スポンサーサイト 【--/--/-- --:--】
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
テーマ: - ジャンル: | スポンサー広告 | page top↑
Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑮ 【2007/12/29 00:00】
第十五話:謀略
>>はじめから >>前回の話

「・・・愚か者どもめが!何たる失態を犯してくれたのだ・・・!」

ブニャット王の恐るべき怒りの叫び声の前に、報告に上がった家臣、モウカザルは、まるで自分が叱咤されているような感覚に襲われた――ブニャット王が魔道士ンゲ暗殺のためにブーバー王の国へ送った刺客たちが、その目的を達成できなかった。そればかりか、よりにもよってかの大国の覇者たるブーバー王そのものを傷つけたとあっては、ブニャット王としても尋常でいられるはずがなかった。

刺客のひとりは、国への忠義を忘れたか、いずこかへ逃走中・・・それは放っておくとしても、もうひとりは敵国の手に落ちたという。それをポケ質(ぽけじち)として、かの国は今、ブニャット王の国へ要求を突き付けてきているのであった。

――ブーバー王が傷を負いし日に捕らえたこの者、ブニャット国の刺客であると見受ける。返して欲しくば、このような事態になってしまった貴国の過ちを認め、深く反省した後、再び我が国へ忠誠を誓うその証として、賠償金1,320億ポケを収めよ。さもなくば、翌日より我が国は、貴国を攻め入ることと致す――。

賠償金1,320億ポケとは途方も無い金額だ。その要求に応じることは、ブニャット王の国がブーバー王の国への経済上の植民地となることに等しかった。かといって、ここで戦いに応じるというわけにはいかない。ブニャット王の国は、つい先日、サンドパンの小国に勝利したのみ。それも、魔道士の力を借りて・・・。まだまだ実力の面で、ブーバー王が国の兵力に適うはずがないのだ。

「・・・しかしそれにしても、なぜかの国は、捕らえた間者を我がブニャット王の国の者であることがわかったのでしょうか・・・」

と、大臣ビーダルがポツリとつぶやいた一言に、モウカザルは応えた。

「・・・はっ、恐れながら申し上げまするが・・・かの国は、嘗てこの砂漠の覇権国として君臨していた権力から、他の多くの国全てに、己が国の間者を忍び込ませているとの噂を聞いてゴザりまする・・・それゆえ、かの国にはこの地における全ての情報が、筒抜けとなっておるのでゴザりましょう・・・」

「・・・それは誠カッ!?」

いよいよ、大臣も持病の頭痛がズキズキと出始め、彼は頭を重い岩のように抱え出した。

「・・・誠にございます、左大臣殿」

・・・と、家臣が応えるよりも早く、口を開いた者がいた。それは間に王を挟んで大臣ビーダルの右側に控えていた、右大臣ニャルマーである。左目に貝殻で作った眼帯を嵌めた、その碧眼の役人は、何か面白いものを見るように片方の目で左大臣と家臣を見比べながら、話を続けた。

「やつらの情報力を侮ってはなりません・・・やつらの耳はピクシーのそれのごとく、目はネイティオのそれのごとくと言いまする・・・。よって、左大臣殿もその辺りの娘に無闇にお声をかけて回るようなことをなされば、やつら、奥方様の耳にそのことをバラしに行くやもしれませぬぞ・・・」

「・・・こっ、これ右大臣!今は冗談を言っておるときではなかろう!」

頭痛のせいか、それとも冗談の内容に動揺しているのか、ビーダルは青ざめた顔で叫んだ。しかし当のニャルマーはといえば別に悪びれた様子もなく、今度は家臣のみに向かって、こんな台詞を吐いた。

「しかし貴殿こそ・・・よくそのようなことを知っているのぉ」

「・・・いえ、ただの噂に過ぎませぬので・・・出過ぎたことを申しました」

家臣は何とも申し訳無さそうに、そう言葉を紡いだ。

「・・・いや、別にブーバー王が国の噂について語っておるのではないわ」

が、ニャルマーの台詞に、彼は怪訝な表情を示す。

「私が言いたいのはこういうことだ・・・貴殿、よく家臣の分際で、王がかの国へ刺客を送ったことを知っておったな・・・まさか、それも噂で耳にしたなどという冗談で済ますわけではあるまい・・・」

右大臣のその物言いに、左大臣ビーダルもブニャット王も不思議な顔をしたが、家臣の顔には明らかな動揺の色が窺えたのを、右大臣は見逃さなかった。

「・・・モウカザルよ!貴殿は我が国の家臣には非ず!貴殿こそブーバー王が国より紛れ込んだ間者であろう!」

王も左大臣も驚いてモウカザルの方を向くと、先に炎が灯った尻尾がユラリと動くのがわかった。

「アーッハッハッハ!」

唐突な笑いに、王も左大臣も度肝を抜かれる。そのせいで、兵士たちを呼ぶのを忘れた。

「・・・いやぁ、右大臣ニャルマー殿!あっぱれでゴザル!その通り、拙者こそブーバー王が国より遣わされた、諜報員にゴザル!・・・だが、今更気付いたとてもう遅い!我らが捕らえしかの暗殺者が、貴殿らの国より遣わされた刺客であるという事実、先の会話よりしかと確認つかまつった!」

「・・・なっ、なんと・・・!」

「フフッ、ようやく尻尾を出しおったか・・・」

驚愕の表情と、確信の笑み。それぞれの大臣は、思い思いの顔をしながら、目の前の侵入者と対峙する。そんな中、王はようやく我に返って、城全体に響き渡るような声で叫びだす。

「・・・皆のもの、であえ、であえーっ!敵国よりのスパイであるぞーっ!即刻捕らえよーっ!」

しかし、とき既に遅し。モウカザルは、瞬く間に部屋の窓まで駆け出すと、その美しく高級そうなガラスを惜しげもなく打ち破り、城の外へ飛び出したのであった。この城の王の間は、一階ではなく三階に作られている。そのようなところから飛び降りれば、普通のポケモンならば無事では済まされない。けれども瞬発力の高いモウカザルにとっては、火の輪を潜るよりも簡単な事だった。

・・・尤も、例え火の輪を潜るのに失敗したとして、“ほのおタイプ”であるモウカザルが火傷を負うことはそうそう無かろうが。

「・・・うぬぬ、あれが、かの国のやり方か!」

「今度こそ本当にマズイことになりましたな・・・」

王と左大臣がそうやって口を開きかける頃、ようやくヤルキモノたちが部屋に到着した。彼らはただ、打ち破られた窓を見て、あっけに取られたような顔になるばかりだ。それを見るにつけても、王は怒り心頭に発せられた。

「・・・何をしておる!敵は外ぞ!」

それに、だばだばという愚鈍な効果音が聞こえてきそうな動きで、ヤルキモノたちは外へ出て行った。・・・それがもう無駄であることは、誰の目にも明らかであった。王は、怒りに脂肪の多い体をぶるぶると震わせ、左大臣の頭痛は、かち割れるほどの痛みに達しようとしていた。

「・・・陛下、それに左大臣殿も。落ち着きなさいませ。現状は何も変ってはおりませぬ」

ひとりだけ涼しい顔をしているのは、右大臣である。それを恨めしい顔で睨みながら、左大臣は言った。

「何をのん気なことを申すか!全く変ってしまったではないか!本当は、刺客が我が国の者であることはバレておらなんだのに・・・今はもう180°違うわ!」

「フフッ・・・そう思い込まされていたのと、事実そうであることに、何の違いがございましょうや?心の持ちようとしては、どちらにもなんら隔たりはございますまい・・・」

その台詞に、王はもはや呆れ返ったように口を開く。

「なにを屁理屈こねておるか・・・全く、虚け者めが。家臣皆して、ワタクシを馬鹿にしておるのか?」

「恐れながら・・・王陛下。我々家臣を馬鹿にしておられるのは、陛下の方でございますぞ?」

と、片方の目をギラリと輝かせ、ニャルマーは言った。当然のことながら王はギラリと目を怒らせるが、それでニャルマーがひるむことは無かった。その心は、いつでも冷静沈着。そしてその片方の目は、いつでも曇ることはなかった。

「王陛下・・・私め、一つ気になることがござりまする・・・。先程の間者、我が国の刺客が、誤ってブーバー王を傷つけたのだと申し上げました・・・」

「・・・それがどうしたのだ。スパイごときの申すこと、出任せやもしれぬだろうが・・・」

横から口を挟む左大臣を、ニャルマーはギラリとした目の輝きだけで静ませた。

「いえ、私めは、そうは思いませぬ・・・もし偽りであったならば、あの要求は不当としか思えぬので・・・」

確かに、それもそうだ。賠償金1,320億ポケなんて、敗戦時に課されるような額、そんじょそこらの兵士のひとりを傷つけたぐらいで要求できるものではない。ならば、刺客がブーバー王を傷つけたのは、確かなのだと思うが適切というものである。

「・・・間違いなく、刺客はブーバー王を傷つけてしまった・・・けれども、そうだとすれば、ブーバー王は今、どのような状況だとお察しなさいますや、陛下?」

「・・・ムッ、まさか、重症というほどではなかろうに・・・」

ブニャット王は、暫し考え込んだ。もしそれでかの王が重症とあらば、今かの国はパニックに陥っている筈である。先程のように、ワザワザ敵国に間者を送ってなどいられる場合ではない筈・・・。

・・・いや、よく考えよ。相手は嘗てこの砂漠全土を支配していた大国である。己が国の常識など通用するはずが無い。もし、王が重症を負っているとして、それを隠すために、態々このように相手国へ積極的に攻めているのだというのも、考えられぬ話ではない。

「我々が送った暗殺者・・・スナッチの腕前は、この私めが自信を持って保障致しまする・・・。家無き子として放浪していたところを引き取って以来、充分に厳しい指導と訓練に耐え、育っていきました・・・。実践では今まで、殺し損ねた相手はいない・・・正に殺戮マシーンとして活躍してきたのです。それもその筈、やつの爪には、致死量を遥かに越えた濃度のドラピオンの毒が塗られておるのです・・・」

ドラピオン・・・この砂漠にも多く生息する、大型のサソリ型ポケモンの名である。その名を聞いただけで、王も左大臣もぶるっと身震いをした・・・その毒が、ブーバー王の体を蝕まず、無事でいさせるのかどうか・・・。

「・・・成るほど、ブーバー王は今、窮地か・・・」

「・・・或いは、死にも近い状況やもしれませぬ・・・」

そう言ったニャルマーの目は、今をもってぎらぎらと輝き続けている。そんじょそこらの宝石なんぞよりも、眩く、しかし同時に、多くの悪意が込められた輝きであった。

「・・・だとすれば、今こそかの国を滅ぼす、いい機会にござりまする・・・。作戦は簡単。これより、かの国を挟む二つの大国、すなわち東のニドキング王の国と、西のボスゴドラ王の国へ使いの者を送らせなさいませ。両国総出で、かの国を攻め入るべし、と・・・」

「・・・そうか。これはそれらの国にとってもまたと無い好機・・・さすれば、ものの2、3日の間に、かの国は滅びるであろう・・・。これで、わが国はかの国からの要求を取り消すことができるというもの・・・」

王はようやくその険しい表情を緩めて、そう言った。ニャルマーの作戦は、しかしそれで終わりではなかった。

「それだけにはございませぬ、陛下・・・。東のニドキング王が国と、西のボスゴドラ王が国は、かねてよりハブネークとザングースの仲だと聞いておりますれば・・・かのブーバー王が国を打ち滅ぼした後、必ずや相見えることとなりましょう・・・」

そう、ブーバー王の国が滅びることは、その両国の仲介役として位置していたものが無くなるということでもある。そうなれば、両国の激しい争いの幕が開けることとなるだろう・・・そしてそれは、これまでのどんな戦よりも、巨大なものとなることが予想される。

「・・・も、もしそうなれば、どちらの国が勝利を収めたとしても、兵力完全に疲弊しきることは必須・・・さすれば、我が国がそこへ介入することも可能・・・?」

左大臣は、ようやく頭痛が治まった様子で、ニャルマーの話に食いつくようにして、そう言った。些か都合の良すぎる話であるとも思えたが、しかし可能性は無きにしもあらず。いずれにせよ、これで競争相手国が減るということには間違いないであろう。そのような謀略を打ち出した右大臣ニャルマーの目は、今や左大臣にとっても輝かしくて、畏怖の念さえ湧くほどであった。

ニャルマーは最後に一言、勝ち誇ったようにこう言うのであった。

「戦わずして、勝利を収める・・・それこそが、天下への近道にございまする」

>>第十六話
スポンサーサイト
テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学 | 連載小説 | コメント(0) | page top↑
<<Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑯ | ホーム | Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑭>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。