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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑥ 【2007/12/20 00:00】
第六話:砂漠の戦士
>>はじめから >>前回の話

ズシン、ズシン・・・柔らかな砂漠の大地をも揺るがす、恐ろしげな足音が響いてくる。嵐の中、ぎらぎらと輝く赤い目は、「友好的」などという言葉からはあまりにもかけ離れていた。

カバルドン・・・砂漠に生息するポケモンの中で、最も危険とされるもののひとつである。体内に砂を溜め込み、背中に数箇所ある巨大な穴や鼻の穴などからそれを一気に吹き上げ、いつどんなときでも砂嵐を起こす。そして、縄張りへの侵入者を攻撃するのである。コガラシたちは今まさに、彼らの起こす砂嵐の真っ只中にいたのであった。

取り敢えず今のところ、砂嵐を防いでくれる「じめんタイプ」のバクーダ、ロシナンテの下にいるから無事であるものの、狂気のモンスターたちは既にコガラシたちの目前まで迫ってきていた。

先程どこかに落とされたというサンドパンの兵士の行方が知れない上に、自分たちの身にも危機が迫っていたとは。そしてこの砂嵐、出て行って戦うにはあまりに不利だ。もはや、一思いに襲われるのを待つばかりなのか・・・。

と、そのときだった。

シャキィィィィィィィィィン!

何かを切り裂く刃物のような音が、嵐の中から響き渡る。同時にカバルドンの一匹が、痛みに呻くような咆哮を発した。しかし嵐の中のどこから聞こえるかわからないその音を、コガラシは疑った。

「・・・お、おい!見てみぃ、アレ!」

キホーテが指差す方向に目を向ける。聞き間違いなどではなかった。そこには確かに、苦痛に体を激しく揺らすカバルドンの一匹と、その前に二本の足で屹立する何者かの影が見て取れた。よくよく目を凝らす。しかしそれで一瞬見えたその姿を、コガラシはまたしても信じきれなかった。

「サンドパン・・・さん?」

まさか、行方不明になったとばかり思っていたあの兵士が、今カバルドンに立ち向かっているというのか?

「そうか、あいつ、何処かに落としたわけやなかったんか!戦闘に備えて、自ら目覚めとったんやな!・・・流石、兵士やで!」

キホーテは一先ず安堵し、そう言った。

しかし兵士は、それから続けての攻撃ができないでいるばかりか逃げることもままならず、四方八方を徐々に別のカバルドンに囲まれようとしていた。やはり、まだ本調子ではないのだ。

「グォガァァアアァ!」

カバルドンの一匹が、その巨大な口を大きく開き、兵士を襲った。ほっとしていたキホーテの気持ちはドミノ倒しの如く一気に崩れ去り、コガラシも思わず悲鳴を上げそうになった。しかし兵士は後方へ下がり、何とかそれをかわす。

が、お蔭で後方に控えていた別のカバルドンに、まともにタックル攻撃を食らってしまう羽目になった。砂嵐の中を、ちっぽけな兵士の体が舞い跳ぶ。コガラシは、もう見ていられなかった。

助けに行かねば。例えこの砂嵐が自分にとって不利であっても、そうしなければ今度こそ兵士の命は無いだろう。そう思った。しかし、コガラシの翼は恐怖で小刻みにプルプル震え、飛び立っていくのを必死で拒んでいるかに思えた。なんて自分はちっぽけで情け無いのだろう。これほどまでに、自分の弱さを恥じたことは今までなかった。

ただ幸い、兵士はまだ無事のようである。よろめきながらも何とか立ち上がり、カバルドンの群れに再び対峙する。けれどまたあのような攻撃を食らえば、もう立ち上がれる保障は皆無であろう。なにせ、その体を覆っていた鉄の鎧も今やひび割れて、兵士の体を守る役割など疾うに放棄してしまっているのだ。

と、キホーテは何やら真剣な眼差しでカバルドンの群れを見つめていた。彼女は彼女で、また別のことを考えている様子だ。・・・この統率の取れた敵の動き・・・必ず一匹、頭領がいる筈や。そいつを叩けば、もしや・・・。

急に、彼女は目を輝かせ、こう叫んだ。

「見てみぃ!他のカバルドン、皆茶色の体やのに・・・一匹だけ、黒いのがおるで!アイツを叩けば、群れを潰せるかもしれへん!」

「ほ、本当でござんすか!?」

コガラシは驚いてキホーテを振り返った。その表情は、確信に満ちているとは言い難かったのだが・・・。

「あぁ、恐らく・・・。黒のカバルドンは、メスのカバルドン。それが一匹だけあの群れの中にいるっちゅうことは、何か意味がある筈や」

「メス・・・そうか、成る程!」

と、確信に満ちた声で叫んだコガラシに、キホーテは不信の目を向けた。

「・・・じぶん、なして今そないに納得したん?」

ギクリとして、コガラシは頭を庇う。ほんの数時間前にキホーテから殴られた箇所が、まだ少し腫れているようだった・・・このコブをまた増やすわけにはいくまい。

「・・・まぁ、ええわ。兎も角、どないかしてあいつだけでも倒せへんやろうか・・・」

再び一羽と一匹は、砂嵐の中に視線を戻した。黒のカバルドンは群れの一番奥に控え、その周りを他の茶色のカバルドンたちが囲んでいる。そう見ると、益々黒のカバルドンが、ボスとして守られているように思えてきた。あれを、どうやって倒す?

ふと、コガラシは思った。それができるのは、自分しかいないじゃないか!

そう決意した瞬間、コガラシはロシナンテの体の下から這い出し、バッと嵐の中に飛び上がった。キホーテが止める間もない勢いで。翼は、もう怯えてなどいなかった。それは今や鋼のように硬くなり、羽ばたくごとに、体に掴みかかろうと何度も手を伸ばしてくる強風の腕を一本一本切り裂く。それを維持したまま長時間飛び続けることはできないが、黒いガバルドンの元まで辿り着くにはそれで充分だった。

今、敵の真上まで来たコガラシは鋼の翼を振りかざして急降下する。嵐などにかき消されないような、あらん限りの声で叫びながら。

「カバルドンのボス!覚悟するでござんす!!」

が、そうはいくかとばかりに、黒のカバルドンはコガラシ目掛けて、背中の穴から勢いよく砂を吹き上げた。コガラシは振りかざしていた翼を慌てて体の前で交差させて守りの姿勢を取るが、とても防ぎきれるような攻撃ではない。

・・・ズバーッ!

大量の砂が、コガラシの体を飲み込む。そして彼の体を上空へと巻き上げた後、再び砂漠の砂の上に打ち付けたのであった。

不幸中の幸い。その落下地点はまた、ロシナンテのすぐ傍であった。キホーテは慌てて彼を保護したが、そのあと傷負いの身であるに関わらず、彼の頭をポカリと叩いた。これで、五つ目のトサカが出来る結果になった。

「・・・い、痛っ!な、何するでござんす・・・」

「・・・アホっ、それはこっちの台詞や!無茶しよってからに!」

だが、コガラシのその勇敢な行動は無駄にはならなかった。彼を傍らで視察していたお蔭で標的を理解したサンドパンの兵士は、ひび割れた鎧をバッと脱ぎ捨てると、体を丸め、まるで刺の鉄球のような姿になった。そしてそのまま、高速で回転しながらカバルドンのボスへと突き進んでいく。

無論、先程までの緩やかな動きが演技だったわけではない。相変わらず本調子ではないし、また、敵の数を計算し、その分の体力を調整する必要があったのだが、敵の数を一匹に絞った今、今出せる最高のスピードで動けるようになったのだった。そうすると彼は、まるで“水を得たヒンバス”。手下のカバルドンを抜いてボスのところへ辿り着くことなど、容易であった。

戦うための機械、兵士サンドパンが、今、メスのカバルドン目の前へと飛び出す。その瞬間体を元に戻すと、硬い爪を使って敵を正面から切り裂いた!

ズン・・・!

しかし、響いてきた音は酷く鈍いものだった。敵は、まだ平気な顔をしていた。そのカバルドンの外郭は、どうやら他のやつよりも頑丈にできているらしい。流石、カバルドンのボス・・・。

「グアゴォオオォォォォ!」

反撃をしようと、黒のカバルドンが兵士に迫りくる!だがサンドパンは、カバルドンに詰め寄ったのと同じスピードでそれをかわし、後退するのに成功した。ダメージは受けなかったものの、しかし大分息が上がっている。やはり、体力の消耗が激しいようだ。果たして、やつにもう一度詰め寄ることができるか。できても、あと一回が限度であろう。

と、それを見ながらキホーテは言った。

「やはり・・・兵士があのカバルドンに攻撃したとき、周りのカバルドンは動かへんかった・・・全て頭領の指示任せでしか動かへんゆうことや。案外、アイツらアタマ悪いんかも・・・」

「そ、そんなこと言ってる場合じゃござんせんよ、キホーテさん・・・」

先程受けたダメージに呻きながらコガラシが言う。ああ、わかっとるがな。キホーテはそう返しながら、何を思ったのか、手に持っていた荷袋を漁り始めた。

あれでもない、これでもない・・・。袋の中からは、様々な道具が見え隠れした。きらきら光る石のようなもの、何かの王冠のようなもの、いくつかのお香・・・ニャースが一匹で抱えるには大きすぎるぐらいの荷袋ではあったが、一体その中に、どうやったらそれだけのものが収納できるのか。

「・・・あった!」

と、キホーテが叫んだとき、その手にはサンドパンのものより一際長く、鋭い爪のようなものが握られていた。

「それは一体・・・?」

と、コガラシが訊ねるまでもなかった。

「“するどいつめ”や!」

・・・見たまんまの答えが返ってきたからだった。

しかし、これをサンドパンに持たせれば、今度こそあのカバルドンの鋼鉄の外郭に傷を与えられるかもしれない。

「・・・あっし、それ、持っていくでござんす!」

が、キホーテはそう言ったコガラシを制し、こう言った。

「お前はもう無理せんでえぇ。調度品扱うんはワイの仕事や。任せときぃ!」

しかしそれでもなお、コガラシは不安だった。彼女を危険な目にあわせていいものか、そう思ったからである。

それが、彼が初めてメスを守るべきオスというものの本能を感じた瞬間だったのかもしれない。だがこの行商キホーテは、世間一般が考えるメスのようにしおらしく振舞うなどということはしなかった。彼女は、今度はコガラシの目をしっかり見て、言った。

「・・・それに、ワイ、さっき自分の荷物ばっか守っとったこと、お前に怒られたやろ?その、名誉挽回をさせてほしいんや」

コガラシはハッとした。彼女の目からは今、強い意志が見てとれた。

その彼女の姿勢を、何と形容したらいいだろう。最初は、優しさだと思っていた。しかしどうやら、そんな柔らかいものではなさそうだ。もっと硬い何か・・・。コガラシは、もはやそれを止めることなどできなかった。

“するどいつめ”を持ち、ロシナンテの体から這い出すキホーテ。砂嵐が、その体に覆いかぶさる。彼女は咄嗟に片方の手で目を庇った。

「しゅ、主人!無茶を!」

ロシナンテが叫ぶも、彼女は手だけをバッと後ろに突き出し、それを制した。その後姿は、もはや行商のそれにはとても思えなかった。

砂漠の戦士―――コガラシの目には、そう映っていたのだった。

>>第七話
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