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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~② 【2007/12/16 00:00】
第二話:杖の灯
>>はじめから

よく澄んだ星空の広がる夜。昼の気温と一転して急激に寒くなるこの厳しい夜の砂漠で、月だけは昼間の太陽の面影を残しながら、優しく地上を照らしていた。

そこに、一匹のフーディンが歩を進める。右手にはイチイの杖を持ち、その小さな背には、随分砂埃を被った、あまり上等とも呼べないマントが羽織ってあった。一見初老の浮浪者のようでもあるが、よく見れば、その湧き上がる威厳から彼が並みの存在ではないことが誰でもわかる筈である。

その魔道士は、目の前にテントの群れを見つけると、歩を止めた。この砂漠をフライゴンに乗って渡る行商ニャースたちが、途中で砂嵐に遭った際などに避難するための場所である。今晩はこの場を借りることとしよう。魔道士ンゲは、そう思ってテントへ近付いた。

丁度そのとき、背後から鳥が降り立ってくるときの羽音が聞こえた。ンゲが振り向くと、そこに立っていたのは漆黒の翼を持つポケモン、ヤミカラスであった。

「おお、おかえり、コガラシ」

ンゲは、この砂漠における唯一の仲間であるそのヤミカラスの名を呼んだ。

「この度のお働き、誠にお疲れ様でござんした、ンゲ様」

「はっはっは、そんな堅苦しい挨拶はしなくていいよ。さぁ、お前も中に入りなさい」

顔に柔和な笑みを浮かべながら、ンゲはテントの中へ、コガラシを招き入れた。

中に誰もいない、狭く、真っ暗なテントの中。砂の上にござが敷いてあるだけの、かなり簡素なつくりだ。しかし砂嵐に耐えうるだけの強度はある。

そのござの上に、魔道士は腰を下ろす。後から来て、テントの入り口を閉めた連れも、そこにゆったりと腰を落ち着けた。

ンゲの持つイチイの杖に、魔法の明かりが灯る。それは蝋燭のような小さな明かりだが、それよりも確かな温もりが、そこには感じられるようだった。

「さあ、それじゃあメシとしようか」

魔道士は、腰に下げていた麻の袋の中から、ナナシやらオレンやらの木の実を取り出した。イチイの杖の光を受け、どれも美味しそうにきらきらと輝いている。流石、王室の果物。

「・・・あんなことがあったが、報酬は先に戴いていて、よかったな」

そう言いながらニコリと笑って、ンゲは自分の連れに食料を投げてよこした。コガラシは嘴で上手に木の実をキャッチすると、実に美味そうにもぐもぐと平らげた。

「・・・しっかし、よくぞあのデブ王の誘惑に耐えられたものでござんす」

もう二つ目の果実を催促しながら、彼は言った。

「口が悪いぞ、コガラシ。今回の報酬はあくまでブニャット王からのものだということを忘れんようにな」

二つ目の果実をコガラシに投げたあとで、自分も一つ目の木の実を取り出しながら、ンゲはコガラシを戒めるそんな台詞を紡ぐ。それは厳しい忠告というよりも、父が子を躾けるのに似ていた。

不思議な二匹だ。見るものが見れば、単なる仲間同士よりももっと強い絆を、そこに感じ取るに違いない。

しかし父親のような表情を、一旦魔道士らしいそれへと戻すと、ンゲはこう続けた。

「・・・だが、ただの雇われ魔道士に城を与えようなどとは・・・そうまでして、ワシの力を留まらせておきたかったのだろうか」

「この砂漠では、どの王国も生き残るために必死でござんすからね・・・戦に勝って、少しでも多くのオアシスの領地を手に入れることが、ここで暮らす者たちの生きる術・・・ンゲ様が加勢した戦もの含め、今日見てきただけで3箇所もの区域で戦が繰り広げられてござんした・・・」

コガラシのその台詞に、ンゲはフッと笑う。可笑しいのではない。むしろ、呆れているのだ。

「このような厳しい環境で生きていくためには、オアシスの小国同士による協力こそ必要だろうに。何とも愚かで、醜い生き様であろう・・・」

シャリ。木の実をひと齧りし、魔道士は続ける。

「・・・まぁ、ワシのように戦に加勢した者が、とやかく物を言えるようなことではないか」

「そんなことを言って。確かに聴いたでござんすよ。ンゲ様が、あのデブ王を盗賊だとか、悪趣味だとか言うのを」

クックック。ヤミカラス特有の笑い声を後に付け加えて、コガラシはそんな台詞を吐いた。そんな彼に、魔道士は目だけを向けて反論する。

「・・・言っておらんぞ、そんなことは。やつらが勘違いしたまでのこと」

「じゃあ、どうしてそんな風に勘違いさせるような無駄な台詞を・・・?」

と、コガラシの言葉に、魔道士はフッと笑う。今度は、本当に愉快そうな笑い方だった。

「確かに無駄な台詞よ。やれやれ、歳をとるとつい口数が多くなってしまうものでの」

「笑い事では済まされないでござんすよ。お蔭で王を怒らし、追っ手がいつ来るやもわからない・・・」

「いや、追っ手が来るのは、何もワシが口を滑らしたのだけが原因でもないぞ」

ようやく一つ目の果物を食べ干して、魔道士は言った。連れは、果実を食べる動きを止めて、キョトンとしている。

「・・・やつら、ワシが自分らのものにならんと知って、恐くなったのよ。もしワシが他所の国に雇われたのなら、脅威となるからな」

「・・・じゃあ、もしかしたら命を狙われる危険性も・・・」

「もしかしなくても、そういったことは充分にあり得る」

急に食欲が無くなったようにして、コガラシは視線を落とした。一方で、ンゲは二つ目の果実に手を伸ばす。恐ろしいことを言った割には、全く危機感が無い様子だ。

「・・・恐いか、コガラシ」

再びフッ、と笑って、彼は言った。コガラシは少したじろいだ様子を見せながらも、食事を再開した。

「・・・いや、ちょっと驚いただけでござんすよ・・・」

そんな連れに優しい視線を送りながら、魔道士も食事を続けた。

「安心しろ、もう少し進めば、ワシの目的の場所へ辿り着ける。さすれば直に、この砂漠から抜けられるだろうよ・・・」

もう少し進めば・・・。

もう少しとは、あと何日、何ヶ月であろうか?コガラシは最初この砂漠地帯に足を踏み入れたとき、すぐに抜けるよ、とンゲに言われたのに、気付いたらもう七日目である。そう言えばここへ来る前は、ンゲのマントももっと上等な風にしていた。七日間もの長い時間が、彼のマントをこんなにもみすぼらしくしてしまったのであった。この調子では自分の漆黒の羽も、直に、ぼろぼろでみすぼらしいものになってしまうのだろう。

・・・まぁ、いいや。コガラシは思った。何も、急ぐ理由もないのだ。

イチイの杖の明かりが消え、静かな闇に包まれた。魔道士の寝転がる隣に座り、ヤミカラスはスヤスヤと寝息を立てた。彼は、今夜もまた夢を見るだろう。とんでもない悪夢かもしれない。しかし、例えどんなに恐ろしいものであったとしても、彼の隣にいる偉大なる魔道士が、彼のことを守ってくれるに違いない。

ンゲの傍にいるだけで自分は幸せなんだと、そのちっぽけなヤミカラスは思っていたのだった。

>>第三話
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