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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑱ 【2008/07/20 16:54】
【前書き】
一昨日お知らせいたしました通り、PQⅢ第十八話、今回お送り致します。

今回の話は、執筆期間としては、実はそれほど長くないです。実は今週水曜日に始めて、その日のウチにほぼ出来上がっていたという(爆)。
内容自体、伏線ということもあるので、そんなに悩む必要がなかったんだと思いますが。

・・・しかし、文字数で言うと、なんと10,236文字(※多分スペース含む)・・・f^_^;

だんだん長くなっていってますねwww
(ケータイから読まれてる方、本当、申し訳ございません;)

そろそろPQⅢも、佳境に入ってきているので、何とか収集つけたいトコロなんですけど、あと二話ぐらいでケリがつけられるのだろうか;
・・・頑張りますm(_ _;)m

あ、勿論「砂漠の魔獣シリーズ」としては、まだまだ続けていく予定です。

・・・ってか、一体いつ終わるんだ、このシリーズorz


なお、コメ返しはまた明日です、すいません;

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


第十八話:三日月の化身(後編)
>>はじめから >>前回の話

鳥・・・鳥が飛んでくる音・・・。

バサ、バサ、バサ・・・。

黒い・・・黒い鳥が飛んでくる。黒くて、大きな鳥が・・・。

闇・・・闇が、私のもとへ飛んでくる・・・。

ぐわぁぁぁぁ!

声・・・大きな、鳥の鳴き声。

闇が、私を殺しにくる・・・!

「死ねぇ!!」

バッサ、バッサ!

嫌だ、死にたくない!

私はまだ、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ!

ガシッ!

・・・痛い!掴まれる肩・・・痛い!

「もう、逃げられんぞ!」

・・・嫌だ、死にたくない。

殺されるもんか・・・殺されるもんか!

バシューン・・・!!!

光・・・飛んでく、光。

闇にぶつかって、炸裂する!

ぐぎゃぁああぁぁあぁぁああぁああ!

悲鳴・・・怖い、悲鳴・・・。

やっちゃった・・・私、やっちゃった。

紅い・・・紅い血。

黒い鳥の羽を染める、紅い血・・・!

私、私・・・!

「いぃぃぃいいいいいいぃぃぃやあああぁあぁああぁああぁあぁ!!!!」


「パミー!しっかりして、パミー!!」

母親の声に、幼きキルリア、パミーは目を覚ました。

きょろきょろ、周りを見渡すと、とても見覚えのある風景だった。当たり前だ、ここは自分の家の、ベッドの中だ。

ほっと安心したのも、しかし束の間のこと。部屋の隅に、まだそう見慣れていない魔道士が座っているのを見ると、パミーは怖がって、両手で蒲団を引っ張り、そこに顔を半分ほど潜らせてしまった。

それを見て、その魔道士は苦笑しながらこう言った。

「やれやれ、ワシは、すっかり嫌われてしまったようだな」

「・・・申し訳ございません、大魔道士様。この子のことはお気になさらず・・・ささ、どうぞ、食堂でお待ちください」

母親の声に促され、魔道士は部屋から出ていった。

母親とふたりっきりになると、パミーは少しだけ、顔を布団の中から出した。まだ少し、体が震えていた。さっきの怖い夢が、頭の中に残像として残っていた。

迫りくる闇、身も凍るような恐ろしい鳴き声。そして、紅い血の色・・・あんなにはっきりとした恐怖を夢に見たのは、生まれて初めてのことだった。

「・・・もう、だいじょうぶ?」

母親は、そんな娘を慰めるように、優しく、頭を撫でてやった。

そうされると、パミーの震えは、だんだんと治まっていった。なんでだろう、なんでこんなに落ち着くんだろう。やっぱりこれも、ママの強い魔法の力だろうか。

「何も、怖いことはないのよ。全部、夢だからね。パミーのことは、ママがちゃぁんと守ってあげるから、何も心配しなくていいの」

そう言うと母親は、娘のおでこに軽く、キスをしてあげた。

もう、すっかり安心しきったパミーは、それからまた、うとうとしはじめた。心地いい・・・なんて、ふかふかした気持ちなんだろう。

もうさっきの夢の残像なんて、これっぽっちも残っていなかった。もう、怖いものは何も無いんだ。ずっとずっと、私は、ママの傍にいられるんだ。

パミーは規則正しい寝息をかき始めた。もはや、悪夢なんて見ていなかった。夢を見ているとすると、それは間違いなく、優しくて、幸せな夢の筈である。

そんな娘の寝顔を見ながら、母親も安心したような表情になった。

が、しかし。それは一瞬のことだ。

母親は、娘を起こさないよう、そっと立ち上がると、部屋をあとにした。

「・・・もう、大丈夫なのか、あの子は」

少し暗い表情で食堂へ戻ってきたデイジーに、ンゲは言った。

「えっ・・・あっ、はい!すいません、ご迷惑をおかけして・・・」

彼女は慌てて、表情を取り繕おうとしたが、ンゲは食卓のコーヒーを飲みながら、冷静な顔で、ゆっくりと首を横に振った。

「なに、謝るべきはワシだよ。すっかり忘れとったな、キルリアが、触った相手の思いを読むことができるということを。きっとあの子には、色々とワシのくだらない過去の思い出を見せてしまったのだろうな」

「・・・あ、あぁ、ご存じでしたか」

デイジーは、すっと、自分も食卓へ腰かけた。彼女の前に並べられていた料理には、まだ少しも手をつけられていなかった。

気絶した娘を家に運び、それから彼女が目を覚ますまでには、暫く時間があった。先にデイジーは、ンゲに食事を用意して食べさせたが、自分は娘のことが心配で心配で、とても食事をとる気にはなれなかったのだ。

「・・・申し訳ございません、これしきのことで動揺してしまって・・・私もまだ、魔道士として未熟ですね」

「いや、そんなことはないさ。母親として、当然のことだと思うがね」

ンゲは冷静な顔のまま、再びコーヒーを飲んだ。

と、その様子を見ていたデイジーは、急に表情を緩めた。突然、ぷっと、笑い出してしまった。

「うふふっ!」

あっけに取られたのは、ンゲの方である。相手が急に暗い顔から、明るい表情に変わったのだ。それに、マトモな対応をしろというのが無理な話である。

しかしデイジーの笑い声は、寧ろ泣いているようにも取れた。所謂、笑い泣き、というやつである。感情が一気に爆発した、そんな様子だ。

「うふふっ・・・ご、ごめんなさい」

デイジーは、目から零れる涙を必死に拭いながら、そう言った。それにンゲは、あ、あぁ・・・と、動揺するような声で、なんとなく応えた。彼も、気持を取り繕おうと、再びコーヒーを一口飲んだ。

「い、一体どうしたんだ?」

デイジーはまだ、笑ってるのか泣いてるのか、よくわからないような表情のままであった。

「いえ・・・折角こうやって、大魔道士様をお迎えしているのに・・・何だかドタバタしちゃって、申し訳ないな、って・・・」

居心地悪いですよね?そう訊かれると、ンゲも、苦笑せざるをえなかった。

「・・・あぁ、正直言わせて貰うと、全くその通りだな。客人として迎えられながら、完全に蚊帳の外だよ。カラサリスの群れの中のマユルドにでもなった気分だ」

・・・しかしまぁ、お互い謝り合うのも、もうよしとしようじゃないか。魔道士はそう言うと、にっこりと笑みを浮かべた。

「よくぞ、女手ひとつで子を育てているものだよ。実を言うとな、ワシも幼き頃、父親一人が家族だったんだ。それも、貧乏な羊飼いの父親だ。色々、苦労させたもんさ・・・だから、おヌシのような母親を見ていると、どうしても他人とは思えなくての」

デイジーはようやく、気持を落ち着け始めた。自分も、目の前にある、もうすっかり冷めてしまっているコーヒーのカップを手に取った。そしてそれにミルクを入れると、両手でカップを包むようにして持ち、じっと、ミルクが渦を巻く様子を眺めていた。そうしながら彼女は、ゆっくりと口を開いた。

「デイジーは、本当は私の娘じゃないんです。捨てられた子なんです・・・10年前の、戦争中に」

驚いて、ンゲは手に持っていたコーヒーのカップを、テーブルに置いた。彼女はそのときのことを思い出しながら、一つ一つ、言葉を探るように、話を続けた。

「あの頃は、ポケモンがポケモンを殺し、奪う、とても恐ろしい時代でした・・・それには大魔道士様も、自ら参戦なされたと聞き及んでおります。戦いについては、私よりも詳しくご存じの筈でしょう。しかしその頃、我々、里の魔道士はというと、不干渉主義に徹していました。その戦争は、長くは続かない、そのことを知っていたからです」

・・・ただ、その代わりに、戦の陰で悪事を働く者たちを取り締まっていました。火事場泥棒や、貧困を逆手にポケモン同士を売り買いする、ポケ身売買。戦時中には、そのようなことをする輩が、多く蔓延るのだ。正に、土地が破壊され、ポケモンが破壊され、ポケモンの持つ価値観そのものも破壊された時代の、負の遺産である。

「そのとき私が倒した、ポケ身売買の商品の中に、あの子の入った卵があったんです。他のポケモンは殆ど元の家庭に帰された中で、あの子は・・・勿論、あの子がまだ卵の状態だったからだというのもあるのでしょうけれど、誰も親が見つからなかったんです。その上、施設にも入れてあげられなくて・・・」

戦争で親元の見つからなかった子どもは、戦争孤児ということになる。そうした子どもたちは、共同して彼らを育てる施設に送られるが、全ての子どもが入れるというわけにはいかない。特に、子どもの年齢が著しく低かったり、更にはまだ卵の状態であるということになれば、より育成が困難になるため、入れて貰えない場合が多いのだ。

「ですからあの子は、私が育てることにしたんです・・・これは責任というよりは、寧ろ運命であるように、私は感じました。きっと天が、私こそあの子を育てるに相応しいと、授けてくれたものだと思うことにしたんです。あの子が、私の幼少の頃と同じ、ラルトスの姿で生まれてきたときは、私は驚きませんでした。思った通りだったと、寧ろ納得しました」

その話を聞きながら、ンゲは再びカップを手に取り、コーヒーを飲んだ。なるほど、そういうことが・・・。深く、感嘆するような台詞だった。

「ただあの子は、他の子どもに比べて、特別なところがあります」

デイジーは、すっかりミルクと混ざり合ったコーヒーを一口飲むと、ンゲと顔を合わせて、そう言った。ンゲは改めてカップをテーブルの上にコトリと置き、話を聞く姿勢を作った。

「あの子の魔力は、他の子どもに比べて、とても強いんです・・・本人は気付いていませんが、ひょっとしたら私をも遙かに凌ぐ力を備えているのかもしれない。以前、メランクサ様からそう教えられたことがあります」

ですから、大魔道士様。それからデイジーの顔は、真剣だった。勿論これまでの回想がフザケていたということはないが、より切羽詰まったような表情で、彼女はンゲを見て言った。

「あの子が大魔道士様に触れたというだけで気絶してしまったのも、恐らくはあの子の能力のせいです。いくらキルリアが触れた者の心を読めるといっても、僅かなもの・・・何となく嫌な記憶を感じ取ったとしても、少しびっくりするだけ、それで治まることでしょう。しかしあの子ったら・・・まさか気絶しちゃうなんて。もしかしたら大魔道士様の中から、よっぽど消してしまいたいような、暗い部分を引き出してしまったのかもしれません。・・・そんなことをされたなんて、大魔道士様ご本人にとっても、決して愉快なことではないでしょう?何とお詫びしたらよいか・・・」

ンゲはそのことに、またニッコリとしながら、首を振った。

「いやいや、そのような過去を未だに抱えていたワシこそ悪いのだ。・・・というか、先ほど言うたばかりではないか、お互い謝り合うのも、もうよしとしようとな」

・・・す、すいません・・・。しかしデイジーは、再びそう言って、視線をカップの中に沈めた。それを見ながら、ンゲはまた、優しい表情を作った。

「やれやれ。おヌシは、何でも素直に話してくれて、とても気が休まるの」

えっ、と言うデイジーに、ンゲは続ける。

「いやな、さっきのキュウコンとは対称的だと思ってな。全く、話を聞きながら気の休まることは一度もなかったわ。なんせ、こっちの訊ねたいことを、あの長は何一つ語ってくれなんだからの。こちらとしては、余計に疑問が増えるばかりだったわい」

うふふ、デイジーは笑った。

「いえいえ、そんなことはありません。メランクサ様も、あの方なりに、とても真摯になって、お話をしてくださっているのですから」

・・・でも確かに、“じんつうりき”でこちらの心が読まれてしまうのは、少し怖い気もしますけどね。そう付け加えると、ンゲも、実に愉快そうに笑った。

「あっはっは、違いないわい」

緊張の糸は、もうすっかり解けていた。これまで、ずっと緊張の連続であったのだ。どれほど“せいしんりょく”の高い大魔道士でも、流石に耐えられることではなかった。この、デイジーの家でのひと時は、そんなンゲにとって、優しい、束の間の休息となったようだ。

その後、ンゲはデイジーの用意してくれた、暖かい布団の上で、横になった。デイジーは、娘の部屋に戻った。優しい子守唄でも聞かせながら、二人で眠るのであろう。先ほどの話を聞かなければ、血の繋がった優しい親子として、何の疑いもない。いや、例え血の繋がりはなくとも、恐らくそれ以上の強い絆が、二人にはあるのだろう。それこそ本当の親子の姿であると、ンゲは思った。

親子・・・そのことで、彼はまた、思い出したことがあった。暗い、暗い過去の思い出だ。恐らくパミーが引き出したのも、あの暗い記憶だろう。そう思うと、胸が締め付けられた。あの、消してしまいたい、辛い血の記憶だ。あんなものに、自分はまだ縛られていたのだろうか。

・・・預言を追い求める者を導くのは、あたしら里の魔道士の仕事・・・だけど、あんたの迷える心は、自分自身で導かなくっちゃならないね・・・。メランクサの言った台詞が、再び思い出された。

「コガラシ・・・」

ぽつりと、ンゲは呟いた。あの記憶に縛られているとすれば、コガラシこそ、その証拠であるように思える。だったら、どうしようというのだ。ワシがコガラシと出会ったことは、やはり間違いだったとでも言うのか。ワシはまだ、何か後悔の穴埋めをしているに過ぎないというのか。

いや、余計なことは考えなくていい。今は、目の前のことに集中するだけだ。いよいよ明日・・・明日、ワシは“三日月の化身”に出会える。そうすればきっと、道は開ける。もう迷うな、大魔道士よ。お前の進むべきは、ただ一つなのだ。一つしか無いのだ。

しっかり自分にそう言い聞かせると、ンゲは、ゆっくりと目を閉じた。


「・・・というわけで、王子さまとお姫様は、それから幸せに暮らしましたとさ。おしまい!ホラ、さっさと寝るで、レダ!」

「え~っ、もう一冊読んでぇ~!!おねぇちゃん!」

「あぁっ~!もう、やかましいなぁ!勘弁してくれや!ワイら、明日忙しい言うてるやろ!お前だって、明日の祭り、寝過ごして行けんでもえぇんか!?」

「えぇっ~!!祭りに行けないなんて、嫌だ!嫌だよぉうっ!」

キノガッサ王の治めるオアシスの国の、ある小さな診療所で、夜も深いというのに、なんだか愉快な声が聞こえてきた。その診療所の医者に養育されている、その国の第二王子、キノココのレダと、診療所の居候をしている行商のニャース、キホーテである。

キホーテは診療所の医者、ニューラのレオナからの頼みでレダを寝かしつけるよう、物語を読み聞かせてほしいと頼まれていたが、何冊読み聞かせても、レダは一向に寝静まる気配が無い。何を読んでも、もう一冊、もう一冊・・・元気が有り余りすぎているのだ。

キホーテは明日、祭りの出店に出店して稼がねばならないという身なのに、こうまでレダにこき使われて、もはやクタクタだった。本を読み聞かせている方が、寧ろ眠たくなってくるのである。しかしそうやってうつろうつろしながら、一字読み違えるような箇所があると、レダは容赦なく、文句を言ってキホーテを起こしにかかるのだ。それは、「さ」じゃないよ!「き」だよ!似た文字だからって間違えないでよ!ホラ、今度は「さ」を「ち」って読んだじゃん!そんなの、ボクだって間違えないよ!・・・やれやれ、自分で読めるんだったらそうしてくれ。

「ホラ・・・レダ、コガラシを見てみい。もう、ぐっすり寝とるやろうが。こうやってな、ちゃんと寝るやつこそ、立派な子やと言えるんやで。だからお前も、コガラシを見習って・・・」

と、キホーテは傍らのベッドで寝ている筈の、同じく居候のヤミカラス、コガラシをレダに示そうとしたが、

「・・・おい、コガラシ、お前何しとん?」

「どうしたの、おにぃちゃん。窓の外なんか見ちゃって」

何も言わないからてっきり寝ているものと思っていたのだが、コガラシは身を起して、じっと窓の外を眺めていたのだった。

「・・・あっ、えっ・・・いや、その」

自分の名を呼ばれて、初めてコガラシは彼らを振り返った。隣でぎゃあぎゃあ喚いていたのに、今まで全く無反応だったとは、もはや感心するに値する。

「・・・あっ、ひょっとしてお前、明日カタナさんに会えんのを楽しみにしとるんやないかぁ~?」

言われて、コガラシはぎょっとした。

「・・・ちょっ、な、何おっしゃるんでござんすか!?なんでそこでカタナさんの名前が・・・!?」

「ぷぷっ、別に隠さんでもえぇやんか。今日の昼、お前の様子を見て、ピーンときたったで!」

そう、その日の昼のことだった。前の日に仕事で訪問したエアームドの屋敷があったのだが、今日は客としておもてなししたいという誘いの手紙が、屋敷の娘、カタナから送られて、商品の仕入れの時間を少し割いてではあったが、彼らは再び屋敷へ訪ねることになったのだった。

ちなみに、手紙は、メイドのコダック、オムライスによって運ばれてきた。街中をバクーダのロシナンテに乗りながら移動する彼らの前に、いきなりだばだばと走ってきたもので、ロシナンテはつい誤って、彼女のことを踏みつぶしてしまった。しかし漫画のようにペラペラの姿になりながらも、彼女は何とかお嬢様の手紙を、彼らに渡すという仕事は、ちゃんと全うできたのだった。

手紙を送るのにもいちいち命がけの、可哀そうなメイドである。

まぁそれは兎も角として、彼らが屋敷の中の客室に通され、エアームドのお嬢様、カタナを前に、例のあの豪華なテーブルの席に着かされたとき、どうもコガラシの様子が、もじもじと変であったのだ。前の日には何にも気付かなかったキホーテにも、流石にそれとわかるくらいに。

特に、カタナから次のような誘いを受けた時のコガラシの態度は、もはや決定的であった。

「明日の祭りの夜、花火が打ち上げられるの。コガラシさん、もしよかったら私と一緒に、花火を見に行ってくださらないかしら?」

どーん。

効果音で表現するなら正にそのように、花火が打ちあがったような感じであった。コガラシの体は天井まで打ち上げられ、まさか破裂こそしなかったものの、強く頭をぶつけ、地上まで帰ってきたときには、昇天しました、というようなアホな表情に変っていた。

だっ、大丈夫かしらっ・・・?慌ててカタナは安否を気遣うように、倒れたコガラシの元へ駆け寄ったが、それは杞憂だった。コガラシはすぐさま、起き上がりこぼしのように立ち上がると、緊張で我を忘れたような声ではあったが、こう答えたのであった。

「よっ、よっ、よよよよよ・・・喜んで!あっしのような、しがないヤミカラスでよろしければ、ぜぜぜっ・・・是非っ!!」

成る程・・・コガラシも、ひとりの男であったというワケだ。ニヤニヤしながら、隣でキホーテは、もてなしに出されたマゴの実ケーキを一口食べた。

その瞬間、キホーテもコガラシと同じように、天井に打ちあがったハナシは、別にここでしておく必要は無かろうか。原因は勿論、キホーテのケーキが、こっそりカタナの母親が作ったカラシ入りケーキとすり替えられていたことによるのだが。所謂、オヤクソクというやつである。

・・・つまり話を戻すと、その日の昼、コガラシは愛しの女性から、何とデートの誘いを受けてしまったのである。よって、そのことが原因で、こんな夜中、彼はなかなか寝付けず、ぼーっと窓の外を眺めていたのだろうと、キホーテは予想したのだが。

「・・・ち、違うでござんすよ!あっしはただ・・・ちょっと、ンゲ様のことを思い出してたんでござんす・・・」

顔を真っ赤にしながら、否定するコガラシ。

「ンゲ様?・・・あぁ、あれか。お前の連れやったっていう、魔道士のことか?」

何くだらんこと考えとるん。そんなん、今はまだ思い出さんでえぇやろ。ほら、さっさと寝るで。キホーテはそう言って、蒲団を被った。

コガラシは、ふっと笑った。それは彼女なりの、優しい対応であることが感じられた。

「あぁん、ご本読んでよ、ご本~!!」

レダは、まだ駄々をこねている様子であったが、それももうじき、静かになるだろう。

街の広場では、夜を通して、祭りの準備が行われていた。噴水の北側には高い櫓が組まれ、その頂上では二匹のオタチが双眼鏡を持ち、夜間の祭り会場の見張りを行っていた。

「異常なーし!」

「異常なーし!」

口々に、そう叫ぶ。

彼らの下では、警備服に身を包んだポケモンの一隊が、ザッザッザッ、と、隊列を組んで駆けて行った。その音に、夜中に近所迷惑だと言って苦情を出すものはいない。それも一つの、街の風物詩となっていたりもするのである。

オタチらは、そんな彼らにも挨拶をする。

「お務めご苦労!」

「お務めごくろ・・・!」

と、一匹が語尾を詰まらせた。

「むっ、どうした!?何か異常か!?」

「・・・あ、いや、その・・・」

少し取り乱した方のオタチは、再び警備員たちの姿を双眼鏡で追う。しかし街の本道に向かう彼らの姿は、もう背中しか見えなかった。大丈夫・・・だよな。彼は、自分の胸に言い聞かせた。何やら警備員の中に、ひとり、異様なまでに悪人面の者がいた気がしたのだが・・・。

「・・・いえ、何でもありません」

彼は再び、会場の見張りに戻った。

さて、オタチが見つけた悪人面のそのピカチュウ、威音(いおん)はというと、とても不満げな顔をしながら―-元から不満そうな顔ではあるが、今はそれを一層感情のこもったものにしながら――警備員の列の中で走っていた。大きな祭りの警備ということで、特別他所から派遣されてきたが・・・果たして、この警備が本当に必要だったのか。ひょっとしたら自分たちは、ただの見世物の一つになっているのではないか、既にそんな不満が芽生え始めていた。

「・・・こらっ、新入り!足が遅れているぞっ!」

「あ、はっ・・・はい!」

「ちがう!返事は、イエス・サーだ!覚えろ!」

「イエス・サー!」

しかし、注意されたことで、彼の思考は元に戻った。そうだ、今はくだらない考えを起している場合ではない。祭りの平和を守ること、そのことこそが我々の使命。市民の不安は、私が取り除かねば!

・・・しかし、そんな彼こそ、市民の不安の種になっていたことは、彼には知る由も無い。

「・・・ママー、今度の警備員さんの中に、なんだか怖い顔のポケモンがいるよー」

「しっ!・・・ぼうや、さっさと寝なさい!」

そんな声が聞こえた後、街のアパートの窓が一つ、バタンと閉じた。

深夜のスタジオでは、まだ祭りの出し物の練習に励んでいるものもいた。チャーレムの一団は、踊りの練習に余念が無かった。ドゴームたちのバンドも、まだまだ、熱を冷ます様子は無かった。

一方、外で堂々とコーラスの練習をしていたのは、街の役所に勤めるプクリンを筆頭としたグループであった。それも夜中だというのにクレームが無いことの理由は、各自の想像に任せることとしよう。

コックのゴーリキーたちは、夜の厨房で、明日の祭りのスペシャルメニューのための仕込みを、まだ行っていた。手を抜くな!しっかり煮込めよ!そこはまだ、昼間のような熱気で満ち溢れていた。

役所で入国管理官として働くドーブルのシャラクは、上司に先を越されて、まだ残業に取り組まねばならなかったが、それも丁度今、終えたところであった。今日一日で自分が書き上げた何枚ものパスポートを、机の上でトントン、と丁寧に揃えると、同僚のハヤシガメ、ナツキに渡した。

「お疲れ!シャラク。これで全部だな。・・・よっしゃ、じゃあ、これから飲みにいこうぜ!」

しかし疲れた表情のシャラクは、遠慮するように、手を振った。・・・もう、酒はコリゴリである。

そして、役所の窓から見える月を見ながら、一つ溜息を吐き、こうひとりごちたのだった。

「・・・はぁ、レオナさん・・・」

さて、その思いの相手はというと、今晩もサンドパンが寝ているベッドの傍の椅子に腰掛け、彼の看病を行っていた。

安らかに寝息を立てるサンドパンを見ながら、彼女も安心してうとうととし始めていたが、サンドパンが寝がえりを打ったために、彼の体から蒲団がずれ落ちてしまったのに気づくと、ふっと目を覚まして、手を伸ばし、蒲団を上に引っ張ってあげようとした。

そのとき、寝ているサンドパンの手が伸び、急にぱしっと、レオナの手を掴んだ。彼女は一瞬驚いたが、どうやら彼は寝ぼけているだけだと、すぐに気付いた。

しかしレオナは、サンドパンの手を、振りほどこうとはしなかった。反対側の手で蒲団を引っ張ってあげると、掴まれた方の手は、ずっとそのまま、掴まれたままでいてあげた。

そうしながらレオナは、何だかとても優しい気持ちで、自分の心が満たされていくのを感じていた。そうしてふたりは、お互いの手を繋げたまま、一晩を過ごした。

祭りの前の日の夜は、ゆっくり過ぎていった。レダもキホーテも、もうすっかり眠ってしまって、穏やかな寝息を立てていた。しかしコガラシは、蒲団の中に潜りながら、もう少しだけ、月を見ていようと思った。その形は、もう殆ど三日月の形をしていた。

この、同じ月が昇る空の下の、どこかにいる魔道士が一体何をしているのか、コガラシにはわかる筈もなかった。ひょっとしたら、またどこかの城の中の、綺麗なベッドの中で、或いは、砂漠の中の岩陰で、冷たい夜風に晒されながら寝ていることもあるかもしれない。どちらにしても、彼は何とか、無事に過ごしている筈だった。

そして彼も、今きっと・・・ただ何となく、何となくではあるけれど、彼も今、きっとコガラシのことを考えてくれているような、そんな気がしたのだった。

>>第十九話に続く
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