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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑬ 【2007/12/27 00:00】
第十三話:古文書
>>はじめから >>前回の話

沈んでいくのは、九日目の太陽だった。

いつもと変らない夕日が、いつもと変らない笑みを投げかけている・・・変らない、自然は何も変っていやしない。なのに、時として違った印象を受けてしまうのは、単に自分自身の心境の変化によるものだ・・・。そのことを、魔道士にはもうわかっている筈であった。

あの戦場から、傷を負った王は急いで運ばれた。つい先程まで王の安否を気遣う多くの兵士たちが、王の部屋の前に溢れていた・・・それも、体中砂だらけという汚い格好で。城の中にまで穢れを持ち込むではない、と、彼らを追い返すべく側近のワカシャモたちが飛び回っていたが、側近たちの心にも、彼ら兵士たちの不安は通じていたろう。その目に、兵士たちを叱る厳しさはなかった。まるで宇宙の隅に放り去られたような不安げな目をした兵士たちと、なんら変るところがなかったのだ。

ともかく今は、彼らは城の中庭にて待機することを強いられたのである。魔道士も、ただそこで夕日を眺めているより他に、すべきことはなにも無かった。

「ちくしょう!」

一匹のマグマラシが、悲痛な声でそう叫んだ。

「何でこんなことになっちまったんだ・・・こんなことに」

まるで自分を責めるかのようなその台詞は、これからやってくる夜の闇の中へと投げかけられた。そしてそれに引き寄せられ、やがて空全体へと染渡っていった。

と、魔道士の傍で一つ、騒ぎが起こった。リザードの一匹が固いこぶしを振り上げながら魔道士の元へ寄ってこようとし、それを周りの者が3匹がかりで必死に止めようとしている。

「お前が悪いんだ、お前が・・・!本当は、お前がやられる筈だったんだ!チクショウ!」

・・・馬鹿なことはよせ、この無礼者!我らの英雄に、何という口の聞き方をするのだ!リザードに対しては野次が飛ばされるが、それで彼の勢いが留まるわけではなかった。

「何とか言えよ、ジジィ!・・・お前の存在は元から、俺らの国への災いなんだ!10年前もヘンな予言しやがって・・・それで先代の王は死んだんだ!そうだ、お前が殺したんだ!そうやってまた今度も・・・ブーバー王を殺す気だったんだろう!?」

正気の沙汰ではない。しかし言われた方のンゲとしては、心に深い杭を打ち込められるかのような気分であった。

それから、それに賛同する者がいたのも事実だ。彼らは狂ったように騒ぐリザードに対して冷ややかな視線を送りつつも、魔道士に対しての視線も、決してそれまでの、仲間に送るような温かいものではなかった。信頼というものが、完全に失われているような目だった。

心というものは、空と同じではないか。昼間どんなに温かい光を放っていても、宵闇に沈めばそれは失われる。残光だけが塵のようになって、微かに瞬くのみである。さらに暗雲が垂れこめれば、それすら残りはしない・・・。

魔道士は、何も答えることはできなかった。ただ哀しげなものを瞳に託し、そのリザードを見つめることしかできなかった。リザードの怒りはそうしている間にも益々高まり、尻尾の炎もだんだんと青白く変わっていった。・・・まるで、そこにも深い悲しみが込められているかのように。

「・・・貴様ら、何を騒いでおる!静まらんか!」

そこへ、側近のワカシャモたちが腕組みをし、現れた。場は、一瞬にして静まった。彼らが来たということは、王に何某かの変化が見られたことを意味していた。もはや自責したり、誰かを罵ったりする者は誰もいない。そこにいる全員が、ただ側近たちの次の言葉を不安そうな顔で待っていた。

中でも一番背が高く、とさかの大きなワカシャモが前に進み出た。その表情は、愚かな兵士たちを咎めるような厳しいものだが、その中にはしっかりとした冷静さがあった。

彼は、落ち着きのある深い声で、こう言った。

「王が、お目覚めになられた」

その一言で、その場の全員が、一斉に目を輝き出す。また、わっと騒ぎ出しそうだったが、まだ側近の話は終わってはいなかった。

「それで・・・王より言付かいし事を伝える。魔道士ンゲよ、そなたのみ王の元へ参られよ、と」

その台詞こそ、兵士たちを再び騒がせるものだった。この災いをもたらす者のみに、王がお会いになると・・・?先程怒りに打ち震えていたリザードは、完全に意気消沈してしまったかのようだった。他の賛同者たちも、魔道士に対する態度の一新を迫られたかのようだった。

「わかったな、ンゲ」

自分よりも断然齢が下の、この若き側近に話しかけられ、魔道士は今初めて口を開いた。

「御意にございます」

そして、ようやく輝き始めた一番星のようなそんな台詞を吐いたのだった。


「・・・おぉ、来たか・・・近う」

王の間へ入ると、ベッドより、弱々しげな声が聞こえた。今朝までの活き活きとした若者の声とは、到底思われない。必死に身を起こそうと手を伸ばすが、それはどちらかといえば、宙に舞ったほこりか何かを掴もうとしているような様子であった。

「これ、安静になさらんか、若君」

隣で声をかけ、その手をそっと王の胸の上へ下ろさせたのは、医者である初老のスリーパーだ。魔道士が近付くと彼は、その耳にぼそっと、王の様態を伝える。

「取り敢えず今は、ただお目覚めになられただけじゃ・・・暫く動くことはままならんだろう。・・・こんな言い方をすれば不謹慎と思われるやもしれんが、見事な“きりさく”攻撃じゃよ。間違いなく急所を捕らえておるわ・・・なかなかやり手のアサッシンじゃったな」

「・・・して、治るのか?」

・・・それが、の・・・。魔道士の質問に、医者が答えようとしたそのとき。

「・・・なにをぼそぼそ言うておる・・・魔道士を呼んだのは、この私ぞ?」

苛立たしげな声を上げ、王が魔道士らを睨んだ。その目は、体の具合をはっきりと反映しているかのように酷くやつれ、どろんとしている。

「おぉ・・・お労しゅう、陛下・・・」

恭しく、魔道士は頭を垂れた。それに対しブーバー王は、ふふっ、と、笑い声を上げる。いかにも苦しそうな笑い声を。

「このような傷を、もしも私ではなく貴殿が受けておったら・・・間違いなく即死であったろうな?」

「申し訳ございません・・・陛下」

「・・・なあに、大したことはあらぬわ・・・これしきのことでくたばる、王ではない・・・」

王の台詞は、威厳に満ちているというよりも、どちらかと言えばただ必死に強がっているだけのようにも思えた。

「・・・それよりも、魔道士よ。貴殿にだけ、どうしても伝えねばならぬことがある・・・」

王はそれから、手で宙を掻いて、何かを撥ね退けるような仕草をした。医者のスリーパーは重い腰をよっこいしょと持ち上げ、一旦部屋の外へと出て行った。王の間は、魔道士と王のみになった。

それから暫く、沈黙が続いた。その間、王はゼェゼェと息苦しそうな呼吸を続けていた。・・・ただの切り傷を負っただけの者とは思えない、酷い苦しみようである。よほど傷が深かったのか、或いは―――。

「・・・その前に、訊いておきたい。昨日話した古文書について、貴殿はどれくらいのことを知っておる?」

それは明らかに、この王のほうが、魔道士よりも多くのことを知っている、という言い方であった。当然と言えば当然であろう・・・なにしろ古文書を所有していたのは、11年前にばったりとここを訪れた魔道士ではない。王国の方である。その王国が、古文書について何も知らないとは考えられない話であった。

しかし事実、あの古文書はそれまでだれにも触れられることなく、城の書庫の中でずっと息を潜めていたのである。魔道士ンゲが手に取る、そのときまで。

「・・・ただの伝説の書とは、思われませぬ・・・随分昔に作られた風を呈していながら、近々のことまで、あれには記されておりました。何年、何月の戦で、ある国が滅びる・・・何年、何月の日に、ある土地で数少ないスコールが降る・・・など。ワシにも、詳しいことはわかりませぬ・・・しかし強いて言うならば、あれは・・・」

「・・・そう、あれは預言書だ。紛れも無い・・・未来を映す、書物だ」

王は、魔道士から目を離し、虚空を見つめながらそう言った。まるで、天にいる神か何かに話しかけるかのようだった。

「私もあの書物を読みながら・・・何と馬鹿なことが書かれているのかと思った。しかし予言は、尽くに実現していったのだ・・・ある朝、預言書通りいずこかの土地がスコールに見舞われ、ある日、預言書通りいずこかの国が干ばつ(※)で滅び、そしてある晩、預言書通り私の父が、病で死んだ・・・。そうなればこそ、私もあの古文書を信じずにはいられなかったのだ・・・。しかし、そのような書物がなぜ、貴殿が見つけるまで誰の目にも触れなかったかは、私にもわからない・・・」

言葉を一つ一つ選びながら、王は話を続けた。間に生まれる僅かな空白にも、全て意味が込められているかのようであった。それはまるで、小説家がほんの僅かな句読点の位置にもこだわり、言葉を紡ぐのにも似ていた。

「これは、私の推測でしかないが・・・恐らく、あれは禁断の書なのだ。未来を映す書物を、私以外の誰も見ようとはしなかった・・・父が死ぬ前、一度見せようかとしたことがある。これは必ず、王の仕事の役にも立つと、そう言ったのだが・・・父は、決して目を通すことはなかった。なぜ?・・・答えは簡単だ。例え信じるにせよ、信じないにせよ、誰も自分の死までの物語を、知りたいとは思わないからだ・・・」

恐らく先人も、皆その書物を嫌ったことだろう・・・破壊こそしなかったものの、ずっと誰も目の触れぬところへしまっていたのだ・・・城の書庫の、奥深くへ。

「けれども貴殿は・・・見つけてしまった。いや、あの古文書自体が、貴殿を待っていたのだ。今こそ予言が必要だというとき、そのときにあの古文書は、自分から貴殿のもとへ、現れたのだ」

「成る程・・・そうかもしれませぬな」

比喩的な王の言い方に、魔道士は頷いた。だが・・・、

「・・・貴殿、よもや信じてはおらぬな?」

王はまたふふっと笑って――相変わらず苦しみのこもった笑い方だったが――、話を続けた。驚くべき事実を、その口から語りだしたのだった。

「私は比喩を言っているのではない、ンゲよ。私が『現れた』と言えば現れたのだ、古文書は。・・・なぜならあの書物は、実際に生きておるからだよ」

※干ばつ・・・「旱魃」と表記するのが正式。

>>第十四話
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