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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑭ 【2007/12/28 00:00】
第十四話:預言者
>>はじめから >>前回の話

「あの古文書は・・・アンノーンという文字で書かれている。アンノーンとは、それ自体がポケモンなのだ・・・一字一字、命を宿すいきものなのだ。比喩でも、なんでもなくてな」

驚愕とは、まさにそのような話を聞き入れたときこそすべきであった。長年生きてきて、どこかで噂には聞いていた筈だったが・・・それを単なる噂としておくのと、現実としてはっきりととらえるのでは、こうも隔たりがあるものか。アンノーン文字・・・一つ一つに目玉が付いているかのような奇妙なその文字を、ンゲには訳することができても、そのものがもつ性質は信じることができなかったのだ。

「・・・しかし、何を根拠にそんな・・・まさか、文字が動くとでもおっしゃるのですか」

「・・・その通りだ、貴殿」

再び、王は魔道士を見て、そう言った。

「・・・私も最初は気付かなかった。しかし長年繰り返し読み進めていくうちに、少しずつ内容が変っていくのを知ったのだ・・・。“ある日”、というのが、“何年何月”と書き改められ、“どこぞの何某”というのが、その者の固有の名となり・・・だんだん詳細を伝えるようになる。そして、古い予言が消え、その上に新しい予言が付け足されることもある・・・つまり、予言が更新されていくのだよ」

そんなこと、僅か1年しか読むことが適わなかった魔道士には気付けるはずもない。・・・それにしても、何と王は熱心に読まれたことだろうか。

「・・・更新が起こるのは、月に一度の晩・・・ただし、一体どこが書き換えられ、何が付け足されるかは、無作為的だと思わざるをえん。ある予言は一週間後の詳細を伝え、別の予言は、つい翌日の内容である場合もある・・・かと思えば、ひょっこり一年先の予言が現れたりと・・・全く、気まぐれな預言書だ。なぜそんなことが起こるのか・・・」

「・・・アンノーンたち自身の意志によるものなのでしょうか?」

その答えに、王は首を振った。

「・・・アンノーンに“みらいよち”の力は無い・・・考えられるとすれば、やつらを動かしている力が、他の場所にあるのだろう・・・」

「・・・まさか、古文書を作った者がまだどこかに存在していて、それが予言を行なっていると・・・!?」

ンゲの台詞に、王は満足したような笑みを浮かべた。

「・・・その者が誰か・・・一応心当たりはある。貴殿も、一度は目を通した筈だ・・・古文書の裏に、作った者を表す言葉が綴られている・・・」

その言葉とは・・・?思考を巡らし、魔道士は答えを導いた。確かそこには、こう書かれていた筈だ。

“この予言を行なうは、全て三日月の意志によるものなり”・・・

三日月・・・。魔道士は、窓の外に目をやり、丁度今空を見た。しかしそこには、一昨日の晩のような月は浮いていなかった・・・すっぽりと、影に食べつくされたかのようである。これより三日後、三日月は訪れよう。・・・しかしその月自体が、まさか予言を行なっているとは思えない。ならば、ちゃんと生き物として存在する月が、どこかに存在する筈だ。一体、どのような存在なのか・・・。

「・・・いいか、よく聞け。これはある晩のこと・・・」

王は、再び口を開き、奇妙な物語を語りだした。戦いのときいつも彼が口から吐く炎のようではなく、ほんの小さな蝋燭の灯のような声で・・・。

「・・・これより北へ一晩ほど歩いた先の地で、我が国の間者(かんじゃ)のひとりが、空に何やら光るものを目撃したそうだ・・・。他の国への偵察のために送った者だったが、帰る途中激しい勢いの砂嵐に巻き込まれ、酷く深手を負ったそうでな・・・おまけに、帰る方向も全くわからなくなったと。それで危機に瀕しているときに、光が現れ、そやつの体を包んだのだという・・・。化け物かと思い、間者が怯えるような声で何者かと問うと、光は温かく慈愛に満ちた声で、こう答えたのだそうだ・・・“わらわは、三日月の化身なり・・・”と。間者が気付いた時には、砂嵐は治まり、体の痛みも消え、帰る方角もわかっていたそうだ・・・全く奇跡としか思えぬ話だな」

王はそれを語り終えると、ゆっくりと顔を天井に戻して、目を閉じた。閉じたまま、また魔道士に語りかける。

「・・・勿論、その話と、先程の古文書の作者との因果関係は不明だ・・・だが、二つには共通点がある。三日月の預言者と、三日月の化身・・・そして先程、月に一度古文書が更新される話をしたが、それが起こるのも決まって三日月の晩。そして、間者が“三日月の化身”とやらに会ったのも、三日月の晩とくれば・・・もはや関係を信じずにはいられまい」

「三日月・・・」

静かな声で、魔道士は呟いた。それに王は頷き、言葉を返す。

「・・・貴殿が阻止しようとしている“砂漠の魔獣”の目覚めに関する予言は・・・未だ更新されぬまま。次の三日月の晩、更新されるのに賭けるという手もあるやもしれぬ・・・しかしそれがだめだったならば、もはや手遅れにもなりかねんのだ。ならば、直接預言者の元に訪れ、予言を完全なものにするよう、頼み込むしかあるまい・・・」

・・・確かに、今までのように国から国へと転々とするやり方では、いつ目的に近づけるのかという不安もあった。が、その“三日月”とやらに会えば、全ての謎が解明されるやもしれない。そうでなくとも、きっと何か重要な鍵が掴めるはずだ・・・。

それから、暫くの沈黙が続いた。城の外の、ずっと先の砂漠で、野良犬が吠えるような声が響き渡るのが聞こえた。少し哀しげにも聞こえるその声は、月の無い静かな夜の闇の中へ吸い込まれ、あとは消えていくだけだった。

「・・・明日にでも、また旅立つのであろう、貴殿よ・・・」

やがて口を開きそう訊ねる王に、ンゲはただ、わかりませぬ、と答えた。

「三日月が出るのは、これより三日後・・・それまで、待つ必要がございましょう・・・」

それに王は薄っすらと目を開きつつ、言葉を返す。

「・・・ほう、今しばらくこの地に留まるつもりか・・・?しかしな、貴殿よ。この地には、他には何も貴殿の求めるようなものは残っておらぬぞ」

「・・・確かに、そうやもしれません・・・。しかし、王が・・・」

「・・・なに?もしや私の様態が心配であるから、離れるわけにはいかんなんぞとほざくのではあるまいな?」

その通りだった。しかし王は、それ以上何も魔道士に喋らせようとはしなかった。

「・・・貴殿がいようといまいと、私の怪我の治る早さに違いはないわ!ならば、貴殿は貴殿のすべきことをせよ。それが先決であろう!よいか、旅立てと言ったら旅立つのだ!」

そう言われてもなお、躊躇する魔道士に、王はとうとうこんなことまで叫んでしまった。

「・・・ならば、こうしよう。私が傷を負ったのも、元はと言えば貴殿の責任だ!そんな失態を犯した貴殿を、もはや私の傍に置いておくわけにはいかん・・・追放だ!さっさと出て行け!」

そうまで言われれば、もはや魔道士に言い返す術は何もなかった。ただ、黙って王の間を後にするだけだ。後ろ髪引かれるような思いを、何とかかんとか断ち切りつつ・・・。

しかし、部屋から出て行く寸前、王はまた、魔道士に声をかけた。

「・・・報酬は、ちゃんと用意してある・・・我が側近より受け取られよ。それから、古文書を持っていくことも忘れるではないぞ・・・あれが無ければ、貴殿がこの地を訪れた意味は無いからな・・・今、城の書物庫の中だ。・・・それからもう一つ。古文書の122ページだけは、絶対に読んではならぬぞ・・・いや、別に大したことが書かれているわけではないがな・・・深い意味は、何も無いのだ」

最後の一言は、あまりにも奇妙だった。しかし魔道士は、それについて何も触れることはしないでおいた。ただこの一言だけを言って、部屋を後にしたのだった。

「・・・早く、回復なされませ・・・そして事が全て平穏に終わった際には、またお目にかかりましょうや・・・」

「・・・二度と会うものか!」

王が最後に言い放ったその一言が、彼が魔道士に伝える最後の言葉であった。


魔道士が出て行った後、王はただひとりきりで、ベッドの上に横になっていた。

「・・・もう、魔道士殿は帰られましたかの」

やがて医者のスリーパーがそう言って戸を叩いたが、王は彼を通すことを許さなかった。

「・・・暫く、ひとりにしてくれ」

そう言った彼の目から、はたと零れ落ちたのは、星だったろうか。きらきらと輝きながら地面を目指し、やがてそこに達すれば、弾けるように消えていった。深い、悲しみの星よ。

ああは言ったものの、魔道士は古文書を受け取れば、読むなと言ったページを即座に読むことであろう。どうして最後にあのようなことを言ってしまったのか・・・今にして思えば、悔やまれてならなかった。何も言わなければ、かえって気付かないまま、終わりに出来たかもしれないのだ。

あれを知ったら・・・魔道士は何と思うだろうか。だからワシは、ひとりっきりで戦場に向かうと言ったのだと、溜息交じりに言うのであろうか。しかしそれが無理だったのも、わかってもらえぬものだろうか。あのときは、前へ進むときだったのだ。一度決断したならば、途中でその考えを改めるようなことがあってはならないと・・・そのことを教えてくれたのも、あの魔道士本人なのだ。

・・・例え自分の身に何が起こるかわかっていたとしても。いや、寧ろわかっていたからこそ・・・前に進むしかなかった。覚悟は、していたことなのだ。しかしいざその時を迎えようとなると、こんなにも辛いものなのか。体も、心も。もはや息をするのも苦しいくらいだ・・・。あのアサッシンの爪の先に塗られていた毒は、完全に王の体を蝕もうとしていた。

・・・しかし。それでも自分は、誇りに思える行いをやり遂げたのだという達成感で、胸はいっぱいだった。ずっと尊敬の的だった恩師に、ようやく自分は恩返しをすることができたのだ。どうか・・・無事で生きてください。そして、この地に平和を・・・。口では酷いことを言いました、しかし私は信じているのです・・・。

ずっと、ずっと信じています・・・あなたのことを・・・。

その思いの先にある者は、そのとき。

城の外で、手に古文書を持ったまま、泣いていたのだった。

開いたそのページには、この日、偉大なる王ブーバーが、若くしてその命を失うであろうという予言が、はっきりと記してあった。

>>第十五話
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