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Pokemon QuestⅢ:砂漠の魔獣2~The Mystic Moonray~⑬ 【2008/02/06 22:16】
第十三話:隻眼の右大臣(中編)
>>はじめから >>前回の話

「・・・あの晩でしたな、私が隻眼になったのも」

「本当、びっくりしたわ・・・片方の目が見えなくなっちゃうなんて。これからこの子は、どうやって生きていくんだろうって、心配しましたわよ」

「・・・当の本人は、それほど気にも止めておりませんでしたがな」

サラディンは今、微かな笑みを、顔に浮かべた。それはひょっとすると、彼があの幼き頃以来の、初めての心からの笑みだったのかもしれない。

「そう言えば、その貝殻も・・・まだ私が差し上げたものを使っているのですね」

ふと、王妃は彼の眼帯を指差した。再びポッと顔を赤らめながらも、彼は答える。えぇ、まぁ・・・。

サラディンが隻眼となった夜の、一年後。また三日月祭の夜だった。

そのときまでには、国は戦争孤児たちを本格的に保護する政策に乗り出していた。孤児たちを養子として引き取ってくれる家庭に奨励金を与える法案が成立し、各家庭はこぞって孤児たちを引き取っていった。サラディンの仲間も、半分ほどが引き取られていった。中には、お金持ちの家に入れてもらえた子どももいた。信じられないような幸運であるが、当時はお金持ちの中にも、戦争直後の荒んだ世の中で、殺されたり、攫われたりして、子どもを失った家庭は多くあったのである。

けれどその夜までには、サラディンと王妃は相変わらず家無き子として暮らしていた。特に、片目を失ったサラディンは、その醜い様相に大人たちから嫌われ、なかなか貰い手がなかったのである。

「だいじょうぶ、私はいつでもあなたの傍にいるから」

王妃は、一年前のあの事件以来、それまでにも増してサラディンに寄り添うようになった。そしてサラディン自身も、そんな彼女に何やら奇妙な感情を抱くようになっていった。これまで、ただの仲間の一人として思っていたのとは違う、もっと特別な、親密な感情・・・笑顔を見るとほわっと温かくなって、とっても落ち着くけれど、手を握られると今度は逆に、心がどぎまぎして平静ではいられなくなる。

でも、そうやってどぎまぎするのが嫌なのかと言えば、決してそんなことはないのだ。もっと、握っていてほしいと思う・・・寧ろ、もっと親密になりたいと思うのだ。そう考えるのは、しかしながら、おかしいことなのだろうか。ひょっとすると今自分は、なにか悪い衝動に駆られているのではないかとさえ思った。そして、それは物凄く、彼女に対して失礼な態度なんじゃないかとさえ・・・。

兎も角、一体これは何なのだろう。不思議でしょうがなかった。

しかし不思議と言えば、顔立ちも可愛く、性格も優しい王妃までも、養子の貰い手が現れなかったのはどうしてだろう。一緒にいてくれるのは、僕にとっては嬉しいことだけれども、こんなにいい子は、早くどこかの家に引き取ってもらわれるべきなんじゃないだろうか。サラディンはそう思ったが、そればかりは彼にもどうしようもならない問題だった。

さて、祭の晩のこと。毎月のように、サラディン一行は、祭の夜を楽しんでいた。その祭の夜は、一年前とは全然違って、とても平和だった。最初、一行はいつものように固まって行動していたが、いつのまにやら皆それぞれ好きなものを見るために散らばっていた。そうしても、もう誰もポケモン攫いに遭うようなことはなかった。そして気付くと、サラディンは王妃とふたりだけになっていた。

そのとき王妃は、自分の隣を歩くサラディンに、ぴったりと寄り添った。サラディンはまた、体がボッと熱くなるのを感じた。心臓がどきどきし始めた。

「・・・ね、ねぇ?」

どうしていいかわからなくなって、サラディンは口を開いた。

「なぁに?」

可愛い声で、彼女は訊ねた。彼は、言うべきか言わないべきか迷った。自分が今、彼女に対してどんな思いを抱いているのかを・・・。それは、言ってしまうと物凄く失礼になるんじゃないかと思った。

けれど、言わないでいる方がよっぽど失礼になるんじゃないか。幼い彼は、しかし隠し事をするのが嫌いだった。いや、ただ単に、幼さ故に隠し事をするのが苦手なだけだったのかもしれない。兎に角彼は、意を決すとこう言った。

「君に、そうされると・・・なんだかどきどきするんだけれど」

「わたしもよ」

しかしそうにこやかに答える彼女に、また彼は驚かされた。

「・・・君も、どきどきするの?」

「うん」

「手を・・・握るときも?」

「どきどきする」

ひょっとしたら、と思って、もう一つ訊ねた。

「安心するのは、どんなとき?」

彼女は少し考えた後で、こう答えた。

「サラディンが私に笑いかけてくれたときかな」

同じだ。サラディンは思った。そう思うと、彼は何だか、とてもすっきりした気分になったのだった。

「僕たち、同じなんだね!」

サラディンがそう言って笑うと、王妃も笑顔になった。

「そう言われると、嬉しい・・・」

そして、彼女はそう言うと、ぽっと頬を赤らめた。まるで薔薇のような、可愛らしい色であった。

サラディンには、今、何だかわかったような気がした。どうして彼女が自分に優しくしてくれるのか。そして、そんな彼女に抱いている、この不思議な、不思議な、自分の気持ちも。

それは、それは、心がとっても温かくなるようなことだった。彼はそのとき、心の底から、彼女が今自分の傍にいてくれて嬉しいと思った。ふたりで一緒にいられることの喜びを、これ程までに味わったことはなかった。

それは、それは、他の何事にも例えることのできないような喜びであった。嬉しくもある一方で、なんだか涙も零れそうになるような感覚であった。胸にじんわりと染み込んでいくような、暖かい気持ちであった。

彼はすごく、何だか全てのことがわかったような気がしていた。これが、これこそが、彼を今日まで生かしてきたことの理由なんじゃないかとさえ思えた。今、何だか全ての思いが満たされていくような、そんな気がしたのであった。

「僕ね・・・君のことが・・・」

再び意を決して、サラディンは口を開いた。今の自分の気持ちを、彼女に伝えたいと思った。彼にはもう、全てのことがわかったような気がしていた。

けれど、口を開きかけて、また不安になった。この気持ち、ちゃんと伝えることができるのだろうか、ひょっとしたら、言葉にした瞬間に消えてなくなってしまうんじゃないか、とも思った。

言葉は脆く、壊れ易い。例えるなら、そう、それは氷みたいなものだ。この砂漠では氷なんて物凄く貴重で、誰でも欲しがるものだけれども、手に入れた瞬間、それは冷たい場所においておかないと、直ぐに溶けてなくなってしまう。だから僕の心も、言葉なんてもので外に吐き出してしまったら、直ぐに溶けて消えてしまうんじゃないだろうか。そんな恐れが、今彼を襲っていた。

「・・・あ、見て」

と、黙ったままでいる彼の傍らで、王妃は祭の出店に顔を向けて、そう言った。「え」と、サラディンも言って、彼女が向いた方を見ると、その店には色とりどりの貝殻が並べてあった。

「さぁ、貝殻だよ~!ここじゃあ珍しい、滅多には手に入らない貴重な貝殻だ!さぁお嬢さん方、お洒落にひとつ、いかがかな~?」

店主のオムスターはそんな威勢のいい声を上げながら、手を叩くような感じで前の二本の触手をパンパンと打ち鳴らしている。きらきらと美しい貝殻に魅せられた王妃は、タタタッと店の前に駆けていった。サラディンは慌てて、その後を追いかけた。

「お~や、かわいいニャルマーのお嬢さん。お一つお買い求めかな?」

「おいくらですか?」

王妃が尋ねると、オムスターは目玉をくりくりさせながら、

「う~ん、大きさによって違うけどね、大体ふつうのやつは、300ポケぐらいかな」

300ポケ・・・子どもには、高すぎる額だった。ましてや家無き子である彼らが、払える筈も無い。

「はっはっは~、お譲ちゃんにはちょっと高かったかな?じゃあ、そこのカレシさんに奢ってもらうといい。うふふ、羨ましいねぇ、カレシさん。こんな可愛いカノジョがいて・・・」

と、オムスターは後から来たサラディンにそうやって冗談をふろうとしたが、サラディンの顔を見るなり、表情を一変させた。

「おや・・・よく見るとお前、片方の目が潰れてるじゃねぇか・・・可愛そうに、いったいどうしたんだい?」

まるで、哀れむような顔で、店主はそう言った。そして、彼の言葉に反応して、その周りの店の店主たちも、サラディンのことを見つめる。いや、それだけではない。客たちも、皆全員の視線が、そのとき、サラディンに向けられていた。

一体どこの子どもだ?まぁ、すごく醜い顔立ちだこと。あぁ、やっぱ、戦争孤児ってやつか・・・。ありゃあひでぇやられようだな。ママー、あの子、かたっぽ目が無いよぉ!シッ、可愛そうな子なんですから、そんな風に指差しちゃいけません!・・・それにしても、哀れな子だなぁ。

一斉にそんな言葉を浴びせられながらも、しかしサラディンは、ケロリとした顔をしていた。けれど、彼の隣にいた彼女の体は、プルプルと小刻みに震えているのがわかった。・・・どうしたの?具合でも悪いの?そう、声をかけようとしたところ、彼女はサラディンの手の上に、自分の手をそっと乗せて、言った。

「・・・行きましょう」

そして、周りに群がっていたポケモンたちを掻き分け、彼らは祭の場から抜け出したのだった。

祭の場のポケモンたちは、彼らが見えなくなるまで、ずっと彼らに視線を送り続けていた。哀れむような目、同情するような目で・・・その気持ちが、逆にどれほど彼らに苦痛を与えることになるのかも知らずに。やがて彼らは、また何事もなかったかのように、祭の場へと戻っていくのだった。

が、貝殻売りのオムスターが、ひゃあああっと悲鳴を上げるのは、その直後のことである。


サラディンを連れて、彼女は、周りに誰もいない、街の外れの静かな場所へやってきた。

「・・・ね、ねぇ・・・お祭はもういいの?こんなところまで来て・・・何にも無いよ?」

サラディンは訊ねたが、彼女は、いいのよ、と一言答えた。

「サラディンがいてくれるから、いいの」

そして、そう付け加えた。それを訊くと、サラディンは何だか、照れくさいような気持ちになってしまうのだった。

「・・・ここ、座りましょう」

と、建物の壁にもたれて、彼女は座った。サラディンもそれに従った。

辺りは、ひっそりと静かだった。夜の冷たい風が、少しぴゅうううっという音を立てながら過ぎていくだけだ。だけど、空に浮かんだ三日月は、暖かく、優しい光を、この小さな男の子と女の子を照らしていた。

そして彼らも、そんな月を、黙って見上げていた。ただ、黙って・・・。

「ねぇ・・・サラディン?」

と、彼女が口を開いて、サラディンは驚いた。彼女の声が、なんだか震えてるような気がしたからだ。

「・・・泣いて・・・るの?」

彼女は、ぼろぼろと涙を零していた。ぐしゅっ、と、鼻を鳴らした。サラディンはそっと、彼女の涙を、手で拭いてあげた。

「ごめんなさい・・・サラディン。ごめんなさい・・・」

そして、彼女はそう言った。サラディンは、どうして彼女が自分に謝っているのかわからなかった。

「だ、だいじょうぶ・・・だいじょうぶだよ?」

だから、疑問を抱えながらも、ただそう言うことしかできなかった。

「・・・だいじょうぶじゃない!」

けれど、彼女は、今度は怒ったような口調でそう言った。サラディンはまた、びっくりしてしまうしかなかった。

「・・・だって、私のせいで・・・一年前、私のせいで、サラディンは片方の目が見えなくなっちゃったんだもの」

そして、彼女は泣きながら、そう叫んだ。それを聞いて、ようやくサラディンも、そういうことかと納得した表情になった。

彼は、彼女の頭の上に、ポンと手を乗せた。そして、優しい声でこう語りかけた。

「・・・それは、君の責任じゃない。君が謝ることじゃないよ。だから、お願い、ごめんとか・・・言わないで」

でも、彼女はまだ泣き止まなかった。サラディンはそんな彼女の前で、ただうろたえるしかなかった。恐怖にかられて泣いている子どもを慰めるのは、サラディンの役目だ。大丈夫、僕がついているよ、そう声をかければ、どんな子だってすぐに泣き止んでくれるのに。しかし、こうやって自分のために泣いている子に対しては、いったいどんな言葉をかけてやったほうがいいのだろうか。

そして、そう悩めば悩むほどに、彼は彼女のことが愛しくて、愛しくてしょうがないのだ。だから、余計に彼は、何も言えなくなるのだった。

「・・・ねぇ、サラディン」

やがて、彼女の方から、そうやって言葉を吐いた。まだ少し震えていたけれど、ちゃんと聞き取ることができる、しっかりした言葉だった。

「この国は、これからもちゃんと、もっと平和になっていくのかなぁ?」

「・・・うん、なるよ、きっと」

その質問には、サラディンは少し自信を持って、そう答えることができた。だけど、彼女は俯いて、こう続けた。

「私・・・聞いたの。大人たちが話すのを・・・また、近い将来、戦争の時代が来るかもしれないって」

サラディンは、黙った。彼女の言葉を、最後まで聴いた。

「この間の戦争で、“いわポケモン”の王国が“ハケンコク”になったらしいの・・・わかる、“ハケンコク”って?・・・私も、よくわからないんだけど、大人たちが言うには、どの国も、その“ハケンコク”の座を奪い合って、これまで戦ってきたらしいの。・・・そして、この間の戦争で、“いわポケモン”の王国がその座についたらしいんだけど・・・でも、今“ほのおポケモン”の王国が、それに反旗を翻そうとしているんだって・・・」

その時のサラディンには、その話は少し、難しいような気がした。でも、彼は真剣に、彼女の話を聴いていた。しっかりと、心に刻み込んで。

「そしたら、きっとまたこの砂漠で、大きな戦争が起きるだろうって・・・そしたら、そしたら、またいっぱい、死んじゃう!大人たちも、子どもも・・・ポケモン、いっぱい死んじゃうよ!」

「・・・だったら!」

「え」と、彼女は言った。サラディンは、ようやく口を開いた。

「・・・だったら、僕が絶対、この国を守ってみせる!」

サラディンのその言葉には、強い自信が込められていた。恐怖に震える子どもを慰めるのは、彼の役目なのだ。

「・・・僕が大人になったら、きっと強い兵士になって、この国を守るよ!」

「・・・ダメ!兵士になんかなったら、サラディン死んじゃう!」

けれど、そう言われて、サラディンはにっこりと笑みを浮かべた。

「・・・それなら、僕はお城の偉い役職に付く。そして、軍を指揮するんだよ!それなら、僕は死ぬことはない。国だって、ちゃんと守れる!」

その言葉に、彼女はようやく、涙を止めた。

「・・・すごぉい、サラディン・・・」

そして、笑顔になって、彼女はサラディンに飛びついたのだった。

「すごい!サラディン!すごい、すごい!きっと、なってね!お城の偉い役職に・・・!」

サラディンは、彼女に抱きつかれて、また顔を赤くしてしまった。だけど、彼にはもう、何を言うべきか、わかっていた。そのとき、ようやく彼は、彼の思いが口に出せて言えそうだった。

空を見上げた。三日月が、綺麗な、綺麗な、三日月が、眩い光を放っていた。その月の輝きに誓って、彼はこう言ったのだ。

「僕・・・絶対守ってみせる。君のことも、この国も、必ず!」

彼女が、彼を見ていた。その顔は、また赤く染まっていた。泣き疲れたからじゃない、もっとこう、何かどきどきするような思いが、彼女を染めていたのだった。それは決して、哀しい気持ちじゃなくて、切なくはあるけれど、苦しい気もするけれど、もっともっと、体がこう、暖かくなるような、とってもとっても、美しくて大切な、そんな気持ちが。

・・・サラディン。と、彼女がまた、彼の名を呼んだ。どうしたんだい?いつもの優しい声で、彼は答えた。

「これ・・・サラディンへのプレゼント」

そう言って、彼女が差し出した手の中にあったのは、きらきらと輝く、美しい貝殻だ。

「・・・あっ、これ・・・さっきの!」

「・・・盗んできちゃった」

そう言って、エヘヘ、と悪戯っぽい笑みを作った。サラディンは、苦笑しながら、彼女のアタマの上に、手をポンと乗せて、言った。

「イケナイ子だなぁ・・・もう、盗みを働いちゃあだめな世の中なのに」

「だって、300ポケは高いよぉ」

そう言って笑う彼女も、サラディンには可愛く見えた。

「・・・でも、どうしてこれを僕に?自分で身につけたらいいのに・・・だってこれは、女の子の・・・」

しかしそう言いかけると、彼女は貝殻を、彼の潰れた左目に、そっと押し当てた。

「・・・こうすればいいよ」

そして、そう言ったのだった。サラディンは、ただ驚いていた。

「・・・だって、私、嫌だったの・・・片目が潰れてるからって、サラディンのことをあんな風に言うなんて・・・許せなかった。サラディンは、そんな弱いコじゃないのに。・・・でも、そうやって目隠しを付ければ、何だかカッコイイでしょ?何だか、海賊みたい」

「・・・海賊って?」

訊くと、彼女はまた笑いながら答えた。

「“海”っていう、大きな、大きな、オアシスの湖よりも大きな水たまりの上に、船を浮かべて、そこを通る商人の船を襲って宝を盗んだり、ギャラドスみたいな巨大な海の怪物と戦ったりするポケモンたちのことだって」

「・・・商人を襲うの?だったら何か、悪いやつみたいじゃないか・・・」

「いいのよ、強いから」

サラディンは、そう言う彼女に、やれやれ、という気がした。しかし、呆れたというよりも、やはり嬉しい気持ちの方が大きかった。彼女が僕のために、プレゼントをくれるなんて・・・それが盗んだものだということは、あまり関係が無かった。ただ、彼女が自分に贈り物をくれたことが、彼には嬉しくて、嬉しくて、仕方がなかったのだった。

けれど、その時のことだ。

「・・・おい、いたぞ!子どもがふたりだ!」

「・・・あいつらに違いない!貝殻ドロボウだ!とっ捕まえろ!」

突然、そんな声と共に、沢山のラッタたちが駆けて来る足音が聞こえた。警察だ。サラディンは慌てて、彼女の腕を掴んで逃げようとしたが、時既に遅し。あっという間に、彼らは周りをぐるりと警官たちの群れに囲まれてしまった。

「・・・しょうがねぇガキ共だ。大人しくしてれば、そのうちどこかに養子として引き取ってもらえるものを・・・」

「まだこんなやつらがのさばっていたとは・・・ガッカリなことだなぁ」

思い思いの言葉を口にしながら、呆れた顔の警官ラッタたちが、じわじわと彼らに寄ってくる。サラディンは、必死に彼女を庇おうとした。彼女はまた怯えた顔をしながらも、ごめんなさい・・・サラディン、ごめんなさいと言っていた。そんな彼女を、絶対に守らなければと思った。例え、自分の命に代えてでも。だって、ついさっき、そう誓ったのだ。あの三日月へ・・・きっと僕は、君のことを守ってみせると。そう約束したのだ。

「やぁやぁ、警察の皆さん、ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」

が、次の瞬間。紳士のような、晴れ晴れとした声が聞こえたかと思うと、現れたのは、高いシルクハットを被り、蝶ネクタイをした雄のキマワリと、カチューシャや美しい宝石で着飾った、雌のキマワリの夫婦である。貴族を思わせる出で立ちの彼らの登場に、警官たちは怪訝な顔をしてこう訊ねた。

「いったい何なんだ、あんたたちは」

「はは、申し送れました。私、名をグレイスと申します」

「グレイス?どかっで聞いたような・・・え、ま、まさか!?」

途端に、警官たちは驚いた顔をしてみせる。

「ま、まさか、あのグレイス伯爵でございますか!?」

「ええ、いかにも」

ははぁ!途端に、媚びへつらうような態度で改まる警官たち。サラディンには、一体何が起こっているのかわからなかった。ただ、そのキマワリたちが現れた瞬間、また傍にいる彼女が、不安な顔をし出したのが気になった。

「・・・で、そのグレイス伯爵が、こんな場所に何の御用で・・・?」

警官が再び尋ねると、伯爵と呼ばれたキマワリはいかにも紳士らしく、うむ、と頷いて、建物の影で蹲っているニャルマーの子どもたちに視線を向けた。

そして彼は、思いもよらぬ台詞を吐いたのだった。

「そこにいるニャルマーの女の子ですけれども、実はその子、私の娘なのですよ」

グレイス伯爵(Illust:B@L)

>>第十四話
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コメント
B@Lさんの伝えたいことがわかった気がします(〇´∀`〇)
生き物の本能的な“何か”ですね。
同じ言葉を使ったっていいと思いますb
そぅでもしないと伝わらないんですから。
それが“B@Lクオリティー”ってことで(=∀=)b
【2008/02/06 22:55】 URL | §ロータリー§ #-[ 編集] | page top↑
大人の
ってより、私はこっちの方がよく理解出来るな!

いい歳なんだからなんて声も聞こえるが・・・・・
【2008/02/06 23:35】 URL | M2 #Q2kMihjY[ 編集] | page top↑
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