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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑦ 【2007/12/21 00:00】
第七話:四つの星
>>はじめから >>前回の話

“するどいつめ”を抱えながら、行商キホーテはその身を荒れ狂う砂嵐の中に曝していた。砂粒が身を打ち付け、強風が彼女を吹き飛ばさんと襲いかかる。しかし、彼女は決してそれに屈することはなかった。

砂粒から顔を片方の手で庇いながら、うっすらと目を開く。彼女が向いていた先に、目的地である砂漠一の王国がある筈だった。今はその道を、カバルドンの群れが完全に塞いでいる。

そのカバルドンらは、彼女から見て左手の方角に進行方向を向けていた。その先には、兵士サンドパンが立っていた。つまり、キホーテから見れば左斜め前に位置する。彼は、体力を削がれ肩で荒い呼吸を繰り返しながら、その場でじっと動こうとはせず、岩のように立っていた。今は、まだ動くべきではない。先程のように高速で転がっていけるのは、体力の問題からしてあと一度限り。それでうまくカバルドンのボスを仕留められねば、あとは敗北が待つのみである。

キホーテの仕事は、そんな彼を勝たせるための武器を運ぶことだった。けれど、無事届けられるものだろうか。キホーテが兵士のもとへ向かおうとしている間にも、カバルドンの群れはじりじりと兵士に迫っている。動きは緩慢だったが、砂嵐によって進行が困難なキホーテに比べたら倍の速度だ。地道に前進したところで、追いつけないのは目に見えていた。

しかしここで、彼女は身につけていた赤いチョッキの右ポケットから、木の実を一つ取り出す。カムラの実――食べれば一時的に身軽になり、少しだけ早く動けるようになる木の実だ。これも貴重な商売道具の一つだったが、背に腹は変えられまい。

木の実を口に放り込み、奥歯でガリリと噛み砕く。強烈な甘さと酸っぱさの中に、少し苦さが隠れた複雑な味だ。しかしその味が喉元を過ぎると、とたんに効き目が出てきた。足が軽くなったように、サクサクと動く。よし、これでカバルドンよりも先に、兵士のもとへ行ける・・・!

が、そのとき黒のカバルドンが吠えた。ハッとして振り向くと、敵はこちらへと顔を向けていた。しまった、もう気付かれたか!砂嵐の中でも目ざといカバルドンのボスは、再び吠えるとすぐに手下の一匹をこちらへ向かわせた。だがキホーテは、今度は左ポケットに手を入れ、紫色の不思議な玉を取り出した。“けむりだま”だ。カバルドンに気付かれた際、唯一身を隠すための手段であった。

けれど、その道具が活躍することは無かった。キホーテに向かっていたカバルドンは、途中でその動きを止め、体を小刻みに震わせていた。いやな予感がした。“ナマズンの身震い”というやつだ。そして、それは大概的中するものである。カバルドンの、いくつかの大きな穴のある背中が急に盛り上がり始め、そこから勢いよく風が吹き出されたのだった。

グオォォォッ!!!!

砂嵐の勢いは一気に激しさを増した。風が、獣の唸り声を上げてキホーテに掴みかかる!その攻撃には耐えられる筈が無かった。キホーテの体は綿毛のように、風に乗って吹き飛ばされていった。

自分は、甘かったのか?風に舞いながら、キホーテは思った。所詮、自分には無理なことだったというのか?結局、大人しく無抵抗に襲われるのを待っていたのと結果は同じだったというのか?そんな否定的な思いが、次々にキホーテの心の底から湧きあがってきた。けれど、彼女の意志はそれらに簡単に絡み取られて動けなくなるほど、弱くは無かった。・・・悔しい、このままで終わることなんて出来ない。このまま、負けを認めるわけにはいかない!

だが、吹きすさぶ砂嵐の前では、彼女のその鉄の意志でさえも無力だ。やがて彼女の体は、数時間前のコガラシのように、地面に落ちた。体が砂に埋もれる。ただ、上半身だけは何とか地面から抜け出せた。

そのとき心なしか、砂嵐が先程と同じくらいか、それ以下まで弱まっているような気がした。むしろ、止んでいるのではないか?だが、今確認すべきはそれではなく、自分が手にしているものだ。・・・よかった、“するどいつめ”は無事だ。“けむりだま”はどこかへ飛んでいってしまったようだが、今更それを残念がっている場合ではない。

そうしたなら、今自分がどこにいるかが問題だった。慌てて顔を上げる。と、目の前に高い岩のようなものがあるのにようやく気付いた。それが、砂嵐を遮ってくれていたのだ。

しかし岩と思ったそれは、こちらをくるりと振り返ると、キホーテと目を合わせた。それを見て、キホーテは息が止まりそうな思いがした。

兵士サンドパンだった。

なんという幸運かと思った。今、彼女は目的の場所へ辿り着いたのだった。無駄などではなかった。何も、無駄なことなんてなかったのだ。

キホーテは何も言えず、ただ慌てて手に持っていた武器を兵士へ差し出した。兵士もそれを無言で受け取る。彼には、感情などある筈が無かった。ただ戦うための兵士なのだ。しかしキホーテから武器を受け取ったとき、彼はその目を僅かに細めた。キホーテにはそれが、何となく微笑んだような気がした。あぁ、これで安心だ。そう思わせる優しさが、そこにあるような気がした。

けれど、彼の元へと向かうカバルドンの群れは、もう目前まで迫ってきていた。今度は体力も削がれているし、先程のように簡単に追い抜くことなどできないかもしれない。

だがそのとき、先頭のカバルドンの頭に、何か玉のようなものが落ちてきた。それはカバルドンに当たると同時に破裂し、中から煙を噴出した。砂嵐にも吹き飛ばされることのない魔法の煙に、カバルドンの群れは視界を眩まされ、混乱しているようにそれぞれ乱れた動きを始めた。まさか、こんなところで“けむりだま”が役に立つたとは。

あとは、兵士の出番であった。“けむりだま”の煙に包まれたカバルドンの群れを尻目に、彼は一気にボスの元へと転がり出した。ボスは周りに残っていた手下らを必死に集めようとするが、その行動は兵士の最高速度の突撃の前には全く意味をなさなかった。

もしもそのとき、彼女が周りに守って貰おうとするよりも、自分で身を守ろうとする手段を取ったならば、結果は違っていたかもしれない。しかし結果というものは、いつも自分で道を切り開こうとする者に優先的に与えられるものだ。

再び兵士がカバルドンのボスの前に飛び出したそのとき。彼の持つ“するどいつめ”は、敵の急所を捉えた。

ガアアアァァァァアアァアア!!!!

断末魔の悲鳴が響く。

そして、カバルドンのボスはその場に崩れた。

兵士は、戦いに勝利したのだった。

やがて砂嵐は収まり、夕暮れの太陽に赤く染まっていく空が顔を出した。後に残されたカバルドンの手下たちは、グオォ、グオォと叫び声を上げていたが、頭領が倒された今、もはや彼らに戦う意志などなかった。彼らのうちの何頭かが目を閉じて動かなくなったカバルドンを抱え、先頭の者が夕日の沈む東の方角へと群れを引き連れて歩いていった。

去っていきながら、カバルドンたちはまた何度も吠えていた。その声は、夕日に赤く染まる西の空にも高く響き渡っていった。

「キホーテさーん!」

コガラシとロシナンテが、未だ下半身が地面に埋まっているキホーテのもとへと駆け寄ってきた。

「大丈夫でござんすか!?ケガは!?」

ロシナンテに引っ張り出してもらいながら、キホーテは、あぁ大丈夫や、と答えた。その声は決して戦いの前のように元気には聞こえなかったが、そのあと彼女の口から漏れた溜息は、ようやく難が去ったことによる安堵感を表していた。

「・・・ところで、あいつは!?兵士は無事か!?」

しかし急に、また切羽詰った様子になる。コロコロと表情豊かな方だ、コガラシはそう思った。

「大丈夫でござんすよ、ホラ、ちゃんとあそこに立って・・・」

だがコガラシが兵士を指差した丁度そのとき、兵士は前のめりにバタリと倒れた。

・・・。

「・・・だ、大丈夫か!?おい、しっかりせぇ!!」

と、慌ててキホーテが駆け出す。尋常でない速さだった。ひょっとしたらカムラの実の効果がまだ続いているのかもしれない。

が、兵士の様子を知ったキホーテは、呆れたようにこう言ったのだった。

「なーんや・・・また、寝とるだけかいな」

それに、コガラシはクックックと笑った。ロシナンテも、バクーダらしくガバガバと笑った。そしてキホーテも、ようやく元気を取り戻したように、アハハハハと楽しげに笑っていた。

ほんのついさっき出来た旅の仲間たちは、いつの間にやら確かな信頼に結び付けられていた。ひょっとしたらそれこそが、カバルドンの群れとの戦いにおいて、彼らを勝利へと導いた第一の要因であったのかもしれない。

「・・・さぁ、もう日が暮れてまうで!もう少しや、頑張って王国まで辿り着くで!」

やがて、キホーテがそう言った。それに対してロシナンテが、今の戦いで疲れたから今晩はここで野宿しようと抗議したが、それでまた主人からポカリと殴られ、四個目のコブを作ってしまう。あほう、じぶん何もしてへんかったやろう、と。

まぁまぁ、あっしらを砂嵐から守る盾になってくれたじゃござんせんか、そう言ったコガラシの頭もまた、ポカリ。一々うるさいわ、兎も角早う行かんと、またさっきのような連中に襲われてまうかもしれへんやろ。いやいや、それはわかるでござんすが、何もロシナンテさんを殴らなくても・・・ポカリ。

・・・やれやれ、もう本調子なのか、この行商は。なんとも心強いことである。

そして、彼ら一行は再び歩き出した。目的の場所へ向けて。

東の空には既にいくつかの星が、きらきらと美しい輝きを放っていた。一つ、二つ、三つ、四つ・・・。

空の四つと、地上の四匹は、どちらも同じ。太陽に照らされて輝く、仲間であった。

>>第八話
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