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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑫ 【2007/12/26 00:00】
第十二話:哀しみの笑み
>>はじめから >>前回の話

砂漠の中を、二匹の毛の生えたポケモンが走っていた。片方は先程の戦場でも目にした、青い目のマグマラシである。否、よく見るとその体は、本物のマグマラシよりも若干小さい。そして前後の足には鋭く尖った爪が生えており、走るその姿勢は、針金でも入れたようにピンとまっすぐだ。

それは、マグマラシに化けたマッスグマであった。

彼は走っていた。ただ死に物狂いで、阿鼻叫喚の戦場から一刻も早く離れようと、砂漠の中を走っていた。しかしそれは何も特別なことではない。いつだって、彼は死に物狂いだ。なぜなら彼には、いつも死が隣り合わせにくっ付いていたのだから。

「スナッチ、巧く嗅ぎ分けたわ!脱出経路はこっちよ!」

その前方にて、彼が後で合流した相棒のグラエナ、ジェシーが叫ぶ。彼女の「かぎわける」能力は常に正確だ。確実に自分たちは、戦場から離れている。

・・・しかし。彼は思った。それでいいのか?まだ自分は、目的が達成できていないというのに・・・。

「だめよ、スナッチ。後ろを振り向いてはだめ」

彼の様子に気付いたか、ジェシーは言う。そうだ・・・今戻るわけにはいかない。戻ればただ、大勢の兵士たちの餌食にされるだけだ。兵士たちの、怒りの矛先に触れるだけ・・・なぜなら自分は、恐ろしい失敗をしでかしてしまったのだから。

あの王を・・・“ほのおポケモン”大国の指導者、ブーバー王を、誤ってこの手にかけてしまったのだから。

予定通り、雇われ魔道士一匹を殺しただけならば、こんなことにはならなかった筈だった。しかし今、何百という兵士たちの怒りは、スナッチ一匹に向けられているようなものだ。敵としてはあまりに大きな存在を、自分は傷つけてしまったのだ。その怒りから、自分は逃げ切ることができるのであろうか?

そして更にまた一つ恐ろしい考えが、頭に浮かんだのである。

「・・・な、なぁ、ジェシー?」

「なに?まだ不安なの、スナッチ?」

彼を気遣うように、ジェシーは声をかける。いつだってそうだった・・・自分が初めて殺しの仕事をやり終えたときから、いや、それ以前、親に捨てられ、浮浪者としてただ街中をうろついていた頃に出逢ってから、いつでも。彼女はいつも、不安なスナッチの心を、その優しい声で鎮めてくれた。

「・・・このまま国に帰れたとして、俺たちは無事でいられんのか・・・?」

「・・・なっ、何を言ってるのよっ!?」

否定しながらも、明らかに彼女の顔からは、動揺が伺えた。

「・・・確かに、あなたは仕事に失敗した・・・そればかりか、今誤って傷つけてはならない一番大きな存在を、手にかけてしまった・・・これが、我が国の王の責任として問われたら、問題なのは確かよ」

「・・・そうだろう、ジェシー!?」

吠えるように、スナッチは叫んだ。

「俺ら・・・国に帰っても殺されちまうだけだ!王は必ず、俺らの存在を抹殺しようとする筈だよ、なぁ、そうだろう!?仕事のできないやつは、捨てられるしかねぇんだ・・・それがあの国のやり方なんだよ!なぁ、ジェシー、逃げよう!どこか遠い場所へ、俺たちだけで逃げよう!」

「・・・黙って!」

突然、ジェシーは足を止め、そう叫んだ。スナッチは急には立ち止まれず、やや彼女を追い越してしまったが、そこから振り返って、彼女と向き合うような体勢を取る。

ジェシーは、怒りを露にした表情で、彼に向かって叫んだ。

「そんな筈ないでしょう!?・・・王は、身寄りの無いあたしたちにでも仕事を与えてくれ、いつもちゃんとそれに見合う報酬を分け与えてくれた・・・本当なら、飢えて、干からびて、雑草のように死んでいく筈だったあたしたちが・・・今までこの不毛の砂漠地帯で、毎日しっかりした食べ物と水を与えられ、生きてこれた。それは全部、王のお蔭でしょう!?」

「・・・あぁ、そうだよ。その通りだ!しかし知ってなきゃいけねぇ・・・それは、ちゃんと仕事をこなせた者にとってのみだ」

甘いよ、ジェシー・・・君は何もわかっちゃいない。まだ怒りに打ち震える彼女に、教えなければいけないことがスナッチにはあった。自分もたった今思い出したばかりで情けないのだが、とても重大な話を。

「お前はサポート役だからわかんねぇのかもしれねぇが・・・もう随分前に、凄腕の暗殺者と謳われたアブソルと、ルクシオのタッグがいたらしくてな。ターゲットに返り討ちにされて殺されたって話だが・・・本当のところ、どうだか知ってるか?」

なぁ、スナッチ。お前、知っているか・・・?それは以前、彼が先輩に教わった話だった。暗殺者から暗殺者へのみ、伝えられる話・・・この仕事に携る者として、知っておくべき心得のような、身も毛も弥立つ話だ。数年前、ターゲットに半ば返り討ちにされつつも、何とか逃げ帰ったアブソルのタッグを待ち受けていたのは、仕事に失敗した彼らを労うような優しい王ではなかった。たった一匹のターゲットを取り逃がすようなくだらない暗殺者など、ウチにはいらん。そう言って容赦なく彼らを死刑台へと送る、残虐な王であった、と。

あの王がそんなに冷酷だとは・・・とても信じられない話だ。しかしそれと同じ状況に自分が立たされた今、彼は身の危険を感じずにはいられなかったのである。ともかくその話を、この無知な相棒に教えてあげなければ・・・。

「・・・知ってるわ」

しかし、彼の相棒はすぐにそう返答した。驚かずにはいられなかった。

「あたしにだって、他の暗殺者とのコネはある・・・それくらい、聞き覚えがあるわ。実際、それを見たって連中も・・・」

「じゃあ、どうして!?」

今度は、スナッチが怒る番だ。どうして知らないフリをしたのか・・・王の本性を、本当は知ってて、それでも逃げないというのか!?

「スナッチ・・・それでもあたしたちは、あの王に沢山の恩義があるの。それなのに、裏切るようなこと、できるわけがないわ。処刑されるんなら、素直にそれに従うつもり・・・」

「・・・どうかしてるぞ!?なぁ、これは裏切りなんかじゃない。正当な自己防衛だ!恩義に報いるためだけに、わざわざ命を捨てるようなことでもないだろう!?」

「・・・じゃあ、一体どこへ逃げるつもりよ!?」

その問いに、スナッチは答えられなかった。どこもかしこも戦争状態のこの砂漠において、一体どこへ逃げ場があるというのか。更に、身軽に動けるよう、今は水も食糧も携帯してはいないのだ。飢えと乾きは、すぐに襲ってくるだろう。

「・・・しかし!」

だが、彼は意見を変えることなどできなかった。確実に殺される道と、ほんの僅かでも生き延びられる可能性のある道ならば、俺は後者を選ぶ・・・どうせ、今までも死とのぎりぎりの境界線の上で生きてきたのだ。今更、むざむざと死ににいくようなことができるか!!

が、それに反して、ジェシーは寂しそうな表情をスナッチへと投げかけるのだった。なんでだ?なんでコイツは俺に付いて来ようとしない・・・恩義が、そんなに大事か!?

と、そのとき二匹の鍛えられた鋭い耳に、追っ手の足音が届いた。

「・・・!もう追ってきやがった!」

「・・・いや、ちょっと待って!」

と、ジェシーの顔色は、スナッチよりも酷く悪い。なにか、余計に恐ろしいものを感じ取ったらしい。

「・・・前よ!やつら、既に前からも来てるわ!先回りされていたのよ!」

「・・・なんだって!?オイ、逃げ道はねぇのか!」

叫んだ後で、スナッチは後悔した。いや、もうあるわけないじゃないか。逃げる場所も、帰る場所も・・・往生際が悪いようだぞ、スナッチ。

「・・・あるわ。二つだけ」

が、ジェシーは答える。二つも・・・!?驚くしかなかったが、彼女の「かぎわける」能力に、狂いはない筈だった。

一体、どっちの方角だ!?そう聞くよりも早く、彼女は続ける。

「・・・東と、西。あたしの右足と、左足の方角よ。片方は、国へと帰る道・・・もう片方は、どこへ続くのかわからないわ。どっちを選ぶの?」

「国に帰る以外の道だ!」

スナッチは即答する。その答えに、ジェシーは何を思ったのか。

フッと、霞のようにすぐに消えてしまいそうな笑みを、彼女は浮かべた。ほんの一瞬の、限りある美しさを持つ笑みを。

そして、哀しみの笑みを。

「左よ。左足の方角に行くの」

ジェシーは、優しい声でそう言った。

「・・・お前は、どっちへ行くつもりだ?」

「・・・右足の方角よ」

はっきりと言い放つ彼女を、もはや引き止めることなど無用だ。

ここが、全ての分かれ道だと、マッスグマは悟った。生きるか、死ぬかの。そして、自分と、この相棒との・・・。

「・・・わかった。あばよ、相棒」

スナッチは、すぐに身を翻し、走り出した。その背中に、相棒の最後の台詞が投げかけられる。震えるような声で発せられた、散りゆく花びらのような台詞が。

「スナッチ・・・振り返っちゃダメよ。決して、振り返っちゃ・・・」

振り返るもんか。振り返れるわけ、無いじゃないか。別れゆく相棒の涙など、見たくなんかないのだ。

そしてこの、涙でぐしゃぐしゃの俺の顔を、お前の最後の瞬間に見せることなど、できるわけ無いじゃないか。

スナッチは走った。いつもと同じ、死と隣り合わせのその道を。いつもとは違い、たった一匹で。


逃げていく途中で、スナッチは背後に、相棒が吠える声を聞いた。

・・・馬鹿な。あいつはあいつで、国へ帰る道を選んだ筈だ!なのにどうして、わざわざ敵に見つかるようなことをする!?

が、答えはその後、敵の動く音を耳にして、直ぐに得られた。一斉に何匹もの足音が、自分ではなく相棒の元へ向いたのがわかったのだ。

・・・そうだ、やっぱり逃げる道なんてどこにもなかったのだ。それをあいつは、自分を囮にすることで、作り出してくれたのだ。・・・ただ、俺だけのために。

湧き上がりそうになる嗚咽を堪えながら、彼は走った。立ち止まることなどできるわけがなかった。

ごめんよ・・・相棒。お前はただ、潔いやつだった・・・俺も同じ道を辿りさえすれば、そんな風に哀しい吠え方をすることもなかったろうに。それに比べて俺なんか・・・ただのクソッタレだった。

いつも守られていた分際で、最後の最後にちっぽけなお前にただ寄り添っていることすらできなかった俺を・・・往生際の悪いこのクソッタレの俺を許してくれ。・・・ごめんよ。

太陽は、いつの間にやら西の空に沈もうとしていた。また、寒い夜がやってくるのだ。昼間の暑さとは真反対の、身も凍るような寒い夜が。

>>第十三話
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