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Pokemon QuestⅡ:砂漠の魔獣~The Great Sunshine~⑰ 【2007/12/31 00:00】
第十七話:オアシスの朝(後編)
>>はじめから >>前回の話

それから数分後に、コガラシは寝室のベッドの上で目を覚ました。その傍らで、キホーテが椅子に座って、彼を眺めていた。その頬に、小さな絆創膏が貼ってあった。

「・・・よう、目え覚ましたか。・・・驚いたで、急に暴れ出すから・・・」

コガラシはハッとした。どうやらキホーテの顔の絆創膏は、コガラシによるものらしい。

「・・・も、申し訳ないでござんす・・・あっし、急に気が動転しちゃって・・・」

「・・・いやいや、別に謝らんでもええがな。誰も怒ってへんし・・・」

レダは、ちょっと驚いてたみたいやけど。そう付け足したが、別にコガラシを咎めるような表情ではなかった。

「一体、何があったん?・・・って聞いときたいところやけど・・・」

怒りも無く、寧ろ慰めるような口調で、彼女は言った。全ては、優しさであった。彼女の溢れるような優しさを、コガラシは既に知っている筈だった。けれども考えてみれば、彼女には自分のことをまだ何も教えていなかった。自分がなぜこの砂漠にやってきたのか、今まで誰と行動を共にしていたのか・・・。

そのときコガラシは、洗いざらいのことをキホーテに話し始めたのだった。自分は素晴らしい魔道士に仕えているのだということ、その魔道士が今、この砂漠の平和を取り戻すためにひとり、一生懸命戦っておられるのだろうということ、そして自分は、その彼の命令に従って、この砂漠の各地の様子を調べて回らなければならないこと・・・それが、彼が言う目的の場所へ辿り着く下ごしらえだとのことだが、その実は全く何もわからないのだということ。そして、気付けば自分の故郷にまで、話は遡っていた・・・ずっとひとりぼっちで、ンゲが助けに来てくれるまでは、自分はただ雨に怯えながら、生きているのか死んでいるのかもわからないまま過ごしていくしかなかったのだということまで・・・。

キホーテは、コガラシが言う言葉一つ一つに、なんの反論もせず、頷きながら聞いていた。そして一通り聞き終わると、なるほどな、そう一言だけ述べた。感動した、というわけではない。悲しかった、というわけでもない。ただ少なくとも、受け入れた、という素直な一言だった。

キホーテは、それでコガラシのことを労わるような言葉は、何も口にはしなかった。彼は、そんな言葉を期待していたのかもしれなかった。お前も、色々苦労してきたんやな・・・と。しかしそれが彼女の口から出てこなかったのは、いささか驚きであった。

「なるほどな・・・お前がこの砂漠のことなぁんも知らんかった理由もわかったし、ひとりでなぁんも決めることができひんこともようわかった・・・せやからって、どないすんねん?お前は今、ここにひとりでいてんねんで?・・・まずその事実は、受け入れなあかんやろ」

少し、相手を咎めるようなきつい言い方ではあったが、事実だ。また涙が零れそうになるのをぐっと堪えながら、コガラシは彼女の言葉を聞いた。

「・・・お前の仕えとる魔道士がどんなやつなんか、何をしようとしとんのか・・・そないなことはよう知らん。せやけど、ちゃんとお前の言う通りの素晴らしい魔道士なら、それなりの考えがあって、お前をひとり飛び回らせたと、そういうことやないんか?お前ひとりで何かせなあかんことがある・・・その何か、教えられてへんやったら、自分で見つけるしかあらへんのや」

自分で、目的を見つける・・・そんなことが、自分にはできるのだろうか。コガラシは思った。そんな彼に、今度は優しく諭すように、キホーテは言葉を続けた。

「・・・ええか、人生いうもんは、自由なんや。何もやってもええんよ・・・他のポケモンに役に立つことをしても、自分だけの利益を求めても・・・ぶっちゃけて言ってしまえば、犯罪を働いて、投獄されて死ぬんも、そいつの自由や・・・けれどもワイらは、色々考えて生きてきた筈やろう。それをするのが好きか嫌いか、最初はそんな単純な選択からや・・・一つ一つ、ワイらは自分で選択して生きてきた筈やろ。さっきお前は、故郷の森で死にかけとったとも言うたな・・・死のうと思えば、死ねた筈や。せやけど今、お前はワイの目の前で、こうやって生きとる・・・それは、お前が死やのうて、生を選択したからやないんか?」

そう言われて、はっとした。本当に死を意識した瞬間があった・・・けれども、自分はそれを選ばなかったのだ。本当にギリギリのところになって、死が怖くなったから・・・しかしそれも、選択のうちであった。

ンゲと生活するようになってから、彼の全てはンゲのものと考えるようになっていた・・・ンゲが全て教えてくれたのだ。他者との関わり方から、世界の見方まで、生きるということそのものを。けれども本当は、そのもっと前から、自分の人生は始まっていたのだ。ひとりで生きていく中でも、自分は知らず知らずのうちに、ありとあらゆる物事に選択を下しながら生きてきたのだということに、気付いたのであった。

「・・・だんだん、わかってきたようやな」

コガラシの表情を見て、ようやく、キホーテは笑みを浮かべた。けれどもそれはまだ、ほんの入り口だ・・・彼女は日干しレンガで出来た部屋の壁に、視線を移した。

作られてから大分経つのだろう、その薄汚れた壁は、ここへ訪れる者たちを、ずっと眺めてきたのだろう・・・ここは小さい診療所ながら、毎年訪れる患者の数は決して少なくないのだと、レオナから聞いた。時には寝室のいくつかを利用して、そこに患者を入院させることもあるのだという・・・ひょっとしたらこの部屋でも、堪えようの無い苦しみを抱えて延々眠り続けた患者がいたのかもしれない。そう考えると、この壁の染みは、そういったポケモンたちの苦しみを刻み込んだものであるような気もしてきたのだった。その苦しみの重さを、このちっぽけなヤミカラスが知るには、まだまだ多くの時間が必要であろう。

「・・・お前はまだ幸せなやっちゃ・・・世の中には、生きとうても生を選べへんような連中が大勢いる・・・お前もこの砂漠の中で見てきた筈や。沢山の兵士たちが、戦場で命を落としていくんを。戦争という時代が、ワイらの選択を制限してしまうこともある・・・哀しいことやで。生か死か、そんな根本的な選択すら、制限されてしまうような世の中は・・・」

コガラシは彼女の横顔が、なにか冷たい、氷のような憂いを帯びていることに気がついた。その目は、今ではない、もっと過去のことを見つめていた。

彼女は視線を壁に置いたまま、ゆっくりと語りだした。それはコガラシの初めて聞く、彼女の過去であった。

「ワイは、戦争で兄貴を失った・・・11年前の、あの日・・・まだ無垢な心を持った、行商になりたての兄貴が、戦いに巻き込まれて、その若い命を散らしていったんや・・・」

いつの間にやら、日はもうとっくに暮れていた。

月の無い、新月の夜の闇が、悲しみのベールとなって、彼女の身を包んでいるかのようだった。


11年前、キホーテはまだ幼い女の子であった。唯一の兄弟である兄とは大分れており、丁度現在のキホーテと、同じぐらいの年齢だったという。とても心優しく、草花がとても大好きな兄だったが、彼はある日、行商の仕事を始めたいと言い出した。

両親は酷く反対した。どうせただ、周りにいる友人たちに唆されているだけだろう、そう言われて。周りの友人も皆ニャースばかりであったが、ニャースならば行商になるべきだと、妙なトレンドのようなものが、当時からあったのである。しかし両親が反対する理由は他にもあった・・・行商とは武器弾薬を運んで、他所の国の戦争に加担する悪い連中だと、彼らは考えていたのである。キホーテも、自然と平和が大好きな筈の兄がそんなことを言い出すのにはとても驚き、その日から兄を軽蔑した目で見るようになっていた。

しかし兄は、それでも夢を捨てなかった。父親からは勘当するとの言い渡しを受けたのだが、それを拒むことなく、すんなりと家を出て行ってしまったのだった。

それから、兄が家に帰ってくることは二度と無かったのだが、それは父親に勘当されたことが原因ではない。物理的に、帰るのが不可能になってしまったのだ。初めて出かけた先の砂漠地帯で、運悪く彼は、他所の国同士の戦争に巻き込まれてしまったのだった。彼の死体が発見されたとき、その体は見るも無残な状態だったと聞く。いわポケモン軍団が放ったのであろうロックブラストの散弾を受け、どう考えても無差別に攻撃したとしか思えない狂戦士のきりさき攻撃の前にずたぼろにされ・・・しかも遺体は家族に引き渡されることはなく、その場で他の戦死者と共に、焼かれて灰になっていったのだという。

唯一帰ってきたのは、彼がそのとき運ぼうとしていた荷物の箱だけだった。その中に入っていたものを見て、彼の両親並びにキホーテは、大泣きに泣いたことを覚えている・・・そこには、彼が生前好きだった草花の苗が、沢山入っていたのだった。

「兄貴は、なんも戦争のために行商の道を選んだんやないんや・・・たまたま時代が、戦争やったってだけのことや。兄貴はただ、他所の国にも草花の苗を運んで、砂漠の中に緑を増やす手伝いがしたかった、ただそれだけのことやったんや・・・」

後からわかったことだ。彼は、武器や鎧など、戦に関わるようなものは一切、運ぶのを拒んでいたとのことだった。しかしそのために、輸送のための安全なルートを指示されていなかったのだという――植物のようなものも物資として勿論重要だが、しかしそれだけでは十分な利益が得られない。ならば、少しでも最短のルートで、量を多く運んで貰う必要があったのだと、それがギルド元締めの言い分であった。その元締めは、戦争が終わった後に裁判にかけられたが、有罪となることはなかった。しかし幸いと言ってもいいものだろうか、裁判が終わった数週間後に彼は病の床に倒れ、今元締めを務めているのはまた別のポケモンである。

「・・・兎も角、ワイの兄貴は死んだ・・・夢半ばにして、果てたんや。ワイは、悔しゅうてしょうがなかった・・・家族から見捨てられ、それでも夢を実現するための仕事に就けたのに、まだ何もしてへんうちに死んでまうなんて・・・一体、兄貴の人生って何やったんやろう・・・悔しゅうて、悔しゅうて、ワイは人生いうものを呪わずにはいられへんかった」

戦争は翌年に終わりを告げた。しかしそれから暫く、彼女はゲンガーに魂を抜かれたように、塞ぎこんだ生活を送っていたのだという。けれども4、5年が経ち、周りの環境も徐々に変っていくと、彼女は失望からは何も生まれないということに気付いたのだった。そのときだった、彼女が、兄が果たせなかった夢を実現するために、行商になろうと思い至ったのは。

戦争が無い、束の間の平和な時代。まだ若干の幼さがあったが、行商になることは大して難しいことではなかった。両親も、反対することはなかったのだそうだ。ただ、女が希望してなるような仕事ではなかったため、同業者は皆男ばかり。そのため、今は少し男っぽい性格になってしまったのではないかと、ある程度は自覚しているのだった。

「・・・なんや、またくだらん話をしてしもうたようやな・・・」

すっかり暗くなった寝室では、ただ一つ、ランプの明かりだけが、ゆらゆらと揺れながら、部屋を照らしていた。コガラシは、何も言葉が出なかった。

「・・・なぁ、コガラシ。世の中は、全部不幸やと思わへんか?」

暫くの沈黙のあと、キホーテは再びコガラシの方を向いて、そう言った。

「ワイが行商になったことで、死んだ兄貴は天国で喜んでくれてるんやないかって、ついこの間までは思うてた・・・せやけど、世の中はまた戦争や。11年前と、何も変ってへん・・・そして、お前にも見せたやろ、ワイの荷物の中味。“するどいツメ”なんか・・・ワイらの身を守ってくれるためにも役に立ったけど、あれは紛れもなく戦争のための武器や。再び戦争になって、ワイは今、昔兄貴が拒んだ仕事を受け持っとる・・・しゃあないやろ、ワイかて生活かかってんねん。キレイごと言って、むざむざ死を選ぶなんてできへん・・・ワイは、兄貴とは違う。せやけど、そしたらワイは何のために生きてるんやろう?これが本当にワイの選んだ道やったんか?って、時々思うことあるよ・・・」

せやけど、せやけどな・・・。言葉を紡ぎながら、頭に兄の顔が浮かぶ。彼が死んだというのも、今思えば選択の一つではなかったのかという気がしてくる。あれが、彼の潔さだったのかもしれない。無垢なまま死んでいけたということが、彼にとっては幸せなことだったのかもしれない。・・・けれど、それでも。

「ワイはこの生き方を選んだ・・・せやから、どんなに不幸に感じてもうても、ワイは今更この生き方を変えるつもりは無いねん・・・ええか、それが選択っちゅうもんや」

「選択・・・」

久々に、コガラシは口を開いた。

彼にとっては、少し重過ぎる話だったかもしれない。けれども、彼は彼なりにそれを必死で理解しようとしているのだった。自分は、自分の過去の話をした。そしてキホーテも、過去の話をしてくれた。それは、本当に相手のことを信用しているからこそ、できることだった。ならば、話して貰った方は、それを受け入れる義務がある。

「まだ・・・不安でござんす。やっぱりあっし、今までずっとンゲ様のおっしゃる通りにしか、生きてこれなかったんでござんす・・・いきなり自分で、なにかを選択することなんてできるものなのか・・・」

・・・しかしそう弱音を吐いてしまうのは、仕方の無いことかもしれない。まだ自分には、それ相応の強さが無いのだ。自分の幼さを、コガラシは強く恥じた。

「選択は、もうしとるやないか」

けれども相手は、そう言って再び、優しく微笑んでくれるのだった。コガラシにとって、キホーテは大人だった。とても足元にも及びそうにない、魔道士と同じような存在であった。

「お前が、ワイらに付いてきて、今この国におること・・・それが、お前の下した、最初の選択なんやないんか?」

単なる直感も、また選択なのであろう。それに従ったことは、決して間違いなんかではなかったのだ。いや、そもそも世の中に間違いなんてものは何も存在しないじゃないか。一つ一つの選択が、全ての答えなのである。間違いがあるとすれば、それは何も選択できず、一歩も進めないままに終わってしまうことだ。

「初めの一歩は、もう既に踏み出せとるんや・・・まずは、そこからなんやないんか?」

ランプの明かりに照らされながら、キホーテの顔は笑っていた。静かに闇を受け入れる、夕日のような優しさだった。そして、それでもまだ答えが出ずに苦い顔をしてしまうコガラシに、彼女は続けた。

「一つだけ、ワイから提案があるんや・・・お前、各地の様子を調べることが、取り敢えず目的や言うたやろ」

「あ、はい・・・その通りでござんすが?」

「ワイの仕事、手伝ってくれへんか?丁度、ロシナンテ以外の助っ人がひとり、必要や思うてたところや」

「あっしが・・・キホーテさんの助っ人!?」

「おぉ、そうや。それやったら、この国の色んなところ、見て回れるで!それに、仕事について心配するようなことはなぁんもあらへん。ちょっと荷物を運ぶの、手伝って貰うぐらいのもんや」

それは、キホーテにしてみれば、オマケみたいなことだった。しかしそのオマケが、どれほどコガラシの心を救ったか。もはや彼女は紛れも無い仲間であると、コガラシは知った。胸のあたりから、何かが込み上げてきた。溢れるほどの、喜びであった。

ありがとうござんす・・・ありがとうござんす。言いながら、不思議なことにコガラシは泣いていた。うれしいのに泣いてしまうなんて・・・けれども同じようなことが、前も一度あった筈だった。そのことを、コガラシは決して忘れはしない。・・・おいおい、さっき言うたばかりやろ、ちゃんと自分で選択すんねんで?キホーテはそう言いながらも、コガラシが心から彼女の提案に乗ってくれたことが、とてもうれしいようだった。

キホーテにとっても、コガラシはなにか特別な存在になろうとしていたのかもしれない・・・いや、もう既にその通りであったのだろう。

レダが素晴らしい報告を持って階下から現れたのは、ちょうどそのときであった。

「やったよ、オニイちゃんたち!バクーダのオニイちゃんが、目を覚ましたよ!」

それを聞いて、部屋にいた二人は、思わず笑ってしまった。どうやら彼は、まだカンチガイしているようである・・・おい、マズイでボウヤ!そないなことロシナンテに言うてもうたら、噴火するで!

本当のことを聞いて驚き、レダが漫画のように天井まで飛び跳ねてしまったのは、さらにその後の話である。


「おーい、さっさと行くでー!」

朝食後、ロシナンテに荷物を積み終えたキホーテが、そう言ってコガラシを呼ぶ。病み上がりなのに早速働かねばならないロシナンテは多少不服な顔をしていたが、もはや慣れっこだったので、何も文句は言わない。何より、口がまだ朝食の食べ残しで塞がっていたので、喋れなかった。

「ま、待っておくんなせぇ~!忘れ物でござんすよ~!!」

コガラシが首に、何かカードのようなものを3枚下げて飛んでくる。それは、レオナのサインの入った、仮のパスポートである。

「取り敢えず、今日だけはこれで仕事ができるそうでござんす。正式なパスポートを発行するには一日かかるそうでござんすから、今晩はまた、病院の方に帰ってくるようにって言われたでござんす」

「ホンマか!?・・・あぁ、今日あたりから、他所で宿取らなあかん思うとったが・・・なんや、レオナには世話になりっぱなしやなぁ」

「いや、その点はこれで・・・」

と、なにやら薄い紙を取り出して、キホーテに差し出す。それには、クラボの実、モモンの実、チーゴの実・・・と、木の実のリストが書かれている。

「げ・・・なんやコレ!?」

「薬を作るために必要な木の実を、お使いで買ってきてほしいとのことでござんす。それから、これも・・・」

もう一枚、紙を取り出す。それには、今晩の夕食の食材リストが書かれていた・・・。

「・・・あのなぁ!ワイらはメイドやないんやで!」

「・・・いやいやご主人、これも泊まらせて貰ってる身・・・ちゃんと恩返しはせねばなるまい・・・」

ようやく朝食を食べ終えたロシナンテが言うが、キホーテはニヤリと悪い笑みを浮かべながら、それにこう返す。

「ほう・・・ほんなら、怪我の治療までしてもろうた上に、他の面子よりぎょうさん飯食うたったお前も、その分ちゃあんと働くんやで・・・」

「・・・は、はうっ!ご主人、私にこれ以上何しろとっ!?」

「そうやなぁ・・・折角じぶん、ワイらよりデカい四本足持ってんやから、それに雑巾はめて部屋ん中歩かせたったら、大分掃除できるやろうなぁ・・・」

「そ、掃除!?そ、それだけは勘弁・・・!」

意外と、汚れることが嫌いなロシナンテである。

「・・・ところでコガラシ、兵士の様態はどうや?」

と、話題を変えると、コガラシは少し暗い表情になった。兵士は、まだ目が覚めないのである。ちゃんと呼吸も正常には戻ってきている筈だし、何も食べていないのだからそろそろ目を覚まさねばならない筈なのだが、一向に起きる気配が無いのだという。

「しゃあないな・・・それ含め、レオナにはまだ世話にならなアカン、いうことかもな」

それ以上深く考えることは、止めにした。今は、自分たちがやるべきことをやるだけだ。

コガラシもロシナンテに跨り、行商一向は仕事に出発した。ロシナンテが走り出すとき、コガラシはひゃあっという悲鳴を上げた。そう言えば、ロシナンテに跨るのはそれが初めてであった。何から何まで、初めてのことづくしである。そんな中で、自分はちゃんとやっていけるのだろうか?不安は尽きることが無い。しかし、これが自分の下した選択である。もはや、引き返すことは無い。

太陽は、今日もぎらぎらと熱い輝きを放ちながら、彼らのことを見送っていた。この砂漠の中、ある土地では、干ばつのために今にも干上がってしまおうとしていた。ある地では、いつもの戦争が繰り広げられていた。ある土地では、裏切りものの暗殺者が、逃げ延びながらも遂に体力が尽き、気絶して、生死の境を彷徨い歩いていた。そしてまたある土地では、ひとりの魔道士が古文書を手に、新たなる目的に向かって突き進もうとしていた。

これからこの砂漠の世界で一体何が起ころうとしているのか、それは砂漠全土を見下ろすその太陽すら、知るはずがないだろう。けれど、太陽は己が体を必死に燃やしながら、その下で生きるもの全ての命を無償で支えようとしているのだ。太陽は未来なんかよりも、過去なんかよりも、現在に生きる全ての生き物を愛しているのだった。

それだけは、紛れも無い事実なのだ。

>>PQⅢ第一話
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