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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑧ 【2008/01/08 00:00】
第八話:ぬくもり
>>はじめから >>前回の話

砂漠の夜は寒い。日中ならば50度以上に跳ね上がる気温も、夜になれば一気に零下まで冷えこむ。砂漠には熱を遮る機能が無いが、同時に、熱を保つ機能もそこには無いのである。ただ不毛な土地が広がるだけ、さらさらとした砂地が広がるのみだ。勿論、生き物が全くいないというわけではないが、彼らは生きていくために、少ない水をお互い必死で奪い合うという過酷な試練が与えられている。とても殺伐とした環境である。

しかしオアシス地帯となると、それは違う。そこには豊富な地下資源があって、木々が林立すれば、そこに行きかうポケモンたちの数も多く、皆共存している。昼間の日を遮るものもあれば、夜に熱を逃がさない機能もちゃんと備わっている。そこで生きる植物やポケモンたちが、それを果たしているのだ。

そこには、命が溢れていた。お互い競い合うのではなく、支えあうことによって保たれる命というものが。まさに、生そのものが作り出す恵みだ。

けれど、そのようなオアシスの国であっても、そこに住むポケモンたちは、皆が皆のほほんと暮らしているわけではない。ここ、キノガッサ王の治める王国は、元から暮らしていたくさタイプのポケモンの他に、豊かな資源を求めて異国からやってきた様々な種類のポケモンたちによって形作られていた。元からある財力を増やそうとやってきたブルジョワもいるにはいるが、多くは、田舎に残してきた貧しい家族のために出稼ぎで入ってきた者たちだったのである。彼らはそれぞれ異なった事情を胸に抱えながら、彼らなりの必死の生活を送っていたのであった。

この国が未だに、他国が行なう戦争に加わっていない理由も、一つにはそのような問題があったからなのかもしれない。国としての財力は大きくても、いざというときに一丸となって戦う結束力のようなものは、他国よりも劣っているのだと、ある一部からは囁かれていたのである。

そして、今レオナの暮らす診療所に向かって、夜の街をひとり歩いているドーブル、シャラクも、ここより遥か他所の土地から入ってきたポケモンだった。年の頃は若く、成人した証である背中の足あと印もまだ押されたばかりであったが、貧しく暮らす家族を支えるため、他の出稼ぎ連中と一緒にフワライド気球に乗ってここまで来たのである。

見たものをそのまま写し撮るように描く彼の画才は大きく評価され、晴れて役所での就職が決まったが、しかし本当は、彼は芸術家として生きたかった。ドーブルなら、誰もが夢見ることである。折角才能に恵まれているのなら、その能力、自分のためだけに使いたい・・・自分の好きな絵だけを、例えば、僅かに雲が棚引く晴れ渡った空に、溶けるように沈んでいく秋の夕焼けとか、命そのもののように真っ赤に熟れた、摘みたての林檎とか、そういったものだけを描いて暮らせたら、どんなに素晴らしいことか、と。

しかし、そういった夢に多少の未練を抱えながらも、彼は日々、与えられる仕事を淡々とこなさねばならなかった。いつも幸せな顔のポケモンばかりを描けるわけではない、例えば、指名手配書の極悪な顔のポケモンを描かねばならなかったり、死んだポケモンの遺影を描かねばならなかったりといった、そんな日々を。別にいいじゃないか、絵が描けるということ自体は、自分はとても恵まれている方なのだから、と思うようにしながら。

それが、地に足を付け、現実をしっかり生きていく、ということであった。

が、今日レオナの診療所に向かう彼の足取りは、なんだかとっても浮き足立つような感じであった。

なんだろう、これは。嬉しいというような、緊張するというような・・・あの憧れのレオナさんの家に今、自分が向かっているのだ。

レオナさん・・・自分はいつも影で見ていただけだったが、あの方の声や、笑顔を見るだけで、今までどれ程心が癒されたことか。彼女は私にとって、まさしく天使のような方だ!そう思うと、昼間レオナに握られた手が、今更じんじんと腫れて、痛みすら感じるような気がした。あぁ、レオナさん・・・早くまたお逢いしたい!

・・・いや、待て待て。自分はただ仕事で寄るだけだ。レオナさんには何も用は無い筈だ・・・しかし、どうしよう。いきなり家に入って、食事中とかだったら・・・ひょっとしたら、「ご苦労さまですわ!よかったら、お夕飯一緒に食べていきませんか?」なんて言われたりして・・・いや、そこはちゃんと断るべきだろう!というか、そもそもそんな事態ありうるのか!?

・・・とかナントカ。思春期の子どもにありがちな、甘酸っぱい妄想を抱きながら。

結局、彼はまだまだ若いのだ。恐らくそれ自体が、彼を現実という重石から潰されぬように守っている、大きな支柱となっているのだろう。

と、そうこう考えているうちに、彼はいつのまにか、もう目的の場所まで目と鼻の先まで辿り着いていた。

今、目の前に診療所の扉がある・・・これをノックすれば、中から彼女は現れるだろう。現れたら、どうする?「私、役所の方から参りました!今日申請いただいた、キホーテさん、コガラシさん、ロシナンテさん、SAD06さんのパスポートに似顔絵を入れようと思い・・・」そう、ちゃんと、喋れるだろうか??“SAD06”ってのが、うまく発音できないような気がする・・・というか、何でそんな名前なんだ?もっとマトモな名前は無かったのか?・・・なんて、外国の方の名前にいちゃもんつけてどうする。

・・・取り敢えず、深呼吸をする方が先だった。スー、ハー、スー、ハー・・・よし。そうして、扉を叩こうと手をあげた、その瞬間だった。

「待て、客人。今は入るな」

突然後ろからそう声がかけられて、シャラクは心臓が飛び出そうになった。

「・・・きゃーっ!わ、わたくし・・・えぇと、そんなに怪しい者じゃありませぇええんっ!ちょ、ちょっと仕事で・・・いやっ、あのっ、ぱぱぱぱ・・・いや、つまりそのっ・・・パァパァパァ!!」

「・・・パァじゃワカラン。お前のアタマのことを言っているのか?」

「パパパ・・・パスポートですよ、パスポート!!あのっ、今日新しく入国された方々が四名ほど、こちらにいらっしゃるとうががッ・・・ウガ!ウガ!ウガ!・・・いや、失礼・・・そう、うかがったもので・・・」

「・・・なんだ、役所のポケモンか」

マトモに喋ることすらままならないでいたシャラクに、目の前のバクーダは、何もかも理解できている、といった風に落ち着いてそう言った。それで、ようやくシャラクも我に返った。

バクーダは、やれやれといった感じで一つ溜息をつくと、こう喋り出した。

「レオナから話は聴いていた。今晩、役所から似顔絵師が訪ねてくると・・・しかし、申し訳ないが、今はだめだ」

「・・・と、おっしゃいますと・・・?」

「うむ・・・病床に着いていた者がひとり、危篤の状態なのだ・・・そのため、今診療所内は、騒がしい雰囲気だ」

「なんですって!?それはまた、大変ですね・・・」

シャラクはそう言ったあとで、しまった、と思った。今の台詞、大分他人事のように聞こえたかもしれない・・・いや、まぁ確かに他人事は他人事として相違無いが、あの憧れのレオナさんが大忙しのときに、自分はなんと酷いことを!そう思ってしまったのだった。

しかしそれを謝ろうとする以前に、また、役所のポケモンとしての立場で思考が働くのも、仕方の無いことではある・・・今診療所に入れないからといって、明日また出直すというわけにはいかない。パスポートは似顔絵を入れなければ効力が発揮されないのだ。申請された方々、この国で働くため、直ぐにでもパスポートが必要な状況なのに、それが遅れてしまったとあっては・・・。

・・・いや、聴いた話をよくよく思い返してみれば、彼らは既に今日から働いているということだったじゃないか。それはパスポートの代わりに、レオナさんのサインを使ったからだというが・・・だったら、もう一日サインでガマンしてもらうという手も・・・。

・・・いや、だめだだめだ!サインは飽くまで“例外”・・・そんな例外を、1日ならともかく、2日も3日も許すわけにはいかないのダッ!!・・・けど、レオナさんが忙しいときに無理矢理やってしまうのも・・・あぁぁあっ!!

「・・・お前、さっきから何頭抱えているんだ?偏頭痛か何かか?」

・・・と、自分の心情と役所のキソクとの間に挟まれて、ウンウン唸るシャラクに、バクーダは口を開いた。

「お前、ちょっとこっちに来ないか?」

そして大きな前足を、ひょいひょいと宙を掻くように動かし、診療所の隣の馬車小屋へと向かう。どうやら、手招きをしたようである。

ついつい、脳が古いパソコンのようにフリーズしてしまったシャラクは、招かれるままにバクーダに付いていったのだが、なんとそこで彼が目にしたものは・・・。

「ホレ、酒だ。これでも飲んで、少し頭冷やさないか?」

と、明らかに自分より図体の大きなバクーダサイズの酒樽を目の前に出され、絶句してしまうシャラク・・・。

・・・いや、こんなもの飲んだら、余計頭が痛くなってしまうような気がするが・・・というか、自分、成年になりたてで、酒なんかまだ一滴も飲んだことがないのである。

「遠慮はいらんぞ。丁度、さっきまでひとりで侘しく飲んでいたのだからな・・・少し話し相手が欲しかったのだ」

・・・そう、このバクーダ、ロシナンテは、どうやら前回顔を出さなかったと思ったら、ここでひとり、酒を飲んでいたのであった。彼女は行商ニャロの欠かせないパートナーとして、日ごろはいつも彼女に付いていなければならないのだが、仕事が終われば、図体の差があるため、同じ寝床に入ることはできない。だから、食事の合間も、ずっと彼女はここにいたのであった。

門番の役にも立てるし、それはある意味名誉なことではあるが、流石に夜中ひとりとなると、彼女だって侘しさを感じてしまうのである。

さて、そんな彼女に目を付けられてしまった、この若いドーブル。その場を巧く取り繕って逃げ出すことができるのか・・・。

「いやっ、私、酒はッその・・・ゴブッ!う・・・くっくっく・・・ぷはっ!・・・いえ、美味しいです!美味しいですとも!!ははは・・・よ、よろしくおねがいしまぁ~~~すっ!!」

・・・どうやら、完全に“ディグダのありじごく”に嵌ってしまったようである。

残念無念。


「患者の具合は、どうですか・・・?」

レオナがひとりサンドパンの看病を続ける病室に、ナースが温めた“モーモーミルク”を持って入ってきた。

「ああ・・・ありがとうございますわ」

そう言って、カップを受け取ると、レオナは一口啜る。・・・温かい。氷づけになったように疲弊した彼女の心を、優しくほぐしてくれるようである。

サンドパンは、まだぐっすり眠っている。本当に、安らかな眠りだ・・・願わくば、このままもう二度と目を覚まさずなんていう事態にならないことを誓いたい。

・・・いずれにせよ、もうそろそろ精神安定剤の効果が切れる頃である。そのとき、体力が弱まっている体でまた暴れたりしたら・・・今度こそ、彼自身の身にもよくない兆候が現れることは確かであった。

「レダ様は・・・もうお休みになられましたかしら?」

「えぇ・・・キホーテさんが、一緒に寝てくださるのだそうで」

「そう・・・いいポケモンですわね、あの方たち・・・」

ほっと、温かい息を一つ、レオナは吐いた。昨日まで自分は彼女らのことを疑っていたのだが、今はそんな気持ち、どこかへ消えてしまっていた。

と、そのときノックの音がして、先程ナースが閉めた寝室の扉が再び開いた。

「あっしも、看病させてもらってもいいでござんすか?」

コガラシだった。

「・・・コガラシさん?あなた、お休みになったんじゃなかったのですか?」

「・・・ええ、あっしは“ふみん”なもので・・・睡眠時間なんて、それ程長く取る必要無いんでござんす」

そう返答されて、ナースは困ったような顔をしてみせる。しかしレオナは、ニッコリと微笑んでみせた。

「大丈夫ですよ・・・あまり、ベッド近づかないように気をつけていただければ」

「申し訳ないでござんす・・・」

そう言って、彼はローソクが一本照らす部屋の隅に突っ立って、患者を眺めた。そういえば、この患者さんを最初に発見されたのは、コガラシさんだったそうですわね・・・そう、レオナは思い出した。

同時に、彼女は思った。彼らのためにも、この患者の命は、絶対に繋ぎ止めなければならない。それをできるのは、私しかいないのだと。自らを奮い立たせるような、そうした思いを。

部屋の中で、時計の針の音がコチコチと鳴り続けていた。やけに静かな夜だった。しかし絶望というものは、そうした静けさの下からやってくるものに違いない。いつ顔を出してやろうか、いつおどかしてやろうか、そんな残酷な思いを抱き、そわそわとしながら。

やがて、時はやってきた。サンドパンの体が、まるで硬直から解けたように、ビクンと震えた。

「・・・きたわ!ナースさん、手伝って!!」

アァァアァア・・・アアアァァアアァアアアッ!!くぐもった呻き声が、サンドパンの口から漏れた。早く鎮めなければ、なんとかしなければ・・・!そう思って、レオナとナースは、必死に患者の体を抑えつけようとしていた。

「・・・あっしも手伝います!」

と、壁に寄りかかるようにして立っていたコガラシも、ベッドの上にバッと飛び出し、上からサンドパンの足を捕まえた。

「・・・コガラシさん!?無茶です!!やめてください!!怪我をしますよっ!」

悲鳴のように、ナースが叫ぶ。確かに、コガラシだけでは無理そうである。暴れるサンドパンの力に押され、今にも蹴り飛ばされそうであった。しかしそれでも、彼は離そうとしなかった。大切な仲間を、決して手放すまいと必死だった。

「・・・コラッ、兵士!暴れるんやないでっ!!」

そのとき、再び病室の扉が開いて、キホーテが現れた。レダの子守りをしていたが、丁度彼が寝静まったのを見計らって、彼女も駆けつけてきたのであった。

ええよ、無理せんでも・・・夕食のときには、そんなことを言っていた彼女であった。まるで、もうサンドパンなんか見捨ててしまったかのような態度を取っていた彼女だったが、勿論、それが本心である筈が無かった。

助けたい・・・ワイらを助けてくれたこの命を、助けなあかん!彼女だって、そう思っていたのだ。

長い夜が過ぎていった。診療所内の騒がしさとは反比例するかのように、外はえらく静かな、そんな夜だった。画家がこの場面を絵に描くとすれば、きっと暗い夜空と、ローソクの明かりが漏れるカーテンの無い病室を対比させるような絵を描くことであろう。そして画家は、その絵を描いた後でこう言うのだ。これは、決して陰鬱なイメージではない。家の中には確かなぬくもりがあることを示しているのだ。心と心というものがしっかりと支えあうことによって生まれる、ぬくもりというものがな、と。

その晩、その小さな診療所の病室からローソクの明かりが消えることは無かった。

>>第九話
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