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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑪ 【2007/12/25 00:00】
第十一話:師弟
>>はじめから >>前回の話

魔道士が“ほのおポケモン”の王国を訪れた翌日のこと、彼は再び戦場にいた。

彼が今回味方する国の野営地には、マグマラシやリザードなど、屈強な炎の戦士たちが頭を連ねていた。そしてブーバー王も、武将として自らその場に参加している。それは、魔道士が希望する状況ではなかった。戦場に繰り出す前、ンゲは戦場に行くのは自分だけでいいと言い張ったのだった。

「・・・許されぬ用件だ。昨日も言った筈だ、貴殿のように自分だけで何でも片付けようなどと考えれば、いずれどうしようもない失敗を起こす。それに、貴殿は連日の戦い続けで、大分疲れも溜まってきておろう。それに比べ、我が軍が戦を行なったのは一月前。十分、戦えるだけの英気も養われている」

「ワシの体ならば、心配に及びませぬ。ワシには“じこさいせい”という能力が備わっているゆえ・・・しかし心配なのはあなた様と、あなた様の軍にございます。一月も戦っておらぬと言うのならば、もはや戦い方を忘れてしまっているのではありませぬか」

「フッ・・・貴殿よ、それ以上の皮肉は慎んだ方が身のためであるぞ」

このような流れで、魔道士の反論は当然聞き入られなかったのだった。

それにしても・・・己が陣地の面々を見て、魔道士には気になることがあった。皆、着ているのが頑丈な鉄の鎧ではなく、木や皮で出来た軽そうな鎧である点だ。中には、何も身に着けていない者もいる。更に武器については、誰ひとりとして持つ者はいなかった。

だが、それを無用心だと王に訴えれば、直ぐにこんな返事が返ってきた。

「フッ・・・我が軍は、貴殿に負けたサンドパン王国のような失敗はせぬわ。やつらはいつも重装備でいるからこそ、本来の技が繰り出せずに滅びたのだ。もしやつらが本来の力で貴殿に襲い掛かってきたのであれば、ひょっとすると貴殿の攻撃など簡単に振り切られていたかもしれぬぞ?」

成る程、自分らには自分ら本来の戦い方があると、王はちゃんと心得ているのだろう。ご立派になられたものだ、魔道士にはそんな風に、嘗ての教え子の成長を喜ぶ師としての感情が蘇ってきたが、勿論今はそんな場合ではないことは心得ており、口に出すことはなかった。

やがて、遠くの地より鬨の声が響いた。それが、今回戦闘を仕掛けた側である敵の軍が攻めてくる合図であった。だがそれは、予定よりも若干早かった。

「・・・まだ日は完全に昇りきれておらんぞ。やつら、仕来りすら忘れたか」

ブーバー王はそう言って舌打ちした。この砂漠の地には古来より、「日が完全に昇り切る前に争いを行なえば、砂漠の神の怒りを買う」とする宗教的な戒律があるのだが、それも破られるとはつまり、この地が今や完全に混沌状態へと陥ったことを示していた。

「仕方ありますまい、ワシらも戦線に繰り出しましょう」

ンゲはそう言うと、先頭を切って野営地から飛び出した。後に続いて、マグマラシやリザードなども戦いへと出発する。そしてブーバー王も、しんがりとして出て行くべく立ち上がった。

と、そこへ一匹のブビィが王のもとへと駆けてきた。その部下は王に対して跪き、恭しく頭も下げてはいたが、大分取り乱した様子で、言葉も途切れ途切れであった。

「も、申し上げます!わ、我が陣営に、ス、ス、スパイが混じっているとの報告を、先程受けまして・・・!」

「落ち着け!どこの国のスパイだ?我が国の諜報員ならばそれもわかる筈であろう、ちゃんとそれまで申してみよ!」

・・・はっ!ブビィはそう短く返事をしたが、その続きを言うまでには一呼吸の間ほどの時間を要した。その間、最後尾の兵士たちは既に野営地から出て行ってしまっていた。

「・・・ブニャット王の国です!裏切り者の魔道士を殺すべく、我が軍へと侵入したと・・・!」

・・・成る程。戦の混乱に乗じれば、容易く魔道士が殺せるとの算段か。やつらも考えたな・・・。ブーバー王はそう思いながら、ひょっとしたら魔道士に仲間の軍を付けるという自分の作戦も、今回仇をなしたのではないかと悔やんだ。

しかし、戦闘は既に始まっているのだ。そして元より、戦場で命を奪われるか否かは己が責任である。

「・・・報告、ご苦労であった。しかし今は、その対策を講じているときではない」

そう言って、武将ブーバーは戦場への道を踏み出した。人生には、事前に考えねばならぬときと、早急な判断が求められるときがある。それをわきまえることこそ、真の指導者に必要な器量であろう。

今は、前へ進むときだ。また、一度決断したならば、途中でその考えを改めるようなことがあってはならない。そのことも、彼は理解しているのであった。それら全て、嘗て魔道士に教えられたことである。

野営地から出ると、そこには王の愛馬、ギャロップがいた。それに跨り、王は背中に羽織っていたマントを脱ぐと、部下のブビィたちに投げてよこした。

そして今、ギャロップの蹄が大地を蹴る。大国の若武将は、戦場へと駆け出したのであった。


一方、先程出て行った軍の最後尾には、一匹他よりも小柄なマグマラシが紛れ込んでいた。

「・・・おい貴様!前方に遅れをとっているではないか!もっと速度を上げぬか!」

そのマグマラシの後方から、上級クラスのマグマラシが赤い目を怒らせ、叱咤した。

小柄なマグマラシは、「はっ!」という短い返事をし、それに応じるも、目は先輩のように鋭く輝いてはいなかった。それどころか、他のマグマラシが赤い目を持つ一方で、そのマグマラシだけなぜか青い目をしていた。

そして前後の足には、本来のマグマラシには無いような鋭い爪が生えていたのであった。


戦場では、既に戦いが始まっていた。魔道士率いる“ほのおポケモン”軍の相手は、サイホーンら“いわポケモン”軍団である。

「貴様らの炎など、我らが岩の体には火傷とて負わせられぬわ!」

「そう、もはや汝ら“ほのおポケモン”が覇権を握る時代は終わったのよ!これからは我ら“いわポケモン”の時代だ!」

サイホーン兵士らはそう言って果敢に繰り出してくる。その数、先日のサンドパン兵士らを遥かに越えていた。確かにこれが相手ならば、魔道士ひとりの力で押すのは難しいかもしれない。

しかし今回仲間がいるとはいえ、タイプ的には断然不利である。一体、どうやって戦おうというのか。

「ぐぎゃあっ!」

と、最初に悲鳴を上げたのはなんと、敵方の兵士だった。ドスンという派手な音を立てて横転するサイホーンの前には、鋭い爪でその体を砕いたリザードがいた。

「“メタルクロー”・・・岩をも貫くこの爪の味、思い知ったか!炎だけが我らの攻撃手段ではないわ!」

そして、マグマラシらは煙幕を噴出す。その中へうっかり飛び込んでしまい、前後の見境が付かなくなったサイホーンに、横から強烈なタックル攻撃を浴びせる。前に突進するのを基本とするサイホーンにとっては、この横からの攻撃には不慣れなため、尽く倒されていった。

「・・・ぐうっ、小癪な!」

しかしやられっ放しのサイホーンではない。その場で一斉に足踏みを始めたかと思うと、強烈な地震を起こし始めた。辺りはあっという間に、“ほのおポケモン”らの悲鳴で包まれる・・・!

・・・かと思いきや、誰もその地震に巻き込まれた者はいなかった。皆、魔道士のサイコパワーの力で宙に浮いたからである。

「おヌシら・・・手間をかけさせおって。これだからワシは、仲間など必要無いと言ったのだ!」

魔道士は文句を言いながらも、一旦仲間を下ろすと直ぐに攻撃へと移った。彼の放つサイコキネシスによって、大勢の敵兵が後方へと弾き飛ばされる!

「・・・ぐぅっ、流石“戦場の神”、魔道士ンゲ!噂に違わぬ攻撃だ・・・。しかし、それで我らを倒せるとは思うなよ!」

残った敵兵たちが、一斉に吠え始めた。負け惜しみかと思われたが、そうではなかった。サイホーン達の後ろからいくつもの巨大な影がズンズンと近付いてくる。“いわポケモン”軍団の後軍としてやってきたのは、緑色の鎧のような体で、頭から背中にかけて刺のようなトサカを持つポケモン、バンギラスである。

「・・・ぬぅ、ようやくホネのある敵のお出ましというわけかの・・・」

魔道士の長く立派な髭が、ユラユラと揺れ始める。仲間たちの間からはどよめきが溢れ、皆一斉に目を覆う。バンギラスがこちらへと近付いてくるにつれ、風が吹き出したのだ。そしてあっという間に、辺りは砂嵐で包まれたのだった。

「どうだ、我らのこの“すなおこし”で前も見えまい!もっとも、例え見えたとして“あくタイプ”でもある我々の体は、魔道士のサイコパワーなんぞ受け付けんがな!」

いや、それどころの話ではなかった。砂嵐のせいで、数々の“ほのおポケモン”たちが体ごと吹き飛ばされてゆく。先程まで味方軍有利に動いていた戦線は、一気に逆転しようとしていた。

しかし、そのときようやく味方の後軍も到着する。彼らは体の熱を一気に放出して熱風を作り出すと、バンギラスらによって作り出された砂嵐を押しのけた。隠れていた真昼の太陽が再び顔を出し、さんさんと大地を照らし始める。

「“にほんばれ”か!・・・なかなかやるではないか」

だが、敵兵の余裕の含まれた台詞はそれだけで、後に続くことはなかった。

「“サイコカッター”!」

魔道士のその叫びと共に放たれた念力の刃物が、バンギラスらの体を切りつけたのである。

「・・・ば、馬鹿な!“あくタイプ”の我らがエスパー攻撃を受ける筈が・・・!」

が、まともに攻撃を食らって倒れ掛かったバンギラスのうちの一匹は、いつもとは違って赤く燃えるフーディンの目を見た。“ミラクルアイ”・・・例え相手が“あくタイプ”であろうとサイコエネルギーを送ることの出来るという、最高の魔道士だけが持ちえる能力である。

「く、そ・・・魔道士め・・・」

戦場の魔道士(Illust:アルト)

一匹、また一匹と、堂々と立ちはだかっていたバンギラスたちの壁が崩れ出す。

「ま、まだだ!まだ負けてはおらんぞ!最後の一匹になるまで戦うのだ!」

と、そこへ敵の大将、ドサイドンが現れた。しかし、魔道士にはもはや結果が見えていた。くるりと後ろを向くと、敵兵からその身を離してゆく。

「ひ、卑怯者!逃げるか、魔道士め!」

そのとき、ギャロップに跨ったブーバー王が戦場へ躍り出る。こちらもようやく、主役のご登場であった。

「大将ドサイドン・・・我が軍はまだまだ、貴殿らのような掟破りの卑怯者の王国には、覇権を譲る気はないぞ」

「わ、我らの作戦を卑怯だと!?我らが王国を侮辱する気か、小僧!」

小僧・・・王に向かってそのような口を聞くとは。言われたから言い返す、という発想であろうが、その考えはあまりにも稚拙だと、ブーバー王は思った。所詮、この程度の国か。

「・・・ならば、帰って貴殿らの王に伝えよ。私はこの場で決着をつけようなどとくだらん発想は持ってはおらぬ。謝罪し、再び和平を結ぶというのであればそれに従うつもりだ。しかし、もしまだ戦が足りぬというのなら、私のように王自ら戦場へ赴き、そこで私に首を刈られるべし、とな」

「・・・ば、馬鹿にしおってーっ!皆の者、あんなコワッパ王など、馬から引き摺り下ろしてしまえ!」

・・・愚かな。ブーバー王はもはや何も言わず、大きく息を吸い込むと、口から灼熱の炎を吐き出した。その威力、いくら相手が岩の体を持つポケモン達であっても、平気な顔はしていられまい。あっという間に“ほのおのうず”に飲み込まれ、身動きが取れなくなってしまった。

「さぁ、もはや謝罪の余地は無くなった。あとは、我らに歯向かった貴殿ら自身を責めるのだな!」

み、見逃してくださいませ、ブーバー王様!お、俺らが悪かったーっ!・・・今頃になって、敵兵らは謝り出したが、もう遅い。かくして、闘いの幕は閉じた。

彼ら敵兵は捕虜となり、彼らの城も、明日攻め入れられることだろう。・・・こうして、また一つ国が無くなった。何とも空しいものだと、魔道士は思った。

やがて、事を終えたブーバー王が、ギャロップの背中から降りて魔道士へと近付き、こう言った。

「流石、我が師・・・ご立派な戦いであった」

「そんな、なんとも恐れ多きお言葉・・・」

「はは、今はそう畏まらんでもよい!・・・それより、貴殿が無事で安心したぞ」

そう言って無邪気に笑う王の顔は、11年前魔道士が目にしたものと、なんら変らないように思えた。まだまだ彼は、戦の憂いというものを知らぬようだ。

「無事でございますとも。いくら老体とはいえ、あのような連中に負ける魔道士ンゲではございませぬ」

「・・・いや、そうではないのだ。実は――」

と、そのとき一匹のマグマラシが、魔道士の背後から飛び掛ってきた。その目は青く、前足には鋭い爪が生えている。そしてその爪が、魔道士の体を切り裂く・・・!

・・・否。魔道士は、己が目を疑った。

今自分の目の前に倒れているのは、王だ。自分が嘗て教育を施し、今は立派に一つの国を治める存在となった、ブーバー王である。

・・・なぜ?わからない。しかしその老人の胸は、言いようのない哀しみに包まれていた。

「陛下!しっかりなさりませ、陛下!」

何が起きているのか、わからない。一体、どうしてこんなことになってしまったんだ。

ただはっきりしているのは、それが決して自分の望む結果ではなかったと、そういうことだけであった。

>>第十二話
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