・まぁ、無理もないわ。取り敢えず、初めてにしてはようやったで・・・ちょっと、無理しすぎな部分もあったがな。まぁ、ようよう慣れたったらええわ」

それに対して、返事はなかった。よっぽど疲れたんかな?そう思い、キホーテは一旦口を閉じた。

実はそのとき、コガラシはカタナのことを考えていた。彼女の優しい笑顔が、なぜか頭から離れなかったのだった。ふと、通りかかった道の木にナナシの実がなっているのを見かけると、また、彼女から貰ったあの実のすっぱさが蘇ってくる。そして、その前の・・・優しくふわっと抱きしめられたときの、あの感触が・・・。

「カァ」

その思いは、溜息となって彼の口から漏れた。

「・・・なんやコガラシ、また腹減ったんか?まぁ、もう少ししたら診療所や。ちゃんと頼まれた夕食の材料も買ってきたし、またレオナにウマイ飯作ってもらわなな!」

キホーテは勘違いしてそう言った。コガラシはこくんと頷いたが、そこに返答の意はなく、ただ思春期の男子が持つ甘酸っぱい思いが添えられているだけであった。

空には、まだ三日月よりも細い月が昇っていた。けれどもその光は、街の木々に実るナナシの実たちを、まるで笑顔のカタナのように、優しく包んでいたのだった。

それから数分歩いて、行商の一行はようやく宿泊場所に着いた。

と、着くや否や、いきなり中からレダが、とても慌てた様子で飛び出してきた。

「・・・ようやく帰ってきた!お姉ちゃんたち、タイヘンだよっ!!」

それに一行もただならぬ様子を感じ取った。先に口を開いたのは、キホーテだった。

「・・・な、なんや、何がタイヘンなんや!?」

「・・・サンドパンのお兄ちゃんが!お兄ちゃんが!!」

「・・・サ、サンドパンさんが、どうしたんでござんすかっ!?」

コガラシも、もはやカタナのことなど考えてはいなかった。

「・・・兎に角、中に来てっ!!」

言われるままに、一行は診療所へと入っていった。そしてサンドパン兵士の眠る部屋に向かうと、彼らはそこで、思わぬ光景を目にすることとなったのである。

>>第四話
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