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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑧ 【2007/12/22 00:00】
第八話:砂漠の魔獣
>>はじめから >>前回の話

この砂漠に来て、八日目の日が沈む・・・。

魔道士ンゲはその赤々とした夕日を、今日訪れた、また別の王国の城の窓から眺めていた。

自然というものは、なんと美しいのであろうか。時にそれは、どんな建造物や絵画にも劣らぬ美しさを放つ。・・・尤も、多くの建造物はその自然そのものを模写したものであるのだが。

ただ、どんなに美しくても、それは永遠ということはできない。今自分が見ている夕日の輝きも、直に夜という名の闇に食われ、消えてしまう運命にある。

けれど、だからこそ・・・。ほんの一瞬の美しさであるからこそ素晴らしく、何度も見たいものであるのだと、彼はちゃんと心得ていたのだった。

「魔道士ンゲよ、待たせたな」

と、背後から彼を呼ぶ声が聞こえた。魔道士は振り返り、それに恭しく頭を下げる。

「とんでもございません・・・ブーバー王」

その台詞に、クスリと笑みを浮かべる王の顔は、まだ幼さの残るものだった。彼が戴冠の儀式を済ませたのは、まだほんの1年ほど前。先代の王ブーバーンが突然の病に倒れた後のことだ。まだ青年と呼ぶにも少しばかり齢の足りぬその王は、しかし充分、聡明博識で、国の民からの信頼も厚かった。

「“ブーバー王”か。お前からそのような名で呼ばれるのは初めてだな」

「・・・以前は、王はまだ幼きブビィでございましたので。しかし今やあなた様も立派な王。このような堅苦しい挨拶をせねばならぬこと、大変申し訳なく思いますが、必然のことにございます」

全く無愛想に、魔道士は言った。少し渋い顔をして、王も応じる。

「・・・そうだな、お前はもう俺様の家庭教師ではないのだ。俺様も、嘗ての恩師ではなく王国に訪れたひとりの魔道士として、お前と向き合うこととしよう」

客人をもてなすための部屋の長いテーブルの、上座に王は腰掛ける。と、自分も腰掛けようとする前に、魔道士は再び口を開いた。

「・・・陛下。そのように、“俺様”や“お前”などという呼称の使用は、王としてやや不適切かと・・・」

「・・・わかった、わかった。“貴殿”、“私”の正面の席に腰掛けたまえ」

ようやくそれに応じ、腰掛ける魔道士。・・・やれやれ、年をとると一言多くなるものだろうか。口にはせず、王はそう思った。

11年前、王子である自分の家庭教師として、ンゲはこの国を訪れていた。彼からは礼儀作法は勿論のこと、社会のこと、自然のことなど、実に様々な分野の学問を教えて貰ったものだ。流石、先代のブーバーン王。素晴らしいポケモンを国に向かえなさる。教え子たる自分自身も時々そう思ったものだったが、勿論この素晴らしすぎるポケモンが、ただ自分の家庭教師としてのみ国へ訪れたのではないということは、彼もよく心得ていた。

ともかく魔道士は、その嘗ての恩義から、これ以上に無いほどのもてなしを受けていた。昨日のブニャット王の城のように謁見の間にて跪かせられることもなく、客人の間に通された魔道士の目の前には今、豪華な料理の数々が揃えてあった。

だが、魔道士はそれらの料理に一切手を付けようとしない。出されたものを戴かないとは客人の態度としていかがなものかと思われるが、ブーバー王は、しかし魔道士を諌めることもなく、こう会話を切り出した。

「・・・して、貴殿が再びこの地へ訪れた理由、申してみよ」

はっ。短く返事をした後、魔道士は少しの間を置いて、語りだした。

「この国の戦に、雇われ魔道士として加勢したく思いまして・・・」

「・・・その台詞、流石にもう言い飽きたのではないか?」

感発入れず、王は返した。そして目の前にあるソーダ水を一口すすると、続ける。

「昨日の戦でサンドパンの王国が、ブニャット王の王国の軍隊によって滅ぼされたとの報告を受けた・・・。しかし俺様の国のスパイが見たところによれば、戦場にはブニャット王の国の兵士など一匹たりともいなかったという。だがそこでサンドパンの兵士共は、まるで強風が吹きつけてきたのかのように突然宙に吹き飛ばされ、自滅の道を歩んだのだと。それだけじゃない、その二日前も、五日前も!二、三日置きで同じことが起こっておるのだ。・・・ンゲ、お前の仕業であろう?昔お前がこの国の戦に加担していたときの戦い方と、全く同じではないか!」

勝ち誇ったように言う王を相手に、魔道士は何も答えなかった。ただ王からじっと視線を逸らさず、やはり食べ物も飲み物も一切口にしない。一向に冷静な魔道士の態度に、王は僅かばかり眉を吊り上げるような表情をしてみせたが、もう一度ソーダ水をすすると、こう続けた。

「・・・貴殿、何を考えておる。そのように国から国へと転々と取り入るとは・・・」

「・・・それが、根無し草たるワシの生き方にございます」

厳かに、魔道士は答えた。それに対し、王はフッと笑みを浮かべ、言う。

「・・・成る程、貴殿らしい答えだ。まぁヨシとしよう。しかし、他に目的があるのではないか?さもなければ、あのブニャットの“毛むくじゃら”王国から命を狙われるような危険を冒してまでこのようなことはしまい」

どうしてそれを?魔道士がそう口にする前に、王はまたソーダ水を飲み、答えた。

「俺様の家臣が報告してくれた。お前がこの国へ入国した直後、何匹か他所の国のポケモンが紛れ込んだと。マッスグマにグラエナ、どちらも毛の生えたポケモン共だ」

・・・思ったより早かったな。そう思い、ンゲは今初めてソーダ水を口にした。久々に飲む炭酸の味は、しかし大して美味くもなかった。

「まぁ、落ち着け。この城にいる限りは安心だ。・・・だが、この俺様に取り入ろうというのなら、正直に答えよ。お前の本当の目的を」

そう言われ、渋々口を開こうとする魔道士。が、王は自分からそれを制し、言った。

「まぁ、待て。つまらない言い訳なら聞きたくはない。俺様には、大体察しはついている。だから、これから俺様が言う言葉に聞き覚えがあるかどうか、YesかNoで答えよ。わかったな」

王は、再び水を口にする。そしてグラスをテーブルの上に静かに置くと、その口から呪文のような言葉を紡ぎ出した。

「“大地生まれしとき、それは魔獣が吠えしとき。その咆哮の後、土が地表を覆い、魔獣はその下で長年の眠りへと臥す”」

魔道士は、その表情に驚愕を浮かべた。もはや、Yesと答えるまでもなかった。

「・・・これは、我が王国に保管されていたという古文書の一部だ。昔、貴殿が熱心に解読してくれたという、な」

「・・・どこまで、ご存知なのですか」

予想以上だ、この王の博識は・・・。

「・・・さぁな。しかし私は幼少時代、師として、魔道士として、貴殿のことをそれなりに慕っていたつもりだ。貴殿の生き様、そして目的を知るための努力も惜しまなかった。そして、知りえたのだ。11年前から僅か1年しか経たぬあの日に、貴殿があのような予言をしたせいでこの国から追われ、にも関わらず今になって舞い戻ってきては、国から国へと転々と渡り歩いている、その理由を」

10年前の、魔道士の予言・・・それは当時、ブーバーン国にとって恐るべきものだった。“これから9年後過ぎた後、王ブーバーンは病の床に倒れるだろう。そしてこの国を含む砂漠の地の全ては、混沌で包まれるだろう・・・”

「・・・予言は当たった。先代のブーバーン王は倒れ、私がその後を継ぐこととなった。そしてそれと共に、9年前に貴殿が我が国を勝利へと導いて終結した戦争も、再び勃発してしまった。我が家臣の中には、あれは貴殿の呪いだと言うものもいるくらいだ。今日貴殿を城へ迎える際も、追い返すべきだと強く反対されたものだ」

魔道士は再びグラスの水を飲む。王の言葉を、ただ聞くに徹していた。

「・・・しかしあの予言は、ただの“みらいよち”ではなかったのだな。古文書を読み進めるにつれ、それが伝説に即したものであることを、私は知りえた。即ち、“土の上に生まれたある一国の王が死すとき、土の上は混沌が支配する。そのとき再び魔獣目覚め、土を枯らし、世界は砂漠と化すなり”・・・と」

もはや、魔道士は沈黙するのみだった。王は最も重要な情報も、その脳の内に掴んでいたのだった。

「さらに予言は詳細へと進むが、それによれば、魔獣が目覚めるのは丁度この年。戦で乱れたこの砂漠の、いずれかの国の地下深くより出でるのだと。そして、それを防ぐためには、その国が何処かを探し出し、そこで魔獣への祈りを捧げなければならぬとも。また、その祈りを捧げねばならぬ者は、“この地で最も気高き王”であるのだということも!・・・貴殿の目的は、戦乱に乗じてその両方を探ることにあったのだ、そうであろう!?」

魔道士は、もう水すら口にしなかった。いや、いつの間にやらグラスは既に空っぽになっていたのだった。ただ、皿の上に盛られる豪勢な食事だけが、決して手を付けられることなく、静かに瑞々しさを失っていくのだった。

「以上・・・相違無いようだな。」

王は言い、グラスの中の最後の一口を飲み干した。彼の前の料理も、少しも手を付けられないままだった。

「一つだけ、お前に質問したい。なぜお前は、真っ先にこの国を訪れなかったのだ?・・・なにも、俺様がその“最も気高き王”であるなどと思っているわけではない。しかし最初にこの国に取り入るなら、しっかりした後ろ盾もできよう。それから他の国へ入る際も、スパイとして行動すればよいのだ。それとも、一度お前を追放したこの国を、信用できないと申すか?」

「・・・いえ、ワシはただ、王にそのように世話になることはできまいと思った次第にございます」

しかしその答えこそ、王の逆鱗に触れるものであった。

「なぜだ!なぜお前はいつもそうやって、他の助けを借りようとはせんのだ!?どうして差し伸べる手を払いのけるようなことをする!?自分一匹で何でもできるとでも思っておるのか!?」

大声で怒鳴る王の傍ら、召使のブビィが慌てて王のもとへソーダ水の入った瓶を運んできた。それが注がれると、王は一口でそれを飲み干し、再び聡明な表情に戻って、魔道士に言う。

「・・・10年前、私が貴殿を慕っていたのは本当だ。しかし飽くまで、魔道士として、師としてのみ。一匹のポケモンとしては、貴殿のようなもの信用するに値しなかった。・・・毎度毎度そのように、他に無愛想な貴殿の態度が、私は嫌いなのだ!」

そこで、王は席を立った。そして去り際に、こう言ったのだった。

「貴殿、誰か一匹でも、信用するポケモンがおるのか?もしそうならば、その者、大事にせねばならんぞ・・・」

そして、明日の働きを期待しておるという言葉も、その後忘れずに付け加えて。

召使のブビィは慌てて魔道士のもとへと寄り、彼を寝室へと案内した。客用の寝室には、柔らかそうなベッドや簡易シャワーなどが置いてあり、何不自由なく過ごせそうだ。確かにこの国へ最初に訪れていれば、自分のマントも上等なままだったろうし、コガラシにも自分の作った不器用な麻巻きではなく、もっと丈夫な日除け服が与えられたかもしれない。

そんな寝室も、出口の戸を開ければそこに見張り役のポケモンがいることを、魔道士は感じていた。彼がこの城の王を信用せぬように、王もまた、魔道士を信用していないのであった。

しかし、彼は知っていた。信用という言葉の脆さを。嘗て彼を信用し、軍師として重用していた先代のブーバーン王も、彼の不吉な予言のために、いとも簡単にその信用を破り捨てたのだった。それは自然と同じ、永遠のものなんかではない。

けれど、コガラシだけは・・・あのちっぽけなヤミカラスだけにとっては、いつまでも味方でありたいと、そう願うのであった。

>>第九話
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