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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~① 【2007/12/15 00:00】
>>PQⅠから読む

プロローグ:戦場の魔道士

地響きが轟いた。

ある砂漠の地にて。辺りが見えなくなるほどの砂煙を巻き上げながら、おびただしい数のサンドパンたちが、その屈強な体に重厚な鉄の鎧や兜を身に着け、荒々しい雄たけびと共に駆けていった。

戦争だ。

彼らの目には、雨粒ほどの僅かな優しささえ無かった。あるのはただ、鋼の剣のような、鋭い殺意だけ。彼らはもはや、生きる兵器であった。
サンドパン兵士(Illust:Gasutoso)
戦うことが、彼らの呼吸。そして敵を倒すことが、彼らの存在証明であった。このような連中の攻撃を食らえば、どんな部隊だって、一溜りもあるまい。

しかし、次の瞬間。

その憶測が、まるでくだらない冗談のようになってしまう出来事が起きた。

とたんにサンドパンたちの体は、フワリと宙に浮いた。かと思うと、まるで正面から巨大な衝撃波を受けたように、後方へと弾かれるように勢いよく飛ばされていったのである。

地響きは鳴り止んだ。屈強な戦士たちは立ち上がることもできず、その場でウンウン唸っている他なかった。

戦いの幕は、一瞬にして降りてしまった。

そして、戦意を奪われた戦士たちが倒れる場所の数百メートルばかり先、その戦いを終わらせた一匹のポケモンが立っていた。

彼の背は大して高くもなく、その顔は初老で、既に皺が出始めていた。

しかし彼こそが、多くの戦場でその名を轟かせた凄腕の魔道士フーディンである。

その名は、“ンゲ”といった。


第一話:逃亡

「この度は、大儀であったぞ、“ムゲ”」

王ブニャットの謁見の間にて。戦いの後そこへ呼び出されたンゲは、王に向かって恭しく頭を下げた。

「…“ムゲ”ではなく、“ンゲ”にございます、陛下…」

横から入った大臣ビーダルの訂正に、不機嫌な顔をしながら、王ブニャットはこう言い放った。

「…ええい、どっちでもいいではないか。異国の言葉は、発音が難しいのだ」

・・・ははっ。快い短い返事と共に大臣は王に頭を下げながらも、渋い表情を隠しきれないでいた。いくら王とは言えど、かの魔道士に対して「どうでもいい」などという口の聞き方があろうか?

魔道士を怒らせると、決して喜ばしいことにはならない。かつて、大臣ビーダルより太っているのではないかと王に言われて腹を立てた魔道士ブーピッグがいたが、彼はその仕返しに大臣に呪いをかけ、いくら食事をしても空腹が治らない体にしてしまったことがあった。

あのときは、自分の妻の宝物であった真珠の首飾りを魔道士に贈ることで、その呪いは解いてもらえたのだが、大臣の体には今でも若干呪いが残っているような節があり、ときどき急に空腹感に襲われてどうしようもなくなるときがある。また、当時首飾りを手に入れる際に起きた喧嘩が原因で、妻とは未だに口を聞いてもらえていない。

またその他にも、王の失言によって魔道士達の怒りを買うことは多々あり、その度に大臣はその身にとばっちりを受けてきたのである。いくら図太い神経の持ち主で知られるビーダルとはいえ、それらの経験が彼の性格を酷く捻じ曲げてしまったということは、言うまでもない。

が、今回のこの魔道士ンゲは、名前を呼び間違えられたことなど全く気にした様子もなかった。まぁ、彼にとってはよくあることなのかもしれない。それにしてもその表情は、笑うでもなく、呆れるでもなく、何の感情も読み取ることができない。

・・・食えないやつ。大臣は、誰にも聴こえないように軽く舌打ちした。

「・・・ところで、“ヌゲ”よ」

また名を呼び違えながら、王は言葉を続けた。

「そなたに、今回ワタクシは素晴らしい褒美を用意した。・・・どうだ、受け取ってくれるか?」

褒美!その言葉を聞いて喜ばない者がいようか。

反応を見ようと、大臣の注目はンゲに注がれた。だが、相変わらず無表情のまま、ンゲはこう答えた。

「・・・褒美の内容にもよりますな」

失礼なやつだ!大臣ビーダルはだんだんこの魔道士の様子にイライラしてきた。けれど、褒美の内容を聞けば、どんな腹黒いやつだって目の色変えて飛びついてくるに違いない。そんな確信があった。さあ、聴いて驚け。王が貴様ひとりのためにどんな素晴らしい褒美を用意しているのか!?

やがて、王はニヤリと笑って、こう言い放った。

「この度そなたが倒した小国の城・・・それをそなたに与えようぞ!」

さあ、どうだ!?城をやると言われて急にだらしなく目の色を変える大魔道士の表情を、大臣は期待した。

しかし次の瞬間、その期待は完全に裏切られることになる。

「そのようなものであれば、受け取るわけにはいきません」

「・・・なにを馬鹿な!?」

大臣は遂に感情をむき出しにしてそう叫んだ。

「城であるぞ!王はそなたに、この度我らが属国としたその地を治める権利を、そなたにくれてやろうとおっしゃっておるのだぞ!それがいかに喜ぶべきことか、お前にはわからんと申すか!」

それに対し、ンゲはポーカーフェイスのまま、こう返答した。

「ワシは街から街へ、国から国へと渡り歩く流浪人・・・そのような者が、一つの場所に根を下ろすことなどできましょうや?その上それを統治せよなどという仕事は、いかに多くの戦場を潜り抜けてきたワシにも務まりますまい。それに・・・」

「・・・貴様!この褒美を、どれだけ多くの家臣たちが欲しがっているのかわかって言っているのか!?」

自分もそんな家臣のひとりであったビーダルは、なおもわめき散らした。

「この、おっ・・・!!!」

愚か者めが!そんな台詞が出かかったとき、大臣は急に我に返って、口を閉じた。魔道士を怒らせないようにと努めなければいけないときに、自分の方が腹を立てては元も子も無いではないか。

「・・・しっ、失礼!」

慌てて彼は王に頭をさげた。けれど、王はそんなものよりも、ンゲが続けようとした台詞の方が気になる様子で、彼の神経質な家臣には目もくれず、こう言った。

「・・・それに、何だ?言うてみよ」

「ははっ」

一呼吸置き、ンゲは続けた。

「・・・それに、ですな。いくらこの度の戦争でブニャット王のものになったとは言え、かの小国は元々、かの国の王の物。そのようなものを我が手中に収めようなどとは、まるで盗賊のような所業にございますまいか?」

「・・・なんだと?」

その言葉に、王の顔は怒りで赤く染まった。それに反比例するように、大臣の顔はどんどん青ざめてゆく。・・・マズイ、これは彼にとっても由々しき事態だ。

「他の国を侵略したワタクシに向かって言っているのか、その言葉は!?ワタクシを盗賊呼ばわりするつもりか!?」

「・・・いえ、決してそのような。ただ、ワシにそのような趣味はないと言いたいのでございまして・・・」

「ならば、ワタクシが悪趣味とでも申すか!?」

ンゲが下手に言い繕おうとしたことが、逆に火に油を注ぐ結果となった。ポケモンの世界ではこれを、“ヒードランのもらい火”とも言うが、正にそのヒードランが噴煙を噴出す如くに怒りを露にした王は、城中に響き渡るような大きな声でこう叫んだ。

「皆のもの、遠慮はいらん!この無礼な魔道士をひっ捕らえよ!」

とたんにンゲは、周りを何匹もの兵士ヤルキモノたちに取り囲まれることとなった。

が、それでもンゲは表情を変えない。まるでこの魔道士が、冷静である以外の術は持たぬといった風で。

「仕方ありませんな・・・」

次の瞬間、ンゲの姿は煙のように消え去った。

「・・・テレポートか!おい、まだそれ程遠くへは行っていない筈だ、追え!追うのだ!」

王ブニャットのヒステリックな叫び声に、ヤルキモノたちは一斉に謁見の間を飛び出していった。また王も、腹立たしそうに体を震わせながら、玉座から立ち上がって己が部屋へと引っ込んでいった。後には、また困ったことになったと、痛む頭を抱えてオロオロするばかりの大臣ビーダルだけが後に残された。

いや、その様子を外から眺めていた鳥ポケモンが一羽いる。漆黒の、闇のような翼を持つ者、ヤミカラスであった。

彼は一部始終を見終えると、クックックッと笑い、その場を後に、月の輝く夜空へ飛んでいった。

>>第二話
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