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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑯ 【2007/12/30 00:00】
第十六話:オアシスの朝(前編)
>>はじめから >>前回の話

窓の外から、優しい朝日が差し込んできた。どこからともなくやってきた風が、薄く透明なカーテンをゆらす。それと同時に、光のカタチもゆらゆらと揺らめき、まるでダンスでも踊っているかのようだ。

ねぇ、起きて。早く起きて、君も一緒に僕たちと踊ろうよ。そんな声が、小麦色の笑い声を伴って、聞こえてくるかのようだった。

コガラシは目を覚ました。この砂漠に来て、十日目の朝だった。

起きた時、頬に一筋、涙の流れた跡が残っているのに気付いた。なにか、哀しい夢でも見たのだろうか。全く思い出せない。夢とはそういうものだ・・・どんなに哀しい出来事も、どんなに楽しい出来事も、決してそれを現実の世界まで押し出そうとはしない。全て、その中に閉じ込めようとする・・・とても謙虚な性格のものなのだ。

けれども時々うっかりやで、何となくニュアンスのようなものだけを、仕舞い込めずに置き去りにしてしまうことがある・・・我々は時に、そういったものの中に現実を錯覚として見てしまい、思い出し笑いを堪えなかったり、哀しみが押し殺せなかったりするのだろう。

それでも・・・夢は夢だ。現実とはなんら関係が無い・・・その筈だった。

「よう、ネボスケ。ようやく起きたみたいやな」

と、寝室にキホーテが笑顔で飛び込んできた。しかし彼女は、コガラシの顔を見て、急にキョトンとした表情になる。

「・・・なんや、フヌケたような顔して・・・ヘンな夢でも、見とったんか?」

「・・・いや・・・全然思い出せないんでござんすが・・・」

そう言って、窓の外を見る――そこは繁華街で、朝早くから仕込みなどを始める飲食店のおいしい煙や、開店準備中の商店に並ぶきらびやかな装飾品の輝きが、辺りを覆っていた。その中のどこにも、夢の中のニュアンスは残されていなかった。残っているのはただ、頭の中の残像だけなのだ。

「・・・まぁまぁ、そんなん気にせんと、下で朝食できとるで。・・・早う降りてきぃひんかったら、ロシナンテがひとりで全部平らげてまうかもしれへんで!」

そう言われて、コガラシの頭は急に現実に引き戻された。それは困る、今日から一生懸命仕事を始めねばならないのだ。

はいはい、ただいまっ!ただいま降りていくでござんすから、あっしの分、ちゃんと残しておいておくんなせぇっ。・・・おいおい、ワイに言うてもしゃあないやろ。ホレ、顔洗って、とっとと行くで!朝からどたどたと、賑やかな病院であった。

朝日は、そんな彼らに対して微笑みかけるように、オアシスの中のその小さな病院を照らしているのだった。そして、コガラシたちが出て行った、その光の溢れる寝室には、悲しみのニュアンスなど、もうどこにも残されてはいなかった。


「・・・この国で生活するには、パスポートが必要なんですわ」

コガラシたちが訪れたその小さな診療所の医者、レオナからそんな説明を受けたのは、昨日のことだった。

「パスポートぉ!?・・・そんなん、どこで貰えるん・・・?」

「・・・入国の際に、王国の入り口にある役所にて発行される筈なのです・・・そしてそれを受け取らなかったものは、密入国者という扱いになるのですわ」

それを聞いて愕然としてしまうコガラシ一行。ならば、ヘンな地下通路を通って勝手にこの国へ入ってきた彼らは、犯罪者ということになってしまうのだろうか。

「・・・そ、そんなん聞いてへんで!?」

「・・・聞いてない筈がありませんわ!あなたも行商なら、仲間内から教えられませんでしたの!?・・・それに、入国手続きを済ませるためには、入国許可証が必要なんですのよ。そちらの方は、どうしたんですの・・・?」

そう言われて、ハッとするキホーテ。

「・・・そ、そや!オヤジ・・・あいつ、またうっかり忘れとったなぁ!」

「・・・えっ、お父さま・・・?」

キョトンとしてしまうレオナ。それに、噛み付くような勢いで、キホーテは吠えた。

「いや、ワイの父親なんやなくて、ギルドのオヤジや!・・・あいつ、ワイにこないな仕事を押し付けておきながら・・・重要なことはなんも言わんで!・・・あぁっ、もっとしっかり確認ととくべきやったぁああぁっ!」

・・・彼女の話は、こうであった。彼女は元々、故郷の周辺諸国のみを巡回する下っ端の行商として働いていたのだが、国の行商ギルドの元締めからの特務命令により、このオアシスの国への商品の輸送を言付かったのだそうだ。戦乱の世、腕の立つ行商は皆、武器やら食糧やらの輸送のために、砂漠の端から端まで、引っ張りだこ。いい加減人事不足、もといポケ事(ぽけじ)不足のため、下っ端である彼女にまでそんな命令が下されたわけであるが、そのギルドの元締め、酷くうっかりやであるために、度々物資輸送のために派遣する行商たちに、送るべき商品などの渡し忘れをしてしまうことがあるらしい。酷いときは、彼らの食糧や水なども渡しそびれるという始末だ。それによって死に掛けた行商たちは、数知れないという・・・。

「うぉ~っ、・・・そうや、何度も確かめたんや、輸送のための品物、ひとつひとつ!・・・それから、ワイやロシナンテの食糧まで!・・・しかしまさか、肝心な入国許可証の発行を忘れとったとは・・・」

「・・・ちょ、ちょっと!そんなデタラメ、信じられるとでも思ってますの!?」

そんなダメな行商ギルドの元締めなんて聞いたことがない・・・そう思ってレオナが口にした一言であったが、

「・・・デタラメなんかやない!ホンマや!・・・ワイの気も知らんでからに・・・ようそないなこといえるナッ!」

・・・そのキホーテの渾身の罵声に、場は一瞬凍りついてしまった。ともすれば逆ギレにも取れる態度だったが、その場にいたもうひとり、キノココのレダは、心動かされたのか心配そうな目で、レオナにこう訴えるのだった。

「・・・ねぇ、お姉ちゃん、どうにかならないの?このおニイちゃんたち・・・ボクのトモダチなんだよ!」

「・・・と、友達・・・?」

彼にそう言われると、なんとなく返答に詰まってしまうレオナ。

「・・・そうだよ、特にこのヤミカラスのお兄ちゃんなんか、地下で怪物に襲われたとき、ボクのこと捕まえて、空まで飛んでってくれたんだよ!そして、一緒にあの怪物をやっつけたんだ!」

いきなり話題に上ってびっくりしてしまうコガラシ。まあっ、そんなことが・・・そう言って、感心したようなレオナの視線を受けて、なんとなく恥ずかしくなって黒い顔を赤く染めてしまったのだった。

それから暫く、レオナは考えた。それでもまだあやしい部分は多々あるこの連中だが、そもそも昨日突然現れて、仲間の手当てをしてあげたのは、自分だ。しかもその後、詳しい事情は特に聞かず、一晩泊まらせてしまって・・・それで次の日になって、いきなり出て行けと言うのも、よくよく考えれば可愛そうな話ではある。

「・・・わかりましたわ。あたしが、何とかあなた方分のパスポートを、何とか手配してみせますわ」

「・・・ほ、ホンマかあっ!?」

パッと顔を輝かせるキホーテ。・・・しかし、またすぐ怪訝な表情に戻った。

「・・・けど、そないなこと、ホンマにアンタに頼んで、やって貰えることなんか・・・?」

一般の第三者が、そんなことできるのだろうか。そんなに簡単なシステムだったら、無いのと一緒である。そう考えたのだが・・・。

「・・・えぇ、大丈夫ですわ。安心してくださいまし。あたしには、この国の管理者としての権限が、一部許されているんですのよ」

「・・・はあっ!?」

それを聞いて、驚かない方がおかしい話だ。一体、何者!?そう訊ねる前に、レオナは素直に、こう答えたのであった。

「あたしは、小さな診療所を営む医者のひとり・・・けれども外では、お城の重役としての仕事も請け負ってございますのよ」

・・・それは、よくよく考えてみればそれほど驚くべきことではないのかも知れない。国民からの支持の厚い医者が、国の政治にも携っているというのは、他所でもよく聞く話だ。しかし、本当に驚くべきことは、その後の話に続いていた。

「・・・そして同時に、この国のキノガッサ王の息子であるレダさまの育成を預かる、乳母でもございますのよ」

「・・・王の息子!?」

言われて、意味も無くにぱっと笑うレダ。どうやら本人には、なんのことやらわかっていないらしい。

「・・・王の息子って・・・ほんならコイツ・・・いや、このキノココさまは、皇太子ってことなんか!?」

突然の告白に、キホーテはどう接していいやらわからない様子である。

「・・・正確には、次男坊さま・・・つまりは皇太弟ということになるのですが、それでも王位継承者候補であることには変わりありませんわ」

・・・なんだか驚かされる話ばかりで頭がこんがらがりそうになるが・・・しかしよくよく思い返してみれば、道理で昨日からこのニューラの態度、仰々しいと思ったものである。喋り口調といい、こどものレダに「さま」をつけることといい・・・。

それにしても、どうして皇太弟がこのような小さな病院に乳母とふたりで暮らしているのか・・・またまた疑問が湧いてくるところではあるが、今回のところは敢えてそれ以上は何も訊かないことにした。これ以上色々告白されると、それこそ脳みそが異常をきたしそうだと思ったからだ。

「・・・な、なんや・・・取り敢えずコガラシ、よかったみたいやなぁ・・・ワイら、犯罪者扱いされんで済みそうやで」

「・・・キホーテさん、あの子・・・偉い方なんでござんすか?」

コガラシはまだ事情がよく飲み込めてないらしい・・・もはや説明してあげるのも面倒臭そうである。取り敢えず、キホーテはその背中をポンと叩いてやり、安心せぇ、そう一言声をかけたのだった。

・・・そんなわけで、無事行商としてこの国で働くことが許されたキホーテ、並びにロシナンテであったが、問題はまだ残っていた・・・旅の供として付いてきたこのヤミカラス、コガラシと、それから今もまだ病床から目覚めぬ手負いの兵士、サンドパンである。この者たちは、一体どういう扱いにすべきなのだろうか。

「観光客扱い、ってことでええんちゃうん?」

「それが・・・観光客ならば、滞在期間は三日と定められているのでございますの」

レオナの話はこうだった。今は、砂漠一帯戦争状態・・・取り敢えず現在、この国はその被害から守られているものの、いつ日の手が近づいてくるやもわからない。そんな中、被害を最小限度に抑えるため、観光客として入ってくる者に対しては、それなりの制限が課されているのだった。

・・・それにこのご時勢、観光客が入ってくること自体、珍しいのである。そんなオノボリサンが街の中をうろつこうものなら、たちどころにこの街の盗賊たちに目を付けられて、身ぐるみ剥がされて殺さる、なんてことになりかねない。

「・・・勿論個人の責任ですから・・・とやかく言うようなことはしませんけれど。しかしあたし個人の意見として・・・あまりお勧めできませんわね。・・・それに、あのサンドパンさんの治療だって、いつ終わるやわかりませんもの」

「・・・ってことやで、コガラシ。どないすんねん」

コガラシは、しかしキョトンとした表情のまま、何も言えないでいた。どうやら、何か重要な判断を任されているらしいということは、明らかだった。しかしどう振舞うべきか、さっぱり検討がつかないのだ。

キホーテを見、レオナを見、それからレダを見た。・・・しかし誰も、助けてくれそうにはなかった。当たり前だ、いくら信用していた仲間とはいえ、よくよく考えればつい最近知り合ったばかりの仲間なのだ。それよりも、自分の育ての親であるンゲ・・・彼が、今は自分の近くのどこにもいないということに気付いたのだった。

どうすればいいのだろう。ひとりぼっち、直感の赴くままに、ひとりこんなところまで出てきてしまったが、いざ着いてみると、自分は何をすべきが、さっぱりわからなかった。ンゲの力になるためだったろう?その筈だったが、そのやり方なんてのも、何も教わっていないのだ。彼からは、今まで色んなことを教わってきた・・・何を信ずるべきか、どう生きるべきか、本当に様々なことを・・・しかし、ひとりぼっちになったときにどうすべきなのか、そんな肝心なことを教わっていなかったのである。今から訊こうにも、彼は今、ここよりずっと遠いある国にて、ひとり戦っている筈だった。コガラシは急に、世界が自分ひとりだけのように思えてきた。いつしか自分は、幼い日、父も無く母も無く、ひとりっきりで寂しい思いをして生きてきた故郷の暗い森の中へと、逆戻りしていた。

気付いたら、コガラシはわんわん泣いていた。こどものレダもびっくりしてしまうくらいの泣き方だった。どうしたの、お兄ちゃん、どこか痛いの?そう言いながら彼は、何とかコガラシを支えてくれようとした。しかし今のコガラシにはそれも、敵意のあるような行動に思えてしまった。

・・・オイオイ、コガラシ、どないしたん!?泣いてちゃわからんやろ?・・・まぁっ、ちょっと落ち着いてくださいまし!何も心配することはございませんのよ?彼を気遣うそんな言葉も、コガラシの耳にはこう聞こえた。

「何をしようとしているのだ、何のために生きているのだ?わからない、お前のような輩は、まったく無駄な生き物だ!お前なんて、何処へも行けやしない。誰も助けることなんかできない。ひとりぼっちで空しく生きるつまらない生き物よ、お前なんか消えてしまえ!」

酷く孤独で、深い悲しみに包まれた森の中へ、コガラシの精神は深く堕ちていったのだった。深く、深く・・・底なしの井戸のような、闇の中へ。

>>第十七話
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