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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑩ 【2007/12/24 00:00】
第十話:医者
>>はじめから >>前回の話

コガラシは仲間の一匹がゆっくりと倒れていく姿を目の当たりにしていた。

実際には、それはほんの一瞬の出来事だったが、コガラシの目にはまるでスローモーションでもかけたような緩慢な動きに見て取れた。

それを見ながら、コガラシは何かを叫んでいた。あまりにも気が動転していて、自分でも何を言っているかわからなかったが、薄暗い地下道の壁に反響して再びコガラシのもとに返ってきたのは、倒れた仲間を呼ぶ台詞であった。

「・・・サンドパンさん!」

そう、倒れたのは兵士サンドパンだった。高さ3メートルもの大オクタンから、キホーテに向けて砲撃が発射されたとき、兵士は突然キホーテの前へ飛び出したのである。

お蔭でキホーテは難を免れたものの、サンドパンは大オクタンの攻撃を正面からまともに受ける結果となった。しかも、じめんタイプのサンドパンが苦手とする水の砲撃、“オクタンほう”だ。ダメージは、昼間のカバルドンらの攻撃の比にはならないだろう。

キホーテの目の前で、サンドパンはバタンという大きな音をたて、仰向けに倒れた。すぐにキホーテは駆け寄ったが、兵士のその目が開くことはなかった。

「・・・お、おい、兵士!?なしてや・・・なしてお前が倒れるん!?」

「・・・主人、早く私の背中に乗るのだ!」

と、ようやくキホーテらの元まで辿り着いたロシナンテが叫ぶ。しかしそのときには大オクタンは体を大きく膨らませ、既に二撃目の発射準備をしている。

「・・・コガラシ兄ちゃん!早くボクを大オクタンのオメメの前に連れてって!」

と、突然コガラシの足に掴まれて空を飛んでいるレダが叫んだ。いきなり何を言い出すかと驚いたが、今はその由を訊ねる余裕さえ無い。今にも砲撃を発射せんとしているオクタンの目玉の前へ、コガラシはバッと飛び出した。

突然視界に現れた邪魔者を、大オクタンはギラリと睨む。その巨大な目玉を前にして、しかしまだ幼いレダは怯むということを知らなかった。

「これでも食らえっ!」

そう叫ぶとレダは、頭の先を目玉にグッと向けて、そこから大量の胞子を噴射した!

「ウオォォォオォォォォォオ!!??」

レダの“しびれごな”を大量に目に受けた痛みで、大オクタンは身をよがらせ苦しみ出す。

「でかしたぞ、ボウヤ!さあ、早く逃げよう、主人!」

暴れる大オクタンの何本もの触手が、水面を叩くことによる多量の水しぶきを身に受けてびしょびしょになりながらも、キホーテと手負いのサンドパンを背中に乗せたロシナンテは、出口に向けて一気に走り出した。

駆ける、駆ける。後方にオクタンの姿が見えなくなるまで、地底湖が途切れるまで、ロシナンテは力を振り絞った。息は途切れ途切れになり、今日一日休まず歩き通しだったせいで大分疲れも溜まっている。しかし自分には守らねばならぬ仲間がいるのだという強い意志が、彼女を動かした。もう二度と振り落とすものか。その目は、ようやく彼女らしく綺麗で清々しい色に戻っていた。

誰でも一時の恐怖に、身を縮ませるときはあるものだ。しかしいつまでも縮こまったままならば、それまでの自分というものは永遠に失われてしまう。克服して初めて、取り戻せる自分というものがある。

そしてロシナンテも、どうやらそれを取り返すことができたようだった。大オクタンのウオォォォという咆哮は、もう大分遠くから聞こえてくる。恐怖は、去ったのだった。

直に、コガラシもその背中に追いついた。その足に掴まれたまま、レダが叫ぶ。

「もうじき出口だよ!扉が見えてくるはず!」

扉・・・扉・・・。あった、この道の先、鉄のような扉が。

「・・・鍵はかかっていないと思うけど・・・ちょっとカタいんだ。気をつけて!」

「なんの、お安い御用だ!主人、しっかり掴まっていろ!」

最後の一仕事だ。一気に“とっしん”してキメてやる!ロシナンテはそう思った。

が。

バンッ!

「・・・えっ?」

思いのほか、扉は勢い良く開いた。

・・・考えてもみれば、硬いといってもそれは幼いレダの感覚によるものである。そんなものバクーダが思いっきり“とっしん”をしかけたら、開いて当然。それどころか、ちょうつがいが外れ、扉は無残にも吹き飛んでしまった。

そして、勢いの治まりきれなかったロシナンテは、そのまま壁にぶつかる。

ドン!

「ぐえっ」

潰れたカエルのような声を上げるロシナンテ。コガラシは、慌ててその後ろまで駆け寄ってきた。

「・・・だ、だ、大丈夫でござんすかっ!?」

と、何も答えられないロシナンテの代わりに口を開いた者がいる。

「ッテテッ・・・大丈夫なわけないやろ!なにしとんねん、この馬鹿ロシナンテ!」

ゴンッと、ロシナンテの頭に拳骨が飛んできた。結構痛かったが、お蔭で安心した。・・・よかった、主人は無事だ、と。

主人に忠実なバクーダの使命は、取り敢えず果たされたようであった。ただ本人は、頭にまた新しいコブを作って、そのままぐったりと床にのびてしまったのだが。

あぁ、ロシナンテ。それでこそお前は、キホーテの忠実なる下部であるよ・・・。

「・・・それにしても、何処やココ?」

自分もロシナンテの後頭部にぶつかって頭に大きなコブを作ったキホーテが、それを摩りながら言う。

「レオナお姉ちゃん家の地下室だよ!」

レダは嬉しそうなその答えに、コガラシとキホーテはぎょっとしてしまった。まさか家の中に出てくるなんて、思いもよらなかったからだ。

「・・・じゃ、じゃあ上におんのか?その、レオナお姉ちゃんとやらが・・・」

ニッコリ微笑んで肯定の意を示すレダ・・・不法侵入もいいところだ。これはちょっと気マズイ展開になってきた。

「・・・誰?誰かいるんですの!?」

と、突然の聞きなれない声に、キホーテたちはビクンッと肩を震わす。噂をすればなんとやら・・・丁度いいタイミングで本人様のお出ましのようである。

「・・・あ、あっしら、決して怪しいものとかそんなんじゃあござんせんよっ!!」

「そ、そや!ただ迷子になって、たまたまこんなところに出てきてもうただけで・・・」

本人が現れる前からしどろもどろの言い訳を始めるキホーテたち。しかし部屋の階段の向こうから現れたポケモンは、手に何か武器のようなものを構えている。

・・・鉄砲、いや、テッポウオの稚魚だ。

稚魚だけに本来の半分程度の大きさしかないが、腹筋が発達していて100メートル先にも届く勢いの銃撃を発射させるというテッポウオ、凶器としては充分なものだった。

「動かないで!動くと、撃ちますわよ!」

ヒィッ!そんな悲鳴すら飲み込んで、両手を上に上げるキホーテ。銃を向けられたらそうしなければならないのか、よくわからなかったが、コガラシもそれに習って翼を上へ広げた。しかしレダは楽しそうに声を上げる。

「レオナお姉ちゃん!」

・・・えっ、これがレオナお姉ちゃん?今物騒な物をあっしらに突きつけているこの方が、“優しいお医者さん”のレオナお姉ちゃんなんでござんすか!?思わずそんなことを訊きたくもなったが、黙って翼を上げたままのコガラシ・・・。一難去ってまた一難、コドラの巣を抜けガバイトの巣に入る、とはこのことである。あぁ、さっきチャンスだと思ったのは、ただの勘違いだったのだろうか。

しかしよく見てみると、その物騒な物を持つポケモンは、見た目はそう怖しくもなかった。釣り上がった目と鋭い鉤爪がそのポケモン本来のものだが、“レオナお姉ちゃん”の爪はそう鋭くもなかったし、目だってキホーテに比べたらずっと女の子らしい、可愛い目をしている。

ニューラ・・・普通は雪山で見かける筈のそのポケモンまでがこの国にいる、ということには大いに驚いたが、今はそんなこと言っている場合ではない。

「・・・やめてよ、レオナお姉ちゃん!おニイちゃんたち、悪いやつらじゃないよ!」

と、レダがそう言うも、ニューラは手にしたテッポウオを下ろそうとはしない。

「・・・レダさま!この方々にそう言えと命じられているのですわねっ!?お可愛そうに、捕まってしまわれて・・・でも、このレオナ、命に代えてでもお助けしますわっ!」

・・・何だか台詞が仰々しいのが気になるが、取り敢えずはっきりとわかるのは、どうやらニューラは、キホーテたちがレダを人質・・・もとい、ポケ質(ぽけじち)に取っているものと勘違いしているらしい・・・。

「・・・違うよ、そんなんじゃないよ!おニイちゃんたち、ボクにキャンディくれたんだよ!」

「・・・まぁっ、キャンディなんかで買収するなんて・・・卑劣にもほどがありますわっ!」

・・・それを言われたら否定できないのが、キホーテたちの悲しいところである・・・。

「ま、まぁ、ちょい待ちぃや!ワイら、別にこのボウヤをポケ質に取ってなんかおらへんて!ワイらが、たまたま国の外で吊り橋渡れへんで困っとったところで会うたもんやから・・・ちょい地下通路教えてもろうただけや!」

「・・・まぁっ、秘密の地下通路を一体どうやってレダ様から聞き出したのかしら!?」

「・・・って、怒るなや。こっちにも事情があんねん。ホレッ!」

と、キホーテは壁の方でのびているロシナンテと未だぐったりしたままのサンドパンを顎で示した。それを見ると、流石に医者であるレオナは心が動かされたのだろうか、張り詰め尖らせていた表情を、不安な様子に歪める。

「・・・まぁっ、こんなに怪我して・・・」

「カネはちゃんと出すし、このボウヤに危害を加えるようなことは何もせえへん!やから、そいつら治療したってくれや・・・頼むで」

ここは、下手に出た方が得策だとキホーテは判断した。相手も、やはり医者。負傷者となれば放っておけない質らしい。テッポウオを下げると、彼女は振り返って階段の奥へ戻っていった。キホーテとコガラシは顔を見合わせる。取り敢えず、手はもう下ろしてもいいらしい。

レオナが再び階段を降りてくると、その手にはもう武器は無かった。代わりに、かぎづめが何か布のような柔らかいもので覆われている。患者を傷つけないための措置だ。その手で、まずサンドパンの肩を優しく持ち上げた。

「・・・あなた方も手伝ってくださいな!」

慌てて、キホーテとコガラシもその下を支える。

そして、ゆっくりと階段の上まで負傷した兵士を運んでいった。上に辿り着くと、そこはもう診療所のようだった。どんな大柄なポケモンでも充分寝かせられそうな大きめのベッドが二台、そのうちの一台にサンドパンを寝かせる。

「・・・取り敢えず、怪我の酷いこの方を先に治療いたしますわ。下のバクーダさんはその後で、地下で直接治療致します・・・あの方は運ぶのが大変ですから」

そう言ったのは、さっきまでテッポウオを構えていた物騒なニューラではなかった。立派な医者としての彼女がそこにいた。

しかし最後に、こう付け加えることは忘れなかった。

「・・・勘違いしないでほしいですわ。あたし、まだあなた方を悪者ではないと信用したわけではありませんから・・・ちょっとでも妙なマネを致しましたら、警察を呼びますわよ!」

・・・一先ずは助かったものの、信用を得ることはまた、難しい問題のようである・・・。

「・・・心配すんなや、コガラシ。巧くいかへんこともある。ま、そのうち好転すんのを祈ろうや」

と、不安そうな顔色のコガラシの肩をポンと叩き、キホーテが言う。

・・・元はと言えばあなたが悪いんじゃござんせんか?そんな言葉も出かけたが、もはやコガラシには彼女を責める気は無かった。自分自身どうしようもなく疲れていたというのもある。今日は本当、散々な目に合ったものだ。いくつもの恐怖を乗り越えてきた。自分がちっぽけな存在だということも、改めて気付かされるようなことばかりであった。

けれども、それら全てを乗り越えてきた今の自分がある。結果、失いかけていた自分もちゃんと戻ってきた。それは決して、ハズレくじなんかではないだろうとも思った。寧ろ、チャンスだった。やはりその通りだった。

これからもまだまだ超えなければならない困難が沢山待ち受けているだろう。一体いくつあるのか見当もつかないが、少なくとも今は、ちゃんと自分を取り戻す術を知っている。今の自分がいる限り、これからの自分も大丈夫だ。と、それを知る上でも大きな収穫だったと思う。

そして後ろの方では、また何が愉しいのか、レダがぴょんぴょん飛び跳ねている。怯えを知らない子ども。自分には、まだそういった部分も残っているのを、コガラシは知っている。

これから何が起こるかわからないというのに、そんなものに対してはかえって、恐怖よりもワクワクの方が強かったりする。それもまた、確かな事実だったのだから。

>>第十一話
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